「全く懲りんなお主も」
「事故なんだけど」
「知っとるか?加害者がいくら事故と言っても、わしら被害者の心に受けた傷は」
「えっBB」
何かが白夜叉から高速で放たれ、一誠の額に衝撃が走り一瞬だけ意識を失って頭から倒れ、床に座って話をしていたから土下座のような体制になる。
上手く額を跳ね手元に戻ってきた扇子を掴み、口元を覆うように開く。
「次巫山戯たことを言えば消し炭にするぞ童」
「すんませんした」
放たれた威圧は隣にいたランスロットですら鳥肌が立ち、直で受けている本人は意識を取り戻し頭を上げることなく謝り本当に土下座をする事になる。
と、いつもの遊びを終わらせた所で出されているお茶を三人とも啜り一息をつく。
「それでだ。何があった?」
「いやーまぁ色々かな」
おちゃらけた風に言っているが白夜叉は先のお巫山戯の時点から明確に一誠が変わっている事に気づいていた。
先の一撃は本来後ろの障子に飛ばすぐらい力を入れていたはずだ。流石に部屋の中なので加減はしたが、前までの一誠であれば確実に吹き飛んでいた。
投げた瞬間気づいたのだ。飛ばされた扇子を一誠は見切り、後ろに飛ばされないように身体に力を入れた事を。
多分避ける事も可能だったのだろうが、あえて避けなかったのは反省の意味もあったのだろう。
片腕が無くなり変質した髪や肌。それのせいもあるのかもしれないが、纏っている雰囲気も大きく変貌している。
「まぁいい、それよりも今は別の話だ」
「別?」
「うむ。おんしを助けたのはここにいるコミニュティ『アヴァロン』に所属しているランスロットとアーサー王だ」
「あぁ、その件に関してはご迷惑をかけました。本当にすみませんでした」
ランスロットの方に向いた一誠は潔く頭を下げる。
いくらあの時の記憶が朧気だと言えど迷惑をかけた事には代わりがないのだ。
深い謝罪に慌てて両手を振りながら頭を上げてくださいと言う彼女の大きな胸は、暴れ狂う牛のように暴走する。
「「メロン」」
「くぅぅ!」
変態二人の反応は全く同時で同じ言葉だった。
それが自分の胸に対して言われたのだと理解したランスロットは、近くにあった座布団で二人の頭を強打する。
叩かれた二人は両手を身体の前で組み、その動きの時の胸もガン見して心の中でガッツポーズをしている。
「く、貴方が本当に値するのか悩ましいです。アーサー王は何を考えているのか」
「値する?なんだそれ?」
「七聖剣の一つエクスカリバーのギフトゲームじゃな」
先程までの巫山戯た態度は一変し真剣な目でランスロットを見つめ始める。それだけ、七聖剣は彼の中で大きい存在である事も指している。
「やはり私は帰りま」
「お願いします!俺に受けさせてください」
「...本気ですか?」
「本気だ、です」
立ち上がり帰ろうとする彼女の前に入り頭を下げる一誠。
「はぁ...分かりました。どうせ一度きりのチャンスですしね。それと敬語は入りませんよ兵藤一誠、なにせ同い年です」
その言葉に衝撃が変態の全身に駆け巡る。
一誠と同い年。という事は16~17歳となる。その若さでありながら黒ウサギと同等、いやそれ以上のプロポーションを持っているのは化け物としか言い表せなかった。
「まさかそんなに若いなんて」
「以外だのぅ...」
「いつもそうの反応。私ってそんなに老けてますかね?」
「「さ、さあ?」」
小首を傾げて聞いてくる彼女に、身体の色気が凄まじいのですよと言えばまた話の腰を折る事になりめんどくさいので、指摘はせずに心の中でさらに成長することを祈るばかりである。
「まぁいいです。今はこれが先です」
黒染めのスーツにより余計に締め付けられた胸の間から白い一枚の紙が出てくる。
いつから入れていたと野暮な質問はせずに受け取り、妙に生暖かい紙を開き中身に目を通す。
『ギフトゲーム名″Pull through the sword″
・参加条件
英雄たる存在である事
一度も挑戦した事が無いこと
・勝利条件
伝承通り岩から剣を引き抜け
・敗北条件
剣を引き抜く事が出来なかった場合
・勝利報酬
英雄たる武器
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗をホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。″アヴァロン″印』
見終わった直後に辺りの景色は変わり果てる。
空には雲一つなく美しき太陽の光により黄金に輝くススキ。
その中目の前には一つの平たい直径三メートル程の石があり、その中心部に黄金の剣が突き刺さっている。
剣が目に入り自然と唾を飲み込む。デュランダルはかなり美しくこれ以上無いだろうと思っていたが、半分程しか見えていない状況でも分かる。これが一番美しいのだと。
「簡単だ。引き抜くだけ、それさえ出来ればお前の物だ。お前の父一新は容易く抜いて見せた、ならばお前も出来るだろう」
励ましとも取れる説明を受け手を剣の柄へと伸ばし握る。
まるで重力が数十倍になったように身体に負荷がかかる。まだ触れただけなのだがその場に膝をつけ、額からは汗が流れ落ちる。
「なせば大抵なんとかなる!!!!」
身体を押しつぶさんばかりの負荷を強引に跳ね除け、上に持ち上げる。
剣は突っかかる事無くいとも簡単に岩から抜ける。
やっと刀身全体を見せた聖剣をしっかりと拝むため、上に掲げ見る。無駄な造形などほとんど無くひたすらに剣が太陽に照らされ光輝き、剣を縦に割くように別れ片方が地面に落ちる。
剣が地面に落ちる虚しい音が響く。
「なん...だと...」
試合開始前から試合終了の合図がなる。まさかの聖剣が真ん中からへし折れた。
引き抜いただけでこれだった。口から魂が出て身体が白くなる。終わった...全てが終わってしまった。
「何をそんなに驚いている?これはそう言う物だろう。聖剣『
地面に落ちた方の剣を持ち一誠に差し出す。が、片腕のない一誠は右手で受け取る事は出来ず二つの柄を片手で掴む。
かなり持ちにくく不格好な双剣をギフトカードに入れ手軽にする。ついでに勝利を告げる『
「うん?てかこれ俺が手に入れていいのか?だってアーサー王って言ったらエクスカリバーだろ?」
「なんだ知らないのか。エクスカリバーは二つあるぞ」
そう。選定の剣であるエクスカリバーと、モードレッドとの戦闘後湖に返させたエクスカリバーは別物であった。
選定の剣は一度湖に返されていて、二本目を受け取りその後も使い後に返された。
何故返されたのか?実はエクスカリバーが折れたのだ。天辺から柄の中心まで綺麗に真っ二つだ。
円卓の騎士達の間で理由は深くは分かっていないが飯の不味さに怒ったアーサーが暴れたのが原因ではとされている。
湖の妖精達は予定より早い破壊に驚き慌てて急造したのが、現在アーサー王が使っている方のエクスカリバーである。
その事からもしもの事を考え折れたエクスカリバーを打ち直し『
そんな事どこぞの詳しいオタクかとあるブランドの影響化にある者しか知らない事を、一誠が知っているわけもなく説明されてやっと納得がいく。
「意外だなそんな事あるのか」
「私達はその時代に生きていた訳では無いから何とも言えないけれど」
辺りを見渡していたランスロットはこの世界の綻びを確認する。雲一つない空にはヒビが入りポロポロ空が落ちてくる。
「時間が無い。兵藤一誠私と戦え」
「俺と?」
「そうだ。それを持つのであればその担い手たるか実力を知りたい」
「いいぜ。丁度動きたかったしな、それと俺の事はイッセーって呼んでくれ、元の世界だとそう呼ばれてたし」
「そうか、ならばイッセーハンデはいるか?」
片腕のない事に対してなのだろう。実力を知りたいと言うには剣の腕。
剣を片手で持つのは曲芸士か達人のみ。一誠が異世界で何をやっていたのかを聞いている彼女は、それを考慮し聞いた。
片手と両手で剣をぶつけ合わせれば片手の方が負けるのは常識。なのだが一誠は首を横に振る。
「なぁドライグ神器って思い次第だったよな?」
『そうだが...なるほどなそういうことか』
赤龍帝の篭手を出し前に突き出す。
「
無い右肘の先に左と同じ篭手が現れる。思いの力で形を変える神器だからこそできる荒業だ。
あったときと同じように動かせるのを確認し『
黄金の剣は二対に別れ左右の手で剣を構える。ランスロットの中段に構える姿とは違い、素人感丸出しのただ剣を持つだけだ。
だとしても、一誠から放たれる剣客のオーラは並の者ではない。
「先手必勝!」
先に仕掛けたのはランスロットだった。
幾度の戦場を駆け抜けてきた彼女には二十歩程の距離を一瞬で移動することが出来、一誠の背後に周り切り下ろす。
認識外の速度からの斬撃。元一般人が止められるはずもない一撃だったが、背中に右の剣を添わせて防ぐ。
「な、くッ」
止めたのと同時に左手の剣を振り返らずに振り抜く。瞬時に察した彼女はその場から飛び上がり一回転して地面に這うように着地する。
一誠は今の一撃を止められた事に内心驚いていた。ランスロットの動きは全く見えず、何処にどう移動したのかまるで分からない。
では何故防げたのかそれは『感』としか言えない。
『感』には二種類があり、天才のそれと経験に基づく物だ。一誠は後者にあたり、幾千の過去の赤龍帝の記憶が統合された一誠は戦闘経験だけで言えば人類最高峰となっている。
「ならばさらに早く動くだけの事!」
クラウチングスタートの要領で急加速して接近する。彼女の戦闘スタイルはアーサー王のように力で押すのではなく、速度で翻弄しダメージを蓄えさせく物だ。
地面は抉れクレーターが出来上がりどれだけの加速か物語っている。
さらに、一撃だけの斬撃ではなく高速で振ることによりほぼ同時の四連撃を繰り出す。
頭、心臓、喉仏、金的。最悪死に至る男の四大弱点を的確に切りかかる。
「こんな感じか?」
それをいとも簡単にコピーし同じほぼ同時の四連撃で弾く。
ありえないと呟くより早く新たに八連撃の同時攻撃が襲ってくる。ランスロットでさえ最高は六連撃。それなのに目の前の少年は初めて四連撃を成功させた後、その二倍も容易くやってのけた。
「
ランスロットの身体に幾何学的な模様が浮かび上がりガラスが砕けるような音ともに消える。
これは彼女自身が自分にかけた封印を解いた証だ。いくら鍛えに鍛えたとしても彼女の肉体は十六夜のように化け物じみておらず、一般人よりは遥かに強い程度だ。
そのため、常時全力で入れば数分で身体が崩壊し動けなくなってしまう。だから封印を施し力を制御している。その封印を解除した事により魔力も爆発的に大きくなり、筋肉が膨張する。
途端。彼女は残像をその場に残し後方に飛び去る。一誠の放った八連撃は残像を切り刻む。
「あっぶな。身体が思ってる通りいかないな」
実は今一誠は八連撃を寸前止め負けを認めさせようとしていたのだが、頭で思っていた通りに身体は動かずにそのまま切り刻んでしまった。残像だったのが良かったとしか言えない。
理由として膨大な知識に身体が追いついていない。分かりやすく言うならば一誠は童貞だが、経験では非童貞である。
これが頭でも起き、過去の赤龍帝達との身体の作りの違いから上手くコントロール出来ずにいた。
だが、それもこの一回限りだ。一度したミスをそう何度も繰り返す程愚かな事を一誠はしない。ズレるならばそれを織り込んで動かせばいい、それだけの簡単な作業だ。
「イッセーお前の力を認める。だがら一度攻撃をしてこい、受け止めてやる」
「なるほどな!いいぜ、なら少しだけ本気でやるか」
一度屈伸をしてから垂直に飛び始める。
何をしていのか訳がわからない。そんな表情の彼女だが分からない何かがあるのだと剣を正面に構え備える。
それでも一誠はずっと垂直跳びを続けている。するとしだいに
「あれ?音が遅れて聞こえる」
本当に音がずれ始める。着地をして飛んだ後に着地音が聞こえる。摩訶不思議な現象。
人間の身体構造上永久に目を開く事など出来ず、飛んだタイミングで瞬きをする。それが大きな過ちだった。
「ふん」
一誠はその場から消え失せ。瞬きをし終わった時には既にランスロットの背後に周り、剣を振り抜いていた。
加速する前にいた場所から彼女のいる場所まで一直線に地面がえぐれ、暴風が白夜叉の白髪を靡かせる。
「え?」
突風が通り抜けた感覚の後足から力が抜け崩れ落ちる。どうにか足に力を入れようとするがピクリとも動かない。
背後からはゆっくりと近づいてくる足音が聞こえ、まるで死の宣告をする死神のように感じてしまう。
「これで俺の勝ちだよな」
「あぁ私の負けだ」
剣を地面に置き両手を掲げ負けを認める。一誠はやっと終わったと剣をギフトカードにしまい蹴伸びをして、ランスロットを抱き上げる。
「にゃ、にゃにをする!」
「ちっと力を入れすぎたみたいだからな。多分あと数十分は動かないと思うぜ足」
今までの人生において他人を助けることはあっても、こういう風に抱き抱えられ助けられる経験は初めてで頬が赤くなる。
てか、円卓の騎士にはろくな男がいないことを考えると、初めて本物の紳士?に出会えたのかもしれない。
元の部屋に帰還すると久々に風呂に入りたいと言い出した一誠に風呂場の場所を教えた。確かこの時間は誰かの入浴時間だったような気もしたが、あいつなら大丈夫だろうと特に止めはしない。
「これでやっと帰れる...早くアーサー王の元に」
「む?聞いてないのか?」
「え?何をですか」
全てを答える前に一枚の封書が差し出される。首をひねりながら受け取り背面を見ると『アヴァロン』のマークがあり、急いで中の手紙を確認する。
『拝啓ランスロット卿へ
この手紙が読まれているという事は剣を抜いたのでしょう。まぁめんどくさくてこれしか書いていないのですが。
と、あまり長く書くのもめんどくさいので単刀直入に記します。
貴方はコミニュティ『ノーネーム』に移り兵藤一誠を監視して、次暴走した時は殺しなさい。拒否権はありません。
追記 別にあなたの大きな胸が嫌だからとか、全然そんな理由じゃありませんよ!そう全然そんな理由じゃ......巨乳し』
この後は文字が乱雑過ぎて解読が不可能だった。
飛んでもない文を読まされたランスロットは握っていた手紙に力が篭もり、
「うぁぁぁ!!」
一気に破り捨てた。