コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
皇歴2017年9月1日 黒の騎士団潜伏地
TVの画面に皇国議会で演説する大高の映像が映る。
『我々の戦いは新たなる局面へと移り変わろうとしています!奥羽解放はその第一歩です!世界は今、ナチスとブリタニア…そしてそれに追従する国々。そして、彼らの支配に抗うもの達の二つに別れようとしております!!来たる時は近い!!我々はその時に備えねばなりません!!』
映像が切り替わりスタジオのキャスターが語りだす。
『北のテロリストの首魁大高はブリタニアへの敵意を露わにしております。』
扇は視線をテレビから持っていた弁当箱に移す。
そこには自分が少しばかり、否、だいぶ気を寄せている女性の手作りのお弁当が入っている。
手作り弁当だ。日本がエリア11と呼ばれるよりも前、自分が上京した時に親にも持たされたものが自分の中での最後の記憶だ。
若干の浮ついた気持ちがあったが、ふたを開けてみて入っているタコさんウィンナーを見て思わず。これじゃあ、教師時代によく見た、生徒の弁当だなと思わず笑みをこぼしてしまった。
「お客さんですが…、キョウトの紹介状もあります。」
「んっ!?!?!?」
そんな瞬間に黒の騎士団の仲間である井上に話しかけられて、若干動揺しながらもすぐに取り繕う。
「まさか、四聖剣の!?」
扇が挨拶として頭を下げた。日本人の一般人の癖とでもいうのだろうか。
一方の四聖剣の面々は軍人ゆえなのか。ただ単に、急用で時間が惜しかったのからか。挨拶を省いて本題に入る。
四聖剣の一番年かさの男性、仙波崚河が代表して話し出す。
「お力を拝借したい。藤堂中佐が俘虜とされた…我らを逃がす為に一人犠牲となって…。だが、我々だけでは難しい。黒の騎士団の力を借りたい…。」
「わ、わかった。ゼロに連絡する!」
扇は四聖剣の面々をベース車両の中に案内し、ゼロに連絡を取った。
アシュフォード学園階段踊り場
「黒の騎士団は正義の味方だ。不思議はないだろう?集結方法はB-30、機体はバラして18方向から行け。ディートハルトに仕切らせろ。合流予定のメンバーにも伝えてくれ。」
ルルーシュは携帯を切る。もちろん、傍受できないうえに記録も残らない特別製だ。その携帯を切ると一瞬だけ外を見たが、C.C.に声を掛けられ視線を向ける。
「すまなかった。中華連邦へは…」
「問題ない、すべて組み直した。気にするな…お前の利用価値が変わると計画に差し支える。それより、今日は念願の駒が2つ揃う…できればもう一人。」
ルルーシュの視線の先にはスザクの姿があった。
トウキョウ租界軍事区画
「本日は、藤堂京志郎の処刑日ですが?」
この軍事区画ではコーネリア直々に軍の再編を指揮しており、その合間でギルフォードの当日の予定を知らせられる。
「立ち会う必要はない。それよりも今は北海道軍をどうするかだ。それに九州の方でも怪しい動きがある。」
「わかりました。ではその様に…」
「そうだな、銃殺の執行はあの男に…。」
「総督!」
そう言って刑の執行者にスザクを指名した時、ちょうど妹のユーフェミアが話しかけてきた。
「すまないな。急で…美術館の方は良いのか?」
「式典は午後からなので…。イシカワで不穏な動きってNACが…」
「バックにいるのは北海道か中華連邦だろうな。ガン・ルゥを確認したそうだ…。だが、これは北陸を安定化させる機会でもある。眼前にいる北海道軍と相対すためにも可能な限り後方は安定化させたい。こちらにはダールトンを残しておく、それと以前出ていた話だが…。」
そう言ってコーネリアはファイルをユーフェミアに渡す。
「はぁ…??…っ」
コーネリアから渡されたファイルに目を通し、さらにコーネリアから言われた言葉にわずかながら眉を顰めるユーフェミア。
「お前の騎士は、ここから選ぶといい。家柄も実力も確かだ。」
ブリタニアでは珍しい家柄と言った建前上のものより人間の内面を見て判断する彼女には思うところがあった様である。
トウキョウ租界一般地区美術館
「今回の美術館建設ではイレブンの業者が排除されたとのことですが?」
「えっと…それは…。」
「その案件は目下調査中である。」
「近々、騎士をお決めになるようで?」
「騎士は…わたくしには…その…。」
「今回は美術館に関する会見ですので美術館に関するご質問だけでお願いします。」
ユーフェミアは何とか答えようと声を絞り出すが、お付きの政務官が遮り代わりに答える。
姉コーネリアと違って果断決断が出来るような強い発言がない姉の陰に隠れる妹。
「ばかねぇ。ユーフェミア様に政治の話なんて…」
「でも、自分の騎士くらいは…」
「それも含めてだよ。」
記者たちの陰口が聞こえたような気がした。
それが今のユーフェミアの世間の評価でもあった。
トウキョウ租界某所高架下
「いいのかな?黒の騎士団と手を組んじゃって…。」
「他にいい手があるの?」
「キョウトの言葉でもある。それに北海道も解放戦線も黙認するみたいだ。」
「でも、主義主張がちょっと違うような。」
「私たちは民族主義者じゃない。解ってるくせに…」
「細かい事は中佐を助け出してからだな。」
四聖剣の中でも黒の騎士団との協力は大元の日本皇国や解放戦線の主義主張と違っているため彼らの中でも思う節はあるらしいが、仙波の一言『中佐を助けてから』がすべてを述べていた。
「もう!いいから詰め込んで蓋閉めちゃえよ!出撃まで時間がないんだからさぁ!!」
玉城が適当にやってとっとと終わらせろと急かしていると横から口出しが入る。
「ちょっと!もっと丁寧に扱いなさいよ!あんた達の100倍デリケートに生んだんだから!」
白衣を着た女性が数人の白衣姿の人間を連れて立っていた。
「誰だ!あんた!?」
「間に合ったようだな。」
玉城の声を完全に無視してゼロ(ルルーシュ)が彼女に声を掛ける。
「あんたがゼロ?よろしく、噂は色々聞いているわ。」
「こちらこそ、ラクシャータ。以前ネットで拝見したよ。医療サイバネティック関係の記事をね。」
「昔の話は嫌い。それよりこれ、京都土産よ。」
ラクシャータは肩を鳴らしながらカギを取り出し、それで部下の科学者に運ばせていたケースを開ける。その中にはKMFのパイロットスーツが数着は入っていた。
薄そうな見た目の割には衝撃吸収率は既存のどのスーツや軍服よりも上であった。
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設 施設内
「死刑執行人が変更になった枢木スザク准尉だそうだ。良かったな…知り合いで…」
刑務官の言葉を聞いた藤堂は今までずっと下を向いていたがその瞬間だけは上を向いて本能を示した。
一方で施設の応接室では最初こそ覚悟を決めていたが何枚もの書類を書かされていくうちに自分がしようとしていることの恐ろしさを感じた。戸惑いや躊躇などが綯い交ぜになった何かをであった。
そんな時、収容施設の壁と施設の一部が爆発する。
スザクに付き添っているロイドはそのスザクに気が付いていないのか、あえて無視しているのかは分らないが、面倒な書類仕事は喜んでいた。
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設
防壁が爆発して破られる。
十数機のサザーランドがKMFの収容倉庫から飛び出す。間もなく、突入してくるレジスタンスに応戦するためだ。うち数機が爆煙の中に突入して行くが、まもなく彼らは返り討ちに合う。そして爆煙から4機の月下が突入して残りのサザーランドに切り込んでいき壊滅させる。
第一陣が壊滅し第二陣のサザーランドが展開する。警備要員の部隊とは言えブリタニア軍、展開の速さは流石である。
だが、前線のベテラン相手でも多対一が基本の四聖剣相手に拠点防衛の警備隊では相手にならない。
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設 施設内
藤堂の牢屋の前に銃を持った刑務官が現れる。
黒の騎士団の襲撃で処刑が急遽簡略化されたのだ。
「藤堂残念だが、敵に奪われるならこちらでとのことだ。」
「一度は捨てた命だ。惜しくはない…。」
「ならばその命、私がもらい受ける!」
「なっ!?うわあぁあ!?」
壁が崩れ刑務官が押しつぶされる。
そこから現れたのは黒の騎士団を率いたゼロであった。
「藤堂京志郎、旧日本軍においてブリタニアに唯一土を付けた男。」
「厳島の奇跡。貴様も私に奇跡を望むのか?」
「厳島の奇跡は奇跡ではない情報収集による戦術的成功だ。だからこそ貴様が欲しい…。」
「主君と定めた片瀬少将は北海道へ籠られてしまった。」
藤堂が再び目を伏せるとゼロは大きく叫ぶ。
「甘えるな!貴様は責任を取らなくてはならない!奇跡を起こした責任を!エリア11の抵抗が他のエリアより格段に激しいのは日本が余力を残しているからだ。厳島の奇跡、来島の奇跡、北海道の復活と言った奇跡を起こしてしまった。夢の続きを人々に見せなくてはならない夢を見せた一人として…。」
「私のせいだと?」
「そうだ。人々は奇跡という幻想を抱いている。だからこそリフレインが蔓延しているのではないか?」
「足搔け!藤堂!最期までみっともなく足搔いて、そして死んでいけ!奇跡の藤堂と言う名がズタボロになるまで!」
「そして、民衆に負けを認めさせるのか?」
「だが、私は幻想を現実にしてしまうだろうがな。」
そのゼロの言葉に藤堂は本当に幻想を現実に変えられるのではと言う思いを抱けるほどのものを感じた。
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設
藤堂も専用の月下に乗り込む。
「みんな!世話を掛けさせたな!」
「中佐!」「お帰りなさい藤堂さん!」「安いものです!」
「ゼロに協力する!ここの残存兵力を叩くぞ!」
「「「「承知!」」」」
藤堂達がゼロに合流する。
(これで、欲しい手駒が揃った。ナナリーの騎士も決まった……後は…)
「これはこれは…。残った問題が自ら来てくれるとは…。」
そして、そんなゼロの前には白兜、つまりスザクの駆るランスロットが現れる。
トウキョウ租界一般地区美術館
ユーフェミアが展覧会の大賞を決めようとした時。記者たちの携帯が鳴り出す。
ダールトンに下士官が耳打ちする。それを聞いたダールトンは驚きを隠せないと言わんばかりに反応する。
「なに!?調布に!?」
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設 施設内
藤堂と四聖剣の月下5機とカレンの紅蓮とルルーシュの無頼を相手にランスロットは僅かに劣勢に感じる程度でほぼ対等に戦って見せた。
施設の中にある一般棟のひとつから双眼鏡を持って様子を伺うロイドとセシル。
「あらぁ~すごいじゃない。と言っても北海道の兵器に比べるとインパクトに欠けるけどね。でも、敵の新型機もすごいもんだよね~。あれ、サザーランドの倍近くはあるよね?出力も機動性も…。まぁ、結果論だけど…うちの移動手段がトレーラーだけってのはラッキーだよね。」
「予算をみんな、ランスロットに回したからですよね。結果的に…」
ロイドの問いに不安そうに答えるセシル。スザクを心配してかロイドの問いには相槌程度にしか答えていない。
そして二人は再び戦場に視線を戻す。
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設近郊 移動拠点内
「あれかい?ゼロが梃子摺ってるっていう新型かい?ふーん。」
ラクシャータは画面に映る白兜、ランスロットを見て旧友ロイドの姿を思い出していた。
トウキョウ租界一般地区美術館
映る画面にはランスロットが黒の騎士団の7機に対して大立ち回りしている姿が映し出される。ダールトンは電話越しにブリタニア政庁の政務官に戦闘の様子を流すように命じる。
1対7でほぼ対等に戦っているランスロットである。仮に負けてもこの戦力差であそこまで出来るのであれば広告塔としてもこれだけ優秀な機体があるとして十分な宣伝効果になるはずである。
「そうだ。全部流させろ。枢木を援護しテロリストを壊滅させるところを報道させるんだ。」
北海道函館総理大臣公邸
この映像は全国放送であった為、北海道でも傍受することが可能であった。同様の内容が北海道のテレビ局を通じて一般家庭でも流されていた。その中のひとつである総理大臣公邸では大高とその妻、そして事態を伝えに来た公設第一秘書の三浦藍佳の3人で見ていた。
「ゼロに従っているのは旧日本国軍の藤堂京志郎中佐と彼を慕う四聖剣の様です。首相、官邸に閣僚を集めますか?」
「いえ、これが終わってからでもよいでしょう。他の閣僚たちも映像を見ているでしょうから、話し合いはその後でも遅くはありません。それに藤堂京志郎…奇跡の藤堂の復活劇は国民に活気を与えるでしょうから、こちらとしても好都合です。」
「はい、わかりました。」
「ですが、木戸外相には連絡を取っておいた方がいいかもしれません。今まではキョウトを通じた接触でしたが、藤堂氏を組み込んだとなると黒の騎士団は国内のレジスタンスを主導する立場になる。放っておけば日本解放戦線と違って我々の制御から完全に外れた存在になりかねません。今のうちに直接交渉できるパイプが必要です。ある意味では旧日本国軍人の藤堂氏や四聖剣を組み込んだのは幸いでした。」
大高は葉巻に火を点け、画面に視線を戻した。
トウキョウ租界チョウフ政治犯収容施設
ゼロの巧みな指揮によってランスロットが追い詰められていく。
そして、幸か不幸か操縦室付近の装甲がはぎとられた。
そこから姿を現したのは日本国元総理枢木ゲンブの息子スザクであり、アシュフォード学園のルルーシュとカレンの学友である枢木スザクの姿であった。
『ゼロ!早く指示を!』
動揺の声がうかがえるカレンの言葉をよそにルルーシュもそれ以上に動揺していた。
(今までのが全部…スザク!?)
トウキョウ租界一般地区美術館
スザクの姿が晒され、まさか新鋭機のパイロットがイレブンとは思っていなかった記者たちは驚き動揺していた。記者たちの口から罵詈雑言の類も聞こえる。
「今すぐ映像を消せ!」
「待ってください!見届けたいのです。」
ダールトンは慌てて映像を消そうとするが、ユーフェミアがそれに待ったを掛けた。
ランスロットが藤堂の月下と何度か討ち合った後。付近の基地から集結してくるブリタニア軍の姿を見て撤退して行った。
それを見たユーフェミアは心の中で賛辞を贈った。だが、そんな彼女とは裏腹に記者たちは黒の騎士団を撃退したはずのスザクをわざと逃がしたなどと罵詈雑言を浴びせ掛けていた。
(どうしてこの人たちは、そんなひどい事をいえるの!?あれだけの敵を撃退したのに!?)
ユーフェミアは自分勝手な彼らの姿を見て、恐らくは衝動的に口走ってしまった。
「皆さん、聞いてください!先ほどの質問にお答えします!わたくしが騎士となる方を決めたかでしたね。わたくしが騎士としたのは、あそこにいる御方。枢木スザク准尉です!」
記者たちから驚きの声が上がる。
だが、後悔はなかった。
トウキョウ租界某所高架下
撤退してきたゼロ達は高架下に身を隠す。
「ゼロが出てこない?」
「そうなのよ。さっきからいくら声を掛けても応答がないのよ。」
「ん?」
「どうした?」
カレンはゼロの様子がおかしいと扇に声を掛ける。二人が相談をし始めた時、彼女の通信機からゼロの笑う声が聞こえた。
『ふっくくくくくくっくはははははは!ははははははっは!!』