魔法科高校の鋼の錬金術師   作:Gussan0

28 / 62
どうも(゜▽゜*)

続き書けたで候。

今回はあの人達の登場。

少し修正しました。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第二十八話 進化した人間

廃工場にて行われていた、ブランシュのリーダー、司一とエド等との激闘が決着したその様子を、屋根の上から俯瞰(ふかん)していた三つの影があった。

 

 

「あ~あ、やられちゃったよ。分かってはいたけど、あっけないもんだね~……」

 

 

「借り物の力に溺れて調子にのってあの醜態……無様で見苦しいことこの上ないわね」

 

 

「無様!無様!」

 

 

小柄な体格をした長髪の男の言葉に、隣の女性が同意するように侮蔑を口にする。

 

もう一人の大柄な男は、女性の言葉を繰り返していた。

 

 

「それで、どーすんのさ?石はまだ残ったままだし、あいつもまだ生きてるし。色々と吐かれたら厄介なんじゃないの?」

 

 

「そうねぇ……本当なら、リバウンドで回りも巻き込んで自爆してもらう筈だったのに、鋼の坊やも中々やるわね」

 

 

予想より早く決着させたエドの実力を賞賛する女性。

 

或いは、噛ませ犬にした男の方が甚だ力不足だっただけかもしれないが。

 

 

「それで、これからだけど……あの男は当然、消すべきね」

 

 

「……食べて、いいの?」

 

 

「髪の毛一本残らず、お願いね」

 

 

女性が呟いた「消すべき」という言葉に対し、自分の出番かと尋ねた大柄な男。

 

対する女性は笑顔でそれを肯定した。

 

その返答を聞くや、大柄な男はニタァ、と涎を垂らしながら笑うと、屋上を飛び出すのだった。

 

 

「石の方は私達で処理するしかなさそうね」

 

 

「面倒くさいな~、本当に。全く、役に立たないどころか足引っ張りやがって……」

 

 

残された小柄な男は悪態を吐きながらも女性の後を追ってその場を後にするのだった……。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

ゾクッ

 

 

 

突如、何か言い知れぬ悪寒を感じたエドは身体をビクリと震わせる。

 

そして勢いよく振り返る。

 

だが振り返った先には、月に照らされる町しか映っていなかった。

 

 

(なんだ今の気配は?)

 

 

エドは周りを見渡す。

 

十文字家から派遣された黒服達が忙しなく動いていた。

 

 

(まるで一つの器に無数の塊を入れたかのような、気持ちわりぃ気配だ。それにしてもこの気配どこかで……)

 

 

「お兄様!」

 

 

そのとき深雪の声が響く。

 

どうやら達也が廃工場から出てきたらしい。

 

達也にいち早く気付いた深雪は小走りで近付いていく。

 

 

「ご苦労様です。調べ物はもうよいのですか?」

 

 

「ああ。もう済んだよ」

 

 

さっそくイチャイチャオーラを醸し出す司波兄妹であったが、そこに十文字が近付いていく。

 

なかなかの勇者である。

側には桐原の姿もあった。

 

 

「司波」

 

 

「十文字会頭、桐原先輩もお疲れ様です」

 

 

「うむ」

 

 

「おう」

 

 

十文字はエド達にも声をかける。

 

 

「皆も集まってくれ」

 

 

エド達も集まった。

 

 

「今日は皆、ご苦労だった。お前達のおかげでブランシュの件はなんとかなりそうだ。後日、警察から事情聴取があると思うが、あまり時間を取られることはないだろう」

 

 

「あの、十文字会頭」

 

 

そのときエドが質問する。

 

 

「どうしたエルリック?」

 

 

「あの眼鏡野郎、司一に面会することは可能ですか?」

 

 

「今すぐという訳にはいかんが、警察の取り調べが済めば可能だろう。だが数週間はかかると思った方がいい」

 

 

「そう……ですか」

 

 

「他にはあるか?なければ……今日はもう遅い。近くまで家の者に送らせよう」

 

 

数分後、十文字の手配した車が到着する。

 

エド達は順番に乗り込んでいく。

 

十文字はまだ残って後始末の作業をするようだった。

 

エドとしては同じく残って調べたかったのだが、問答無用で帰らされたのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

司一の乗せた護送車が警察署へと向かっていた。

 

幹部ということもあって乗っているのは彼一人だけである。

 

その手には手錠がされており、さらには地面に鎖でしっかりと固定されていた。

 

護送車の中に窓はなく、薄暗い雰囲気を醸し出している。

 

ずっと中にいれば、憂鬱になっていること間違いないだろう。

 

それだけで司一がいかに厳重な警備で護送されているのかがよく分かる。

 

 

「くそおおぉぉ。この私をこんなものに閉じ込めやがってえぇ。エリクシルさえあればこんな手錠簡単に外せるのにいいぃぃぃぃ」

 

 

司一は鎖をガチャガチャと揺らすが当然そんなことで外れる筈がない。

 

そのとき……

 

 

 

 

 

 

ドガァアアアアアアアンン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

護送車は突如横転した。

 

 

「ぎゃあぁぁ!?」

 

 

当然中にいる司一も影響を受ける。

 

だがシートベルトをしていたおかげで大きな怪我はなかった。

 

すると……

 

 

「「うぎゃあああああ!?」」

 

 

外から男性二人の悲鳴と、何かを食べる咀嚼音(そしゃくおん)のような音が聞こえてきた。

 

 

「な、なんなんだ……なんなんだよ一体いぃ……」

 

 

司一は身体を震わせる。

 

 

「におうよ……におうよ……ブランシュのリーダーのにおい、ここからにおうよ」

 

 

そして護送車の扉を破壊しながら、中を伺う禿()げ頭の太った小男の姿があった。

 

司一はその小男に見覚えがあった。

 

賢者の石エリクシルを受け取ったときに一緒にいた一味の一人である。

 

 

「き、君はあのときの!そ、そうか!私を助けに来てくれたのか!?そうだ!そうに決まってる!!」

 

 

「お前……今、動けない?」

 

 

「ああ、動けないんだ!だからこれを外してくれ!!」

 

 

「良かった、好都合。ラストに言われた。お前の口封じ」

 

 

「な、何を言ってるんだ?」

 

 

「お前もういらない、用済み。だから……食べていい?」

 

 

「じょ、冗談だろ?」

 

 

小男はゆっくりと近付いていく。

 

 

「ひぃ!?来るな!来るなぁぁぁぁ!!!!」

 

 

そしてニタリと笑いながら言った。

 

 

「いただきます」

 

 

警察が駆けつけたときには不自然に残る血痕だけが見つかったという……。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

第一高校の生徒とブランシュの激突が起こったその日の夜。

 

事件を解決に導いた立役者の一人である達也の姿は、都内のとある建物の中にあった。

 

ここは、都内にある警察庁管理下の建物の一つである。

 

それも、ただの建物ではない。

 

魔法に関わる事件が発生した際に、その証拠物件を保管するために利用される特殊施設である。

 

 

(保管室は……ここか)

 

 

この建物は、当然のことながら一般の人間が出入りすることができる場所ではない。

 

このような真夜中ならば、猶更である。

 

しかし達也は、自身があらゆる方面に持つコネクションを駆使して、そんな無理を押し通してこの場所を訪れていた。

 

目的は、今日この保管室へ収容されたばかりの、ブランシュのリーダー、司一の所持品である。

 

 

「……あった。これか」

 

 

秘密裏に施設を訪れている関係上、電灯は使えず、暗闇の中を探す羽目になっていたが、目的のものは、すぐに見つかった。

 

達也が手に取ったのは、赤い石が嵌め込まれた指輪……司一が賢者の石、エリクシルと呼んだ魔法術式増幅装置である。

 

 

「エリクシル……魔法の術式増幅効果に留まらず、なにもないところから物質を創造し、あらゆる事象改変も可能な物質。だがそんな反則級の力が行使できるものになんのリスクもないはずがない」

 

 

達也はエリクシルを精霊の目(エレメンタル·サイト)で観察する。

 

 

(これは……)

 

 

エリクシルの正体を自身の魔法によって確認した達也の目が、驚愕に見開かれる。

 

 

「何て量の霊子(プシオン)だ……」

 

 

エドの出身世界では賢者の石は人間の魂を抽出して赤い結晶と化したものである。

 

それを現代魔法風に言えば、エリクシルの正体は多量の霊子(プシオン)を結晶化させた塊であった。

 

霊子が持つ情報量は、同じ情報素子である想子(サイオン)の比ではない量であり、それ故に桁外れの事象干渉力を持っているのである。

 

 

「だがこれは不完全だな。まるで無理矢理詰め込まれたかのように、強引にエネルギーの循環がされている。これではいつ壊れてもおかしくない」

 

 

達也の推測は間違ってはいない。

 

かつて赤い指輪を使用していたリオールのコーネロも錬成のし過ぎで、リバウンドを起こしているのだ。

 

司一もこのまま使い続けていればコーネロと同じ末路を辿っていたであろう。

 

 

「それにこんなものが出回れば、たちまち社会は混乱する。魔法師でない者でも簡単に魔法が使用できるようになる。酷ければ……いつ戦争が起こってもおかしくない」

 

 

今は戦略級魔法師の存在があるため世界は膠着状態にある。

 

だがエリクシルが世に出回ってしまえば、その膠着状態は壊され、世界は争いの渦中へと陥るだろう。

 

 

 

 

 

 

ザッ…………

 

 

 

 

 

 

そのとき一つの足音が響く。

 

 

「誰だ」

 

 

達也は瞬時に足音のした方へとCADを向ける。

 

そこにいたのは……

 

 

「お兄様」

 

 

家に残してきた筈の深雪であった。

 

 

「……深雪?どうしてここにいるんだ?」

 

 

「申し訳ございません……お兄様のことが、心配になってしまって……こっそりと跡を付けて参りました」

 

 

顔を俯かせ、心の底から申し訳なさそうな顔をする深雪。

 

確かにこのような時間に家を出ると言った時、深雪からはかなり心配されていたが。

 

兄を困らせてしまったことに対する罪悪感を抱いている妹の姿を見た達也は、自身の頭を掻きながら口を開く。

 

 

「そうか……心配をかけてしまったか。それは、悪かったな」

 

 

そして次の瞬間―――――

 

 

 

 

 

 

達也は、深雪に向かって魔法を行使した。

 

 

 

 

 

 

深雪の足元に魔法が炸裂するのと、深雪がそれに反応して跳び退いたのは、ほぼ同時だった。

 

達也の魔法は空振りに終わり、深雪の服の裾を僅かに霧散させるのみとなった。

 

 

「お前は誰だ?」

 

 

達也は油断なくCADを構え、厳しい視線を深雪へと向ける。

 

すると、それに対して目の前の深雪の姿をした何者かは、下品に笑う。

 

いつも上品に笑う深雪とは天と地ほどの差だ。

 

 

「へえぇ。流石はお父様とお母様の言っていた兄妹の片割れ。この嫉妬(エンヴィー)の変身能力をあっさり見破るとは……やるねぇ」

 

 

そのとき深雪擬きは別の人間へと変身する。

 

黒髪で中性的な容姿。

 

黒いシャツに黒い半ズボンに裸足と、実に個性的な格好をしている少年であった。

 

だがその身に纏う雰囲気はただ者ではないことを物語っていた。

 

 

(別人に変身しただと?変身魔法は現代魔法では実現不可能な筈。それをこともあろうかあっさりと……一体何者だ?)

 

 

「エンヴィーといったか。一体何が目的で俺に近付いた?そして、どうやってこの場所へ侵入した?」

 

 

「別に~。ただあのブランシュの役立たずが遺してくれた面倒事の後始末ってのもあるけど、あんたに近付いたのは完全な興味本位だよ」

 

 

「なに?」

 

 

達也はエンヴィーと話しながら目の前の相手の分析を行っていた。

 

 

(奴が着地した床がかなり陥没している。華奢な見た目に反してかなりの体重がある。恐らく数百キロはくだらない筈。だとすれば、今のこいつの姿は本当の姿ではない)

 

 

「それと忠告だけど……油断してると足元すくわれるよ?」

 

 

 

 

 

 

ビュオッ!!

 

 

 

 

 

 

そのとき達也の背後から風切り音が聞こえる。

 

それを感知した達也は咄嗟に身を翻す。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

棚と棚に挟まれた狭いスペースだったため、完全な回避はできなかった。

 

達也の左手は鋭利で細長い何かに刺し貫かれていた。

 

薄暗い部屋の中から伸びてきた何かを辿り、部屋の奥を見る達也。

 

そこには一人の女性がいた。

 

そして、達也を刺し貫いた何かは、その女性の指だったのだ。

 

伸ばされた指は人差し指と中指の二本。

 

人差し指は達也の左腕、中指は達也の手から零れ落ちたエリクシルの指輪を捕らえていた。

 

 

「てっきりデスクワーク派かと思ったら意外とやるのね、坊や」

 

 

「援護が遅いよ。色欲(ラスト)のおばはん」

 

 

「おだまりエンヴィー。貴方がモタモタしているのがいけないのでしょう」

 

 

女性はウェーブの黒髪、完璧なプロポーション、胸元にウロボロスの紋章があるセクシーな美女であった。

 

達也はラストを観察する。

 

 

(この薄暗い闇の中で、俺の左腕と、落としたエリクシルを同時に狙う、尋常ではない正確性……それにこの指……生半可な強度ではないな)

 

 

ラストとエンヴィー。

 

この二人から感じる雰囲気は、尋常ではないほどの重圧感があった。

 

このとき達也は気付いていないが、彼の頬から冷や汗が流れる程に無意識に緊張していた。

 

 

「さて、目当てのものは回収できたけど……こっちの例の兄妹の片割れはどうする?殺っちゃう?」

 

 

「バカ言いなさい。そんなことしたらお父様とお母様にどやされるじゃない。目的はもう済んだし帰るわよ」

 

 

「へーい。つまんねぇの」

 

 

二人はなんでもないかのように会話を続ける。

 

達也はそんな二人を見ながら思考する。

 

 

(こいつらは一体何者だ?会話から推察するに俺と深雪のことを知っているようだが……)

 

 

そのときラストが達也の方を向く。

 

 

「忠告しといてあげるわ坊や。平穏な日々を過ごしたいなら……今日ここであったことは全て忘れることね。行くわよエンヴィー」

 

 

「へいへい」

 

 

ラストが伸長させていた指を戻す。

 

達也の左腕から鋭利な槍と化した人差し指は引き抜かれ、エリクシルの指輪はラストの手中に収まった。

 

そして二人は証拠物品保管室から出ていこうとする。

 

エンヴィーは建物の廊下に通じる扉、ラストは部屋の奥にある窓からである。

 

 

「待て。お前達は一体何者なんだ?」

 

 

達也の質問にラストは一言だけ答えた。

 

 

「進化した人間……とだけ言っておこうかしら」

 

 

そして二人は姿を消した。

 

深追いは禁物と判断した達也も、その後を追うことはしなかった。

 

後日、ブランシュのリーダーが所持していた重要な証拠物品が消えたことで、警察組織はパニックになるのだが、秘密裏に侵入して証拠を一切残していなかった達也は勿論、ラストとエンヴィーがこの部屋を訪れていたという事実が表に出ることはなかった。

 




さらば司一。

次回、後日談ですはい。

そしていよいよ九校戦へと続くっていう。

では、また(・∀・)ノ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。