魔法科高校の鋼の錬金術師   作:Gussan0

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どうも|ω・`)ノ ヤァ

続き書けたで候。

お久しぶりです。

やっと書けた。

では、どうぞ( ゚д゚ )クワッ!!


第六十三話 ジェネレーター

達也が一高の天幕に戻ると、深雪が一目散に駆け寄ってきた。

 

 

「お兄様!」

 

 

「すまんな、心配掛けて……もう事情は聞いたのか?」

 

 

達也が周りを見回すと、天幕内にいる他の生徒達は気まずげに視線を逸らす。

 

 

(大会本部での騒ぎが伝わっているようだな……)

 

 

「いいえ……ですが、お兄様は私のために怒って下さったのでしょう?お兄様が本気でお怒りになるのはいつも……私のためですから……」

 

 

深雪は少し落ち込んでいた。

 

達也が感情をあらわにするのはいつも深雪のためであるからだ。

 

だが、当の達也はというと気にした素振りは見せずに深雪の頬に優しく触れる。

 

 

「……そうだな。俺はお前のためだけに怒る事が出来る。でもね深雪、兄貴が妹の事で怒るのは『当たり前』だ。これは俺の心に残された唯一の『当たり前』なんだ。だからお前は哀しまなくていい。それにせっかく綺麗にメイクしたのに涙で汚してしまってはもったいないよ?今日は晴れ舞台なんだから」

 

 

「もう、お兄様ったら……」

 

 

深雪は励ましてくれた気持ちが嬉しいのか、クスリと笑った。

 

 

「あら、達也君」

 

 

そこへ騒ぎを聞きつけたのか、真由美とあずさがやって来た。

 

 

「大会本部からの連絡で何事かと思ったけど……とってもシスコンなお兄さんが大事な妹の事で怒り狂っただけだったのね」

 

 

真由美の一言で天幕内がホッコリした雰囲気に包まれる。

 

皆の視線が『なんだ。いつものシスコンか』と物語っていた。

 

 

(さっさと作業室に戻ろう……)

 

 

天幕に居づらくなった達也はそそくさと退散するのであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

九校戦九日目、本戦一日目のミラージ・バットの予選第二試合に深雪が出場する。

 

深雪が試合フィールドに姿を現すと、観客のボルテージがみるみる上がっていく。

 

体のラインが丸見えでありながらも、微塵も嫌らしさを感じられない神秘的なその姿に、観客席の青少年は揃って見惚れている。

 

その後、試合開始のブザーが鳴ると、光球が空中に現れ、選手達が一斉にそこへと向かって飛び立っていく。

 

深雪は美しく無駄のない跳躍で圧倒的な魔法力を見せる一方、負けじと第三高校の水尾も巧みに深雪のコースをブロックしつつ跳躍特化魔法で確実に点数を重ねていた。

 

第一ピリオドを終えると、深雪が若干のリードを許す結果になった。

 

 

「深雪がリードされてる……」

 

 

「あの選手、渡辺先輩と並んで優勝候補に挙げられていた人だよ」

 

 

あの深雪がリードを許したことに驚くほのかと雫。

 

続けて行われた第二ピリオドでは、深雪が逆転してトップに立つが、二位の水尾とはほんの僅かしかポイント差がない。

 

深雪もまだ余力は残しているものの、相手もそれは同じようで、第二ピリオドはペースを調整していた様にも見受けられる。

 

限定された状況下とはいえ、まさか高校生レベルで深雪と張り合える魔法師が存在しているとは思っていなかった達也は、相手が他校の選手であるとはいえ、素直に賞賛していた。

 

 

「この国も狭いようで広い」

 

 

「お兄様」

 

 

その時、深雪が達也の服の袖を掴む。

 

 

「アレを使わせていただけませんか?」

 

 

深雪は真剣な表情で達也を見る。

 

達也は深雪の瞳の奥にある熱い想いを感じ取る。

 

 

(『負けたくない』という強い意志。綺麗な可愛いだけの『お人形さん』ではない。俺の一番好きな深雪の表情)

 

 

「いいよ。全てはお前の望むがままに」

 

 

「はい……!」

 

 

深雪は試合に勝つべく秘密兵器を使う事を決意した。

 

インターバルが終わり、各選手が出てくると、雫がある事に気付く。

 

 

「深雪のCADが変わってる……?」

 

 

「そう……深雪、早くもアレを使うのね」

 

 

「アレ?」

 

 

雫がほのかに顔を向けると、ほのかは羨ましそうな、または妬ましそうな複雑な表情で深雪のCADに視線を向けていた。

 

 

「達也さんが深雪の為だけに準備した秘策。ここにいる人、全員驚くわよ……」

 

 

そして第三ピリオドの開始の合図と共に、各選手が跳躍をはじめ、光球を目掛けて移動する。

 

先行した深雪の行く手を水尾が阻もうとするが、深雪は飛翔速度を上げる事でこれを回避して光球を打ち消した後、身体を反転させて空中で静止する。

 

そこから一度足場に着地し、次の光球を取るために構えるのがミラージ・バットのセオリーであるが、空中で一旦静止した深雪は空のステージを優雅に滑走して次のターゲットを打ち消して行く。

 

観客や選手、スタッフに大会関係者も、それを見て絶句した。

 

 

「おいあれ」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「まさか……」

 

 

「空中に浮かんでる……飛行魔法だ!」

 

 

驚き声を上げている観客達には目もくれず、深雪は更にポイントを重ねていく。

 

十メートルの高度を移動しなければならない他の選手と、水平に移動するだけでいい深雪とでは全く勝負にならなかった。

 

 

(ダメだ!私の跳躍では届かない!)

 

 

それは接戦を繰り広げていた水尾も例外ではない。

 

深雪が次々と光球を打ち消していく姿に水尾は焦る。

 

 

(だけどこのままやられるわけには……!このあとの愛梨のためにも私は……!)

 

 

少しでも点を稼ごうと最後の光球に向けて跳躍するが、それもむなしく深雪に打ち消されると同時に試合終了のブザーが鳴る。

 

ミラージ・バットの予選第二試合は、深雪の圧倒的勝利に終わった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

横浜中華街、とあるビルの最上階のとある一室では、葬式か何かと思うほどに沈痛な暗い雰囲気に包まれていた。

 

 

「十七号から連絡があった。第二試合のターゲットが予選を通過した」

 

 

「……電子金蚕(でんしきんさん)を見抜く相手だ。順当な結果なのだろうが……まずいな」

 

 

「それだけではない。ターゲットは飛行魔法を使ったらしい」

 

 

「バカな!?」

 

 

「これで力を使い果たしてくれたのなら万々歳だが……虫が良すぎるか」

 

 

テーブルに着く五人の男は議論を続けるものの、いつまでも良い案は出ず、その表情は次第に追い詰められていく。

 

五人の男の内の一人が、チラリと視線を外す。

 

壁一面の防弾ガラスの窓の前に二人、出入口であるドアの前に二人、左右の壁にそれぞれ二人ずつ、がっしりした体つきでサングラスを掛けた若い男達が身じろぎひとつせずに直立していた。

 

彼らはジェネレーターと呼ばれる生体兵器である。

 

ジェネレーターとは、戦闘中に安定して魔法を行使できるよう仕上げられた魔法師である。

 

脳外科手術と薬により意思と感情を奪い去り、思考活動を特定方向に統制することによって、魔法発動を妨げる様々な精神作用が起こらないように調整された魔法師であり、基本的に魔法を発生させる道具として扱われる為、魔法発生器(ジェネレーター)と呼ばれる。

 

彼らは男達の護衛であると同時に、この部屋全体を包み込むように掛けられた障壁魔法を維持する役割も担っている。

 

そんな彼らの姿に、男の表情が引き攣る。

 

 

「もはや手段を選んでいる場合ではないと思うが、どうだろうか?」

 

 

「賛成だ。百人ほど死ねば十分だろう。大会自体が中止になる」

 

 

「中止になれば払い戻しは当初の賭け金のみだ。損失ゼロとはいかないが、まだ許容範囲内だ」

 

 

「客が騒がないか?同業者はともかく、兵器ブローカー共は厄介だぞ。アイツらは諸国政府と太いパイプを持っているからな」

 

 

「客に対する言い訳は何とでもなる。今、我々が懸念すべきは、死の商人よりも組織の制裁だ」

 

 

「そうだな……実行は十七号だけで大丈夫か?」

 

 

「多少腕が立つ程度ならば、『ジェネレーター』の敵ではない。残念ながら武器は持ち込めなかったが、十七号は高速型だ。リミッターを外して暴れさせれば、百や二百、素手で(ほふ)れる」

 

 

「異論はないな……?では、リミッターを解除する」

 

 

男達が一斉に頷く。

 

無頭竜(ノーヘッドドラゴン)のメンバー達は、会場にいるジェネレーターが自分達の思い描く結果をもたらしてくれると半ば確信していた。

 

しかし、彼らの計画は無駄に終わる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

エドは途方に暮れていた。

 

 

「や、やべぇ……完全に寝坊しちまった」

 

 

深雪が出場する試合を寝過ごしてしまったのだ。

 

急いで会場に来たは良いものの、試合は丁度終わってしまったらしい。

 

九島烈(くどうれつ)とのやり取りからずっと今朝方まで考え事をしていたので、それも仕方のないことと言えるが。

 

 

「ほのかと雫の奴にバレたら絶対にグチグチ言われるに決まってる……。下手したら深雪の奴も一緒になって言ってくるかもしれねぇ……。まあ、あいつがそう簡単に負けるタマじゃねぇのは分かってるけどよ」

 

 

そのとき、会場内が騒がしいことに気付く。

 

実況の声で深雪がトップになった事を知る。

 

 

「さすがは完全無欠の氷の女王様ってか?」

 

 

直後、エドはある違和感に気付く。

 

 

「なんだ?この妙にソワソワする感じ……」

 

 

周りを見渡すが特に変わった様子は見られない。

 

しかし、()()()()()()がエドを襲う。

 

 

「まさか……」

 

 

彼は意識を集中させると、水晶の眼(クリスタル・サイト)を発動させる。

 

するとエドの周りには霊子(プシオン)の塊、精霊が漂っていた。

 

 

「精霊が騒がしい?」

 

 

精霊はエドに伝えたいことがあるのか、()()()()()()()()()()

 

 

「あの男がどうしたってんだ?……って、野郎!?」

 

 

ヘッド・マウント・ディスプレイ、HMDを外した無表情、いや無表情というより表情が欠落している思われる無機質な表情をした男がいた。

 

男、『ジェネレーター』十七号の身体がびくっと震えると、一瞬で自己加速魔法が発動される。

 

そしてすれ違った一人の男性客の首を切断するために、男性客の首目掛けて手刀を放とうとしたとき……

 

 

 

ガキンッ!!!!!!

 

 

 

突如、甲高い音が響き渡る。

 

十七号の一撃を同じく加速魔法を発動させていたエドが間に割り込んで機械鎧(オートメイル)で受け止めたのだ。

 

 

「テメェ……今、何しようとしやがった!?」

 

 

エドが怒りの表情で十七号を睨みつける。

 

しかし十七号は気にすることなく、目の前のエドに『観客』の殺戮対象として襲いかかろうとする。

 

 

「ちっ!?」

 

 

咄嗟にエドは十七号を弾き飛ばす。

 

十七号は会場外に吹き飛び、エドもその後を追う……前に男性客へと声をかけた。

 

 

「おいアンタ!今すぐ警備スタッフを呼んできてくれ!!」

 

 

「それは構わないんだが……君は一体どうするつもりだ?」

 

 

「決まってんだろ!あの野郎をぶっ飛ばす!!」

 

 

そしてエドもスタンドのフェンスを跳び越えて場外へと出る。

 

 

「それじゃあ、頼んだぜ!!」

 

 

直後、錬金術を発動させて三高のアルフォンスが使っていた土遁・土道(どこう)のように道を錬成すると、スケートの要領で滑り降りていく。

 

上手く着地すると、十七号の姿を捉える。

 

 

「あの高さから落ちて無事か。やるじゃねえか」

 

 

およそ20mの高さから落ちるとなると、普通は恐怖心で身体を動かせなくなるものだが、ジェネレーターはそのような感情は持ち合わせていない。

 

素早く猫みたいに四足で衝撃を受け流しながら着地していたのだ。

 

 

「命令ヲ実行スル!」

 

 

十七号は足に力をいれると、バネのように再びエドに襲いかかった。

 

 

「っと!中々速ぇな!!」

 

 

しかし、エドはそんな十七号の攻撃を見事に(さば)いていく。

 

エドの戦闘経験は伊達ではない。

 

彼は前世でも数々の強敵達と戦ってきた。

 

中には怪物染みた相手もいた程だ。

 

そんなエドからすれば、いかにジェネレーター、強化人間と言えど相手ではない。

 

 

「おらっ!!」

 

 

エドは十七号の攻撃に合わせてカウンターを放つ。

 

だが、十七号も冷静にエドの攻撃を見極める。

 

タイミングよくガードすると同時に後ろへと跳んだのだ。

 

 

(この無表情野郎……機械みてぇに正確無比な動きをしやがる。加えて魔法の発動スピードも尋常じゃねぇ速さだ)

 

 

エドは十七号の動きを分析しながら思考する。

 

 

(気持ちわりぃくらいに全く隙がねぇな。普通の魔法や錬金術じゃ、加速魔法でかわされるのがオチだ)

 

 

「……なら、丁度いいか。わりぃがオレ様の新魔法の実験台になってもらうぜ」

 

 

エドは自身の右手に一瞬顔を向けた後、十七号を見ながら不敵に笑う。

 

 

「いくぜ!!」

 

 

そして両手を合わせて錬金術を発動させると()()()、右腕の機械鎧(オートメイル)型CADを()()()()()

 

すると、エドの周りにある空気が圧縮されると()()()()()()()()()()

 

 

「疑似・エアバレットだ!!」

 

 

十七号は反応仕切れず、疑似・エアバレットが直撃する。

 

エドは続けて手合わせ錬成を行うと()()()()()()()()()()()()()()()

 

今度は空気中の二酸化炭素を集め、ドライアイスを作ると、()()()()()()()()()

 

 

「疑似・ドライブリザード!!」

 

 

態勢を立て直した十七号であったが、疑似・ドライブリザードをかわしきれずに直撃する。

 

 

(上手くいった!!)

 

 

エドが行ったことは極めて単純……錬金術を発動させると同時に魔法を発動したのだ。

 

 

(名付けるなら、『瞬時錬成(インスタントアルケミー)』ってとこか!!)

 

 

瞬時錬成(インスタントアルケミー)

 

『錬金術』の発動と同時に、系統魔法の『振動』、『収束』、『発散』、『吸収』、『放出』の魔法の内の、錬成反応に合わせたいずれか一種、又は複数種を同時発動することで、分子の流動性や化学反応を活性化させることにより、錬成速度を上げる魔法である。

 

発動する錬成反応にもよるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

単純な錬成反応ほど速度は増す傾向にあり、単一の錬成反応のみならば、文字通り一瞬でできてしまう。

 

パラレル・キャストに分類される魔法であるが、『錬金術』が系統魔法の発動に干渉しない性質故に発動が可能となっている。

 

単純に錬成速度を上げるだけのものであり、学術的価値は低いものの、戦闘能力向上の効果は非常に大きい。

 

つまり、十七号はエドの魔法に反応仕切れずに食らってしまうのだ。

 

 

「そらよっ!こいつでしまいだっ!!」

 

 

エドは疑似・這い寄る雷蛇(スリザリン・サンダース)を発動させる。

 

仰向けに倒れた十七号に強力な電撃が炸裂すると、そのまま気絶してしまった。

 

 

「ふぅ……なんとかなったか。で、そこで様子を見ているあんたら。一体ナニモンだ?」

 

 

エドが視線を向けると、隠れて様子を伺っていた三名の男女が姿を現した。

 

その内の一人は、先程襲われていたであろう男性客であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……たった今、報告が入った。我々の指令を受けたジェネレーターが、何者かに拿捕(だほ)されたらしい」

 

 

「………………」

 

 

無頭竜(ノーヘッドドラゴン)東日本支部の円卓に集まった幹部の一人が口にした報告に、場は重苦しい沈黙に包まれる。

 

さながら通夜のような空気が立ち込めているが、この表現は強ち間違いではない。

 

彼らの心境は、通夜に参列する者の心境に似ている。

 

それも、自分達自身の……。

 

 

「今回の失態によって被った損害は、金銭面だけに止まらない。我々の責任の追及は免れまい……」

 

 

「殺されるだけならまだマシだ。最悪の場合は、ジェネレーター送りだ……」

 

 

九校戦の妨害工作に失敗し、勝敗を対象にした賭博で多大な金銭的損害を発生させただけでなく、ジェネレーターまで押さえられる失態を犯した彼等は、どうしようも無い程に追い詰められていた。

 

こうして円卓を囲み、今後の方針について協議しようとするも、建設的な意見が出ることはなく、ただただ絶望が重く圧し掛かるのみだった。

 

そんな重苦しい沈黙を破ったのは、出席者の一人が持っていた携帯端末の着信音だった。

 

端末の持ち主である男は、他の出席者からの空気を読めと言わんばかりの視線を浴びながら、自身も苛立ちを露に端末の着信画面を見た。

 

途端――男は血相を変えて着信ボタンを押した。

 

 

「も、もしもし……!?」

 

 

自分達の今後を左右する重要な話し合いの最中にも関わらず、男は一も二もなく通話に出た。

 

そんな明らかに動揺した男の反応を、他の出席者達は一様に訝っていた。

 

男の話口調からして、通話の相手は相当な立場であることは明らかだが、一体、誰なのかと……。

 

 

「……はい。お恥ずかしい話ながら………………そうです。今、その件について話し合いを行っておりまして………………え?」

 

 

そして、通話がしばらく続いたところで、平身低頭な受け答えばかりしていた男の反応が変わった。

 

 

「それは、本当ですか?………………ええ、勿論。それが本当なら、ぜひ協力させていただきます」

 

 

終盤の男の表情は、話し合いが始まった時の絶望が嘘のように明るく、笑顔さえ浮かべていた。

 

そんな男の様子にますます疑問を持つ一同だったが、そうこうしている間に通話は切れたらしい。

 

携帯端末をしまった男が、出席者全員に向き直って口を開いた。

 

 

「皆、喜べ。この危機的な状況にあって、朗報だ」

 

 

「一体、誰からの電話だったんだ?」

 

 

通話の相手から齎された情報が自分達にとってプラスになることだということは誰もが感じ取っていた。

 

問題なのは、一体誰から救いの手が差し伸べられたかである。

 

出席者からの疑問の視線に対し、男は笑顔を絶やさずに答えた。

 

 

「先程の通話は、“あのお方”の直属の部下からのものだ」

 

 

男が口にした“あのお方”という単語を聞いた出席者一同に緊張が走る。

 

それは、無頭竜をはじめとした裏の組織の人間ならば、知らない者はいないとされる人物を指し示す言葉だった。

 

 

「どうやって知ったかは分からんが、我々の苦境を既に知っていたらしい。そこで、先方は我々に救済策を提示してくれた」

 

 

「……救済策とは?」

 

 

「九校戦の会場である富士演習場エリアにある宿舎近辺に、ある物をヘリで空輸してほしいということだ。指定時間は明日の午後六時。実行が確認された暁には、今回の一件で我々が被った負債を全て保証してくれるそうだ」

 

 

「そ、それは本当か……!?」

 

 

今回、無頭竜が九校戦の賭博で負った負債は、数億程度で済むような生半可な金額ではない。

 

下手をすれば、組織が破綻してもおかしくない数値である。

 

だが、“あのお方”にとっては問題にすらならないのかもしれないと……その場の全員が感じていた。

 

 

「しかし、九校戦の会場に、一体何を輸送させるつもりなんだ?」

 

 

「詳細までは分からない。だが、九校戦の後夜祭合同パーティーの襲撃が目的らしい。上手くいけば、出場選手や関係者全員を血祭りに上げることも夢ではないと言っていた」

 

 

「それ程の物なのか……!」

 

 

男から齎された情報に、その場の出席者は一様に驚愕していた。

 

同時に、今回の一件で散々煮え湯を飲まされてきた怨敵を屠れるかもしれないという期待に高揚していた。

 

完全に利害が一致したこの提案に賛同しない者など、この場にはいなかった。

 

意見が満場一致であることは、決議を行うまでもなく明らかだったため、通話に出た男はそのまま話を進めた。

 

 

「それでは、ヘリの用意を至急行うとしよう。荷物は既に横浜港に届けられているらしいからな」

 

 

方針が決まったことで、無頭竜の幹部一同は嬉々として行動を開始するのだった。




遅くなって申し訳ありませぬ。

チマチマ書いてはいたのですが、やはり時間がかかる。

とりあえず九校戦はもう少しで終了です。

あとエドのオリジナル魔法は機会があれば、また色々積極的に出していきます。

お楽しみに。

では、また( `・∀・´)ノ
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