魔法科高校の鋼の錬金術師   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第七十二話 命を繋ぐ錬丹術

「十文字先輩。聞こえますか」

 

 達也が、克人のそばへ膝をついた。

 返事はない。

 目を閉じたままの顔は青白く、呼吸も浅かった。

 

 エドは、その隣で克人の手首に触れていた。

 

「合成獣の頭から出たノイズを、まともに受けたんだ。その場で倒れて、それっきり……」

 

 達也は頷いた。

 周囲では、柳と藤林が動ける者を集め、負傷者の確認を進めている。

 

 戦闘に出た生徒達の多くが、意識を失っていた。

 彼らに大きな外傷が見られないからといって、軽傷とは限らない。

 

 達也は、克人の状態を調べた。

 

 肉体の損傷。

 想子の状態。

 襲撃の前と、今とを隔てるもの。

 

 自身の『再生』を使うべきか。

 

 目の前の先輩を、このままにしておくことはできない。

 ただ、通常の負傷とは様子が異なる。何が傷付き、何を戻せば容体が改善するのか、まず見極める必要があった。

 

 少し離れた場所で、将輝が声を上げた。

 

「ジョージ!おい、しっかりしろ!」

 

 友人の名を呼ぶ声に、焦りが滲んでいた。

 深雪も、倒れた雫のそばへしゃがみ込んでいる。

 

 助けが必要なのは、一人ではない。

 

 達也は、もう一度克人へ目を向けた。

 その時、隣にいたエドが顔を上げた。

 

「……四十九院」

 

 少し離れて座っていた少女が、こちらを見る。

 

「まだ、地脈を動かせるか?」

 

 沓子は、すぐには答えなかった。

 合成獣を倒すために、大きな力を集めたばかりだ。

 額に浮いた汗も、荒れた呼吸も、まだ収まっていない。

 

 それでも、彼女は地面へ手を添えた。

 

「……大きな力を、一か所へ集めるのは厳しいのう。じゃが、流れを繋ぐだけなら、まだできる」

「それでいい。オレを中心に、周りへ道を通してくれ」

 

 達也が、エドへ視線を向ける。

 

「治療をするつもりか」

「試したいことがある。ただ、その前に確かめる」

 

 エドは、再び克人へ手を伸ばした。

 

 今までは、呼吸と脈を確かめていた。

 今度は、それとは別のものを探る。

 

 人の体に流れる力。

 それを、周囲を走る地脈と結び付けて捉える。

 

 沓子が、細い流れを通した。

 地面を介してエドへ届き、その先で、克人の体へ繋がる。

 

 エドは目を閉じた。

 

 錬丹術によって、流れを追う。

 途切れているのか。

 滞っているのか。

 それとも、別のものが混じっているのか。

 

 荒れた流れが、手に取るように伝わってきた。

 

「……そういうことか」

 

 エドが、低く呟いた。

 

「何が分かった」

 

 達也の問いに、彼は克人を見たまま答えた。

 

「ノイズを浴びた時だけじゃねえ。先輩の中の想子の流れが、まだ乱れたままなんだ」

 

 外から押し寄せたものは、既に消えている。

 それでも、受けた影響が残っている。

 

 エドは、そばに倒れた服部の状態も探った。

 強さや乱れ方は違うが、同じような異常がある。

 

「この流れを、整えられれば……」

 

 そこで言葉を切り、達也へ向き直った。

 

「ほかの奴らも調べたい。まとめて見られる場所を作る。運ぶのを手伝ってくれ」

 

 達也は、克人へ目を戻した。

 エドが探っているものと、自分が観測している異常には、重なる部分があった。

 

 方法は違う。

 しかし、見当違いの治療を始めようとしているわけではなさそうだった。

 

「分かった。俺も状態を確認する」

 

     ◆

 

 エドが両手を合わせた。

 地面へ触れると、周囲の五つの方向に、突起物がせり上がった。

 

 人の背丈よりも低い、石の柱。

 それぞれの表面に錬成陣が刻まれ、中央のエドを取り囲む。

 

 沓子が、その位置を確かめた。

 

「この内側へ、流れを通せばよいのじゃな」

「ああ。一つに押し込めなくていい。人のいるところへ、順に繋いでくれ」

 

 合成獣を倒した時は、溜めた力を一気に注いだ。

 今必要なのは、広い範囲にいる人々へ、細かく手を届かせるための道だ。

 

 エドは、立ち上がった柳へ声を掛けた。

 

「ノイズで倒れた人達を、この中へ集めてもらえますか。傷を負ってる人は、そっちの救護班に見てもらってください」

「承知した」

 

 柳は、到着し始めた兵士達へ指示を出した。

 担架が運び込まれ、倒れた生徒達が慎重に移されていく。

 

 達也も搬送に加わった。

 克人を陣の内側へ移した後、別の生徒のもとへ向かう。

 

 将輝は、吉祥寺の搬送に付き添っていた。

 陣の中へ担架が下ろされても、そのそばを離れない。

 

 深雪も、雫が運ばれてくると、すぐに顔を覗き込んだ。

 

 愛梨、栞、服部、沢木。

 エリカやレオ、幹比古達も、次々と集められる。

 

 さっきまでは、互いに声を掛け合って戦っていた。

 今は、名前を呼んでも返事がない。

 

 エドは、その顔を一人ひとり確かめた。

 

「エドワード君」

 

 藤林が、近付いてきた。

 

「ホテル側で倒れた人達も、こちらへ運ぶわ。七草さんも意識が戻っていない」

 

 エドは、短く頷いた。

 

「お願いします」

 

 藤林は彼の顔を見てから、沓子へ目を移した。

 

 二人とも、既に疲弊している。

 その状態で、今度はこれだけの人数を助けようとしていた。

 

「必要なことがあれば、すぐに言って。こちらで手配する」

 

 エドは、陣の中央へ戻った。

 

     ◆

 

 真由美が運び込まれた時、エドは陣の中央で目を閉じていた。

 

 沓子が通した地脈を、錬丹術で辿る。

 その流れに、陣の中にいる人々を重ねていく。

 

 誰の体に、どんな乱れがあるか。

 どの流れが、どこで滞っているか。

 

 全員が同じ状態ではなかった。

 浴びたノイズの量も、体の反応も違う。

 それを、一人ずつ確かめる。

 

 克人。

 服部。

 吉祥寺。

 雫。

 そして、新しく運び込まれた真由美。

 

 陣の中に横たわる一人ひとりの状態が、地脈を通して伝わってくる。

 

 達也は、エドと、倒れた者達を交互に見た。

 診察のために、体へ触れて回っているわけではない。それでもエドは、新しい担架が運び込まれるたび、その人の容体を確かめている。

 

(地脈を介して、体内の状態まで観測しているのか)

 

 力を遠くへ届かせるだけなら、まだ理解できる。

 しかし、治療には、どこへ、どれだけ働き掛けるかの判断が必要だった。しかも、ここには何十人もの人間がいる。

 

「……そこまで分かるのか」

 

 思わず、声が漏れた。

 

「今、分かるのは流れの異常だ。傷まで全部治せるわけじゃねえ。そっちでも、見ててくれ」

 

 目を閉じたまま、エドが返した。

 達也は頷く。

 

 藤林が、搬送に来た兵士へ人数を確認する。

 

「ノイズで倒れた人達は、これで全員よ」

 

 エドが、ゆっくりと目を開けた。

 

 沓子は地面へ手を添え、最後の担架へ道を繋いでいた。

 その額から、汗が落ちる。

 

「……繋がったぞ。全員、この陣の内側じゃ」

 

 エドは頷いた。

 

 体内の想子の乱れ。

 正常な流れへ戻すための、働き掛け。

 そのすべてを、頭の中で組み上げる。

 

 一人ひとりに必要な処置は違う。

 だが、繋いだ道を通じて、それぞれへ同時に届けることはできる。

 

「四十九院。そのまま、道を保ってくれ」

「任せるのじゃ」

 

 エドは、足を開いた。

 疲れた体を支え、背筋を伸ばす。

 

 両腕を持ち上げた。

 

 鋼の右手と、生身の左手。

 その掌を、胸の前で合わせる。

 

 乾いた音が、静まり返った陣の中に響いた。

 

 指先は上を向き、組み合わされた両手が、一つの輪を作る。

 エドはその姿勢のまま、僅かに顎を引いた。

 

 将輝が、息を止めた。

 

 同じ仕草は、先程から何度も見ている。

 地面を変え、岩を防ぎ、大砲を作り出す前にも、エドはこうして両手を合わせていた。

 

 だが、今は違うものに見えた。

 

 周囲には、意識のない仲間達。

 その中央に立ち、両手を合わせる少年。

 

(まるで神への祈りじゃないか)

 

 その思いが、将輝の胸に浮かんだ。

 

 救ってくれと、誰かへ祈っているように見える。

 けれど、エドの目は伏せられていなかった。

 

 見ているのは、自分が助けようとしている人々だった。

 

「……戻ってこい」

 

 低く、言った。

 

「みんなで、帰るぞ」

 

 合わせていた両手を、開く。

 膝を折り、十本の指を広げた。

 

 鋼と肉の掌が、同時に大地へ触れた。

 

 青白い錬成光が、迸った。

 

 中央から、五つの石柱へ。

 刻まれた錬成陣が、一斉に輝く。

 

 沓子の通した地脈に沿って、光が走った。

 幾筋にも分かれ、担架に横たわる人々のもとへ届く。

 

 将輝は、思わず吉祥寺を庇おうとした。

 しかし、その光に熱はなかった。

 

 友人の体へ触れた光が、輪郭を淡く照らす。

 同じ輝きが、克人を、服部を、雫を、真由美を包んでいた。

 

 その内側で、錬成が起こった。

 

 荒れた想子の流れが、解きほぐされる。

 滞っていた箇所が通り、乱れたものが本来の流れへ戻されていく。

 

 一人の処置が終わるのを待って、次へ移るのではない。

 陣の中にいる全員へ、必要な働き掛けが、同時に届いていた。

 

 達也の目が、僅かに見開かれた。

 

(全員、同時に……)

 

 克人の体内で起きた変化を捉える。

 そのまま、服部へ、陣の反対側の生徒へ、視線を移した。

 

 同じ瞬間に、それぞれの異常が正されている。

 力を一律に浴びせた結果ではない。一人ひとりに異なる処置を、エドは一度の錬成で成立させていた。

 

 達也は言葉を失った。

 

 沓子も、中央の少年を見つめていた。

 自分が通した道のすべてに、彼の錬成が走っている。

 

(わしの地脈操作を、ここまで……!)

 

 治療のために使うとは聞いていた。

 だが、自分の術が、何十人もの命へ一度に手を届かせる道になるとは。

 

 その驚きを、掌の下で起こる変化が、次々と裏付けていた。

 

 克人の苦しげだった呼吸が、深くなる。

 服部の眉間から、強張りが消えた。

 将輝のそばで、吉祥寺の指が動く。

 

「……ジョージ?」

 

 雫の睫毛も、僅かに震えた。

 深雪が、その手へそっと触れる。

 

 確かな反応が返ってきた。

 

 深雪は顔を上げた。

 陣の中で、何人もの生徒が、同じように動き始めている。

 

「凄い……一度に、皆さんを……」

 

 驚きに、声が震えた。

 友人の容体が変わった。その向こうでも、また別の誰かが、呼び掛けに応えようとしている。

 

 藤林は、一人の担架から顔を上げた。

 浅く、不規則だった呼吸が整っていた。

 別の生徒も、同じだった。

 

 見えている光だけが、一斉に広がったのではない。

 重体だった人々の容体が、確かに変わっている。

 

「……これが、錬丹術」

 

 口にしてから、彼女はエドを見た。

 地面へ両手をつく少年が、これほどの人数を、一度に危機から引き戻している。

 

 その光景に息を呑みながらも、藤林は救護班を呼んだ。

 

「容体を確認して。今、全員に変化が起きているわ」

 

 五つの錬成陣から、光が薄れていった。

 人々を包んでいた輝きも、静かに消える。

 

 エドは両手を地面についたまま、大きく息を吐いた。

 

「……流れは、戻した」

 

 沓子が頷く。

 その先では、確かに乱れが収まっていた。

 

 陣の中に、咳き込む声が戻った。

 小さく呻く声も。

 さっきまで呼び掛けても動かなかった者達が、今は自分で呼吸し、指を動かしている。

 

 将輝は、吉祥寺の顔を見ていた。

 

 先程まで、ともに敵へ砲弾を撃ち込んでいた少年。

 その同じ手が、友人達の命を繋いだ。

 

「……あいつ、こんなことまでできるのか」

 

 呟いた声には、安堵と、隠し切れない驚きが混じっていた。

 

     ◆

 

 克人が最初に感じたのは、頬に触れる冷たい夜気だった。

 

 頭が重い。

 手足にも、力が入らない。

 

 それでも、先程まで頭の奥を裂いていた痛みは薄れていた。

 

「……っ」

 

 目を開く。

 ぼやけた視界の向こうに、達也の顔があった。

 

「十文字先輩。動かないでください」

「司波……?」

 

 声が掠れた。

 

 なぜ、ここにいる。

 そう尋ねようとして、直前の光景を思い出す。

 

 合成獣。

 頭部の光。

 崩れたファランクス。

 

「あの合成獣は……」

「倒しました。エドワード達が立てた作戦で」

 

 克人は、僅かに顔を動かした。

 石の柱に囲まれた場所へ、何人もの生徒が横たわっている。

 

 その中央で、エドが地面へ手を添えていた。

 隣には、沓子の姿もある。

 

「エドワードと四十九院さんが治療しました。今は容体を確認しています。先輩も、動かずに休んでください」

 

 克人は、呼吸を整えた。

 

「……避難は」

 

 達也の後ろから、藤林が答えた。

 

「誘導班が進めてくれたわ。今、ホテル側と最終確認をしている。あなた達が足止めをしてくれたおかげで、逃げる時間は確保できた」

 

 克人の目が、再び周囲へ向いた。

 まだ目を開けない者もいる。

 

 聞かなければならないことは、幾つもあった。

 だが、体を起こそうとした肩へ、達也の手が添えられる。

 

「あとは任せてください」

 

 克人は、その顔を見た。

 それから、中央のエドへ視線を移す。

 

「……頼む」

 

 短く言って、目を閉じた。

 

     ◆

 

 陣の中で、少しずつ声が戻り始めた。

 

「……将輝?」

 

 吉祥寺が、薄く目を開ける。

 呼ばれた将輝は、しばらく返事ができなかった。

 

 それから、大きく息を吐いた。

 

「ああ。俺だ」

「何が……起きたんだい?」

「後で話す。今は、寝ていろ」

 

 同じ頃、深雪のそばでも、雫の指が動いた。

 

「雫」

 

 呼び掛けに、僅かな反応がある。

 深雪は、その手をそっと握った。

 

 温もりがある。

 指先に触れる力は弱かったが、呼び掛けに応えようとしているのが分かった。

 

 深雪は、陣の中央を見た。

 合成獣の攻撃を凌ぎ、大砲を錬成した、その同じ手が、今は雫達を助けている。

 

(これほど多くの方を、一度の錬成で……)

 

 錬丹術による治療だと聞いても、すぐにこの光景を想像できたわけではない。

 離れた場所にいる友人の容体が、エドの術によって変わっていく。驚きと安堵に胸が詰まり、しばらく言葉にならなかった。

 

 将輝は、目を開けた友人へ視線を戻した。

 

「助かったんだな……」

 

 確かめるような声に、吉祥寺が小さく頷いた。

 

 目を覚ましても、すぐに立てるわけではなかった。

 吐き気を訴える者や、頭を押さえる者もいる。

 救護班が一人ずつ容体を確認し、搬送の順番を決めていった。

 

 エドは、両手を地面についたまま、もう一度全員の流れを確かめた。

 処置を終えた後も、異常が戻っていないことを確認する。

 

 沓子は、その間、道を保ち続けていた。

 疲労に震えそうになる指を地面へ押し当て、エドの言葉を待つ。

 

 やがて、エドが顔を上げた。

 

「……大丈夫だ。流れは落ち着いてる」

 

 達也が、近付く。

 

「こちらでも状態を確認している。意識が戻っていない者も、容体は落ち着いてきている」

 

 エドは頷いた。

 

「傷の手当てと、あとの検査はお願いします。これで全部済んだとは、言えないんで」

 

 藤林が、救護班へその言葉を伝える。

 エドは沓子へ向き直った。

 

「もう、切っていい。助かった」

 

 沓子の肩から、力が抜けた。

 

「……それは、こちらの台詞じゃ。繋いだだけでは、どうにもならんかったからの」

 

 地脈の道が、少しずつほどけていく。

 エドはそれを確かめ、地面から手を離した。

 

 立ち上がろうとして、膝が折れた。

 

「おい」

 

 達也が、肩を支える。

 

「……悪い。ちょっと、足に来た」

「ちょっとで済む顔じゃない。お前も診てもらえ」

 

 言い返そうとして、エドは息を吐いた。

 そのまま地面へ座り直す。

 

 深雪が沓子にも付き添い、救護班を呼んだ。

 

     ◆

 

「……エドワード君?」

 

 声に、エドは顔を上げた。

 

 担架に横たわった真由美が、こちらを見ていた。

 まだ顔色は悪い。

 それでも、目には意識が戻っていた。

 

「会長。起きたんですか」

 

「ええ……何だか、頭の中がぐちゃぐちゃになったみたいで……」

 

 言いながら、真由美は周囲を見た。

 石の柱。

 運ばれていく生徒達。

 泥と汗に汚れた、エドの顔。

 

「あなたが、治してくれたの?」

「四十九院と二人で、です。まだ検査は受けてくださいよ」

 

 真由美は、周囲へ目を向けた。

 服部が救護班の問いに答え、少し離れた担架では、栞がゆっくりと目を開けている。

 

「……私だけじゃないのね」

 

 エドが頷く。

 

「ノイズを受けた人達を、ここへ集めてもらったんです」

 

 真由美は、石の柱からエドへ視線を戻した。

 この人数の容体を、二人で改善させたというのか。

 

 錬金術の力には、何度も驚かされてきた。

 だが、今回目の前にあるのは、作り替えられた地形でも、強力な武器でもない。返事をし、目を開け、再び呼吸を整える生徒達だった。

 

「あなた達……本当に……」

 

 続けようとした言葉が、喉で止まった。

 

 真由美は、そばに座った沓子へ目を向けた。

 小柄な少女が、疲れた顔で笑う。

 

「お礼は、元気になってからでよいぞ」

 

 真由美の口元が、僅かに緩んだ。

 

「……ありがとう。二人とも」

 

 エドは、首の後ろへ手をやった。

 

「会長達が避難させてくれてなかったら、もっと大変なことになってましたから」

 

 担架が持ち上げられる。

 真由美は運ばれていく前に、もう一度こちらを見た。

 

「あなた達も、ちゃんと休んでね」

 

「はいはい」

 

 エドが返す。

 真由美は少しだけ眉を上げたが、もう叱る力は残っていないようだった。

 

 その担架を見送って、エドは深く息を吐いた。

 

 戦車の残骸は、まだ燃えている。

 戦闘の跡も、消えてはいない。

 救護班の動きも、しばらく止まらないだろう。

 

 それでも、今は名前を呼べば、答える声がある。

 

 将輝が、吉祥寺の担架に付き添って歩いていた。

 深雪は、救護班に呼ばれた沓子へ手を貸している。

 

 達也が、エドへ手を差し出した。

 

「立てるか」

「ああ。今度は、大丈夫だ」

 

 その手を借り、立ち上がる。

 

 死ぬな。

 必ず、生きて戻れ。

 

 あの言葉を告げた克人も、担架に乗せられ、救護所へ向かっていた。

 

 エドは、その背中を見送った。

 

 今度は、自分達も戻る番だった。

 




すみません。

書き溜めここで終わりです。

では、また∠( ゚д゚)
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