問題児と一緒に変態赤龍帝も来るそうでよ?   作:暁紅

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ゲームには勝ったが勝負には負ける

ガルド達『フォレス・ガロ』の本拠地に着くが何か不気味な雰囲気が漂っていた。

 

今回ギフトゲームが行われる場所ははゲームのために創られた舞台区画ではなく、メンバー達が住んでいる住居区画だ。

 

さらにその区画一体に草木が生い茂りとても人間が生活出来るものでは無い。

 

「森?」

「虎が住むならおかしくないだろ」

「いえ、ここは普通の居住区画のはず......これは...鬼化!」

 

黒ウサギが大声を上げて驚き、ジンも何か思う所があったのかゲーム内容が書かれている『契約書類(ギアスロール)』を、貼られていた門から強引に切り取り内容を確認する。

 

ギフトゲーム名″ハンティング″

 

・プレイヤー一欄  兵藤 一誠

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

          ジン=ラッセル

 

・クリア条件 本拠地にいるガルド=ガスパーの討伐。

・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は″契約(ギアス)″によってガルド=ガスパーわ傷つけるのは不可能。

敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗をホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。″フォレス・ガロ″印

 

読み終えたジンは自分の失敗に顔が青ざめる。

読み終えたのを確認し黒ウサギは大きな声を出す。

 

「まずいのですよ!」

「うん?まずいのか?」

「かなりまずいです。これは自分の身を契約(ギアス)と言うなの絶対の盾で守っているのですよ!例え飛鳥さんのギフトで操る事も、春日部さんの力で傷をつけることも、一誠さんのデュランダルで切ることも出来ないのです」

 

これこそが白紙でギフトゲームを受けてしまったジン達の大きなミスだった。

 

今回負ければ死ぬと言っても過言ではなかったが、だからと言って命をかけるとは思っても見なかった。

 

しかし、ガルドが一誠達に勝つにはこれしかないのも事実。そこまで頭が回らなかったジンが悪いとも言える。

 

黒ウサギは肩を落として落ち込む。

 

その肩を飛鳥が叩き任せなさいと言ってギフトゲームの会場へと門を開け4人は乗り込む。

 

 

 

門を開け中に入ると自然に門が閉じ完全に退路を塞いだ。

 

会場を覆う草木は太陽の光を遮るように高くそびえ立ち、街路と思われる場所にあるレンガは植物の根によってバラバラにされ、道ではなく無くなっていた。

 

もし今不意打ちをされればこちらはなす術なくやられる事だろう。

 

その事もあってか3人は辺りに何かいないかと神経を尖らせている。

 

「ジン君そっちは?」

「今は大丈夫です...」

「大丈夫だよ。辺りには誰もいないから」

 

春日部は匂いを嗅ぎながら答える。

 

春日部のギフトは友達が多ければ多いほどその効果を上げるギフトでもある。

そのおかげで、通常の人間ではありえない身体能力を扱い、嗅覚と聴覚は十六夜よりも優れている。

 

「へぇ...犬()友達なんだな」

「うん犬()友達だよ」

 

もを強調して返すとあっそと言いながら一誠はそっぽを向き「ぼっち乙」と呟く。

 

先も説明した通り春日部の聴覚はかなり鋭敏で、どこぞな難聴系主人公とは違いバッチリと聞こえていたので、仕返しとして足を前に出して引っ掛け転ばせる。

 

地面にヘッドスライディングを華麗に決めた一誠は起き上がり、ズボンに付いた土を叩くと何事も無かったように歩き出し数歩進むと回し蹴りの要領で春日部の足のみを絡みとり転ばせる。

 

「ごめん足が滑った」

「なら仕方ないね......腕が滑った」

「腕が滑る?ありえないだろ」

 

春日部の拳を一誠は拳をぶつけることで防いでいた。

語らなくても分かる通りこの後ガルドとの戦いより先に、仲間内での戦闘が始まった。

 

飛鳥とジンはこの2人の喧嘩に関わらない方がいいと気づいたので無視をする事にする。

 

 

 

2人額から流れる汗をハンカチなどで取るとさすがに疲れたと倒れていた木に座る。

 

かなりの時間指定武具についての事を探し回ったが、何も出てこなかった。ヒントのヒの字も無い。

 

「何か意見はない?」

「残念ながら」

「ない」

「何も無いならさ、ガルドの所に行こうぜ。自分を殺せる武器なら自分の近くに置いて守るだろ」

 

一誠は今地に伏せられ右手を背後に回し捻られ身動きを完全に封じられている。

よくその状態で話せたなと思いつつ考える。

 

確かに普通に考えて唯一自分を殺せる武器をそこら辺の草むらに放置などはしない。

でも、数分唸り続け出した答えは、

 

「行きましょう。ここでうだうだ考えてても進まないわ。けどそうなると...」

「大丈夫もういる場所は分かってる」

 

春日部は森を少し抜けた先にある大きな館を指さす。

流石は春日部さんと言いながら館へと向かう。

 

ジンは1人この鬼化について考えていた。

 

今まで見てきた限りかなりの範囲が鬼化している。この範囲を鬼化できる者はそうはいないだろう。

 

ジンは1人だけ心当たりがある。

 

が、ありえないと頭を振る。彼女がそんな事するはずがないと...では誰が?知識の浅いジンは正解を出すことは叶わなかった。

 

 

 

館はやはりと言うべきなのか全体がツタに覆われ、とても生物が住めるとは思えない状況だった。

 

ツタは壁を越え屋根まで侵食し、窓ガラスは全て割られそこから中にツタが入っている。

 

館は見た相手に自分の力を見せつけるために豪華に綺麗にしている。元はここもそうだったのだろうが、今は完全に廃墟となっている。

 

扉の部分には何もなくそこから中へ侵入することが出来た。中もやはり荒れに荒れていた。

 

「春日部さんガルドは上よね」

「うんそう」

「なら一応1回この階を見ましょう」

 

飛鳥の提案を否定する者は現れず、そのまま一階部分の探索を行う。

 

探索の結果はゼロだった。いや一つだけ分かった事がある。それはここにはガルドしかいないこと。

 

普通なら自らのアジトに足を踏み入れ物色をしている敵を見逃すなどありえない行為だ。それを許していたということはこの近くにメンバーが誰1人いないのが分かる。

 

それが、ガルドの力の期待からいないのか。あるいはガルドが捕食したのか。

確証のある答えはないが今はそれよりもガルドの所へと向う事にする。

 

2階へと続く大きな階段を上り2階が近づくとジンの方を飛鳥は向く。

 

「ジン君貴方はここにいなさい」

「なっ...そんな僕にも行かせてください!絶対に足でまといには」

「違うわ。足でまといじゃないの。ジン君の力を見込んで退路を守って欲しいのよ」

 

ジンはそれも否定しようとするが、この先は何が起こるか分からない。念には念を入れ退路を守った方がいいのは明白。

 

若干不満はあるが渋々階段を下り退路を守ることにする。

 

変な物音を立てないように差し足忍び足で階段を上がると目の前に大きな扉があった。

春日部のギフトによってこの先にいるのが分かっているので、一応それ以外の部屋から探す。

 

「だめね何も無いわ」

「うんない」

「それじゃあ行くか」

 

3人は扉の前に着くと大きな扉を三人で押して開ける。

 

開けた先にいたのは昨日あったガルドではなく、完全に暴走して虎の怪物になったガルドが壁に突き刺さる白銀の十字剣を守るようにいた。

 

「GEYAAAAAAAAAA!!!」

 

虎の怒号は3人が耳を塞いでいても身体の芯まで響いてくる。

 

その怒号は下にまで聞こえていたのでジンは慌てて駆け上がってくる。

 

ジンが扉を開け部屋に入るのと虎が一誠達を敵と判断し突撃してくるのは同じタイミングだった。

 

「何がァッ」

「キャッ!」

 

飛鳥は春日部に吹き飛ばされ丁度ドアを開けたジンを押し倒した。

飛鳥が何か言う前に春日部は叫ぶ。

 

「逃げて!」

「けど」

「早く!」

 

飛鳥は自分の力の不甲斐なさを悔やみながらジンにギフトで逃げるように言い、2人は館から飛び出ていく。

 

虎の突撃を防いだ2人は虎の手を蹴り上げ距離をとる。

 

「なぁ春日部アレ」

「うん多分アレが指定武具」

「なら春日部が取れ。俺はアイツの気を引く」

 

一誠は自分の肉体能力を8倍にして前に出ると、近くにあった本を広い虎に向けて投げつける。

 

本が当たった虎は春日部の事を無視して完全に一誠に狙いを定めている。

 

「こいよ犬っころ!遊んでやる!デュランダル!」

 

虎はその口を大きく開き噛み殺そうとするが、口の中にデュランダルの刃がねじ込まれ途中で止まる。

 

一誠が虎と戯れている間に春日部は気配を消してゆっくりゆっくりと壁に突き刺さっている剣の前に行く。

 

虎の意識がこちらに向く事は無く安全に辿り着いた。

 

(良かった...後は抜くだけ......)

 

春日部は安心しきっていて剣を抜く時に集中力が切れたのか、壁に刃物があたる音が鳴る。

 

それに春日部は気づけず、虎は戦っていた一誠から視線を曲げ、音がなった方を見る。

 

剣を抜こうとしている敵を見つけ狙いを変更する。

 

「まずっ、クソったれ!!!春日部屈めぇぇ!!!」

「え?」

 

剣を抜いた瞬間何かが春日部を包み込み、顔の半分に何か生暖かい液体がかかる。

 

顔に付いた液体を空いている手で拭い見ると、手が真っ赤に染まっていた。だがこれは自分の血ではない。では、誰の?その事はすぐに分かった。

 

「怪我...ない...か......」

「一誠...」

「あぁ.....まじ最......悪だ」

 

春日部を覆いかぶさるようにして庇った一誠の血だった。

 

虎の鈎爪により背中は引き裂かれ、口からはその影響で吐血しそれが春日部の顔に付いていた。

 

「なんで」

「今は...逃げるぞ!!」

 

ほぼ限界の身体を無理に動かし、赤龍帝の篭手が展開されている左手のみを16倍にして、床に叩きつけ床を崩落させる。

 

虎は抵抗虚しく床の崩落に巻き込まれ1階に瓦礫と共に落ちる。

 

その隙に瀕死の一誠と剣を持ち窓から外に飛び出て森の方へと逃げる。

 

 

館から少し離れた場所にある森に着くと、木にもたれかかるように一誠を下ろすと、自分が羽織っていた衣類を脱ぎ血が流れている場所に当て簡素な止血を行う。

 

「なんで...なんで庇ったの...嫌いなんじゃないの...」

「...知らね...身体が...勝......手に動い...てた...」

 

一誠の顔から血の気がだんだん引いていく。

 

もしあの時一誠が庇わなくても、今の一誠ほど傷つく可能性は低かった。

一誠はあの時身体中に回していた力を全て脚力に回したせいで、肉体の防御が素に戻り肉体は引き裂かれた。

 

春日部には肉体を強化する手が無い訳では無い。が、それはもしも(if)の話だ。

 

それに例えその事を知っていたとしても一誠が庇わなかったか?と言われればNOと答えるだろう。それが兵藤一誠と言う男だ。

 

「待っててすぐに倒してくる」

「それ...なら...コレを...」

 

一誠はドライグに教えて貰ったもう一つの力を使う。

 

赤龍帝の篭手の基本能力は倍加だ。

他にも後2つ程あるがその一つは使えず、これから使う力に関しては昨日の夜に目覚めたばかりだ。

 

『Boost』と5回なりると次に『Transfer』となり、春日部の背中を叩いて力を倍加させる。

 

これこそがもう一つの能力。譲渡。

赤龍帝は過去にも多く存在し、中にはこの力だけで成り上がった者もいる。

 

自分の上昇した力を確かめるように手を開閉すると、最後に力強く拳を握る。

 

「ありがと」

「頑張...れよ......春日部...」

「耀でいいよ一誠」

「ハハッ...了解...耀...がん...ば......」

 

一誠は言葉を言い終わる前に意識を完全に失う。

 

早く勝って一誠を助けると誓った春日部はこの一帯を全力の力を使って知覚する。

 

 

 

一誠の倍加は1回の『Boost』で2倍、2回以降は2倍の2乗となっていく。

なので譲渡された力は2倍×2倍×2倍×2倍×2倍となって32倍となる。

 

その力を手に入れた春日部はこの『フォレス・ガロ』の本拠地の広さ・障害物・どこに誰がいるのか。その全てが手に取るように分かっていた。

 

「凄い...こんなの始めて」

 

春日部自身ですらその情報量の多さに頭が爆発しそうだが、それでも身を挺して守ってくれた一誠を早く助けるために気合いで動いていた。

 

今春日部はガルドがいる場所に向かっている。現在ガルドは飛鳥達を襲っていて、早く向かわねば2人も危うい。

 

春日部は足場にしていた木を踏み壊して加速する。

 

 

 

「ジン君!逃げなさい!」

「GEYAAAAAA!!」

 

飛鳥は何故かここにいるガルドから頑張って逃げていた。

 

春日部達との合流を前にガルドと合流するとは思ってもみなかった。

 

 

今はジンにギフトをかけどうにか躱してはいるものも、そう長く持つとは思えなかった。

 

(十六夜君や春日部さん。一誠君のように肉体が強ければ...)

 

飛鳥のギフトは4人の中で1人だけ己の力で戦える物ではない。

他者を従わざる。一見強そに思える力だが、これは絶対の力ではない。暴走状態のガルドにはそのギフトが効く気配がない。

 

「植物よ!拘束しなさい!!」

 

鬼化した植物達はガルドの足を枝で手足を捕縛し動きを一瞬だけ止める。

けれどそれは一瞬で強引にその拘束を引きちぎってまた攻撃を始める。

 

黒ウサギに教えて貰った自分のギフトの新たな可能性で植物を操っているが、それは未だに付け焼き刃のようなものでしか無くまだまだ爪が甘い。

 

最悪このままでは負けるかもしれない。

 

少しだけ諦めを考えた時身体の半分を血で染めた春日部が上空から剣を振りかぶって落下してくる。

 

虎は咄嗟に後ろに飛ぶが気づくのが遅く、白銀の十字剣によって前足に傷がつく。

 

「春日部さん!!!血が」

「大丈夫。これ私の血じゃない」

「へ?そうなの?」

「うん」

 

春日部は怯んだ虎に追撃をかけるために木に飛びつき、その木も破壊して加速する。

 

その速度は凄まじく、十六夜の第三宇宙速度には届かないが、第二宇宙速度はでており、ガルドは何が起きているのか理解が出来ていない。

 

ガルドの周りを円状に回り、徐々にその円を小さくして近づく。

 

どうにか攻撃を当てようと適当に爪を引き下ろすが、誰にも当たらず空を切る。

 

「これで終わり」

 

その言葉が耳に届いた頃には胸を剣が貫き春日部達の勝利が決まった。

 

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