水柱を作った3人は湖から出て、びしょびしょに濡れた服から水を絞り出す。
「全く信じられないわ!突然呼び出して上に、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。水がなかったら即ゲームオーバーだぞ。これならまだ岩の中に呼び出された方がマシだ」
「石の中に呼び出された動けないでしょ?」
「俺は問題ない」
「そう身勝手ね」
黒髪でどこかのご令嬢のような少女と、金髪でヘッドホンを大事そうにしているヤンキー気質な少年は、鼻を鳴らして互いにそっぽを向く。
かなり険悪な雰囲気の中、もう1人の三毛猫を抱えている少女は呟く。
「ここ何処だろ?」
「さぁな。まぁ世界の果てっポイのも見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
少女の呟きに少年は答える。
普通はよくあの状況で遠くを見れたなと思うのだろうが、彼らはさも当然のように流している。
ある程度の水を絞り出し脱ぎたいのを我慢できるまでになると、周りにいる2人に確認の意味を込めて問いかける。
「なぁ、もしかしてお前達の所にも変な手紙が?」
「そうだけど、オマエって呼び方は訂正して。私は久遠飛鳥よ。今後は気をつけなさい。それで貴方は?」
「春日部耀。以下同文」
「そうよろしく春日部さん。それでいかにも野蛮そうな貴方は?」
「高圧的な自己紹介ありがとよ。見た目通り野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪め快楽主義者と三拍子揃ったダメ人間なので、用法と容量を守った上で適切に接してくれよお嬢様」
「取り扱い説明書をくれたら考えるは十六夜君」
「いいぜ。今度作っておくから覚悟しとけよ、お嬢様」
3人の独特な自己紹介が終わり、グチグチと嫌味を述べる。
「しっかしいきなり呼んで放置ってどうなんだ?」
「そうね。何をすればいいのか分からないわ」
「なら、そこに隠れている奴にでも聞くか」
十六夜が向けた視線に他の2人も集まる。
そこに隠れている黒ウサギはビクッと揺れ、草むらが揺れる。
「貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負け無しだぜ?そっちのお前も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれれば嫌でも分かる」
「へぇ...面白いなお前」
十六夜は春日部のまるで『嗅覚』によって見つけたような言い方に興味がそそられる。
それよりも今はそこにいる奴だと視線を戻す。
何せ突然呼び出され、水浸しにされ服もおしゃかだ。どんな温厚な人物でもイラッと来るだろう。それがこの問題児3人。一体何をするのか分かった物では無い。
そして、軽く殺意の篭った視線を集めていて黒ウサギは、ビクビクしながら草むらから飛び出す。
「そんな怖い顔をしないで下さいよ。御3人様...御三人様?」
黒ウサギは出て気づいた。
呼んだのは3人でなく4人だったはずだ。
それなのに今目の前にいるのは3人だけ、おかしいと首を傾げる。
「どうしたんだうさ耳女」
「うさ耳女とは失礼な。私には黒ウサギと言う由緒正しい......て、それよりももう1人いませんでしたか?」
「「「もう1人?」」」
「ええそうです。もう1人呼んだはずなのですが...」
「あれの事か?」
十六夜は湖の上でうつ伏せで浮き上がってくる一誠を指さす。
指を指された方を見てもう1人を見つけた黒ウサギは顔を青ざめる。
「何で助けてくれないんですか!」
「めんどくさいし」
「同じく」
「私も」
「あぁもうこの問題児様方がーー!!」
黒ウサギは本来こんなはずでは無かったのにと、心の中で呟きながら湖に浮かんでいる一誠を引き上げた。
一誠を引き上げ木に凭れ掛かるように置きびしょびしょになった黒ウサギは、服の袖を絞り水を出していた。
「うぅまさか濡れる事になるとは...これなら濡れてもいい格好にすればよかったです」
「おいおい今に聞き捨てならねえ言葉が聞こえたな。他人は濡らしておいて自分は濡れる気はねえだと?面白い冗談を言うな」
「いやその違うのですよ」
冷や汗を流しながら否定する。彼らは問題児一体何をするのか分かった物では無い。もしかしたら責任として何かしろと言ってくるかも分からない。
「そうだな......えい」
十六夜は少し悩むフリをしながら近づき自分の好奇心のままに黒ウサギのうさ耳を鷲掴みにする。
多少濡れてはいるが触り心地は抜群。次は乾いてる時にでも触りたいなと思う。
「気持ちいの?」
「あぁ乾いてたら最高だな」
「そう...私も触るわ」
「ふぎゃぁ!」
「私も」
「あふぅ!!」
3人はうさ耳が本当に繋がっているのか引っ張ったり触ったりと、自分勝手に触りまくった。
時間とは無慈悲で数十分にも渡り耳を弄られ続けた。
うさ耳弄りから解放された黒ウサギは、自分のうさ耳が付いている事を確認すると多少の問題はあったものの、予定通り世界について語った。
3人は興味津々と言った様子で流石は問題児様方だと思う。
そこでまずは移動をしようと言うと、誰が一誠を持つのかと言う話になる。
「俺はパスだ。男を持つ趣味はねえ」
「私はそんな力は無いわ」
2人が断ると残るは1人だけ。春日部はため息を吐き一誠をおんぶする。少し重いかったが春日部にとっては軽い分類だった。
身体は上下に激しく揺れ、そのせいで不完全ながら意識を戻した。
(どこだここ?何かの乗り物?)
辺りを見回すも視界はまだ暗闇のなか。
人間は不完全な状態で起こされるととる行動は限られる。
一誠の場合はまず手を動かし何があるのかを確認する。
もミュ
柔らかいマシュマロを触った感覚だった。それは夢にまで見たおぱーいだが、いかんせん小さすぎる。
「男?」
元浜達などとよくこれが女の感触だ!などとふざけて触りあっていたので、ついその癖で男と呟いてしまう。
すると、今度は手を何者かに捕まれそのまま浮遊感に襲われる。
飛んでいる時に感じた風圧によって目を覚まし、丁度そのタイミングで地面とファーストキスをした。
「ぺっ!うげぇ...砂が......てか何ここ?それにさっきの感触は...」
完全に目覚めた一誠が周りを見ると、うさ耳を生やした少女黒ウサギとお嬢様の雰囲気を出している久遠飛鳥は白い目で見つめ。
先ほどまで完全に無感情だった春日部耀が、胸を手で隠しながら顔を紅くして殺意の目で見てくる。
それで何をしたのか理解ができた。
「男の娘の胸か」
「違う!!!!」
春日部の綺麗な蹴りが一誠の顎に直撃し、春日部のズボンは短いボトムスだったので、一誠の変態的な視界には微かに移った。
全男子の憧れの的白いパンツが。
その喜びもつかの間、近くにあった木に頭から突き刺さる。
「殺す絶対に殺す」
「落ち着いて春日部さん」
「落ち着いて下さい耀さん」
殴り殺そうとする春日部の両手を一人づつ抑え、どうにか殴り殺さないようにしている。
一誠の知識にはこのような場合の対象法は皆無だった。なのでとりあえず感想を述べることにした。
「えっと...その...まだ希望はあるぞ?多分」
「殺す!!この手で殺し尽くす!!!!」
「なっ!貴方も問題児様ですか!!何故火に油を注ぐような事を言うのですか!!」
「小さいのはみんなコンプレックスだろ?」
「えぇ確かにそうですとも。しかしそれは時と場合を考えてください!!!」
春日部は黒ウサギや飛鳥の説得によりどうにか攻撃をやめ、乱れた服を正す。
それでもなお、一誠には殺意の視線を送っていた。
どうにか落ち着くと黒ウサギから、この世界についての説明を聞く。
ここが一新の言っていた『箱庭』と呼ばれる世界である事を、その『箱庭』では新羅万物ありとあらゆる物が存在していて、ギフトゲームが世界の基盤として成り立っていることを。
(漫画や小説みたいな話だな...そうだこの機会だし白夜叉について聞くか)
「なぁ白夜」
「あぁ!!!もう1人のthe俺問題児的な方は何処にいるのですか!」
「十六夜君のこと?それなら彼『ちょっと世界の果てを見てくるぜ!』って言って駆け出して行ったわよ」
「なんで止めてくれなかったんですか!!」
黒ウサギの怒りは最もだ。
箱庭の果てには強力なギフトゲームをしている幻獣達がいる。確かに彼らは強力なギフトを持っているが、幾ら何でもいきなり幻獣わ倒せる程化け物じみていないはずだ。
それを知らない2人は何故そんなに怒っているのか分からないと言った表情をとる。
「なんでと言われても...止めてくれるなよ言われから」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったんですか!」
「黒ウサギには言うなよと言われたから」
「ギルティです!絶対に嘘です!本当はめんどくさかっただけでしょう!御2人様!!」
「「うん」」
2人の息の合った行動は黒ウサギの心にダメージを与えるには充分でその場に崩れ落ちる。
新たな同胞が異世界から来て、これからって時にまさかの自由行動。それも世界の果てときた、胃は締めつけられ痛くなるのは必然だった。
黒ウサギとしてはこのまま即ゲームオーバーを放置する事は出来ない。
「このまま道沿いに歩いてください。そして大きな門が見えたらジン坊っちゃんを呼んでください」
「貴方はどうするの黒ウサギ?」
「私は今からあの問題児様を連れ戻します!!」
頭を切り替え立ち上がった黒ウサギは、その場で少し屈み両足に力を込めると、艶のある黒い髪は毛先の1本1本余すことなく淡い緋色へと変化する。
そのまま地面を砕くほどの威力で飛び上がると、一瞬のうちに姿が遠くに行き見えなくなっていく。
黒ウサギの巻き起こした突風は3人の髪などを巻き上げる。しかし誰もが喋ろうとしない。
3人の間には気まずい空気が流れている。
先程まで胸をもんで罵倒しあっていた2人が、いきなり仲良くしろと言われて仲良く会話など出来るはずもない。それに巻き込まれた飛鳥も何を話せばいいのか分からず、アタフタとしている。
「...と、とりあえず行きましょう」
飛鳥は黒ウサギの言った通り進む事にした。どうにかジンと呼ばれる人物がこの空気を壊してくれる事を祈って。