惑う戦士   作:gawain

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第10話

「フェリは入らないのか?」

「ええ」

「気まずいのはわかるが一応本部で仕事していたんだろう」

 

 フェリ・ロスは生徒会本部にて情報の精査にあたっていた。そういう事になっていた。

 しかし日頃から小隊の活動に非協力的であるのは、隊員の誰もが感じていたことで、それが疑念となっている。信じたいが、どうしても拭い去ることはできなかった。

 そして今の様子を見る限り、疑念はより濃くなったと彼には思われた。

 

「待って下さい」

「申し訳ありません。遅れ――」

 

 念威繰者の力は小隊にとってどうしても必要だ。

 踏ん切りのつかない彼女の背中を押しながら、彼は重い扉を開けた。

 

===============

 

 

 

 

 

「フェリちゃんにリカルドか、良いところに来るな」

「……どういう状況でしょう」

 

 リカルド・マーサスは言葉に窮したが何とか疑問を口にする。

 ブリーチをかけた髪、シルバーのチェーンネックレス、着崩された制服の上着。見た目は軽そうに見える彼だが、根は生真面目で、突然目に入ってきた光景に戸惑いを隠せなかった。

 ニーナは6年制の3回生にもかかわらず小隊を立ち上げた新進気鋭の人物だ。一般学生が戦うには荷が重すぎる。彼女が同級生3人同時に組み手を熟しているのを授業で見かけたこともあった。

 そんな実力者であり、自分を抜擢してくれた隊長が見知らぬ男子生徒に刃を押し当てられ、倒れているにも関わらず、彼は妙に落ち着いた様子を見せる最年長者にどこか違和感を覚えた。

 

「そうだな、御覧の通りだ。ニーナが差しで負けた」

「不意を突かれたとかじゃないんですか」

 

 常の軽薄な笑みは鳴りを潜め、シャーニッドの視線はダメージから抜け出し、体を起こそうとしているニーナの先にあった。

 鳶色の髪をした少年の手にはすでに剣は無かった。

 リカルドにはわからなかった。剄による気配だけではない。姿形は同じに見えるが、今目の前に立っているのが同じ人物なのかと思うほど穏やかな表情をしている。

 

「来たか」

「隊長大丈夫ですか」

「ああ参った」

 

 ニーナは頭に手をやり、負けたことなど気にしていないように朗らかに笑う。

 だが僅かな間だけ、笑顔が固まったようにリカルドには思えた。彼にも心当たりはあった。

 やがて彼女は視界から背けるように目を瞑ると後ろを振り返った。

 

「今日うちの小隊に入る事になったレイフォンだ」

「レイフォン・アルセイフです。よろしくお願いします」

「恥ずかしい事に、見ての通り私は負けてしまった。私は変わらず小隊長として指揮を執るが、今後レイフォンに教えを受けるように、との会長の仰せらしい」

 

 会長の推薦。このツェルニで事情に触れるような人物なら、その意味は名誉な事だとだけ考えることはない。

 カリアン・ロスは、昨年行われた選挙では当初大穴扱いだった。それがどうだろう。選挙期間中に最有力と目されていた対抗候補は辞退し、終わってみれば彼の大勝であった。

 さらに、学園都市の主要交易商品である技術研究・開発予算の大幅な拡大、都市警察の署長に腹心を付けるなど、やや強引に推し進めている。

 そして極めつけがこの17小隊の新設承認である。右腕とされるヴァンゼの反対をも押し切り、2週間ほど前になっても人数が足りないとあって、授業成績によって下級生から数人抽出。そして最終的にニーナの判断によって、ナルキとリカルドが選ばれたのだった。

 辣腕。そんな人物だからこそ、彼に推薦されたレイフォンに対して言い知れない不気味なものを臭わせた。

 

「そう睨むな。いくら会長でも四六時中悪巧みを働いているわけでもあるまい。理由はどうあれ恩もある。実力を確かめたいのならお前もやってみるか」

「いえ、そんなつもりでは……」

 

 特にレイフォンに含むところがある訳ではないリカルドは頬をひきつらせた。

 

「そうか。ならば全員居ることだし訓練を始めようか」

「おっと待ってもらおうか」

「なんですか先輩」

「今日はレイフォンの歓迎会と洒落込もう」

「また――」

「練習に依存はねえよ」

 

 またサボりたいだけでしょう。出かかった言葉はさえぎられた。

 

「でもな、今日会ったばっかの人間と上手く動くなんざ俺達にゃ無理な話だ。それに祝勝会ってな名目もある」

「……」

「よし、フェリちゃん悪いけどこの店に――」

「私は行き……」

「ますね。いや、積極的になってきて俺も感動だね」

 

 強引に進めるシャーニッドに気圧される小隊の面々。

 フェリは凍るような目線で「不機嫌です」と訴えていたが、彼は取り合う気はないようだ。

 ニーナは一人穏やかに笑っていた。どうにも自分には心の機微に触れるような器用なことはできない。その点、不真面目な上級生のこの行動に助けられる。気の良い先輩の存在に彼女は感謝した。

 シャーニッドと目線が合った。ただ黙って頷く。

 

(やはり今日は良い日だ。せっかくの機会をものにしなくては)

 

 やがてシャーニッドの声につられるように、次第に声は増える。

 

「いや別に歓迎会なんて」

「レイフォン、ここは黙って喜んでおくと良いと思うぞ」

「先輩、知り合い呼んでも大丈夫ですか?楽器できるんでノリの良いフレーズ弾かせられます」

「お、さすがにそういう奴知ってるのな、リカルド。そいつ等の分くらいは俺が払ってやろう」

「危険手当も出ましたからね、自分も出しますよ」

 

「仕方ない。個人練習に止めて早めに切り上げるぞ」

 

 言質をとったとばかりに膨れる喜びの声。

 彼女も「早く準備しろ」と言いながらもいつの間にか輪に加わっていく。

 

「あれ、皆どうしたの?」

 

 入ってきたオイルに塗れた作業着姿の人物の声は、たった数人の喧騒に消えた。




ちょっとシャーニッドを便利に使いすぎた気もします
彼も万能人間ではないので控えたい

新キャラは知ってる方おられるでしょうか?
都合の良さそうな人物は彼しか思い浮かびませんでした
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