Fate/Apocrypha 〜月の陣営〜   作:弥未耶

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感想や評価ありがとうございます!
久しぶりの投稿です!
レポート終わってから文字をうつ気力が出なかったです。
少し見ない間にお気に入りが一気に増えて嬉しいですがちょっとびびってます(^^;;
今回は長くなりそうだったのでとりあえず投稿します。
毎回の事ながら雑な文章ですが暇潰しだと思ってあたたかい目で読んでやってください(T-T)




第三話 初戦(1)

 月より降りて来て一夜経った次の朝、マスター達は一階にある食堂で朝食を取っていた。

 

「驚いたわ。かなり心配したけどちゃんとした食事がでてくるなんて」

 

「ですね。流石はムーンセルのNPCといったところですか」

 

「これくらいはしてくれないと僕の口には合わないね」

 

 各自食事をとりながら感想を述べているが、もっとも多いのは安心の言葉である。

 

「ところでこの食材は何処から調達したのですか?」

 

 全員の食事を出し終えた厨房から出てきた言峰にラニが問いかける。

 

「昨日、お前達が眠っている間に街でだが」

 

「……大丈夫よね?何か凄く不安なんだけど」

 

「何を心配しているのかは知らんが全く問題は無い」

 

 凛の心配をよそに皿を持って席に着く言峰。

 

「貴方も食事をとるのですかな?」

 

「誰も食べてくれんからな、NPCである私に食事は必要ないが趣味のようなものだ」

 

 席に着いた言峰の皿を見たダンは思わず顔を引きつらせた。

 目に入ったのは煮え滾る赤い麻婆豆腐。

 

「…それは何です?」

 

「見ての通り麻婆豆腐だが」

 

 ダンの質問に当然だろうといった様子で言葉を返す言峰。

 もちろんダンにもそれぐらいは分かる。英国の人間とはいえ中華料理は知っている。しかし目の前にあるソレは自分の知る物とは違う。

 

「ムーンセルのデータバンクで三重のロックをかけられていたこの、辛いようで辛くない。むしろ脳が辛かった事を認識してくれないラー油の作り方を手に入れてきたというのに誰も食べてくれんのでな自分で食べているわけだ」

 

「誰が食べるもんですか!」

 

「ソレを食べるならガウェインのマッシュや兄さんのカレーの方がまだマシですね」

 

「あらあら、朝から賑やかですね」

 

 月の陣営は思いのほか平和な朝を迎えていた。

 

「レオ。少しいいかしら?」

 

「何でしょうミス遠坂」

 

「私とラニで使い魔を飛ばしておいたから定期的に報告するわ。動きがあれば呼ぶからその時は地下に来てくれる」

 

「流石ですね。もうこの時代の魔術を使える様になりましたか」

 

「お世辞はいらないわ。それに似ているものもあるし、貴方だってやればすぐにできるでしょ」

 

「ミス遠坂とラニの能力の高さは評価していますよ。それで何故地下に?」

 

「あそこにあるスクリーンよ。あれって魔術的に繋げやすいのよね」

 

「なるほど、わかりました。では何かあればよろしくお願いします」

 

 

 

 

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 エクストラクラス・ルーラー。聖杯戦争に問題があると判断されたさいに召喚されるマスターを持たぬサーヴァント。

 今回の聖杯大戦においてルーラーに選ばれた救国の聖女ジャンヌ・ダルクは急ぎルーマニアのトリファスに向かっていた。

 

(一般人に憑依しての召喚というだけでも異常だというのに…)

 

 ジャンヌはフランスに住むレティシアという少女に憑依する形で召喚された。その影響もあり霊体化が出来ないため焦りながらも現代の交通手段を使い移動している。

 憑依召喚にも驚いたがそれだけならばそれが今回自分が呼ばれた原因の一つであるとまだ納得できる。

 しかし、それを上回る異常(イレギュラー)が起きたからこそジャンヌは焦りを覚えている。

 

(召喚されてから新たに十四画の令呪が追加れるなんて異常すぎます。一刻も早く事態の把握に努めねばなりません)

 

 現在ジャンヌの背中には四十二画もの令呪が刻まれている。

 元々与えられた令呪は赤と黒の二つの陣営のサーヴァント十四騎にたいする二十八画。つまり新たに七騎分の令呪が与えられたことになる。すなわちこの聖杯大戦に新たに一つの陣営が参戦し聖杯がそれを認めたという事だ。乗せて貰った車に揺られながら思考を巡らせていたジャンヌだが不意にルーラーの持つ探知能力に反応があった。

 

(これはサーヴァント⁉︎この位置からして…狙いは私?)

 

 ルーマニアに入ってからの監視には気付いていたがまさかサーヴァントを差し向けてくるのは予想外だった。

 ジャンヌは車の運転手に礼を言った後、装備を展開しながらサーヴァントの気配がする方に単身で赴いた。

 

「ーーサーヴァント・ルーラーとお見受けする」

 

 月を背後にしてジャンヌを待ち受けていたのは黄金の鎧を纏ったサーヴァント。ジャンヌは一目でそのサーヴァントの真名を看破する。

 

「…赤のランサー。太陽神スーリヤの子、カルナですか」

 

「なるほど。それがルーラーの特権の一つか、サーヴァントの真名を看破するスキルか」

 

「貴方は何故此処に?」

 

「既に理解していることを口に出すのは賢明とは言えんな。オレが此処にいること事態を明確な宣戦布告と捉えるがいい」

 

 ジャンヌの問いに淡々と敵対の言葉を返すカルナ。

 

「今此処で私を害することに意味があるのですか?」

 

「知らんな。お前を仕留めよとマスターに命令された、ならば契約上オレはそれに従うだけだ。お前の特権を考慮するに手加減する余裕はない一撃で終わらせる」

 

 槍を構え戦闘態勢に入ったカルナに対しジャンヌも旗を構える。

 ランサーが動き出そうとしたその時。

 

「やれセイバー!」

 

「⁉︎」

 

 命令と同時に剣を持ったサーヴァントが赤のランサーに斬りかかる。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 シロウ・コトミネは此度の聖杯大戦で聖堂教会より派遣された監督役兼赤のアサシンのマスターを務める神父である。その男は新たに七騎の召喚を確認した霊器盤を見て何度目かになるため息をついた。

 

「どうしたマスターよ?あまり不景気な顔を我に見せるでない」

 

 そんなシロウに声を掛けたのは彼のサーヴァントである赤のアサシンである。

 

「すいません。このようなイレギュラーはさすがに想定してなかったもので」

 

「赤と黒の二つの陣営とは別に新たに七騎のサーヴァントの召喚とは確かに驚きよな。しかし、我の使い魔では未だ確認できておらん。壊れているのではなかろうな?」

 

「それはないでしょう、古いですが信頼はできますよ。それでランサーの方はどうですか?」

 

「ルーラーとの接触には成功したが黒のセイバーの横槍が入った。ルーラーを仕留めるのは厳しいやもしれぬぞ」

 

 ランサーの周囲を見張らせている使い魔から得られた情報と自分の考えを伝える。

 

「そうですか。……しばらく様子を見ましょう。それと黒のセイバーの真名(・・)を確認します、視界の共有をお願いします」

 

「全く便利なものよな。お主にかかれば真名の秘匿など意味をなさ

 ん」

 

「こちらのセイバーのような例外もありますけどね」

 

 真名を確認にするという本来あり得ない言葉にも平然と会話を続けるアサシン。シロウもアサシンに言葉を返しながら視界を共有し黒のセイバーを確認する。

 

「どうじゃ、読み取れたか?」

 

「ええ。黒のセイバーの真名はネーデルランドの遍歴騎士ジークフリートです」

 

「ほう。中々のサーヴァントを呼び出したものよな。ニーベルングの歌に名高い竜殺しか。セイバーとして呼ぶなら間違いなくトップクラスと言えよう」

 

「そうですね。しかし、それはこちらのランサーも同じです。それに互いに全力ではありません。さて、この戦闘につられて出てきてくれるとありがたいのですが」

 

 赤のランサー(カルナ)ならば黒のセイバー(ジークフリート)を相手にしても問題無いと判断し、まだ見ぬ第三陣営が介入してくれることを期待し微笑むシロウ。その目に不安の色は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 今いる世界や魔術について調べたりと自由に過ごしていたマスター達は夜になり夕食を終えた後、遠坂凛により地下に集められた。

 集まったマスターとサーヴァントが目にしたのは地上で初となるサーヴァント同士の戦闘であった。

 

「これが本来の聖杯戦争ですか」

 

「別に月と変わらないだろ?サーヴァントを戦わせればいいんだから」

 

 レオの呟きに気楽そうに応えたシンジ。

 

「お気楽ね、シンジ」

 

「別にそんなつもりは無いさ」

 

 シンジの冷静な返しに少し驚いた様子の凛。

 

「意外ね。言い返してくると思ったわ」

 

「そんな無駄なことしないね。それに気楽なわけじゃないさ。僕はもう岸波(あいつ)以外に負けるつもりは無いってだけだよ」

 

「本当に驚いた。人間変わるわね」

 

「全くだよ。少し見ない間にいい顔する様になったじゃないかシンジ!」

 

 シンジの後ろで話しを聞いていたライダーが凛に同意しながら会話に参加した。

 

「お前もちゃんとしろよライダー。僕が本気でやるんだ、負けなんて許さないからな」

 

「当然、アタシは勝つつもりでやってるよ。前回も今回もね」

 

 かつての聖杯戦争で見たことのないシンジの真剣な表情にライダーも真剣に言葉を返した。

 

「シンジの覚悟はよくわかりました。皆さんも同じ思いでしょう。それでは目の前の戦いに戻りましょうか」

 

「そうですね。現在、私とミス遠坂の使い魔でその周辺に確認できているのはそこに映っている四人だけです」

 

「現在戦っているのは当然サーヴァントだな。残りの二人はマスターか?」

 

「敵同士のマスターが何もせずにいるとは思えませんな。それに男性の方は完全に隣の女性に対し無防備なように見えますが」

 

「ルーラーだな」

 

 ダンの疑問に対し答えたのはランサーだ。

 

「あら、知ってるのランサー?」

 

「俺もそんなに詳しいわけじゃねぇよ。ルーラーってのは聖杯戦争を正常に運営するために呼ばれるサーヴァントだってことぐらいだな」

 

「聖杯戦争の正常な運営ですか…。ガウェインは何か知っていますか?」

 

「サーヴァントに与えられる情報は皆同じものですので。しかし、ルーラーのサーヴァントには特権が与えられていると聞きます」

 

「特権ですか?」

 

「そこからは私が説明を引き継ごう」

 

 突如として聞こえた声の方へ視線が集まる。そこにはいつからいたのか言峰が立っていた。

 

「アンタいつからそこにいたのよ?全く気付かなかったんですけど」

 

「気が抜けているのではないか遠坂凛。拠点にいるからといって油断していてはマスターは務まらんぞ」

 

 凛の疑問に対し笑みを浮かべながら言葉を返す言峰。

 

「彼女に落ち度は無いでしょう。ワシも全く気配を感じなかった」

 

「…気にするな。そこの神父は異常だ。月では監督役やら店員などという役割(ロール)についているが確実に戦闘能力がある。正直オレでは勝てないだろう」

 

「さて、どうかな。機会があれば披露することもあるだろう。今は説明役としての仕事をこなすとしよう。簡単に言ってしまえばルーラーとは聖杯戦争によって世界に歪みが出ると判断された際に聖杯から直接召喚されるマスターを持たぬサーヴァントだ」

 

「つまりこの聖杯戦争に何か異常があると?」

 

「普通に僕らのことじゃないの?月からの参加なんて確実に異常だろ」

 

「それはどうでしょうか。確かに月からの参加はイレギュラーではありますが私達はマスターとして認められ、令呪も与えられています」

 

「皆さん。それはここで議論しても仕方ないことです。それより裏側にいた人達は気付いてますね?」

 

 ルーラーの召喚理由については情報が足りないと判断したレオは話し合うべき議題をきりかえる。

 

「あのランサーか?」

 

「ええ。あれはカルナですね」

 

「月ではジナコ・カリギリのサーヴァントだったわね」

 

 ランサーのサーヴァント・カルナ。その実力は間違いなくトップクラスのものでありマスターであったジナコにもう少しやる気と実力があったなら聖杯戦争の勝者の候補にあがっていただろう。

 

「出来過ぎな気もするけど偶然?」

 

「月から送られて来たのは此処にいる者だけだ」

 

「この世界の聖杯戦争では触媒を用いることで狙った英雄を呼び出すことも出来ると聞きます。カルナ程の英雄であれば呼び出す者がいても不思議はありません」

 

「カルナ。月では戦う機会はありませんでしたが同じ太陽を背負う者として負けるつもりはありません」

 

「へぇ、文句無しの大英雄じゃねぇか。それとやりあってるセイバーも大したもんだ。この戦い楽しめそうだな」

 

「なるほど。本物の『神槍』というわけか。面白い、是非死合うてみたいものだな」

 

 セイバー(ガウェイン)ランサー(クー・フーリン)アサシン(李書文)といったサーヴァント達もカルナというビッグネームに闘志を燃やしている。

 

「気合い入れてるところ申し訳ないですが今回は僕に任せて貰います」

 

「ちょっと、レオ何言って⁉︎」

 

「貴方がお行きになるのですか?様子見ならばワシのアーチャーやユリウス殿のアサシンを行かせればよいのでは?」

 

「いやいや、確かに俺は偵察とかの方が得意ですけどね、せっかく本職がいるんだからアサシンの旦那に任せようぜ」

 

「偵察ならばオレとアサシンが出る」

 

「ダン卿、それに兄さんも申し出はありがたいのですが今からやるのは偵察ではありません」

 

「まさか普通に出て行く気なの?」

 

「勿論ですミス遠坂。隠密行動や暗殺を否定するつもりはありませんがそれは(ボク)が自分でやる事ではない。ボクは手の内を知られたとしても正面から全て叩き潰します」

 

 相変わらずなレオの言葉に周囲の者達は皆絶句したがその言葉からレオの王としての決意も感じとることができた。

 

「と言っても今回は挨拶のようなものです。心配はいりませんよ」

 

 この場にいる全員、主に微妙な顔をしているユリウスに向けて無理をしないとつげる。

 

「……はぁ、わかった。だがアサシンはつけさせてもらうぞ」

 

「心配性ですね。では行きますよガウェイン」

 

「了解しました、我が王よ」

 

 ガウェインを連れ添い出て行くレオの背からは月で敗北してなお確かな王としてのオーラがあった。しかし、それは月でいた時とは何処か違うと一部の者達は感じていた。

 

 

 

 

 




毎回話し進まなくてすいません。
まだキャラがつかみきれてないので練習ついでにいつまでも会話させたくなるんだ。
次回からはもう少し動かしていきたいです。
fgoを片手に次話も書いていくんで多分遅くなります(-_-)




おまけ〜人物紹介〜
名前 言峰神父
クラス? NPC(上級AI)
役割 拠点管理、聖杯戦争の説明、マスターの世話など

【本作での設定】
Fate/EXTRA、EXTRA CCCに登場したNPC。
月のマスター達と共に地上におりてきたが肉体はなくサーヴァントと同じく霊体である。
基本的に自分の仕事には真面目に取り組むが性格はよくない。
本来食べる必要はないがマスターの食事中に共に激辛麻婆豆腐を食べる姿がよく見られる。
ムーンセルへの簡易的なアクセス権を持っているため知識も豊富であり、演算処理能力が高い。また簡単な技術はすぐにインストールすることで習得可能である。
ムーンセルの影響下にあるため裏切りなどの月の陣営の不利になる事はしないが戦いの手助けもしない。(戦闘終了後、拠点において休息する場合などは簡単な治療はおこなってくれる)
ただし攻撃を受けた際は自衛の行動をとることができる。
どういうわけかかなり戦闘タイプな設定になっておりサーヴァントにダメージを与えることも可能である。
本作ではアンデルセン、赤のキャスターになら勝利することもできる。耐久値の低い黒のライダー、黒のキャスター、赤のアーチャー、赤のアサシンなども攻撃をもろに受ければ危険であるという無駄に強キャラ設定である。







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