それと一応覇龍についての説明をしたけど、何かしら問題または聞きたい事が合ったらお願いします。
(やめてくれ何で...何で)
「火を放て」
「死ね魔女め!」
「よくも騙してくれたな!!」
「しんじゃえ!しんじゃえ!」
罵声が十字架に磔にされている金髪の女性にかけられる。子供から大人まで誰しもが加減なしに言い放つ。
磔の女性は今いる国を守るために神器『赤龍帝の篭手』を発現させ禁手に至り見事侵略軍を撃退した。
が、その時の姿は悪魔その物だった。元から赤い全身を覆う鎧が侵略軍の兵士の血によりもっと赤く染まり、至る所からうめき声や悶え苦しむ声が聞こえる。
武器を捨て命乞いをしている相手も容赦なく心臓をくり抜き絶命させていく。
彼女の通った後には生命は生きていない。恐ろしいその光景を見た人々は国を守った英雄に対して、嫌悪感を抱き数年に及ぶ戦争に参加させた後魔女として処刑をしようとしている。
十字架の近くには火の松明を持った男が三人いて下から徐々に引火させていく。
(何でだよ!何で!)
火が近づいてくる間も女性は大人しく目を瞑り死を待つ。それに反乱するように彼女の中にいる一誠は暴れるが、身体の所有権は一誠にはないので動かす事は出来ない。
彼女は遂に全身炎に包まれ皮膚が焼け落ち肉が焦げるも、後悔の声や恨みの声は上げずただ笑顔を絶やさずに燃やされていく。
全身を燃やさせる痛みは彼女だけの物ではなく、一誠にもその痛みはあった。
普通であれば精神崩壊してもいい痛みだが、三回目ともなれば多少慣れてくる。
一誠は彼女に宿る前にもっと多数の赤龍帝に宿り、赤ちゃんから成長して最後は無残に惨たらしく残酷に殺された。
国に裏切られ、仲間に裏切られ、友に裏切られ、家族に裏切られ、白銀の鎧の男に心臓を握りつぶされ、自分の手で死んだ。
数々の死を経験してきたが『英雄』と呼ばれた彼らの死は決まって裏切りに満ちていた。
『英雄』は自分と同等かそれ以上の敵がいて初めて『英雄』になれる。ではいなければどうなるのか、それは簡単だ。ただの『化け物』だ。
赤龍帝の篭手を目覚めさせた者は揃って寿命では死ねない。何かしらの要因で死んでいる。
一誠もそうなってしまうのだろう。どうなるのか未来を考える前に次の人生を繰り返す。
(今度は...普通だ)
最後になって欲しいと願いながら体験する人生はごく平凡だった。今までは戦争や紛争ばかりだったが、彼の人生は平凡で平和に満ち足りている。
だが、赤龍帝の篭手を発現させた物の人生を体験しているならば、彼もこのままという訳にはいかないのだろう。
そう思った矢先世界は炎に包まれた。
正確に言えば家が燃え始めた家族が目の前で朽ち果てていくと言った方がいいだろう。これを引き起こした犯人である白銀の鎧の男が高笑いをして言い放つ。
「この世は力無きものは生きてはいけない」
齢十五歳の少年の胸には深々言葉が突き刺さり自分の無力さを呪った。平凡な毎日を送りたかっただけなのに、その力が無かったのだと。
そこで一気に神器が覚醒し赤龍帝へと至り、白龍皇を殺した。家族の死は悲しかったがそれよりもこれで平凡な生活を送れると思い少し嬉しかった。
だが、龍は争いを誘う。二度目の白龍皇との激闘。全盛期は越え衰えていたがどうにか倒した。しかし、その戦闘のせいで彼は普通の生活を送れなくなるほど深刻な障害が残ってしまう。
手足は常に震え、表情筋が死に絶え動かせなくなり口も開かない。ろくに生活が出来なくなった彼は自らその命を断つため、紐を天井に吊るしドライグの叫び声を無視して全体重をかけた。
「は!...はぁ...はぁ...生きてるのか?...」
地面らしき物に寝っ転がっていた一誠は悪夢から覚めるように飛び上がり首筋を撫でる。首には何ともなく正常だったが、頭の中は異常まみれだった。
悪夢とは片付けられないたくさんの人間の記憶が脳に存在していた。転生し体験した事をそっくりそのままに。
「あらお目覚めかしら。どうだった私たちの記憶は」
「あんたは」
「そうね。自己紹介をするわ、私の名前はエルシャよ。貴方と同じ赤龍帝ねまぁ過去のが付くけど」
目の前に立つ黒い人影が宣言する。そこで気づいた今いる場所の現状に、辺りに灯りらしき物は一切なく続くは無限の闇。母さんがいた空間に似ているが同じとは思えなかった。
「貴方の考えはだいたい分かるわ。精神世界に近いと思っているのでしょ?」
「なんで」
「そのぐらい分かるわ。それにここは貴方の精神世界ではなく、赤龍帝の篭手の精神世界。わかりやす言えば怨霊の集まりね」
彼女の宣言に反応するように背後に大量の人影が現れる。その人影を割りながら一人の人影が近づいてくる。
怨霊の群れを抜け一誠の前に立つと、無言で未だ座っている一誠を見下ろす。
「彼はベルザード。あなたも体験したなら分かるんじゃないかしら?白龍皇を二回倒した最強の男よ」
「あの時の...」
「お前は俺達の記憶を全て見ても英雄になると言えるのか」
男の重々しい言葉は重圧となって一誠にのしかかる。
彼ら過去の赤龍帝の記憶を全て見たからこそ分かる。多分このまま行けば自分の最後もろくな死に方をしないだろう。
もしかしたら十六夜辺りに殺されたりするのかもしれない。でもそれは言ってしまえば未来の話。今を生きる一誠がそれで生き方を諦める理由にはならない。
「なるさ、英雄に!だって俺は母さんと父さんの息子だからな!」
「そうか...だそうだぞお前達」
男が後ろを振り向き言い放つと怨霊達から黒い影が離れ、元の人間体に戻っていき笑顔を浮かべこの場から消えていく。
それと同時にこの空間も白くなり目の前の二人も同じで色が戻っていく。
女は長い金髪を横に振り見事に引き締まった美貌を見せびらかし、男は短く乱雑に切られた黒髪を堂々とした表情で見せつける。
「えっとこれは...」
「うふふ、おめでとう。さすがはドライグが命を張るだけはあるわね」
「え?」
「そうね...ドライグの事とこの現象を語るには貴方が至った力について説明しなければいけないわ」
手を合わせ音を鳴らすと、何も無かった空間に椅子三つと机の上に淹れたての紅茶三つが現れる。
エルシャとベルザードが座り慌てて一誠も椅子に飛び乗り、三人とも紅茶を啜る。
「まずは覇龍についてよ」
紅茶のカップを机に置き真剣な眼差しに変え説明を始める。
「あの力は貴方の生命エネルギーを使ってなれる禁断の奥の手よ。無論使った物は死ぬわ」
「それじゃあ俺は現実世界で...」
「死んでないのよ。三つの奇跡のおかげね」
中指・親指・人差し指を上げ少しだけ揺らしながら話を進める。この時ベルザードは本を読んでいて全く会話に参加してこない。
「まず一つ貴方の莫大な魔力のおかげ」
一誠には両親から譲り受けた莫大な魔力がある。全魔力を総動員して肩代わりをしたようだ。
無論莫大な魔力を身体から一瞬で消し身代わりにするなど、人体に何も影響が出ない訳がない。
今の自分の状態を一誠は確認出来ないから気づいていないが、髪の半分が白髪に変化し、左上半身上と頭の左半分の皮膚が浅黒く変化している。
それでも人間の少ない寿命は風前の灯になっている。
「次にドライグの奮闘ね、正直これは少しでもこの時間を作るためね」
過去の赤龍帝の記憶全てを見せるにはいくら何でも一日では終わらず、どうにか外と時間をずらしても一週間はかかっていた。
もしその間に死んでしまえば三つ目が行えず死んでしまう可能性がある。なのでドライグが身体を張って時間を稼いでいた。
「最後はあの時の怨霊達が貴方を生かすために変わり身になった事ね。あぁそれと私達は数少ない怨霊じゃない方なの」
徐々に折っていった指は三つとも全て折られ条件の全ては解説された。
一誠が何故記憶を見ていたのかは怨霊として赤龍帝の篭手にいた彼らが、今までの一誠を見てきた中で自分達の記憶を見ても『英雄』になりたいと言えば変わり身をすると意見が纏まったからだ。
そして、それは決行され一誠は最後まで意思を変えることなく『英雄』になると宣言した。
怨霊達は最後に本当の本物の『英雄』が見れ満足した表情で、浄化するように消えていった。
そのおかげで一誠の肉体は危機的状況から脱出、寿命も元通りとはいかないが平均寿命までは生きられる程には戻っている。
「そっか...そんな事が」
「本当は私達も逝く予定だったんだけどね、何かお前達は残れって言われちゃって」
「これからもこの中でお前を見ている」
「ふぅ...おっす!先輩達の名に恥じないように頑張ります!」
今の自分があるのが先輩達のおかげなのだと自覚し気合いを込め直して声を上げる。
「何だこの手!!」
その時に自分の浅黒く変色した手に気づき仰天の叫び声を上げ、最後まで締まらない後輩だと苦笑しながら髪のことも伝え反応を楽しんだ。
二人の先輩に見送られ現実世界に戻ると二度目の同じ光景が目に飛び込む。
「知らない天井だ...なんて言えないな」
「む、目覚めおったか!全く心配させおって」
目を開いて戯言を呟く一誠に白夜叉が近づき、額をいつも持っている扇子で軽く叩く。
白夜叉なりの照れ隠しに苦笑いを浮かべ、少し席を外すと言い部屋から出ていく。
一人きりになった一誠は天井に眩しく輝く光源帯に左の掌を被せ、現実の身体も浅黒くなっているのを確認する。右手はあいも変わらず肘から先は一切ない。
ひとまず状態を起こし首を回し、凝り固まった身体を解していく。一週間も眠っていると伝えられた時は驚きはしたが、以外と身体に不調は見られない。
「このぶんなら大丈夫だな...うぅん......」
布団から立ち上がり軽く体操でもしようとかとすると、着ていると言うより羽織っていた浴衣が落ちて生まれたままの姿になる。
タイミングよくその瞬間に白夜叉が戸を開け直接バナナを目にする。後ろにいる紫髪の女性は顔を両手で覆ってはいるが、指の隙間から必死に見ている。
「いや俺は悪くない」
「はぁ...時と場合を弁えろ馬鹿者が!」
全裸の一誠に先程の優しい小突きではなく、かなり激しい勢いで扇子をたたき落とした。