IS×SAO 黒白と共に駆ける影の少年   作:KAIMU

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 Fateのアポクリファ、アニメ始まりましたね。内山さんに松岡さん……作者の好きな声優さんが多数出演しているのでこれから楽しめそうです。


三話

 「これより授業を……いや、その前にクラス代表を決めなければならなかったな」

 

 教卓の前に立った千冬が思い出したようにそう言ったが、一夏は何の事だかよく分からなかった。とりあえずクラス長みたいなものだろうと思われるが……やはり不明な事は聞くべきだ。その為思い切って手を上げて質問した。

 

 「ちふ……織斑先生、クラス代表って何ですか?」

 

 「文字通りクラスの代表だ。来月行われるクラス対抗リーグマッチに出場してもらう他に、各種委員会の会議や打ち合わせにクラスの顔として参加してもらう。大雑把に言えば、学級委員のようなものだ。自薦他薦は問わんが、決定したら一年間は変更が効かないからそのつもりでな」

 

 面倒くさそう、と言うのが一夏の率直な感想だった。KOB副団長だった明日奈はともかく、一夏は自分では纏め役が務まらないだろうと思っている。誰か適当な女子がやってくれないだろうかと淡い期待を抱いたが―――

 

 「はい、織斑君を推薦します!」

 

 「私も!」

 

 「うぇ!?」

 

 ―――一秒にも満たない時間で、それは裏切られた。予想していなかった事に一夏は驚き、思わず後ろを振り返った。

 

 「私は桐ケ谷君を!」

 

 「お、俺!?」

 

 丁度その時、和人までもが推薦された。だが彼は最初こそ驚いたものの、すぐに平静をとりもどす。一方で一夏はどうすればいいのか分からずに狼狽えてしまう。

 

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!オレは―――」

 

 「―――自薦他薦は問わないと言った。指名された以上拒否権は無い」

 

 「お、横暴ですよそれ……」

 

 和人の指摘もどこ吹く風といった様子で、千冬はクラスを見回す。

 

 「他にはいないのか?なら織斑と桐ケ谷の決戦投票に―――」

 

 「―――待ってください!そのような選出は認められませんわ!」

 

 机を叩いて立ち上がったセシリアは、声を張り上げた。するとクラス全体が水を打ったように静まる。

 

 「実力からすれば、わたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいなどと極東の猿にされては困ります。大体、男が代表というだけでもいい恥さらしですわ!」

 

 言っている事は間違いではないが、少々言葉に問題があった。代表候補生である彼女の実力はクラスでもトップであろうことは誰でも分かるだろうし、物珍しいという理由だけで和人達を推薦したクラスメイト達だってほとんど考え無しであっただろう。

 

 (確かに間違ってないし、引き受けてくれるならありがたいけど……もうちょい言い方ってのがあるんじゃないか?)

 

 約半数の生徒が日本出身のこの場で極東の猿などと言ってしまえば、クラスの大半を敵に回す事になる。セシリアはそれに気づいていないのだろうかと心配してしまう辺り、一夏はお人好しである。

 

 「わたくしはISを学びに来ているのであって、サーカスをする気など毛頭ありませんわ!大体、文化的にも後進的な島国で暮らさなくてはならない事自体耐えがたい苦痛で―――」

 

 「―――オルコット、それ以上はお前の立場を悪くするだけだぞ?」

 

 いよいよ怒る者が出てくるのではないかと思われたその時、千冬がセシリアに制止をかけた。世界最強たる彼女の眼光に射抜かれて、なおも暴言を続けられる者はまずいない。

 

 「全く……突っ走るのは十代の特権だが、度が過ぎる。お前はイギリス代表候補生なんだ。軽はずみな言動一つで祖国を巻き込む外交問題になりかねん事を自覚しろ」

 

 決して大きくは無いが、聞き流す事など不可能なほどの圧力が、千冬の声には宿っていた。セシリアは漸く自分の過ちに気づき、顔を俯かせる。

 

 「えーっと、織斑先生。投票は……」

 

 「このままやっても男子共に票が集まるだけだろう。そこで一週間後、この三名で模擬戦を行う事とする。その結果を参考に、お前達が投票すればいい。以上だ」

 

 千冬はそう言うと、何事も無かったかの様に授業を始めようとする。だがその時、一夏はある事を思い出して声を上げてしまった。

 

 「って男子達つっても巧也が入ってねぇじゃん!」

 

 「「「あ!」」」

 

 「一人忘れてたぁ!」

 

 「推薦しとけば男子全員の模擬戦見れたのにぃ!」

 

 「やかましい!授業中だと言った筈だ!!」

 

 一夏を含めた十数人の生徒の頭へと、千冬が投げた出席簿が襲い掛かったのだった。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 その後の授業は辛うじて食らいついていけたが、昼休みに入った途端に一夏は再び机に突っ伏した。まだ午後の授業があるが、それでも疲労困憊である。

 

 「お、終わったぁ……」

 

 「お疲れさん」

 

 和人が労いの言葉と共に、軽く一夏の頭を撫でる。SAOにいた頃幾度となく行ってきたためか、彼の手つきは慣れた物だった。

 

 「ほら、メシ食いに行こうぜ。俺さっきから腹減ってしょうがないんだよなぁ……」

 

 「……先に行っててください。オレ行く所あるんで」

 

 「お、そうだったな。じゃあ食堂で落ち合おうぜ」

 

 「はい、また後で」

 

 同じ授業を受けた筈なのに、明日奈を隣で支える和人はケロッとした様子だった。そのまま二人は共に寄り添いながら教室を後にする。その後ろを巧也が見守る様についていくと、教室の男子は一夏のみとなった。

 

 「……うし、行くか!」

 

 「れっつご~」

 

 いつまでも休んでいる訳にはいかない。疲れはまだあるが、それでも何とか立ち上がった一夏は教室を後にした。その左腕に本音がくっついてきたが、彼は特に気にしなかった。元々本音は親しい者によくひっつく癖があり、SAOでもそれは変わらなかった。一夏自身も最初は驚いて緊張したが、いつからか慣れてしまい気にならなくなったのである。

 

 「そういやのほほんさんって意外と切り替えすごいよな。リアルとALOで呼び方間違えないし」

 

 「まぁね~。おりむーは直らないの~?」

 

 「うーん……なんか気づいたらキリトさんって呼んじまってんだよなぁ……こっちじゃ和人さんって呼ばなきゃいけないのに……」

 

 「ちょっとずつ直していけばいいと思うよ~」

 

 そのまま雑談を続けながら廊下を歩く事しばし。ある教室の前で、二人は立ち止った。

 

 「一年四組……ここなんだよな」

 

 「そだよ~。かんちゃーん!」

 

 一夏から離れた本音は扉の前に立ち、一人の少女を呼ぶ。教室の奥、窓際最後列の席で黙々とホロキーボードを操作している小柄で華奢な少女だ。

 内側にはねた水色の癖毛と赤い瞳が特徴的な彼女の名は、更識簪。一夏達と同じくSAOサバイバーであり、ゲームクリア後に日本の代表候補生となった才女である。候補生としての試験を受けるチャンスこそ家のコネだが、クリアから僅か数カ月の状態で合格をもぎ取ったのは紛れもなく簪の力だ。

 

 「かんちゃーん?」

 

 候補生なので当然彼女にも専用機が与えられたのだが……開発元の諸事情により、未完成のままなのだ。その為簪は自力で完成させようとしており、今現在もその作業に没頭していて本音の声に気づいていなかった。何事にも真剣に頑張る彼女を一夏は好ましく思いながら呼ぼうとすると、それよりも先に本音が三度簪を呼んだ。

 

 「おりむーも来たよー!」

 

 「!?」

 

 すると彼女は、はた目から見ても分かる程にビクリと反応し、慌てて周囲を見回す。そんな様子が可愛らしく、一夏は顔をほころばせながら声を発した。今の自分の影響力などすっかり忘れて。

 

 「おーいカンザシ、メシ食いに行こうぜ?」

 

 「わ、わわ……」

 

 「?」

 

 いつもならもっと落ち着いている筈の彼女が慌てているのが不思議で、一夏は思わず首を傾げる。間が悪かったのかと思った瞬間―――

 

 「おおおお織斑君が4組に!?」

 

 「しかも更識さん目当て!?まだ初日よね!?!?」

 

 「二人の間に一体何が!?」

 

 4組に残っていた女子が一斉に騒ぎ出し、それにつられる様に何処からか他のクラスの生徒達もワラワラとやって来たのだ。あっという間に人だかりができてしまい、一夏は己の失態にやっと気づいた。

 

 「ウソだろ……もう囲まれた!?」

 

 まるでアラームトラップにかかった時のような、少女達の異常なポップ率。それに度肝を抜かれた彼だったが、SAOでの戦いの日々が思考停止になる事だけは阻止してくれた。

 

 「あぁもう!こうなりゃ強行突破だっ!!」

 

 ……とはいえ元々一夏は考えるよりも先に体が動くタイプ。今すぐこの場から離れるべきだという直感に従い、簪と本音の手を引き走り出す。

 

 「とっつげき~」

 

 「あぅ……」

 

 ノリノリな本音と、羞恥から顔を紅くして俯く簪。そんな二人を気にしながらも、一夏は全力で走る。幸い少女達は呆気に取られていた為か、一夏が近づくとどいてくれたので、抜け出すのは容易だった。

 

 「……って織斑君が逃げたー!」

 

 「更識さん達ちゃっかり手ぇ繋いでるし!」

 

 「者ども、追えぇー!!」

 

 だがソレも、彼女達が再起動するまでだった。正気を取り戻した少女達に追われながら、一夏は和人達がいる筈の食堂へと向かうのだった。

 

 (……っていうかコレ……キリトさん達にトレインしてんのかな……?)

 

 延々と追ってくる女生徒達をmob、自分達をプレイヤーと考えれば、割と納得できてしまいそうだと場違いな事も考えながら。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 何とか追跡を振り切り、食堂に着いた一夏達。各々が選んだ昼食を自身のトレーに乗せ、先に食事をしている筈の和人達を探して……ある一角に目が留まった。

 

 (……何であそこだけ空いてるんだ?)

 

 昼時で食堂内はごった返しているというのに、なぜかそこだけ空いているのだ。一夏はそれを不審に思ったのだが―――

 

 「キリト君、それ一口ちょうだい」

 

 「今の明日奈なら……これくらいか。はい、あ~ん」

 

 「ん……美味しい」

 

 「じゃ、明日奈の方からちょっと貰っていいか?」

 

 「いいよ。はい、あ~ん」

 

 ―――イチャつく和人と明日奈(ふうふ)の姿を見て納得した。こんなダダ甘な空間の近くで食事など、耐性のない者には拷問に等しい。その為女子生徒達は安全圏まで退避し、この一角が空いたのだ。……唯一巧也だけが二人のイチャイチャを微笑ましそうに見守り、共に食事を取っていたが。

 

「ああ、三人とも。こっちです」

 

 「お、おう……」

 

 あの二人の激甘な空気に平然としている巧也に驚きつつも、和人達のいるテーブルへと着く一夏達。明日奈と和人の隣で食事を摂るのは初めてではなく、何度も経験しているので大丈夫だ。

 

 (アスナさん……恥ずかしくないのかなぁ……?)

 

 かつては超鈍感な和人を振り向かせるために色々とアプローチをしていた明日奈だが、今日は普段にも増してオープンになっている気がするのだ。和人もそれに伴ってイチャついているようで、彼らに羞恥心は無いのだろうかと思わずにはいられず…………反面、その積極性を見習いたいとも思っている一夏である。

 

 「うめぇ!流石IS学園、色々金かかってるんだなぁ……」

 

 「うん……美味しいけど、アインの手料理、また食べたいな……」

 

 「え!?ま、まぁ……そのうち、な?」

 

 和人達の空気に当てられたのか、若干紅い顔で呟いた簪。普段めったに我儘を言わない故に、一夏にとっては不意打ちだった。しどろもどろになりながらも、この愛しい少女に何を作ろうかと思案する。

 

 ―――パチン

 

 「っ!?」

 

 だが次の瞬間、背筋に悪寒が走った。場所は解らなかったが、ほぼ嫉妬による視線を向けられているのは理解できた。

 

 「アイン?」

 

 一夏の異変を敏感に感じ取った簪は、心配そうに彼の顔をのぞき込む。必然的に二人の距離は縮まり、結果として一夏に向けられる嫉妬がより強くなってしまう事に彼女は気づいていない。

 

 (ヤバイヤバイヤバイ……!カンザシに迷惑かけらんねぇし……けどどうすりゃいいんだ?)

 

 身の安全を図るなら、簪に離れる様に言うべきだろう。だがそれは彼女の厚意を無碍にする事に他ならず、今己を妬む者に別の意味で狙われるだろう。つまりどうあがいても一夏の運命は―――

 

 「覗きなんて趣味が悪いぞ刀奈」

 

 「え?」

 

 ―――ニヤリと笑う和人によって、何とかなってしまったりするのだった。

 

 「今は楯無よ!そっちの名前で呼ぶなって散々言ったでしょ!!」

 

 「わぁ!ど、何処から出てきたの!?」

 

 突然の事に驚く明日奈の反応は至極まっとうなものであったが……実は既に、彼女以外にとってはお馴染みだったりする。何処からともなく現れたのは、簪と同じ色合いの髪と瞳が特徴的な少女。だがその髪は簪と違って外側へ跳ねた癖毛であり、活発的な印象を与える。

 彼女こそが、簪の姉にしてIS学園生徒会長、更識楯無である。

 

 「つってもなぁ……こっちが寝てる間にお前が楯無になってたとか、何をトチ狂ったのかロシアの国家代表になってたとか、突っ込みたい所が色々あり過ぎて実感無いんだよなぁ……」

 

 「こっちだってあんたに彼女ができたのが未だに信じらんないわよ!色恋に興味すら無かった筈の朴念仁な和人はドコいったのよ!?」

 

 「な!?それはお前の偏見だろ!今の発言には断固抗議するぞこのシスコン!!」

 

 「あぁん!?あんたこそスグちゃんが大事じゃないの!?妹を愛して何が悪い!!」

 

 普段は眉目秀麗、才色兼備を体現している天才少女なのだが……妹である簪の事になると動揺しやすいのが玉に瑕だ。

 事実、簪に男ができたと知った時は卒倒した程、そっちの事ではガラス細工並みに脆い。

 

 「え、えっと……こんにちは、でいいのかな?楯無ちゃん」

 

 「ええ、こんにちは。このバカ(かずと)が何か迷惑かけてないかしら?」

 

 気さくに話かける明日奈に対し、楯無は先程とは打って変わった朗らかな声で答えた。その事に和人が何かを言う前に―――

 

 「……お姉ちゃん……覗いてた、の……?」

 

 「うぇ!?あ……いや、偶然よ偶然!ご飯食べ終わったら簪ちゃん達見つけただけで……」

 

 俯きながら立ち上がった簪からは、言葉にできない圧力があった。愛する妹に問い詰められた姉は、後ろめたい事があるのか、しどろもどろな答えしか返せず……

 

 「嘘つきなお姉ちゃん……嫌い」

 

 「ひぎゃあああぁぁぁ!!」

 

 決定的な一言により、打ちのめされた。恥も外聞も無く泣き叫び、何処かへと走り去ってしまった。

 

 「も、もうちょっと優しくしたら?簪ちゃん」

 

 「だって……お姉ちゃん全然懲りないんだもん」

 

 「そ~そ~、きっとお姉ちゃんが~何とかしてくれるよ~」

 

 簪の、実の姉への態度に思わず苦笑する明日奈。和人は自業自得とばかりに頷き、一夏は合掌。本音に至ってはこの場にいない姉の虚に丸投げである。

 

 「楯無さんが一夏の事をよく思っていないのは、仕方がありません。少々シスコンをこじらせてしまって……簪を独占してる一夏に嫉妬してるんですよ」

 

 「独占って……全然そんなつもりねぇんだけどなぁ……」

 

 ずるずると椅子の背にもたれる一夏は、疲れた表情でそんな言葉を零した。その様子を見て、巧也も困ったような笑みを浮かべる。

 

 「あぁ、失礼しました。訂正しますと、簪の笑顔……いえ、心を独占してるんですよ」

 

 「ちょ、た、巧也!そんな……はっきり……」

 

 瞬時に顔を真っ赤にして俯く簪。一夏も一夏でそんな彼女にドキッとし、頬を紅く染める。咄嗟に顔をそらし頬を掻くその姿は、実に初々しい。

 

 「ふふっ……簪も、素敵な人とめぐり会えましたね」

 

 「……うん」

 

 小さくも、しっかりと頷いた簪。はにかむように笑う彼女はとても幸せそうで―――SAOに囚われる以前の暗さは無くなっていた。

 

 (本当は楯無さんも、一夏に感謝しているんですけどね……)

 

 簪の笑顔を取り戻し、姉と向き合う勇気を与えてくれた一夏。楯無とて、妹を救ってくれた彼には感謝しているし、彼が簪に抱く想いがどれほど色濃く、強いものなのかわかっている。わかっているのだが……今はまだ、感情の整理がつかず、妹を取られたと駄々をこねている状態なのだ。

 しばらく理不尽な目に遭うであろう一夏を支援しようと、割と本気で胃腸薬等を準備する事を考える巧也であった。




 最近になって急に暑くなってきましたね……熱中症とかが怖いので、皆さんも体調管理は気を付けましょうね。
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