現在アンダーウッドの地下都市にて、緊急会議が行われていた。
攻めてきていた巨人族は殆ど倒し終えたので、ひとまず会議を設けていた。
「レティシアが攫われ春日部も龍の中、戦力のランスロットもあの様子か」
「それは仕方なのないことなのですよ、なんと言ってもアヴァロンが落ちたと聞かされたら...」
ランスロットは黒ウサギからアヴァロンが落ちた事を知らされ、その場で気絶してしまい急いで運ばれてきて、いざ目を覚ますと部屋の片隅で両膝を抱え何も発さずに何かを呟いている。
そのせいで、ランスロットは戦力外となりノーネーム内でまともに戦える者がかなり少ない。
「春日部さんは大丈夫なのでしょうか」
「今は何にもできないからな、春日部次第って事だな」
龍の内部にいる春日部のことを黒ウサギは思いながら心配そうな瞳で空を見上げる。
翌日アンダーウッド本陣にてノーネームの面々と、現リーダーサラ・ドレイクが神妙な顔つきだ話をしている。
「これから話すことはここだけの話にして欲しい」
「はい、分かりました」
「実は黄金の竪琴を奪い返された時に、バロールの死眼も盗まれた」
バロールの死眼は視線だけで殺せと呼ばれるバロールの眼である。それを奪われた情報が漏れれば、せっかく上がった士気が下がる可能性がある。
そんな重大な事をノーネームに話したと言うことは、信用のなすところだろう。
死眼への新たな対処を講じなければいけなくなってしまった。
「それと、残っている北と東の階層支配者の元にも、魔王が現れたようだ」
「そう...ですか」
これで、一誠が来るのは殆ど無理となってしまった。ノーネームにて、十六夜と肩を並べられる程の戦力が来れないのはかなりの痛手だ。
ジンもそこは理解していて、自分の不甲斐なさに歯を食いしばる。
「もしかして、多数の魔王指揮する組織があるのかしら?」
「その可能性は高いですね、こんな偶然は起きるはずがないデス」
「なるほどな、そうなると確かに納得出来るな」
「納得ですか?」
「あぁ、そうだな仮に魔王連盟とでも呼ぼうか。サラマンドラを襲った魔王は、サラマンドラが手引きしたんだが」
「なんだと!」
サラは声を荒らげ立ち上がる。
元はサラマンドラに所属していたが、三年前にノーネームが襲われた際に、動かなかった事に失望しサラマンドラを去った。
それでも気になっていたので魔王の襲撃が少し前にあった事は、情報としっていたのだが、自分達で招き寄せたとは夢にも思っていなかった。
「でだ、誕生祭を襲った黒死病の魔王の目的はサンドラではなく、白夜叉だったろ?」
「まさか」
言われて気付かされた。ペストは太陽の主権と復讐を目的としていた。
太陽の精霊を封印する事の出来る、相性のかなりいい
「白夜叉様を倒すため」
「その通り。南が撃たれたのも白夜叉が狙われのと同時期。となれば、階層支配者を各個撃破できるように、同時攻撃を仕掛けているだろう」
そこまではいい。だが問題は理由だ。
階層支配者は全員もれなく十六夜以上の力を持っている。並の魔王であれば勝つことなどできないはずなのだ。
だからこそ、倒すには犠牲が出るはず。自ら戦力を削ってでも倒したい理由が、十六夜には皆目検討もつかない。
「確証はありませんが、現階層支配者であるサラマンドラ、鬼姫連盟、サウザンドアイズ、休眠しているラプラスの悪魔。前者の三つが壊滅すれば、全ての階層支配者が活動不能になり、全権階層支配者を決める必要があります。それが狙いなのかも知れません」
この世界に後から来た十六夜は何のことやら言葉の意味を理解出来ていないのも分かるが、黒ウサギやジン、サラですらフェイス・レスが言った言葉の意味が理解出来ていないようだ。
「以前、クイーン・ハロウィンに聞いたことがあります。階層支配者が壊滅または一人になった場合、太陽の主権の一つを与え、階層支配者を選定する権利を与えると」
「そ、そんな事が」
箱庭を巡る太陽の主権。
空に輝くよく知られた星たちだ。
黄道十二宮。赤道の十二辰。この二つの天体分割を用いて作られたのが、二十四の太陽主権である。
この権利を持った事があるのは白夜叉と、初代階層支配者であるレティシアだけである。
そんな事を露ほども知らない黒ウサギは驚愕に顔を染める。
その後も話はまだまだ続く。
△△△△△△△△△△
「おじさま!UNOしようよ!」
『そんな暇はない。ヴァーリとやっていろ』
「えーー!もうおじさまのいけず。ヴァーリくんやろ!」
「う、うん」
「えへへさっき拾ったんだ。下でね」
「初めて二人でUNOやるよ。いつも一人だったから」
十六夜達の遥か上空。吸血鬼の古城の最深部にてアヴァロンを落とした殿下と呼ばれる白髪の少年に、ヴァーリと呼ばれた白い謎の羽を持つ少年が少し年上であろう少女リンとUNOをやり始める。
ゲームは中断され暇になったためなのだが、それでもいささかお気楽すぎる。
「やったー私の勝ち」
「強いねリンちゃんは」
「まぁーね。次は何する?もう一回やる?」
『ヴァーリ少しこい。話がある』
「は、はい」
「じゃーね。よしチェスでもやるか」
ヴァーリは殿下に呼ばれ案内されるままにとある一室へ入る。
そこは煌びやかな施しがあったと思われる程壁には色々な跡がある。だが、殆ど崩壊していて原型が分からない。
そんな部屋にあるソファに二人は座る。
『ここには赤龍帝はいない』
「そうですか...」
『あぁ、どこにいるかは分からんが間に合わんだろうな。一度会っておきたかったが仕方ない』
「ですね」
『それでだ、改めてあの話をして欲しい。白龍皇の話だ』
ヴァーリはさっきまでの緩い表情から一瞬で怖ばり、恐る恐るもう一度あの話をする事にする。
赤龍帝と白龍皇の因縁をだ。
△△△△△△△△△△△△
そして、遂に十六夜達が本格的にゲーム攻略に向かう。
その為に吸血鬼の古城にいかねばならない。だが、十六夜に空を飛ぶ能力はない。なのでグリフォン達に跨がせてもらい空をかけ龍に向けて飛んでいる。
「ハハハ!こりゃいいな!空を飛ぶのがこんなに気持ちいいのか。春日部の気持ちが良くわかるぜ」
「そんな物で満足か?まだ本気ではないぞ」
「よしなら行け」
「任せよ」
「行くな馬鹿者達」
炎の羽を羽ばたかせながら飛んでいるサラは、問題行動の目立つ二人を注意に向かう。
それでも何ら反省した様子はなく笑ったまま、先に空をかけている。
何とも和やかな雰囲気に後ろにいる者達からも笑い声が聞こえる。これが本当に魔王のゲームなのか、疑問に思ってしまう程だ。
そう、そのせいで気づくのに遅れてしまう。目の前に現れた漆黒の脅威に。
「アレは......たい...ひだ...退避しろぉぉぉぉ!!」
気づけたのはサラで、その声と共に突如として現れた黒い球体は形を変え見覚えのある姿になる。
雷鳴を背後に背負い、無表情な目で見つめるレティシア・ドラクレアその人だった。
サラは仲間を庇い高速で飛んできた槍が突き刺さる。はずだったのだ。突然槍も早く現れた真紅の鎧が邪魔をしなければ。
「十六夜!先にいけここは俺が止める」
「ナイスタイミングだ、ここは任せる。それと、下にいるランスロットもだ」
「任せろ」
纏まっていれば大きな的になってしまう。そのため編隊を解きバラバラになりそれぞれが龍へと突貫する。
レティシアは狙いを定め槍を投擲しようとするが、それを邪魔するように双剣で剣戟を一誠が放つ。
槍の投擲の構えから、剣に槍を激突させ狙いを完全に一誠一人に定める。
「おい!レティシア!」
「.........」
「だーくそ!ドライグどう思う」
『偽物だろうな、相手は影。相性は最高だ一撃で蹴散らせるだろうな』
「ならそれしかないな。十六夜達も行った事だし」
剣と槍同士をぶつけているさなかに、レティシアの腹部を蹴り距離を取る。
空に足場などはなく弱い蹴りになるのが必然だが、羽を上手く使いそこそこの威力で蹴り飛ばし、槍の間合いの外に押し出す。
そして、すぐに決着を付けるため二本の剣の背面を合わせ、まるで一本の大剣のようにし天高く掲げる。
「
剣から放たれる聖の力は天高く上り雲を超える。さらに一誠から莫大な魔力が漏れ始め、その全てが剣へと収束していく。
危険。瞬時に察したレティシアが槍を投げようとするが、時すでに遅し。
最強の聖剣の光はレティシア、影を飲み込み消し炭へとする。
多少地面も抉れ吹き飛んだが、どこからか侵略してきた巨人も倒せたのでプラマイゼロだと信じて、下へ降りる。
「一誠さん!良かったのですよ!」
「おう、少し遅れちまったけどな。まぁそれはいいとして、ランスロットは」
「はいこちらに」
こんな事を言っては身も蓋もないが、現在の戦力では敵を倒せるとは到底思えない。なにせ、敵の全貌が見えていないからだ。
ならば、少しでも戦力が欲しい。確かに自分の居場所であったコミュニティが滅んで落ち込むのも分かるが、いつまでもうだうだされていても困る。
木でできた扉を数回ノックする。
「入っていいか?...入るぞ」
ドアノブを回し中に入ろうとするが、鍵がかかっているのか開かないので蹴り破る。
ドアの破片がランスロットに飛ばないように、すぐ目の前に倒れる程度に力を調整して蹴った。
中は真っ暗で窓もカーテンを閉めている。
完全に隔離された暗闇の角にランスロットはいた。
「おい、立てまだお前には」
「うるさい...黙れ黙れ黙れ黙れだ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」
体操座りしていたので片手を持ち上げ立たせると、突然激怒を露わにする。
「落ち着け、確かにアヴァロンが滅んだのは苦しいけど」
「お前に...お前に何が分かる!あそこは私の居場所だ!アーサー王がいて、円卓の騎士の面々もいて、そこをぉまえが何を知ってると言うだぁぁ!」
子供のように泣きわめき一誠の首元の服を掴み壁に叩きつける。
ランスロットの言った通り、一誠は何も知らない。一体そこでどんな生活があり、ドラマがあり、人生があったのか。
突然知人全てを失った。そんな気持ちを一誠は体験した事は無い。
だから、寄り添うなどただの哀れみでしかなかった。
物語の主人公であれば、カッコイイ言葉の一つでもかけ泣き止ませるのだろうが、生憎と一誠はそんな事出来やしない。
「そうだな、俺は何も知らない」
「だったら!」
「だからと言ってここでお前を見捨てれば、絶対に後悔する!それだけは分かる!」
「ふざけるなぁ、ふざけるなぁぁぁぁ!!」
彼女は暴れる。
自意識過剰だと思われても皆が殺されてしまったのは自分がいなかったからではと、思ってしまう。
でもそれは過去の話であり『IF』の話だ。居たとしても変わらず殺されたかもしれない。
いや、逆にその方が楽だったんじゃないか?そう思ってすらいる。皆死に自分だけが一人惨めに生き残った。もう死にたい。死にた
「だったら、お前の苦しみを俺が一緒に持ってやる!どうせこれからも一心同体だからな!」
何かが砕けるような音が聞こえた。
「無理だ!私は」
「無理はない!だって」
やめろ、やめろ。それ以上喋るな。聞きたくない、聞きたくない。
「未来は俺達が作るんだ!だから無理なんて言葉は必要ない!」
あの人と姿が被ってしまう。
昔その時はまだランスロットなんて仰々しい名前ではなく、ランと名乗っていてアーサー王もアルトリアだった頃だ。
当時とある犬を飼っていた。生まれた時からずっといたせいか、父親や母親と同等の愛情を犬にも持っていた。
だが、犬は人間と比べ短命。死は突然訪れ、愛犬と永遠の別れをする事になった。
その時も泣き叫んで暴れた。
そして、振り回していた拳を受け止めたのはアルトリアで、
「嫌だ!嘘だ!生きてけないよ...キャロのいない世界でなんて無理だよ!」
「ううん。無理じゃないよ。だって未来は私達が作るんだから、無理なんて言葉は必要ないよ」
そして、満面の笑みで言い放った。
『だから、私(俺)にドーンと任せろよ』
翌日、アルトリアは泥まみれになりながらも大きな石碑を作り、キャロを盛大に弔ってくれた。
奇しくも一誠はアルトリアと同じ言葉を言い放ってきた。
悲しいかった気持ちを糧があって今の私がある。今はまだ完全には乗り越えられないけど、一誠がいれば何とかなるのかもしれない。
不思議とアルトリアと居る時と同じ気持ちになってくる。胸の芯が暖かくなり気持ち良い温もりが体全体に広がる。
「泣き止んだか?」
「うるさい!」
先程の適当な拳とは違い、ちゃんと的確に一誠を狙った拳は壁をぶち抜き、何か吹っ切れた表情になる。
「はぁ...よし!もう大丈夫、私ならいける」
「なら行くかラン」
「え?」
「いやだったか?ランスロットって長くて噛みそうだから略したんだけど...ダメ?」
「仕方ないから特別に許す。ただし、次呼んだら確実に殺す」
「それ、許してないじゃん」
馬鹿みたいなショートコントをして、互いに拳をぶつけ合わせ、今出来る事を精一杯やり始める。