魔法科高校の鋼の錬金術師   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第七十一話 陸戦型キメラ攻略

 横浜。

 

 無頭竜の拠点だった建物を出た達也は、待機していた藤林響子の表情に気付いた。

 彼女は端末を耳へ当てたまま、こちらを見ている。

 

 仕事が終わったことを労う顔ではなかった。

 

「……分かりました。引き続き、状況を送ってください」

 

 通話を切ると、藤林は達也へ歩み寄った。

 

「富士演習場が襲撃されたわ」

 

 達也の足が止まる。

 

「後夜祭の会場ですか」

「その近くに、所属不明のヘリがコンテナを投下。中から大型の合成獣が出てきたそうよ。現地の部隊が応戦したけれど、防衛線を突破されている」

 

 達也は、端末を取り出した。

 深雪へ繋ぐ。

 

 応答はなかった。

 

「避難状況は」

「地下シェルターへの誘導が進んでいる。十文字君達が迎撃に出たという連絡も入っているわ」

 

 十文字達。

 その中に、深雪が含まれている可能性は高い。

 

 エドワードも、黙って避難するとは思えなかった。

 

「ヘリは使えますか」

「既に手配しているわ。こちらの処理は引き継ぐ。私達は富士へ戻りましょう」

 

 達也は頷いた。

 

 無頭竜の拠点を特定するための情報が揃うまで、予定以上の時間を要した。

 小野遥の調査でも、手掛かりが途切れたり、確認に回った先が空になっていたりしたという。

 

 その遅れで、達也は後夜祭へ出席できなかった。

 そして今、自分が離れた場所へ、別の敵が現れている。

 

 単なる偶然か。

 それとも、こちらの動きを見ていた者がいるのか。

 

 考えは後回しにした。

 

「敵が錬金術を使うという報告はありますか」

「地面を変形させて攻撃しているらしいわ。詳細は移動しながら確認する」

 

 藤林が、駐機場所へ向かう。

 達也もその後を追った。

 

     ◆

 

 富士演習場。

 

「一条! 右へ回るぞ!」

 

 エドの声に、将輝が走った。

 合成獣の顔を、倒れた生徒達とは反対側へ向ける。

 

 CADの照準が、鉱物の鎧の継ぎ目を捉えた。

 

 爆裂。

 

 口元の外皮が弾け、合成獣が頭を振った。

 今度の攻撃も、致命傷にはならない。

 

 だが、その目は将輝を追った。

 

「こっちだ!」

 

 エドも、地面から突き出した杭を敵の前脚へ打ち付ける。

 歩き出そうとする脚を阻み、さらに遠ざかる。

 

 合成獣の頭部が、再び輝いた。

 

「後ろへ!」

 

 将輝がエドの背後へ滑り込む。

 少し離れていた深雪と沓子も、すぐに距離を詰めた。

 

 四人がばらばらになれば、守り切れない。

 攻撃するたびに立ち位置を確かめ、次の放出に備える必要があった。

 

 エドが両手を合わせる。

 

 サイオンノイズが、正面から押し寄せた。

 その流れへ、分解を重ねる。

 

「っ……!」

 

 肩が痛む。

 錬成を続けた腕にも、足にも、疲労が溜まっていた。

 

 それでも、手を下ろすことはできない。

 

 光が弱まる。

 エドは息を吐き、すぐに顔を上げた。

 

「今だ、一条!」

 

 将輝の爆裂が、合成獣の鼻先を打った。

 怒った巨体が、四人を追って踏み出す。

 

 エドは後方を確かめた。

 倒れた仲間との距離が、少しずつ開いている。

 

 もう少しだ。

 

 沓子が指した、地脈の流れを集められる場所まで。

 

     ◆

 

 柳連が不審な輸送ヘリを見つけたのは、演習場を離れ、車で東京へ向かっていた時だった。

 

 翌日は休暇だ。

 本部へ戻る面々とは別れ、一人で車を走らせていた。

 

 夜空を横切る機影へ目を向けたのは、進路が気になったからだった。

 大きなコンテナを吊ったヘリが、富士演習場の方へ向かっている。

 

 九校戦は、もう全競技を終えていた。

 この時間に、あの荷物を運び込む理由は何だ。

 

 柳は、安全に車を止められる場所へ入り、現地へ確認を取った。

 

 その最中、遠方に異様な光が走った。

 続いて、遅れて届く重い音。

 

 返ってきたのは、搬入予定の確認ではなかった。

 所属不明のヘリによる襲撃。

 コンテナから出現した、大型の合成獣。

 

 柳は車の向きを変えた。

 

 休暇のことは、もう頭になかった。

 

     ◆

 

「ここじゃ!」

 

 沓子が、足元を示した。

 

 ホテルからも、倒れた仲間達からも離れた場所。

 エドは周囲を見回し、人影がないことを確かめた。

 

「一条、もう一度だ。ここへ向けろ!」

 

 将輝が、爆裂を放つ。

 合成獣の頭が傾き、踏み出した前脚が狙った場所へ入った。

 

 沓子が地面へ手を添える。

 

 エドにも、流れの変化が分かった。

 周囲を走っていた地脈の力が、合成獣の真下へ寄り始めている。

 

 沓子は目を伏せたまま、呼吸を整えた。

 

「……そう急かすでない。道を繋いでおるところじゃ」

「分かってる。あいつは、オレが止める」

 

 エドが一歩前へ出る。

 合成獣の足元へ、錬成した岩を絡ませた。

 

 力任せに砕かれる。

 その間に別の場所を盛り上げ、進路を塞ぐ。

 

 倒すための攻撃ではない。

 頭をこちらへ向けさせ、沓子が作る道から出させないためのものだ。

 

「深雪! 四十九院が終わったら頼む!」

「はい!」

 

 深雪は、エドと沓子の両方が見える位置で待った。

 冷却範囲に、人が残っていないことを確認する。

 

 合成獣が、再び錬成陣を展開した。

 岩柱が、エドの足元を狙う。

 

 跳んで避け、その側面へ手をつく。

 尖った岩を崩し、敵へ向けて押し返した。

 

 合成獣が、それを前脚で踏み砕く。

 

「しつけえな……!」

 

 頭部の光が強まる。

 

 エドは、三人が背後へ入ったことを確かめて両手を合わせた。

 また、サイオンノイズを分解する。

 

 息が詰まる。

 額から流れた汗が、顎へ落ちた。

 

 放出が終わった直後、沓子が顔を上げた。

 

「エドワード! 繋がったぞ!」

 

 地面の下へ、力が集まっている。

 それを確かめ、エドが叫んだ。

 

「深雪!」

 

 CADから、起動式が展開された。

 

 ニヴルヘイム。

 

 合成獣を取り囲む空間から、急速に熱が奪われた。

 巨体を覆う鉱物に霜が走り、四本の脚が地面へ凍り付く。

 開きかけた口が止まり、吐く息が白く固まった。

 

 深雪は、合成獣を睨んでいた。

 鎧の隙間から動こうとする脚へ、冷却を重ねる。

 

「今のうちに!」

 

 エドは駆け出した。

 目指すのは、戦車の残骸だ。

 

 鋼の手を装甲へ押し当てる。

 砕けた金属も、折れた部品も、材料にする。

 

 先程の砲台よりも厚い砲身。

 後方には、爆裂の力を受けるための空間を設ける。

 その前へ、細長く、先端を鋭く尖らせた砲弾を収めた。

 

 錬成陣は、その側面へ刻む。

 

 将輝が近付いた。

 

「後部は、ここか」

「ああ。ここに絞れ。弾の後ろへ圧力を掛けるんだ」

 

 将輝は構造を確かめ、CADを構えた。

 エドも砲台へ手を添える。

 

 射角を合わせる。

 凍り付いた合成獣の、頭部へ。

 

     ◆

 

 ヘリの中で、藤林は現地から送られた情報を達也へ示した。

 

「迎撃に出た生徒達の大半が倒れている。原因は、合成獣から放たれた強力な想子のノイズと見られるわ」

 

 達也は、画像を見た。

 地面に倒れた人影。

 戦車の残骸。

 鉱物の鎧に覆われた、巨大な合成獣。

 

「キャスト・ジャミングですか」

「それだけで済む強さではないようね。意識を失った者もいる」

 

 藤林の端末へ、追加の連絡が入る。

 

「……今も戦っているのは、エドワード君、一条君、それに深雪さんと四十九院さん」

 

 達也は、顔を上げた。

 

 深雪は、まだ動いている。

 しかし、四人だけで、倒れた者を守りながら戦っているのか。

 

 窓の向こうに、演習場が見え始めていた。

 散らばった車両の火が、夜の地面を照らしている。

 

 白く凍り付いた巨体も、見えた。

 

 その脇で、エドワードが何かを錬成している。

 将輝が、その後方へ回る。

 

 砲台。

 

 達也は、敵と四人の位置関係を確かめた。

 

「扉を開けてください」

 

 藤林が操縦士へ指示を出す。

 達也は扉のそばへ移動し、CADを握った。

 

     ◆

 

 合成獣の脚を覆う氷に、亀裂が走った。

 

 深雪が、さらに熱を奪う。

 巨体は、まだ動けない。

 

 だが、その足元が光った。

 

「地面が……!」

 

 沓子が顔を上げる。

 

 エドも、錬成反応へ目を向けた。

 止まっているのは、合成獣の体だけだった。

 

 周囲の大地がせり上がる。

 厚い岩壁が、四方を囲み始めた。

 

「射線を塞ぐ気か!」

 

 エドは砲台から片手を離しかけた。

 しかし、将輝の爆裂を受ける砲身も支えなければならない。

 

 壁を崩すために、もう一度離れるか。

 その間に、深雪の拘束が破られるかもしれない。

 

 迷う時間はなかった。

 

 岩壁の向こうから、無数の礫が飛び出した。

 砲台へ。

 将輝へ。

 深雪と沓子へ。

 

 ただ飛んでいるのではない。

 それぞれが、四人の動きを追って軌道を変えていた。

 

「伏せろ!」

 

 エドが地面へ手を伸ばす。

 深雪も、防御へ切り替えようとした。

 

 間に合わない。

 

 迫った礫が、突然、形を失った。

 

 爆発は起きなかった。

 砕けた破片さえ飛んでこない。

 

 四人へ向かっていたものが、一つ残らず消えていく。

 

 エドは顔を上げた。

 

 頭上に、ヘリがいた。

 開いた扉から、CADを向ける人影。

 

「達也……!」

 

 続いて、合成獣を囲む岩壁が消えた。

 砲台と敵の間に、遮るものがなくなる。

 

 深雪も、兄を見上げていた。

 

「お兄様!」

 

 喜びに緩みかけた表情が、すぐに引き締まる。

 まだ、魔法を解くわけにはいかない。

 

 合成獣の頭部が、強く光った。

 

 エドが身構える。

 しかし今度は、放出されたサイオンノイズが、四人へ届く前に乱れを失っていった。

 

 達也のCADが、敵へ向いている。

 

「こっちは任せろ」

 

 風と回転翼の音の中で、その声が聞こえた。

 

 エドは頷き、砲台へ両手を戻した。

 

「一条! 撃つぞ!」

 

 将輝が、照準を合わせ直す。

 

 その瞬間、合成獣が体を捻った。

 凍り付いた脚の一本が、地面ごと持ち上がる。

 

 氷が割れた。

 

 深雪が追い掛けて冷却を掛ける。

 だが、砕けた地面を足場に、巨体が向きを変えようとしていた。

 

 頭部が、砲口の正面から外れる。

 

「くそっ……!」

 

 エドは砲台の向きを変えようとした。

 

 その前に、巨体の下で地面が跳ね上がった。

 

 ただ隆起したのではない。

 足場そのものを返すような力が、合成獣を押し上げる。

 

 鉱物の鎧を纏った体が、横へ傾いた。

 踏ん張ろうとした脚が、空を掻く。

 

 巨体が、裏返った。

 

 地響きとともに背中が落ち、頭部がこちらへ向いたまま、動けなくなる。

 

「今だ、エドワード君!」

 

 声のした方に、柳がいた。

 現地へ戻り、四人の動きと砲台の狙いを見たうえで、攻撃を合わせたのだ。

 

 千畳返し。

 

 合成獣は起き上がろうと脚を振るが、鎧の重さもあり、すぐには体勢を戻せない。

 

 エドは、砲口を敵の頭へ合わせた。

 

「一条!」

 

「行くぞ!」

 

 砲身の後部へ、極限まで凝縮された爆裂が発動する。

 

 エドは、砲台の構造を支えた。

 膨れ上がった圧力を逃がさず、前へ。

 鋭い砲弾を、押し出す方向へ。

 

 轟音。

 

 土台が地面へ沈む。

 砲身から射出された突起状の砲弾が、合成獣の頭部へ突き刺さった。

 

 鉱物の鎧が割れる。

 その下の外皮も貫き、錬成陣を刻んだ側面が、巨体の内側へ入った。

 

「四十九院!」

 

「繋ぐぞ!」

 

 集められていた地脈の力が、走る。

 

 エドは両手を合わせた。

 

 離れていても、分かる。

 自分が刻んだ錬成陣。

 そこへ沓子が繋いだ、力の道。

 

 その先にあるものを捉える。

 

 合成獣の体内を流れる、体液。

 

 厚い外皮も、鉱物の鎧も、今度の錬成を遮ることはできなかった。

 

 熱が生まれる。

 一か所で終わらせず、内側へ、さらに奥へ。

 

 合成獣の体が、痙攣した。

 

 開いた口から、白い蒸気が噴き出す。

 鎧の継ぎ目へ、亀裂が走った。

 

 再生が始まるよりも速く、内部の圧力が膨れ上がっていく。

 

「下がれ!」

 

 柳の声に、将輝が身を伏せた。

 深雪は沓子を庇うように寄り、エドも地面へ両手を叩き付ける。

 

 四人の前へ、厚い防壁が立ち上がった。

 

 次の瞬間、合成獣の巨体が内側から破裂した。

 

 凄まじい音が、演習場を揺らす。

 蒸気とともに、肉と鉱物の破片が吹き飛んだ。

 

 防壁へ、重い衝撃が幾つも叩き付けられる。

 エドは膝をついたまま、その向こうを見ていた。

 

 やがて、何も飛んでこなくなった。

 

 立ち上る蒸気の隙間に、巨体のあった場所が見える。

 

 残っていたのは、砕けた鎧と、散らばった残骸だけだった。

 

 頭部の光は、もうない。

 何かが起き上がろうとする気配も、錬成の反応もなかった。

 

     ◆

 

 ヘリが降下する。

 柳は合成獣の残骸を警戒したまま、四人へ声を掛けた。

 

「動けるか」

 

 エドは、防壁へ手をついて立ち上がった。

 将輝も、ゆっくりと顔を上げる。

 

 深雪が、沓子の肩へ手を添えた。

 

「大丈夫ですか?」

「……少し、力を使い過ぎたのじゃ」

 

 沓子は苦笑した。

 その顔からも、血の気が失せている。

 

 着陸したヘリから、達也と藤林が降りてきた。

 

「深雪」

 

 呼ばれた少女は、一歩だけ兄へ近付いた。

 その胸へ飛び込みたい気持ちを抑え、背筋を伸ばす。

 

「お兄様。十文字先輩達が、まだ……」

「ああ。救護班もこちらへ向かっている」

 

 達也は彼女の顔を確かめてから、倒れた生徒達へ目を向けた。

 藤林は既に、現地との連絡を取り始めている。

 

 エドは、克人のもとへ走った。

 

「先輩!」

 

 肩へ触れる。

 呼び掛けても、返事はなかった。

 

 呼吸はある。

 だが、苦しげで、間隔も一定ではない。

 

 少し離れた服部も、同じように意識を失っていた。

 

「エルリック!」

 

 将輝が、吉祥寺のそばから呼んだ。

 友人の体を支える顔には、先程までとは別の焦りがあった。

 

 藤林の端末から、声が聞こえる。

 ホテル側にも、倒れた者がいる。

 七草真由美も、その一人だった。

 

 エドは、克人の手首へ指を当てた。

 

 死ぬな。

 戦いに出る前、全員へ命じた声を思い出す。

 

 合成獣は倒した。

 けれど、まだ、その命令を守り切ったわけではなかった。

 




また出来たら投稿しますー。

では、また∠( ゚д゚)
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