コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
『こちら、行政特区日本開設記念会場です。会場内はすでに、たくさんのイレブン。いえ、日本人で埋め尽くされています。会場の外にも入場できなかった大勢の日本人が集まっています。」
式典会場には旧日本国国旗とブリタニア国旗が掲げられている。
『ゼロは姿を現すのでしょうか?いえ、現時点では何の連絡もないようです。ですが、未確定な情報ですが、北の残党軍とエリア11行政府が停戦交渉を行うという情報もあり、ユーフェミア皇女殿下の思い描いた平和への道が切り開かれているのを感じております。』
中華連邦 首都北京 咬龍之房
「来るものかゼロなど…。」
「どんな形であれ日本、いや、エリア11が落ち着けば。こちらの不逞の輩も大人しくなる。」
「ブリタニアの助力も得られるでしょうからな。」
朱色を基調とした咬龍之房で、大型モニターを見ながら大宦官たちは椅子に腰を落ち着けていた。
台湾軍区行政庁舎長官室
「我々の命運も、皇国と黒の騎士団の動き次第だ。歯がゆいものだな。」
馬駒辺は行政庁舎から見える。台湾海峡を、その先の本土に思いをはせつつ呟いた。
宇羅玩はその様子を見守るだけであった。
インド軍区 セイバーグラーム村ガンディ邸
スワディ・ガンディの家は生活に必要なものは最低限しか置いていなかった。
信者の一人が、持ってきたラジオの前に弟子たちと共に耳をそばだてていた。
(誇りを捨てて、仮初の平和を受け入れるのですか?皇国は…。ですが、それは緩慢な死に他ならないのです。)
インド軍区 デリー 行政庁舎長官室
「今は、皇国の言葉を信じて見守るのみ。」
行政長官ジャワハラール・ネルーは、ただ一言述べたのみで、じっとテレビの映像を見つめる。
その横に控える、中印軍長官スバス・チャブドラ・ボースはその様子を見守る一方。
インドムスリムの代表者アリード・ジンナーは過激な言葉を口にする。
「日本がどう動こうと、我々は止まらない。止まれないのだ。インドの、ムスリムの歯車は動き出しているのだ。ナチスの脅威は目前まで迫っている。」
タイ王国首都バンコク・プラナコーン地区 王宮
「陛下、中継が始まったようです。」
「うむ。今日と言う日は、日本だけでなくアジアの命運を決める重要な日であるな。」
プミンポン国王は、側近に話しかける。側近もそれに応じて答える。
「その通りですね。彼らの動き次第で、我が国、いえ、東南アジアの今までの努力が実るか否かが決まりますので。」
「日本皇国には、厳しい1日になりそうだな。」
ロシア社会主義帝国 王都兼首都イルクーツク 仮皇宮併設大統領府
ロシア帝国大統領ウラジミール・プーシンは、皇宮区画にてリュミドラ女王と席を共にしてテレビ中継にて特区日本開設式典の流れを見守る。
「ユーフェミア皇女殿下は、平和志向の方の様ですね。我がロシア帝国とも講和ができれば。」
そんな、女王の発言にプーシンは苦言を呈する。
「バグラチオンでは、今もなお夥しい量の血が流れ続けています。式典は失敗してもらわねばなりません。」
「ですが、どうやって?」
リュミドラ女王の言葉にプーシンは答える。
「ですから、皇国の大高や、黒の騎士団のゼロの動きに注視しているのです。」
「また、血が流れるのでしょうか?」
リュミドラ女王は不安そうにプーシンに尋ねたが、彼は黙して答えることはなかった。
エリア10 インドネシア郷土奪還統一義勇軍 指令潜伏地
スカルノの周りには義勇軍の幹部たちが、不安気な様子で集まっていた。
だが、スカルノは不安には思っていなかった。
「我々は、信じて待つのみだ。お前たち、時が来た時のために準備は怠るなよ。」
「っは。」
部下が去ったのを見て、スカルノはさらに視線を動かす。
その先には、白装束からは着替えたものの、短刀を携えたままの日本皇国三の姫、駒条宮澪子がいた。
フランス EU拠点都市ストラスブール EU評議会ビル
多くの国が、枢軸によって攻め落とされ形骸化したEUであったが、盟主フランスは健在であった。だが、有力国であったオーストリア連邦もオランダ王国も亡命政権もしくはそれに準ずる存在と化し、スカンジナビア連合王国は中立国としてEUを離脱。もはや瓦解目前と考えられていた。
しかし、新たに1国のEU加盟によってその命脈は保たれた。
スコットランド共和国の参戦であった。そのスコットランド共和国首相キィーストン・チャーチル氏が、フランス共和国ポール・レイナール首相に話しかける。
「ゼロは、来ると思うかね?」
「いえ、来ないでしょうな。我々が把握する情報が確かなら。」
「かの地には、北海道政権があります。彼らの動きもありますでしょう。彼らの策謀次第ではゼロの動きは変わるでしょう。早計では?」
レイナール首相は、否定的な意見を述べる。
それに対して、オランダ王国首相ヘンリー・ケルマンは反対の意見を述べた。
「ケルマン首相は日本贔屓の様ですな。貴国は日本人の亡命を積極的に、受け入れているようですし。」
ケルマン首相の言葉に気分を悪くしたのか、レイナール首相の言葉には幾分かトゲがあったが、チャーチル首相が割って入り、場を収める。
「まあ、お二人ともここは、お手並み拝見といこうではないか。」
ナチス第三帝国 ベルリン 総統官邸
「ぬるいな。エリア11の小娘は…。」
「左様でございますな。」
「抵抗する蛆虫どもは、完膚なきまでに殲滅せねばならん。統治が困難であるなら、労働を通じた絶滅に切り替えるべきなのだ。反抗的な者たちを隷属させようとしては、中途半端になる。シャルル・ジ・ブリタニアは子息らへの教育は積極的ではないようだな。」
「そのようでございますね。」
ヒトラーの言葉にうなずくヒムラー親衛隊長官。
ヒムラーは完全な腰巾着でありイエスマンであった。この場にいるゲッベルス宣伝相を含め、彼に逆らえる人間はいない。天才である彼に、逆らう必要もないのだが…。
日本皇国 福島県福島市大笹生 旧ふくしまスカイパーク前線予備司令部
福島市大笹生。この地には皇国の前線予備司令部が築かれていた。
昨今の皇軍の快進撃により、最前線の皇国軍は群馬県黒磯までは進出に成功している。
また、主たる前線司令部は郡山市に築かれている。
そして、この大笹生前線予備司令部に一機の輸送ヘリが降り立つ。
出入りハッチの左右には、第一師団師団長乃木希祐大将を中心とした将校が並び待機していた。
「天皇陛下に、敬礼!!」
ハッチが開くと同時に、乃木大将の号令で、一斉に敬礼する将校たち。
ヘリのタラップから、ゆっくりとした足取りで降りてくるのは、今上天皇である皇神楽耶であった。
「出迎え、ご苦労であった。」
「このような場所まで、来ていただき恐悦でございます。」
神楽耶は、ユーフェミアの特区開設式典を受けて、その後に控えるであろうゼロとの交渉のためにここまで来たのである。
「ゼロからの連絡は?桐原からも何もないのですか?」
「こちらから連絡を取ろうにも、向こうは式典もあるため厳戒態勢で接触は困難でございます。」
「左様ですか。暫し待ちます。大笹生の司令部に場所を用意なさい。」
「っは!直ちに!!」
神楽耶は、乃木に命じて司令部に場所を用意させ、そこの大型モニターにて式典の中継を繋げ、事の成り行きを見守ることとなる。
日本皇国 北海道函館市 首相官邸閣僚会議室
ユーフェミアの特区日本は皇国政府も、注目するものであった。
閣僚会議室には首相大高弥三郎、副首相西郷南洲、総務大臣桜坂万太郎などの閣僚全員が集まっていた。高野や桂、厳田は軍が作戦行動に入っているため、すでに各々の持ち場についていた。陸海空はすでに一部が作戦行動中だ。
「ゼロは現れるのだろうか?」
「この場合、現れても現れなくても、黒の騎士団の衰退もしくは解体は避けられませんでしょうな。」
桜坂の言葉に、西郷が額に手を当てながら、困っていると言わんばかりの態度をとる。
他の閣僚も、黒の騎士団と言う占領地内でレジスタンス活動をする最大勢力が衰退する様を見ることに不安感を隠せていなかった。
しかし、大高はそのような様子も態度も一切見せることなく、毅然とした態度で
テレビ中継を見続けている。
「皆さん、黒の騎士団に関しては福島大笹生で陛下が受け入れの用意をしております。占領地内での工作要員が減るのは残念ですが、前線に付けているレジスタンスの統合が図れるのですから、我々には損はありません。」
「なるほど、場合によっては統一レジスタンスの首魁に、ゼロを置くのもありと言うわけですか。さすがは大高首相です。」
軍需大臣の島が、大高の発言に感心する。若干ごますりの要素もないわけではないが、大高の考えは大凡間違っていないので、あえて訂正することはしなかった。
『ゼロです!ゼロが現れました!!』
閣僚たちの視線がテレビ画面に集まる。
テレビ画面にはガウェインの姿が映し出されていた。
ブリタニア、黒の騎士団、日本皇国。そして、アジアにとって歴史を変える長い1日が始まろうとしていた。