お久しぶりです。
やっと続き書けたで候。
では、どうぞ(╯°□°)╯︵ ┻━┻
「ふぅ……なんとかなったか。で、そこで様子を見ているあんたら。一体ナニモンだ?」
エドが視線を向けると、隠れて様子を伺っていた三名の男女が姿を現した。
その内の一人は、先程襲われていたであろう男性客であった。
「気付かれていたか」
「あんたはさっきの……」
「見事なものだ。まだ若いのに相当に戦い慣れているな」
「まあ……な。訳あってこういう手合の相手には慣れてる」
エドの前に現れた男性客、独立魔装大隊大尉・
すると、隣にいたもう一人の軽薄そうな男性、同じく独立魔装大隊大尉・
「話には聞いていたけど君の錬金術、本当に
(なんか軽そうな野郎だな……)
エドは真田をどこか胡散臭げに見る。
「こいつのことは無視していい。相手にするだけ無駄だ」
「中々手厳しいことを言ってくれるね、柳君」
「お二人の仲が良いのは分かりましたから、さっさと話を済ませましょう。エドワード君が困惑しています」
ヒールの音を小さく響かせて近寄ってくるのは独立魔装大隊少尉・藤林
「藤林、お前、目は良かったはずだが?」
「視力よりも感受性に問題があるのかな。良いカウンセラーを紹介しようか?」
「ほら、息がピッタリじゃないですか」
藤林の言葉に、柳と真田は顔を見合わせる。
二人は全く同じように、顔を
それを見たエドは思わずツッコんだ。
「……そういうとこなんじゃねえの?」
柳と真田二人同時にエドを睨む。
「「そんなことはない!!」」
「息ピッタリじゃねえかよ」
このままで話が進まないので、似た者同士の二人は放っておいて、さっそく藤林がエドへと話を始めた。
「初めまして、エドワード・エルリック君。私は国防陸軍少尉、藤林響子です。こちらの二人が大尉の柳連、同じく大尉の真田繁留です。この度は、不審人物捕縛のご協力、誠に感謝します」
「国防陸軍……あんたら、軍の人間だったのか」
エドは意外そうな表情で藤林達を見る。
(考えてみれば当然か。ここは軍の演習場で九校戦の会場だ。軍の人間がいない訳がねぇ)
富士演習場南東エリアは、国防陸軍の所有する土地である。
当然、国防陸軍の人間が勤務している。
「そいつはどうなるんだ?」
「こちらで
「……事情を聞くのは別に構わねぇけどよ、ひとつだけ教えてくれ。
「……この男がやろうとしていた事は見過ごせる事ではありません。下手をすれば大量虐殺が行われていた可能性だってあります。
「そっか……それと、別に敬語じゃなくてもいいよ。こんな子供にさ」
「あら、そう?実は年下に敬語使うのって神経使うから、正直助かるわ〜」
(順応早ッ!!)
藤林の突然軽くなる対応に、前世でお世話になったマリア・ロス少尉の事を思い出すエドであった。
軍の者達が気を失ったジェネレーター、十七号を連れて行くと同時に、エドも藤林達に連れられ、ホテルの客室へと案内されていた。
「どうぞ、楽にして」
藤林がエドへ椅子にかけるように言うと、エドは渋々座る事に。
そしてテーブルを囲うように藤林、柳、真田の三人も座る。
エドは出された紅茶を口に含みながら、藤林に質問した。
「なあ、藤林の姉ちゃんよォ。オレの事情聴取するんじゃないのかよ?これじゃ、ただのお茶会じゃねーか」
藤林はエドからの質問が何か可笑しかったのか、少し楽しそうに返す。
「姉ちゃんって呼び方はなんだか新鮮ね。やんちゃな弟がいたらこんな感じなのかしら?」
「あんたの場合、その弟を奴隷のようにコキ使ってそうだけどな」
「「ブフッ……」」
だがこちらは女性に気遣いや遠慮といった配慮は全くしない男、エドワード・エルリック。
即効で地雷を踏んでいた。
エドの言葉に、柳と真田は思わず吹き出してしまう。
案の定、藤林は笑顔で威圧しながら二人に言った。
「お二人共、感電……してみます?」
いつの間にか右手には5本の針を持っており、左手で電撃をパチパチさせながら脅した。
二人仲良く、首を同時に横に振る。
その顔には、冷や汗が滝のように流れていた。
そして遅まきながら、エドもやらかした事に気付く。
「エドワード君も……あまりナメた事抜かしてると……感電しちゃうかもしれないわよ?」
「き、肝に命じとく……」
藤林の言葉に、エドは素直に頷いた。
「はぁ……それで話に戻るけど、事情聴取だったわね。まあ、幾つか確認のために質問はするけど、別にそこまで本格的なモノではないわ。貴方という個人がどんな人物なのか、私達はただ話してみたくなっただけ。そうですよね?柳大尉、真田大尉」
「ああ。藤林の言うとおりだ」
「そうだね。エドワード君という人間には大変興味があるよ」
藤林の言葉に、柳と真田は頷く。
「なんつーか、変わってるな、あんたら」
三人は顔を見合わせると、『よく言われる』と頷いた。
それから紅茶を飲みながら、エドは三人と談笑することになった。
◆◆◆
ミラージ・バット決勝戦は、午前と打って変わって晴天の夜空であった。
月の明かりが周りの星を圧倒しており、下から光球を見上げるには些か悪いコンディションである。
「深雪。体調はどうだ?」
「万全です、お兄様。気力も充実していますし、最初から飛行魔法で行きたいと思うのですが」
「良いよ。思い切り飛んで来なさい」
「はい!」
深雪はサムズアップする達也に見送られながら、元気よくフィールドへと飛び出していく。
「深雪さん、随分と上機嫌でしたね」
サーポート要因としてブース入りしているあずさが、湖上の足場に立つ深雪を見ながら達也へ話しかける。
「機嫌良く試合に臨めるのは良いことだわ。達也君が上手にケアしてくれたみたいね」
反対側からは真由美が話しかけてくる。
その表情からは、機嫌が良いのが伺える。
「そういえば深雪さんは『カプセル』を使わなかったようですが、十分に休息は取れているのでしょうか?」
鈴音の問い掛けに、達也は淡々と答えた。
「五時間、睡眠を取らせましたので、十分だと思います」
決勝戦進出は、一高、二高、三高、五高、六高、九高から各一名ずつ。
実はあずさが担当していた選手もエントリーしていたのだが、三高の一色愛梨に敗れてしまった。
その三高も水尾佐保が深雪に敗れ、もう一人の選手も予選落ちとなっている。
三高が一名しか決勝に進めなかった段階で、一高は深雪が三位以内に入れば、必然的に総合優勝が決まる。
その為、今この場に揃った主立った女子メンバー達の応援にも力が入っていた。
今か今かと、試合開始の時を待つ。
会場となる星空を反射する湖面のステージという幻想的な空間に、淡い色のコスチュームを身に纏った少女達が集う様子は、まさしく“妖精”という言葉が似合う光景であった。
「あ、始まりますよ」
そして、いよいよ試合開始のブザーが鳴った。
その瞬間に六人の選手が一斉に空へと飛び上がると、そのまま足場に下りることなく宙に留まった。
「飛行魔法!?他校も!?」
「さすがは九校戦。僅か六、七時間で飛行魔法の起動式をものにして来ましたか」
あずさが裏返った声で叫び、達也は感嘆を口にする。
どうやら、大会委員会から各校へ飛行術式がリークされているようで、不正疑惑の抗議に対する回答の意味もあるようだ。
「各校ともトーラス・シルバーが公開した術式をそのまま使っているようですね」
「……無茶だわ。あれはぶっつけ本番で使いこなせる術式じゃないのに。選手の安全より勝ちを優先するなんて……」
鈴音が眉を
「大丈夫でしょう。あの術式をそのまま使っているなら、万一の場合でも『安全装置』が機能するはずです」
しかし、達也だけはどこか余裕を持って発言していた。
その間にも、試合はどんどん進んでいく。
空を舞う六人の少女の姿は、まさしく妖精のダンスと評される美しさを秘めていた。
観客は夜空を飛び交うそのダンスに、心を奪われ、夢中となっていた。
だが幻想的な光景に興奮していた観客達は、徐々に落ち着きを取り戻すと、ある事実に気が付く。
先程から、一高以外誰も得点できていないのだ。
深雪の動きは、素人目で見ても分かるほどに洗練されており、素早く、滑らかに、優雅に、身を翻し、宙を滑り、上昇して、下降する。
その自由で可憐な舞は、まるでプリマバレリーナのようであった。
飛行魔法は『誰にでも使える』術式であるところに、真の価値がある。
しかし、“誰にでも使える”と、“誰もが同じように使える”では全く意味が違う。
少なくともこの場で、深雪以上にこの魔法を使いこなせる者はいなかった。
選手の一人が空中でグラリと体勢を崩すと、僅かに高度を下げた。
その表情は苦悶に満ち、疲れ切っていた。
まさかサイオンが枯渇したのか、と観客が悲鳴をあげるが、その選手はゆっくりとした動きで徐々に高度を下げ、そのままゆっくりと足場へと下り立つ。
その様子を見て、客席全体がホッと息をついた。
飛行魔法の術式には、術者からのサイオン供給効率が半減すると、自動的に10分の1Gの軟着陸モードへと変更される“安全装置”が組み込まれている。
九校戦という注目を集める舞台で、飛行魔法の安全性が実証された形だ。
九校戦は現地でも少なくとも一万人、中継映像を含めると軽く百万人は超える人々が注目している。
特に魔法関係者は、ほぼ全員が観ていると言ってもいい。
そんな場面で、飛行魔法の安全装置が正確に作動した映像は、想像以上の宣伝効果を生むだろう。
その様子をフィールドの傍で見守っている達也は、心の中で腹黒い笑みを浮かべていた。
しばらくして次々と選手が脱落し、第二ピリオドでは残り三人になってしまった。
圧倒的にポイントを重ねているのは、司波深雪であり、一色愛梨はそれに何とか食らいついている状態であった。
深雪の後ろを飛ぶ愛梨の目には、焦りの色があった。
(次々に脱落して、残りは三人になってしまった。このまま……背中を見ているだけになってしまうの……?)
あれほど練習したというのに、愛梨には深雪の背中が遠く感じていた。
(あんなに練習したのに遠い。これが練習の差。才能の……いえそんなことはない!そんなことは……みんな期待してくれているのに)
焦りと共に呼吸が荒くなっていく……が、愛梨はそこで観客席にいる一人の人物の存在に気が付いた。
(お母様……!来てくれてたの)
自身の母親が観戦に来ていることを認識した愛梨は、CADを操作する。
(恥ずかしいところを見せられない。飛行魔法と使い慣れた跳躍魔法のミックス。これが私の本気よ!)
愛梨の魔法が発動した瞬間、稲妻の如き速度で深雪を追い越し、ホログラムめがけてマジックフェンシングのように杖で突きを放っていた。
「深雪が一点でも取られるなんて」
「良くやったね三高」
「えっ」
「面白くなるのはここからだよ」
驚くほのかを他所に、雫は淡々と述べる。
「だって深雪はああ見えて、本当に負けず嫌いだからね」
ここで第二ピリオドが終了して、インターバルに入る。
得点差で言えば深雪は圧倒的な点差でトップ、次点で愛梨と続いている。
一瞬たりとも気が抜けない以上に、愛梨がポイントを取ったことで、深雪の負けず嫌いに火を付けた。
「点数差からいうと、このまま盤上に留まっていてもいいくらいだが」
「いえ、私がそれで止まってやり過ごすような人間だとお思いですか、お兄様」
「いいや」
達也は深雪の頬にソッと触れる。
「深雪、お前は自由だ。思う存分、飛んで来なさい」
「……はい」
一方、愛梨も栞と最終の打ち合わせを行っていた。
「おめでとう愛梨。すごかったわ」
「ありがとう。栞のおかげよ」
「ううんそんなこと……愛梨の力よ」
「……ありがとう。言わないでくれて。わかってるのよ。もう逆転できない点数だってことは」
「……愛梨」
「もう勝敗は決している……だからこそ全力を出し切る。それが私の矜持」
迎える最終ピリオド。
深雪と愛梨、そして第二高校の選手の三つ巴となった。
だが、先程よりもさらにホログラムに速く到達する深雪と愛梨。
この決勝戦は、最早深雪と愛梨の一騎打ちに近い様相であった。
深雪は優雅に踊るように舞い、愛梨は鋭い体さばきと跳躍を駆使して、ホログラムを破壊する。
やがて第二高校の選手もサイオン切れで脱落し、深雪と愛梨の一騎打ちになるが、二人のポイントには余りにも差があった。
このまま続けても、勝敗はほぼ決まりも同然であったが、それでも人々は空中を優雅に踊るような二人の雄姿に見惚れていた。
やがて最後のホログラムが深雪の手によって掻き消され、最終ピリオドの終了を知らせるブザーが鳴り響く。
ミラージ・バット本戦の最終結果は、一位が深雪、二位が愛梨という結果になり、第一高校の総合優勝が確定する形となった。
だが足場に両膝を付いて崩れ落ちた愛梨は悔しがるような素振りを一切見せず、むしろただただ満足したかのようにほほ笑んでいた。
観客席からは、最後まで可憐に舞い続けた深雪だけでなく、最後まで懸命に闘った愛梨にも惜しみない拍手が送られたのであった。
◆◆◆
一方、小野遥は現在横浜ベイヒルズタワーの屋上にいた。
達也に依頼された香港系国際犯罪シンジケート『
彼女は、国立魔法大学付属第一高校の女性カウンセラーであり、BS魔法師でもあるが、警察省公安庁の秘密捜査官としての顔もあり、諜報の世界で『ミズ・ファントム』というコードネームで呼ばれている女スパイでもある。
「あそこが奴らのアジトと見て、まず間違いなさそうね」
遥は身を隠しながら、双眼鏡で確認する。
その視線の先には、横浜グランドホテルがあり、その最上階の一つ上の階、客には知らされていない、存在しないはずの本当の最上階の一室に彼らはいた。
部屋の隅には、ぼんやりと立ち尽くす四つの人影、ジェネレーターの姿もあった。
遥は先天性スキルである隠形を駆使して、彼らを観察する。
そのレベルは『見えているのに見えない』状態を作り出す認識阻害の精神干渉魔法と同等の領域にあり、その気になれば税関をフリーパスで通り抜けることだってできる。
但し、一緒に隠すことができるのは子猫程度までで、他の人間を隠すことは無理なようだ。
「……やっぱり中に入って直接調べるのは無理そう。警備が厳重過ぎる」
遥は忍である
その結果、斥候兵並みの身体能力があり、そんじょそこらの魔法師では相手にならない強さを持つものの、さすがに強化人間であるジェネレーターの相手は分が悪かった。
「まあ、ここから確認出来るだけでも御の字なんだけどね……」
部屋の中にいる人数は全部で九人。
ノーヘッドドラゴン幹部が五人と、その護衛であるジェネレーターが四人だ。
遥は公安のコネで獲得したノーヘッドドラゴンの幹部のリストを確認する。
「部屋にいる幹部はリスト通り……。私に出来るのはここまでね」
遥は達也にメールでノーヘッドドラゴンの拠点が判明した旨を報告すると、足早にベイヒルズタワーを後にする。
しばらく歩くと、有料駐車場に停めていた自家用車に乗り込んだ。
「それにしても、アジトの場所を特定するのに意外に時間がかかってしまったわね……」
遥は諜報員としての実力はかなり優秀だ。
彼女の実力を持ってすれば、いかにノーヘッドドラゴンの拠点を調べるといえど、
しかし、
「まさかダミーのアジトが幾つもあるなんてね……」
そして、そのどれもが絶妙に距離が離れているから質が悪い。
遥はそれらの場所を虱潰しに回って、一箇所ずつ潰していくしかなかったのだ。
「はぁ……今日はもう早く帰って、さっさと寝よう」
遥はエンジンをつけると、自宅へと車を走らせるのだった。
「やれやれ……なんとか上手くいきましたか。今、あそこを襲撃されると困るんですよ。
彼女が行く様子を、影から見る無数の目が捉えていた。
次回は後夜祭。
しかし、ハプニングが起こる。
では、また( `・∀・´)ノ