まぁどうでもいいや。早く一誠の覇龍制御版書きたいから頑張ります
「はぅっ」
「変な声だすなよ」
「そんな事言ってもお前の手つきがっぁやらしっいからぁっ」
声だけ聞いていれば明らかに如何わしい事をしているように思ってしまうが、健全とまではいかないが単に髪を洗っているだけである。
彼女の長く艶のいい紫髪が白い泡に包まれていく様は絶景である。さらに、身体にはタオルなど一切巻かず胸を片手で押さえ込んで見えないようにしている。
抑え込まれて出来た谷間を水滴が下る様子は男二人の心を鷲掴みにしている。
恥ずかしそうにしている彼女だが、何故ここに風呂場にいるのか。それは彼女自身のプライドからだった。
アーサー王に命令されたのだ、監視しろと。それが例えトイレの時でも、男子特有の一人になりたい時でも、痴女と呼ばれ辱めを受けようとも変わらない信念だった。
実際に一誠が用を足してる時に背後に立ったり、自分の時に外にずっと立たせたりしていた。
そんな彼女だったが、さすがに今回のは中々心に来てるらしく涙を浮かべている。
「今度何でもいうこと聞くからごめんな」
「何でもですよ、拒否は許しませんから」
「おう」
立ち上がって嬉しそうな笑みを一瞬浮かべるが、たゆんたゆんな胸が立ち上がった衝撃で弾み隠されていた山頂がその姿を現す。
山頂には淡いピンク色の出っ張りがあり、持ち前の傷のない白い肌により出っ張りを余計際立たせている。
「oh...yeah」
「この......変態ッッ!!」
顔がみるみる赤くなり茹でダコのようになった彼女の、怒りの渾身のひと蹴りは見事顎に直撃し、身体を宙へ浮かせ吹き飛ばす。
飛んでいく先は未だ一度も一誠による悲劇を受けていないリリの元だった。
髪を十六夜に洗われその気持ちよさで背後の事に気づいておらず、反応できたのが髪を洗っていた十六夜だけだった。
飛鳥や春日部や黒ウサギならまだしも、未だ子供であるリリに手を出せば自ずと犯罪になってしまう。春日部も怪しいところではあるが。
では今あるこの現状を打破する方法はただ一つだ。
「しゃらくせぇ!」
蹴り出した本人であるランスロットへ変態を蹴り返すこと。
リリに合わせしゃがんでいた体制からすぐに立ち上がり、左足を地面を力強く踏みしめ腰から回転させ、遠心力の乗った回し蹴りを繰り出す。
いつもならば繰り返す事は容易い。だが、今回は条件が違った。あのラッキースケベ王子こと兵藤一誠だ。この程度で回避できるわけが無い。
突如転がってきた小さな石鹸が的確に十六夜の左足に入り込み、その場でスリップさせる。
「ま」
一体どっちの声だったのか。それは今では定かではないがこのあとのアレを思えば両方だったのだと思う他ない。
突然倒れた十六夜と一誠が何故か絡まり合い結果として大きな音を出して二人して倒れ込む。
ようやく後ろの騒がしさに気づいたリリが振り向くと衝撃的な光景があった。
十六夜が大の字で床に倒れ。その上から一誠が右足をまたの下に置き左手で胸を触りつつ、空いている右手を顔の横について壁ドンのような事をする。壁と言いつつ床なのは気にしない。
「イッセ×イザ」
男と男が絡み合う酷い光景を見たリリの口から零れた言葉だった。無論この日を境に二人を見る目が変化したのは言うまでもない。
女子三人組で身体を洗いあいっこしながら騒ぎあってる中、男二人は湯船に胸元までつかり満天の星空を見ている。
改めて思えばこのように落ち着いて会話をする機会はほとんど無く、珍しい出来事でもあった。
「なぁ一誠聞いてもいいか?」
「おうどんとこい」
視線を空から下ろし互いに女子達を眺めるようにしながら会話を続ける。
「一誠のギフトに龍が宿ってるのは分かった。それじゃあお前らの世界には白竜や何かしらの人外はいるのか?」
「いるぜ。白竜は当たり前として、天使、堕天使、悪魔、妖怪、神他にもまだいると思うぜ」
「そうか...」
十六夜は一誠の言葉を聞き羨ましそうな声を漏らす。
なにせ、十六夜の世界には悪魔などの人外は一体もいない。見つかっていないだけでもしかしたらいるかもしれないが。
何も無い平和な世界において十六夜の力は災害そのものだった。ちょっと力加減を間違えれば世界が壊れてしまう。
何度も願った。人外と戦いたい。だが、そんな事は許されない世界だ。
その事を知らない一誠は首を傾げ疑問符を浮かべるも、自分から話さないのはそれだけ重い話なのだろうと聞くことはしない。
この後すぐ風呂から上がりヘッドホンが無くなったのに気づき慌てる事になる。
翌日。早朝から十六夜は一人ヘッドホンを探して動きまくっていたが、結局見つからず頭に何かないと不安なのでひとまずヘアバンドを付けていた。
「結局見つからなかったの?」
「あぁダメだなこりゃ。今回俺はパスだ春日部が代わりに行ってくれ」
「見つからないなら私達が」
「やめとけ。そんな時間が勿体ない、お前らだけで行ってこい」
いつもと違う髪を右手で掻きむしりながらめんどくさそうな顔をする。
一方近くにいたランスロットは別の事で大きな声を上げてしまう。
「もう一度言ってくれ」
「何度でも言うぜ。ランスロットも耀達について行ってくれ」
「ありえない。ありえなさ過ぎる...」
頭を抑えながら現状を理解できないと吐き捨てる。まさか一誠本人から仕事を辞めるように言ってくるなんて思ってすらいなかった。
「無理だ。何がなんでも無理だ。私は王からの命令で」
「だけどさ。今はこのノーネーム所属なんだから、多少交友関係は気づいた方がいいと思うだよな。何安心しろ、こっちなは十六夜がいるから」
「だが......」
確かに考えてみれば監視ばかりに気を取られ進んで交友しようとしていなかった。これでは今後の事に支障がでる可能性もある。
いくらアーサー王の事を言っていても事実所属コミュニティはノーネームなのだから。
多少しぶりながらもゆっくりと首を縦に振る。ただし条件として覇龍を使わない事、全身禁手を使わない事を約束させられた。
どうにか送り出し二人は朝食を食べ終え散歩を開始する。男二人の散歩ほど味気ない物も無いので、レティシアとリリも加えての散歩だ。
前までの死んだ土地から一変し、今ではちゃんと生きた土のいい香りが鼻に入ってくる。
軽い感動を覚えながら進み話は盛り上がり自分の過去を暴露する事になっていく。
やはりなのか一誠の世界の事を話すと驚かれまるでギフトゲームのない箱庭だと言われた。
「私は宇迦之御魂神より神格を授かった白狐が祖だと伺ってます」
「宇迦之御魂神か...随分と大物だな」
驚きと共に納得の表情でリリを見つめる。
伏見稲荷神社の主神であり、そのためお稲荷さんとして広く知られている。それを考えればリリにある狐のような耳や尻尾に納得がいった。
「なるほどな......じゃあ今いないのはやっぱり魔王に攫われたのか?」
「はい。本来は私はまだ未熟なので受け継ぐはずではないのです」
下を俯く自分を卑下し始める。本当は飛鳥には頼らず自分の力で治す。それが土地を預かる者としての責任なのだ。
そうすればここまで生活が苦しくなるはずもなく、もう少しましな生活を送っていたはずだ。
「まぁいいじゃん。今はこうなったんだし」
小さいリリが俯いてさらに頭が低くなったので一誠は膝を折ってしゃがみ、しゅんと萎んだ髪を撫でる。
下を向いていて分からないが泣き消えそうな声で「はい」と呟き目元を袖で擦ってから顔を上げる。
元気になったようなので立ち上がり会話を再開する。次に過去を暴露したのはレティシアだ。
「私は知っての通り元魔王だが、二人は知らないだろうがゲームにクリアされて隷属した訳でない」
「うん?どういう事だそれ?」
レティシアの言ったことは些かおかしかった。そも魔王を隷属させるにはゲームを完全にクリアしてやっとする事ができる。
なのに隷属されている本人がゲームクリアされていないと発言したので、矛盾を感じた。はたまた十六夜達の知らない何かがあれば話はまた別だ。
「話せばかなり長くなるので掻い摘んで話すと、ゲームから切り離されたが一番いい表現だ」
「じゃあ切り離されたゲームはどうなったんだ?」
「さあな詳しくは知らないがどこかに封印されているらしい。知った所で封印を解く気はないな」
首を横に何回も降って知らない事を体全体だ現す。どんなゲームだったのかも気になるが、順番的に自分の番になってしまう。
「そこまで隠す話でも無いしな...俺の育った施設の話をするか」
初めて語られた十六夜の過去はそれなりに重かった。
生まれながらにこの超人の力を持っていてそのせいで親はいない。引き取られた先では違法を暴露しまくり多額の金はあるが、誰も引き取らなくなるそんな事になる。
その生活で得た金全てを賞金にした人生最初のゲームを開催するも、中々クリアする者は現れず本格的に人間に絶望し始める。
そこで後に多大な影響を受けることになる金糸雀と出会う事になる。
そして『カナリアファミリーホーム』なる十六夜の大切な家族が出来た。