コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
ユーフェミアによる行政特区日本構想の発表は世界規模での混乱を引き起こすことになる。
皇歴2017年9月12日~13日 北海道函館 総理大臣公邸~首相官邸
「な、なんと…。」
大高はテレビの映像を見たまま、固まっていた。
全くの予想外、天才の領域に片足を突っ込んでいる。秀才中の秀才であった大高であったが、ユーフェミアの存在を軽視していた。宰相シュナイゼルや姫将コーネリアこそ要注意としていたために、軍政共に疎いユーフェミアはノーマークであった。大高の認識でも、スザクと言う有用な手駒を偶々手に入れたにも関わらず遊ばせている素人であった。
素人だからこそできる。突拍子もない手段か。
とりあえず、大高は葉巻を灰皿に押し当てる。どうしたものか…。
「大高首相、緊急の要件にて失礼します!」
首相である大高の個人スペースでもある総理公邸に数人の男たちが乗り込んでくる。
総務大臣桜坂万太郎を先頭に、官房長官赤坂秀樹、片桐光男・矢口蘭堂の二人の副官房、外務大臣木戸孝義、他数人であった。
「閣下、ユーフェミアの宣言、非常に厄介な事態です。」
「わかっています。」
赤坂の言葉にわかり切ったことをと、大高は応じる。
「行政特区の登場によって、占領地内のレジスタンスは勢いを失い、恭順派が勢いづいています。」
「我々が掌握している、日本解放戦線他、諸レジスタンス連合も動揺が大きくあります。」
「だからと言って、我々が恭順するわけにはいきませんぞ。」
木戸が、今後の外務省の動きを説明する。
「閣下、キョウトも恭順に動くとのことでした。外務省としては今後の動静によっては、和平もしくは停戦も検討しなくてはいけなくなるかもしれません。継戦をお望みなのでしたら、ロシア他同盟及び協力国との団結を計る必要があると思います。」
大高は手を顎にあて、思案に入る。
「そうです、その通りです。ですが、別の視点から見れば、ユーフェミア程の穏健派はブリタニアにはそういないでしょう。ブリタニアと政治的な決着をつけることが出来る唯一の機会と言えなくもありません。」
木戸の言葉に、赤坂が言葉を重ねる。
「もし、ゼロがユーフェミアに恭順した場合。我が軍では関東州の防衛線を抜けません。ゼロが恭順しなくても、黒の騎士団の自壊は時間の問題になります。和平を考えなくては…。」
「ですが、現状で和平を行えば、圧倒的不利に条件を突き付けられるでしょう。」
2人の副官房の言葉で、彼らの言いたいことが分かった。
「戦果ですか…?」
「黒の騎士団が沈んでも、北海道は沈まず。これを連中にわからせなくてはいけません!大高首相、現在進行中の全ての軍事作戦の繰り上げを進言します!和平するにしてもブリタニアに大きな深手を負わせるべきです!」
今度は、桜坂が若干大袈裟な身振りで訴える。
「なるほど。ここで我々が、簡単に折れれば日本のみならず、世界の情勢にも影響が大きく出てしまいますな。いいでしょう…計画の繰り上げを行いましょう。であれば、ロシアと連絡を取らなくては、レジスタンス勢力も、でしたか。それと、ブリタニアのユーフェミアとも和平窓口を作らなくては…、中華連邦を介するしかないですな。使者は誰を立てるべきでしょうか。適当な人間を送るわけにもいきません、難題ですな。」
それを聞いた大高は一応の対応策を述べた。人選については周囲に意見を求める。
「レジスタンスへの対応は後に回して、ロシアへは副大臣、最低でも全権大使でなくては話になりません。中華連邦には駒条宮様を送るのが妥当でしょう。」
赤坂が2人の候補を挙げたが、片桐が待ったを掛ける。
「危機管理情報局としては、駒条宮様訪中は危険であると具申します。中華連邦本国は反ブリタニア有力将校であった曽の失脚で、ブリタニア迎合派が勢いづいています。万が一、中華連邦本国が駒条宮様の身柄を抑えて、ブリタニアに差し出すようなことになっては目も当てられません。」
片桐の反対意見を聞いた矢口が、駒条宮の外交交渉先を提示する。
「ですので、駒条宮様は台湾に渡っていただき台湾軍区と交渉して頂くべきでしょう。」
それを聞いていた木戸が口を開き、矢口は即座にそれに応じる。
「台湾…と言うと、先代天子溥儀の御膝元ですか。確かに先代天子は親日家でしたが、彼はここ10年前の事件で倒れて以来、台北中央病院で療養中。確か、去年あたりから意識が完全になくなったと聞いております。」
「ですので、交渉は軍区行政長官の馬氏になるでしょう。馬氏は先代天子の治世において丞相を務めていた人物です。10年前の事件の後に起こった政争で大宦官に敗れ、台湾に流されていたわけです。先代天子はブリタニアとは完全対立の姿勢を貫いており、彼もそれを引き継いでいます。日本が反ブリタニアの思いがあることを示すなら、彼とも会うべきです。ユーフェミアへのパイプを作るための人員は外務省から人選すればよいと思います。」
大高は頷いて応える。
その様子を見た赤坂は、大高がブリタニアとの交渉よりも継戦に重きを見せていることを察して矢口の言葉に付け加える。
「それでしたら、駒条宮様の台湾交渉の後は、そのままインドネシアへ潜伏して頂きたい。表面上はユーフェミアと交渉するわけですので、変な誤解を与えないためにも駒条宮様にはインドネシアのスカルノ氏と、フィリピンのリカルテ氏を繋ぎとめていただきたい。」
「対応策は大筋決まりましたな。閣僚会議では、その様にしていきますので文書の作成を始めてください。三浦君、納屋君、臨時閣僚会議を開くので支度を頼みます。」
「「はい。」」
大高達重鎮から少し距離を取って、木戸が連れて来ていた外務官僚達と混じって雑務を熟していた二人が返事をすると同時に、いつの間にかいた大高の妻と3人で大高の身支度を素早くすませる。
大高達が隣接する首相官邸へ移動して、10分もしないうちに高野や桂と言った軍の重鎮や、西郷南洲副首相・犬養清内務大臣・高橋其清大蔵大臣と言った閣僚たち全員が集まって来た。
閣僚会議では総理官邸で話された内容が外交方針となり、軍事においても旭光作戦の継続及び関係諸作戦の繰り上げが話し合われた。会議自体が日を跨いで行われ、時間が経つにつれ新しい情報が入ってくるため、それについても話し合われる。
「僅か、1日でその様な要請が入ってくるとは…。素人の暴走…でしょうか?」
ユーフェミアより、特区日本の樹立式典への招待が北海道政権に来ていたのだ。
木戸はかなり困惑しているようであった。
「論外です。あの国とは停戦もしていない。論外です。」
「向こうから招待して、暗殺の様な事はしないでしょう。欠席をすると交渉窓口がつぶれるのでは?」
桜坂の様なタカ派は論外と突っぱねているが、犬養の様なハト派は慎重論に近い玉虫色な発言をする。会議は平行線になりつつあったので、西郷がキョウトの動向を確認する。
「情報局か?それとも外務省だったか?キョウトは何と言っていた?」
それには副官房兼危機管理情報局局長の片桐が答ええる。
「キョウトは桐原氏含め全員参加だそうです。」
西郷はさらに質問する。
「では、ゼロは?」
「不明です。ですが、ユーフェミアはTV演説で繰り返しゼロを名指しで呼んでいます。ゼロの様な、占領地レジスタンスは占領地民の支持が絶対です。情勢からして参加する可能性は極めて高いでしょう。」
「外務省から適当な次官を送ればいいだろう。」「いや、不要だろう。」「キョウトが行くのなら慎重に選ぶべきだ。」「ゼロが来るなら、そいつにゼロとの交渉もさせよう。」「だから誰を出す。」
会議は再び平行線になり始めていた。大高は葉巻に火を点けて一服する。他の大臣たちも持っている葉巻や煙管に火を入れる。話は続いているが決着がつかない内容であり、議論の勢いがなくなり始めた頃。
扉が勢いよく開かれる。
「であれば、その役目、わたくしがお引き受けしますわ。」
大高と桜坂ら政府要人が話し合いを行っていると、よく通る声が部屋に響いた。響いたといっても静かな澄んだ声だ。
「神楽耶様!!」「「「「「陛下!?」」」」」
皇歴2017年9月12日 中華連邦台湾軍区 行政庁舎長官室
台湾軍区の行政庁舎長官室。部屋の主の趣味趣向である骨董美術品が飾られている。
部屋の主、馬駒辺は部下の宇羅玩准将からの報告を聞いて冷静に指示を出していた。
「仕方がないではないか。日本の連中はこれを期に弱体化する。日本と言う反ブリタニアの急先鋒がいたからこその支援だろう。インドネシアへの支援は凍結する。」
「本当に、よろしいのですか?」
「よろしいも、よろしくないもない。連邦内でも大宦官を中心としたブリタニア迎合派が有利になる。我々が支援した紅巾党への弾圧も強まるだろう。離脱や独立の機運があるインドや東南アジア諸国への締め付けも始まる。天子派筆頭の黎星刻殿には悪いが我々はしばらく大人しくしてなくてはな。」
そう言って馬駒辺は自身が大切にしている北宋の壺を拭き始める。
「残念です。」
「先代様を謀し、天子様を傀儡にして自分の都合よく動かす人形にしようと言う魂胆は見えている。先代様は今も意識が戻らず、生きているのが不思議なくらいだ。とは言え、今の先代様は政治的にも権威はあってもそれを行使することは出来ない。だが、大宦官から手を下されることはまずない。」
「本当によろしいのですか?」
「くどいぞ。今でこそ、台湾軍区行政長官の地位に甘んじているが、先代様の治世の時は丞相の位にもあった。天子様が黎星刻の大恩ある方ならば、私の大恩ある方は先代様だったのだよ。」
「その先代様が、いま目を覚ましたら…孫娘を守れと言ってきませんか?」
「……………。」
皇歴2017年9月12日 ロシアソビエト社会主義帝国 大統領府
「ば、馬鹿な!?それでは日本が折れる!!」
「行政特区日本の構想は、完全にアキレス腱を狙っていますが、北海道の大高閣下は、頭を下げる事はないとのことです。」
「そうでなくては困る。だが不味い、ブリタニアと日本が停戦すれば日本のブリタニア軍がこちらまで来る可能性がある。早く東部戦線の片を付けねばならん!エジョイク軍務大臣!中央軍主力を東部戦線へ!」
「ですが、国境線や西部への援護は?」
「国境線や駐屯軍は最低限でいい。西部は彼等だけで十分出来るだろう!!とにかく、中央軍主力師団に動員をかける!中央の管区に部分動員を、東部は総動員だ!!無論、中央管区の部分動員は総動員を視野に入れていることを忘れるなよ!」
日本の占領地にてユーフェミア・リ・ブリタニアによって行政特区日本構想は発表された日の翌日。
膠着していたバグラチオン作戦における第二次動員が発令される。
バグラチオン作戦 第二次赤軍動員
中央軍よりさらなる抽出、東部中央の管区に対する動員令が発令される。