コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
皇歴2017年9月16日 中華連邦 台湾軍区 台湾軍区行政庁舎
駒条宮澪子はタイ王国より、中華連邦先代天子時代の丞相馬駒辺が治める台湾軍区へと渡った。
澪子は台湾軍区行政長官馬駒辺と面会を果たす。
「大高首相も駆け引きがうまいな。」
馬駒辺長官は澪子から受け取った親書を見ながら、苦虫を嚙み潰したよう表情を浮かべる。
それを見た宇羅玩准将は馬駒辺の様子をうかがう。
「読んでみろ。」
「失礼します。……これは!?」
宇羅玩が目にした内容は自分たちが極秘裏に画策していた大宦官へのクーデター計画であった。
「大高は、いえ、大高首相はどこまでご存じておられるか?」
馬駒辺は澪子に対して、尋ねる。彼女は自分たちに親書を持ってきた人物であり、皇族。
並みの外交官よりも多くの情報の開示権限を持っているはずだ。
澪子は中国茶の入った湯飲みを置いて、ゆっくりと口を開く。
「閣下と、中央の黎星刻殿。そして、紅巾党の首領朱清楓の関係を…。」
馬駒辺は暫し、無言のままで思案する。
大高が全容を把握している。ロシアのプーチンも多くを把握していると考えてよい。
ならば、大高と組むべきか。
「要求は、南洋諸国レジスタンスへの支援継続は間違いないな。他はなんだ?」
馬駒辺の問いに対して、澪子は静かに答える。
「離脱希望の加盟国の黙認、少数民族の自治の保証。そして、日本皇国の旧領完全回復のための支援です。」
自国の支援を二の次にしている。
このことに馬駒辺は、時流の変化を感じていた。
大高の親書、三の姫である駒条宮澪子の堂々とした威厳ある姿。
名君と評価される天皇皇神楽耶と、それを護持する大高を中心とする挙国一致内閣、ブリタニアを押し返した桂、高野、厳田ら三長官率いる皇国三軍。厳島の奇跡を起こした藤堂が在籍し、ゼロと言う仮面のカリスマが率いる黒の騎士団や、凋落を乗り越え復活した片瀬率いる日本解放戦線。北海道政権やブリタニアの日本占領地に次々と現れる英傑。
非科学的な表現だが日本に流れができている。直感的にそれを感じられる。
日本皇国は、この危機を乗り越えて、アジアの盟主に成長しようとしている。
大宦官が齎した腐敗と売国行為によって、自国の凋落を肌で感じていた馬駒辺は自国の滅びを防ぐため。中華連邦ではなく自身が忠誠をささげる主君である溥儀のため、そしてその孫娘である天子の清王朝をのちの世に残すために決断する。
「大高閣下に伝えてくれたまえ。我々は皇国を日本を全面的に支援し、自由を求める者たちの邪魔をすることはなく、それを支える側になることを…。」
馬駒辺の決断はのちに、中華連邦全土を巻き込む大事へと、発展することになるのである。
大高も神楽耶も、それを求めてはいなかった。
だが、世界が、時代がそれを求めていた。
皇歴2017年9月17日 エリア10 旧フィリピン共和国 カガヤン潜伏地
旧フィリピン共和国カガヤン潜伏地。ここは、南洋諸国のレジスタンスの一つマカピリの拠点であった。その一レジスタンスの拠点において、不相応な程の重要人物が集結していた。
大高の親書を持った日本皇国三の姫、駒条宮澪子。
オランダ王国、かつての東インド植民地で副総督の地位にあったフンベルトス・ファン・スモーク。
台湾軍区行政長官馬駒辺の側近中の側近、宇羅玩准将。
旧フィリピン共和国より、ホセ・ドテルレル元大統領、旧フィリピン陸軍アルテリオン・リカルテ参謀長、マカピリを中心としたフィリピンレジスタンスの首魁たち。
インドネシアより、郷土奪還統一義勇軍のスカルノとストモ他の勇士たち。
ブルネイのスルタン、ムハンマド・ボルキア王。自由パプワ運動の代表セスコブ・プライ。
これだけの重鎮が集まったこの潜伏地で、東インド植民地のレジスタンスにとって重大な発表がなされた。
「オランダは無条件で東インド植民地の主権を独立政権に引き渡すことに同意する。」
オランダのウィルヘルミナ女王のサインと国王印が押されている文書がフンベルトス・ファン・スモークによって読み上げられていく。
日本皇国の仲介と尽力によって、オランダの頭を縦に振らせたことは、独立派の要人たちは理解していた。
条文が読み終わり、各地域の代表者とフンベルトス副総督の間で調印署名がなされていく。
調印の儀式が終わり、澪子にスカルノが独立派諸勢力を代表して話しかける。
「駒条宮、皇陛下と大高にお伝えください。我々は日本皇国に感謝しております。ですが、日本が植民地支配者になるのではないかという不安を抱えております。」
スカルノ以外の代表者たちも内心ではそれを不安に思っていたようで、視線は澪子に注がれる。
それを受けた澪子は極めて冷静に、答える。
「皆さんが、それを不安に思うのは当然です。ここで、そのような意思はないと長々と説明しても、皆さんの思いはぬぐえないでしょう。ですので、私は皇陛下よりあるお言葉を賜っております。」
澪子に注がれる視線は宇羅玩ら台湾軍区やフンベルトスらオランダ王国の人員達のものも加わり、さらに強いものとなった。彼らの思いは、澪子の口を通し発せられる日本皇国の、皇神楽耶の言葉に注がれた。
永遠にも感じられる静寂が漂う。
そして、澪子の力強く澄んだ声で発せられる。
「共に生き、共に死す。陛下は、日本皇国はアジアに住む人間の一人として誓うと…。そう、おしゃられております。」
あまりにも重いその言葉に、一同は言葉を発することができなかった。
暫しの静寂な時間が流れ、ようやく一人が声を上げる。
元フィリピン共和国大統領ホセ・ドテルレルであった。
日本と言う強力な味方の力強い答えに対しての、歓喜からくるものなのか。はたまた、日本皇国の誇り高き姿勢からくる恐れなのか。その声はわずかに震えている。
「一国の国王の発言としても、あまりにも重い。だが、ユーフェミアの件がある。だから、あえて失礼を承知で言わせていただきます。言葉では何とでもいえる。貴国が口先だけのアピールで我々の情報を手土産に講和する可能性をどう否定するのです。」
「プレジデント・ホセ。その発言はあまりにも…!?。」
ホセの発言に、注意を促す。スカルノであったが、澪子の行動に言葉を失った。
ホセの発言を受けた澪子であったが、おもむろに着ていた黒いドレスを脱いだのである。
そして、脱いだドレスの中には白装束。目の前のテーブルには菊の紋が入った小刀が置かれる。
「腹切り…。」
独立派の誰かの口から洩れた言葉が耳に入る。
そう、腹切りだ。日本の事を少しでも知っているのなら知識の上では知っているはずだ。
「皇国は、決してブリタニアに屈しません。皆様を裏切る真似は致しません。ゆえに私、駒条宮澪子は事が済むまで、いえ…。皆様方が納得するまで、この地に残りましょう。そして、皆様方の信頼を万が一にでも裏切るようなことが起きたなら、その時は腹を召してお詫び申し上げさせてください。」
皇族の言葉である。
決意に満ちた少女の言葉である。
これ以上の問答は、国家組織の代表として、一人の人間として不要であった。
ホセ・ドテルレルの表情は、先程のような不安やその他の感情をない交ぜにしたようなものではなく。真剣なものへと変わっていた。
「駒条宮様、先ほどの非礼…お許しください。貴女の、いえ。日本皇国の覚悟と思い、確かに見せていただきました。ここにきては南洋諸国一同、共に生き、共に死すの誓いの下、一つとなって戦っていくことをお約束しましょう。」
「インドネシアも誓いましょう。」
スカルノがそれに続くと他の者たちも続いていく。
その様子を見ていた宇羅玩の口から言葉が自然と零れる。
「女皇の皇国…アジアの光…か。」
その横のフンベルトスの口からも同様の言葉が漏れる。
「これが日出国、東洋の夜明け。わたしは歴史的瞬間に立ち会っているのだ。」