問題児と一緒に変態赤龍帝も来るそうでよ?   作:暁紅

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満を持して降臨。

ふざけましたマジすんません。どうにか誤字はないと願いたいところ.......

まぁどうにかこのクソシリアスな回も終わったので、やっと日常のふざけた回を次回から出せそうですね。良かった。





春日部耀の思いは一途で強大である。

いざカッコつけて宣言した物のグライアを倒すビジョンは一向に湧かない。作戦を立てるあいだも待ってくれるほどお人好しではなく、すぐさま獰猛な爪で引き裂く。

 

龍となり空間を切り裂く爪は、咄嗟に耀が後に飛んだ事で服の切れ端を切断し空を切る。

 

「どうすれば、」

『どうした!その程度かァァ!!』

 

後ろへ回避した耀に照準を合わせ火炎を吐き出す。今度は威力より速度を優先したため爆炎の時より威力は格段に下がったが、それでも火耐性がそこまで無い耀には絶体絶命だった。

 

足は地上から離れ、今からグリフォンの力を使っても間に合わない距離に火炎は迫る。

 

そんな時だった。走馬灯のように黒うさぎとの会話を思い出したのは。

 

『え?一誠さんのギフトのドライグについて知りたいですか?』

『うん。十六夜が意味深に言ってたから、何かしらの神話に関わりがあるのかなって』

『なるほど、そうですね一応説明を致しましょう』

 

黒うさぎは両手で抱えていた大量の書籍を木の机に置いてから、机の上に無造作に置かれていた一冊の本を拾い上げ適当にページを開く。

 

冒頭は飛ばし中間地点に差し掛かったところでページをめくる手を止め、少し興奮気味に説明を始める。

 

『まずは本名からですね。ドライグ・ア・ゴッホ。これがフルネームですね』

『へぇ...』

『では続けますね、詳しく一から教えると時間がいくらあっても足らないので省略して説明します。

深い関わりはブリタニアにあり、ランスロットさんやコミュニティ円卓の騎士などと深い関わりがあります』

 

コミュニティ円卓の騎士は知らないが、現在ノーネームに所属するランスロットの事を思い浮かべながら説明を聞く。

 

話についてこれてるか一度確認するように数秒休んでから続ける。

 

『結論として言うならば龍の中でもトップクラスの実力を持っていて、火を司っていますね。その炎は全てを灰へと還したとか』

『じゃあ最強の龍なの?』

『いえ、残念ながら黙示録の方にもっとやばいお方がいるので、最強ではありませんがトップクラスなのは間違いはないデス』

『ふぅーん...そうなんだ』

 

残念ながら耀にとってはあまりいい情報を得れたという訳ではなく、から返事をする。

 

まぁ仕方がないデスよねと黒うさぎは苦笑いを浮かべながら、本を机に置き大量の本を持ち上げ部屋を出ていく。

 

微かに残っていたどうでもいいような記憶だったが、今はとても重要な事だった。

 

目の前の黒龍が放った爆炎は全てを灰に還す程強力だったのか?否。断じて否である。

 

そこで思い浮かんだのが赤い鎧だった。

 

『ふん終わったか。いささかつまらん結末だったな』

 

確実に避けもせず彼女に火炎は直撃したと断言できた。グリフォンの時よりも鋭敏に上がった感知器官は魔法や魔術を感知せず、視覚も避ける素振りを見なかった。

 

随分と呆気ない終わりに落胆の声を零しながら、未だに燃え続ける炎を背に去ろうと歩み始める。

 

だが、突如として悪寒が走りすぐに身体を旋回し炎を睨みつける。

 

(なんだ、なんだこれは!)

 

鋭敏に感知器官が上がったからこそ分かる。炎の中にいる化け物を。

 

ただ、正面にいるだけで強靭な鱗がひび割れるような威圧。あまりにも異様で異形な気配。

 

この力を手にしてたから初めてとも言える恐怖を覚える。そして、その恐怖は姿を視認した時より大きくなる。

 

炎が弾け散りそこに居たのは二足歩行の龍だった。

 

全身が赤く紅い。人の形をしているそれは凹凸が激しく、鱗に至っては刃物のように尖っていた。

 

爪は妖しく輝き、顔であろう部分には上向きに湾曲した二本の牙。目には緑色の不気味な光が凍りつくような視線を向けてきている。

 

両の手の甲には妖艶で不気味な色の宝玉があり、胸元にも堂々と存在している。

 

『なんだその力は!』

「これは私と一誠の絆の力だよ」

『聞いてないぞ、そんな力は!』

 

先程までの儚い弱々しい少女はどこかへ消え、自分の力で立っているのは英雄たる存在だった。

 

耀は火炎が迫る中一誠の想いを昇華させ鎧を精製した。

 

劣化赤龍帝の鎧(レプリカ・ウェルシュ・スケイルメイル)

英雄たる彼を連想させるその姿は圧倒的な火耐性に加え、強固な守備に強大な力。その姿たるや本物の一誠と見間違えするほど。

 

だが、この力は今の耀には分不相応であり現界できる時間は持って十秒。その後は意識を失う事は必然的である。

 

その事は説明されるより自分が一番よく理解しており、高速で消えていく身体の力を認識しながら瞬間的に移動する。

 

『消えぁッ』

 

予備動作と移動がほぼ同時になり、予備動作を見て回避しようとしたグライアは突然目の前に現れた耀に驚愕しながら、渾身の右足で蹴り飛ばされる。

 

少し前までの蚊程度の蹴りは今では自分の蹴り以上の威力になり、四つの足で必死に踏ん張るも一気に壁まで押し切られる。

 

『燃え尽きろォォ!!』

 

背中が壁にあり逆に言えば背後を取られる心配が無くなったので、広範囲に火炎を撒き散らす。

 

瞬時に放ったそれがダメージ一つ与えられないなど百も承知、本当の目的は熱の歪みなどから姿が視認できない速度で移動する少女を感知するためだ。

 

感知すれば自身の鋭利な爪で引き裂くことができる。そう確信していた。

 

目には目を、歯には歯を、龍には龍を。日本にはそのようなことわざがあるが、これは対等でなければ意味を成さない。

 

赤ちゃんが青年と喧嘩して傷つけることができるか?

子ライオンが大人ライオンに勝るか?

 

無理なのだ。なにせ同じ土俵にする上がれていないから。それは今の戦闘にも言える事だ。

 

感知できれば引き裂けるそんな自信があったグライアは勘違いをしていた。近接戦をしかけてくると、いや近接戦しか無いのだと。

 

思い込みに近いその選択は大きな失敗だった。

 

「はぁぁぁぁああああ!!」

 

耀は少し離れた位置で腰を落とし、身体の前に小さな炎の圧縮体を作る。爆炎とした時の威力の数倍の力が圧縮されたそれは、広範囲に広がる火炎を吸収しより大きくなる。

 

サッカーボール程になったそれを右手で殴り飛ばす。

 

奇跡的なバランスで保っていた球体は一気に崩壊し、殴られた方向とは真逆にビーム状にして全エネルギーを解放した。

 

巨体であったグライアは身体をひねり躱そうとするが、あまりにも早く到来したそれは片方の羽を焼き尽くし壁から外へと放り出した。

 

「あっ゛...ぁっ...ん......」

 

ぴったし十秒。倒すまでには至らなかったが、撃退には成功し感激する間もなく元の姿に戻り地面に倒れ込む。

 

勝った。そう心の中で喜びながら意識を失う。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

「うん、十六夜とレティシア」

「さっきぶりだな一誠」

「久しぶりだな一誠」

「だな、て背負ってんの耀か?敵は」

「いなかったな、倒したんだろうよ。だから安心して今じゃこれだ、ほらそういうのはお前の仕事だろ」

 

背負っていた耀の首根っこを掴みあげ放る。

 

円を描きながら空を舞う華奢な少女を抱きとめる。

 

か細い腕は掴めば折れそうで、小さな寝息を立てる少女はまるで眠り姫のようだ。

 

「なんだかな」

「どうかしたのか?」

「いや、何でもないぜ。それよりも、適当にここ来たから良くわからないんだけど、クリアできるのか?」

「あぁ、余裕だ。今は目的地に向かってるからな、一誠も来るだろ?」

「おう」

 

吸血鬼の古城・最短の崖へ四人は瞬く間に移動する。その間に一人の吸血鬼は声を荒らげていた。

 

「お前達は馬鹿なのか!死地に赴くような物だぞ!」

「だろうな」

「だな。けど、仲間をそう簡単に見捨てられるかよ!最後の最後までやってダメだったら諦める、なんの努力もしないで諦めるなんて性にあわねえ!」

 

何故こんなにレティシアが止めているのかは全て謎を解いたからこそであった。

 

第四勝利条件である”鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て”耀はミスリードであると切り捨て考えていなかったが、十六夜は逆にこれが大事だと考えた。

 

″革命″の綴りは″revolution″であり、もう一つの意味として公転がある。

 

そうすると第四勝利条件の意味合いは変化し”公転の主導者である、巨龍の心臓を撃て”となる。

 

では撃てばいいと考えるが龍の鱗は硬く十六夜ですら苦戦する。さらにゲームを完全クリアしなければ、レティシアは死んでしまう。

 

そんな中第三勝利条件を満たした十六夜によって、ギフトゲーム終了の契約書類が配られその報酬としてロスタイム十二分が発生し、残り十二分以内に無力化しなければいけなくなった。

 

一誠は改めて赤い鎧を着込み羽を出して飛翔すると、十六夜と一緒に空へと飛んでいく。レティシアは静止しきれなかったと、自分の不甲斐なさを悔やみながら空を見上げる。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

アンダーウッド大樹付近では空から襲来する龍を受け止めようと、巨大な真紅の鉄人形が必死に踏ん張っていた。

 

「お願いディーン、踏ん張って!もっともっと大きく!」

『DEEEEEEeeEEEN!!』

 

巨龍の頭部とほぼ同等まで大きなったディーンだが、それでも受け止めきれない。確実に重量が足らないのだ。

 

本来紙珍鉄はどんなに伸びても重量は増えない。だが、飛鳥の命令があれば十倍まで増えるのだ。なのだが所詮十倍。受け止めるにはまるで足らない。

 

どう足掻いても今のままでは受け止めることなどできない。

 

「やめろ、飛鳥!!!早くここから避難を!」

「ダメッ!だって後にはアンダーウッドがあるわ!絶対に受け止める!!ディーン!!」

 

自殺しようとする飛鳥を止めようとセラは手を掴み説得を試みるが、手を弾かれ断固として逃げようとしない。

 

お嬢様でありながら一度決めたことはテコでも変えない。それが久遠飛鳥なのだ。

 

「なぜ、そんな」

「だって巨龍がアンダーウッドを倒したら、私の友人が悲しむわ。そんな姿二度と見たくないの」

 

昔の事を思い出しながら呟く。

 

友人などいなかった飛鳥はここに来て初めて友人ができた。そして、友人の悲しむ姿がどれだけ自分も悲しくなるのか理解した。

 

だからこそもう二度とそんな姿は見ない。見たくないからこそ意地でも止めようと、死を覚悟して受け止めているのだ。

 

「分かったならば、私も同じだけの覚悟を決める」

 

もう止めるのは無理だと理解したセラは帯刀していた剣で、一族の象徴角を切り落とす。

 

とてつもない激痛に襲われ、その場で倒れ込み駆け寄ってきた飛鳥に、震える声で角を差し出す。

 

「龍角ならば、神珍鉄にもよく馴染むはずだ」

「なんでそんな無茶を」

「それは飛鳥に言いたいさ。でも、止められる、いや止めるんだろ?」

「分かった貴方の思い無駄にはしない!」

 

二〇〇年もの間鍛え上げてきた角はとてつもない霊格を誇り、吸収したディーンに絶大な力を授けた。

 

身体からは真紅の風が流れ、明らかに巨龍の進みは遅くなっていき

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「GEYYYYYYYTYYAAAAAAAaaaaaAAAA!!」

 

一人と一体の維持がぶつかり合う。

 

巨龍は最後の抵抗にディーンの右腕に噛み付く。

 

鉄が軋み右手にヒビが入る。それでもディーンは諦めず、空いていた左手でつかみあげ空へと放り投げた。

 

丁度そのタイミングでロスタイムは終わり大天幕が開かれ、巨龍は徐々にその姿を透過させていき消えていく。

 

「見つけたぜ、十三番目の太陽!!」

 

そこを狙っていた十六夜は手に光の柱を連ね、浮き彫りになった心臓を穿った。

 

巨龍の心臓からこぼれるようにもう一つの太陽が落ち、待ち構えていた一誠が太陽から庇うように抱き抱え地上へと降りていく。

 


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