コードギアス 皇国の再興 作:俺だよ俺
皇歴2017年9月20日10:00 富士山麓 行政特区日本樹立式典会場
各国の首脳陣が中継を見守る中、ゼロが姿を現す。
「ようこそ!ゼロ!!行政特区日本へ!!」
「ユーフェミア・リ・ブリタニア。折り入って、お話したいことがある。」
「私と?」
「はい、あなたと二人きりで…。」
ユーフェミアからの歓迎を受けたゼロは、ユーフェミアに対して1対1の会談を求めた。
ゼロ、ルルーシュはユーフェミアに案内されて、式典会場のG1ベースの一室に通された。
同時刻 行政特区日本樹立式典会場周辺森林
ゼロの命令を受けて、式典会場の周辺の森や高架下などの隠れられる場所に黒の騎士団の兵力が伏せられていた。
「なぁ、俺たちどれだけここにいればいいんだよぉ。」
「ゼロが信じられないの?」
コックピット内で足を投げ出して不満と言うより、退屈そうな玉城のつぶやきとは、対照的に臨戦態勢の姿勢を崩さずにカレンは短く返した。
「ブリタニアの真意を確かめてからだ。」
「扇副指令。その真意がわかっているから戦力を四方に配置しているのでは?ディートハルトやラクシャータまで待機させた。そして、ゼロと繋がりがあるであろう北海道政権も境界線から勢力を下げたという話を聞かない。おそらくゼロは…ユーフェミアを…。」
玉城のように、しびれを切らし始めている団員の姿をちらほら確認した扇は場を引き締めようと一応の言葉を発したのだが、藤堂の発言を聞いて、たぶんそうだろうと思いながらも、藤堂ら旧解放戦線の面々も思うところがあるのだと察した。
だが、この場で全肯定をするわけにもいかず。「断定は危険です。」と当り障りない回答をするにとどめた。
皇歴2017年9月20日10:13 行政特区日本樹立式典会場G1ベース
ルルーシュは部屋の電源を落とす。
その様子をユーフェミアは不思議そうに「用心深いのね?」と話しかけた。
そんな、ユーフェミアにルルーシュは銃を向けた。
「これは竹とセラミックでできている。これは検知器には引っかからない。」
銃を向けられたユーフェミアはルルーシュが撃たないことを確信していたからこそ、表情を一切変えずに軽くたしなめる。
「あなた、撃たないでしょ?」
そんなユーフェミアに対して、ルルーシュも一切表情を変えなかった。
「そう、俺は撃たない。撃つのは君だ。この式典は、世界中に流れている。そこで、ブリタニアの皇女である君がゼロを撃つ。どうなると思う?」
ルルーシュは妖しくユーフェミアに問う。
「暴動になるんじゃないかしら?」
「騙し討ちされたとなれば、ゼロは殉教者となり、君の信望は地に落ちる。」
「何を言っているんですか?私と一緒に日本を…」
ルルーシュの様子に、ユーフェミアは困惑交じりの言葉を投げかけたが、次のルルーシュの言葉にユーフェミアは言葉を詰まらせる。
「上から一方的に押し付けるのは、クロヴィスと一緒だな。条件はすでにクリアされた。ゼロは撃たれ、生死を彷徨い奇跡の復活を遂げる称えられる。人は理屈ではなく奇跡に弱いものなんだよ。さぁ、受取りたまえ。メシアは一人で十分なんだよ。君が偽物だと解り民衆は…!?っく。」
ルルーシュはギアスの刻まれた左目の痛みに目を抑えた。
「ルルーシュ!?」
ルルーシュの苦しむ様子を見てユーフェミアは駆け寄り、助け起こそうとするがルルーシュはその手を振りほどく。
「やめろ!これ以上、俺を憐れむな!!施しは受けない!!俺は、自分の力で手に入れて見せる!!そのためにも穢れてもらうぞ!!ユーフェミア・リ・ブリタニア!!」
「その名は返上しました。」
ユーフェミアの言葉を聞いて、ルルーシュは思わずギアスの発動を止める。
「なぜ…。まさか、ゼロを受け入れたから…。」
「私の我儘を聞いてもらうんですもの、対価は当然でしょ。」
「随分と簡単に捨てられるものだな。俺のためだとでも?」
「ナナリーのためよ。あの子、言ったの…お兄様と一緒にいられるのなら他に何もいらないって。わたしにとって大切なものって何かわかったの。だから、私の本当に本当に大切なものは何も失っていないのよ。」
「君は、むちゃなやり方なのに随分とうまくいってしまうものなのだな。特区日本の面積を最大限に大きくして、北海道と共同統治で妥協案を探るつもりだったのかい?」
「えぇ。」
「ハハハハハハハ。かなり無茶が過ぎるが不可能でもなさそうだな。そういえば君は、皇女殿下や副総督である前に、ただのユフィだったな。」
「ただの、ユフィとならいっしょにやってくれる?」
「君は最悪の敵だったよ。」
ルルーシュは、ユフィの差し出した手を取った。
「ゼロとして北海道の大高とのパイプは持っている。交渉してみよう。」
ルルーシュの言葉にユーフェミアは嬉しそうに笑って見せる。
「でも、私って信用ないのね。いくら脅されたからって、私がルルーシュを撃つわけないのに。」
「あぁ、違うんだよ。俺が本気で命令したら誰だって逆らえないんだ。俺を撃て、スザクを解任しろ、どんな命令でもな。それこそ、日本人を殺せって言っても…。」
「い、いやぁ…。殺したくないぃ…うぅ」
身悶えるユーフェミアを見て、ルルーシュはギアスが暴発したことを悟る。
「待て!今のはキャンセルだ!!」
「そうね。日本人は殺さなきゃ。」
皇歴2017年9月20日11:02 日本皇国 北海道函館市 首相官邸閣僚会議室
『日本人を名乗る皆さん、死んでもらえないでしょうか?』
皇国首脳陣が見ている。液晶画面には彼らが予想していなかった、出来るはずもない音声が流される。
『えーとっ、自殺してほしかったんですけどダメですか?では、兵士の皆さん!!皆殺しにしてください!!虐殺です!!』
映像にはユーフェミアの口から出ているように見える。
「何を言っているんだ?この女は?」
経済産業大臣の室生直毅がつぶやく。
その意味はわずか数秒後に理解できる内容の映像が流れてきた。
だが、その内容の意味は理解したくなかった。
現実であって欲しくなかった。
この映像を見ている日本人すべてが、映像が嘘偽りであって欲しかった。
だが、現実は残酷であった。
一発の銃声、倒れる参加者の老人。
『ごめんなさい。でも日本人は皆殺しにしないといけないの。さぁ、ブリタニアの皆さん!!虐殺を始めてください!!』
狂人の狂った言葉。今度は拳銃の一発ではなく、機関銃の、KMFの機関砲の銃声が響き渡る。悲鳴、悲鳴が聞こえた。
「なんだこれは!!いったい何が起こっているのだ!!」
副首相西郷の言葉を皮切りに閣僚会議室は騒然とする。
「外務省!!これはいったい!!」
「状況を確認します!!」
西郷と外務大臣木戸の会話に、苛立った高橋大蔵大臣が叫ぶ。
「見ればわかるだろう!!虐殺されてるんだよ!!」
その横で、秘書官からメモを受け取った永田陸軍大臣が立ち上がって報告する。
「映像を見た。前線の将兵が激発!!新潟・福島他、すべての戦線が戦闘状態に突入しました!!」
事の重大さに、フリーズしていた赤坂官房長官が椅子に一瞬躓きながら、大高に駆け寄る。
「大高閣下、大変な事態になってしまいました。こうなってしまっては、和平はあり得ません。全軍に戦闘開始命令を出してください。このような物言いはするべきではないと思いますが、もう勝つとか負けるとか、そう言う次元ではありません。我々は、日本人として戦わなくてはなりません。」
赤坂の言葉を受けて、大高は立ち上がり声を大にする。
「皆さん!!我々は、この度のブリタニア副総督の民族浄化宣言に断固として立ち向かわんくてはなりません!!桜坂総務大臣!!連絡の取れるレジスタンス全てに決起を促してください!!」
「すべてですね。」
「はい、全てです!!木戸外務大臣!!全世界に向けて抗議、いえ徹底抗戦を改めて宣言するのはもちろんとして、ロシアのプーシン大統領に旭光作戦を繰り上げると伝えておきなさい!!岡田海軍大臣、紺碧艦隊にパナマ運河破壊作戦の繰り上げを伝えてください!!永田陸軍大臣!!意地でも敵の防衛線を食い破らなくてはなりません。北海道他から前線へ送る兵力を抽出し、各空軍基地から攻撃隊を上げて、スーパーXを出撃させるのです!!高橋大蔵大臣!!予算に制限を設けてはいけません!!人命、いえ民族の存亡がかかっているのです!!」
「「「「「っは!ただちに!!」」」」」
そのすぐ後に、大高は電話で高野を呼び出す。
「私です。高野さん、例の作戦も実施してください。我が国の戦いの爆発力は今がピークでしょう。やるなら今です。……よろしくお願いします。」
同時刻 日本皇国 福島県福島市大笹生 旧ふくしまスカイパーク前線予備司令部
ブリタニアの暴挙に対する反応にたいして、前線に近い福島の前線予備司令部の様子は北海道以上であった。
電波の関係上、北海道以上に生々しい映像が入手しやすかった故でもあった。
「第四師団を南下させるように、東北管区軍に伝達するんだ!!」
「最善を尽くしているとのことです!!」
「さっきと同じ回答か!っく」
第一師団師団長乃木希祐大将は、福島戦線の第二第三師団、新潟の第五師団他、片瀬率いる統一レジスタンス連合が先端を開いている現状で、状況把握や要人守護に努めていた。
「能登の霞師団も戦端を開いているのか!?」
「わかりません!あそこは、他の戦線と違い戦線がつながっていないので、連絡手段が限られていますので…。」
乃木は副官の津野田暮重中佐と何度も応答を繰り返した。
乃木はその中で、神楽耶の姿が見えなくなっていたのに気が付いた。
乃木が、指揮所の外を見ると戦闘指揮車に乗り込もうとしている神楽耶を見つけた。
乃木は慌てて、外へ出て引き留めようとした。
「陛下!!ここは危険です!!お下がりください!!」
しかし、神楽耶は乃木の言葉には従わずに反論した。
「そのような真似はできませんわ!」
「何を言っておられますか!?御身の安全をお考えくだされ!!」
「妾は、前線の近くにいる。今ここで、敵に背を向ければ民を見捨てたにほかならぬではないか!!妾をさらし者にする気か!!」
「そのようなことはありませぬ。で、ですが!!」
「この戦いは大和民族の今後を左右する戦いぞ!!妾が直接指揮を執って前線の士気を高めた方がよかろう。」
「しかし、陛下のみに万が一があれば…。」
「乃木大将!!旧軍制であれば第一師団は近衛師団であるぞ!!近衛に妾がついていくのではない!!妾に近衛が付き従うものぞ!!国家危機、民族の危機に動かぬとは…何のための近衛か!!」
神楽耶の叱責を受けた乃木は雷にあったっ鷹のように背筋をピンとして敬礼する。
「大変失礼いたしました!!この乃木希祐、思い違いをしておりました!!これより第一師団、否!!近衛師団は陛下の親征の下、第二第三師団を支援し全力を持って前線を押し上げるものであります!!」
乃木と神楽耶の会話で流れを察していた津野田は出撃準備を素早く整えていた。
そして、乃木の宣言を聞いてから続けて発言する。
「近衛師団全軍出撃準備完了です!!」
「よろしい!!」
神楽耶が指揮車についている通信機を手に取り第一師団の各通信機に音声が流れる。
「近衛師団全軍に告げる!!ブリタニアの蛮行より妾の臣民を守らんがため!!第二第三師団と合流し、皇軍は関東へ進出せよ!!」
神楽耶の声が通信機を通じて流れ、そして乃木が指揮車から上半身を乗り出して大きな声で叫ぶ。
「近衛師団!!前進!!」
同時刻 ブリタニア 北関東防衛ライン
つい先ごろに、皇国軍が兵力を張り付けたままであった北関東防衛ラインの司令部に就いたばかりであったが、特区日本の虐殺によって、トウキョウ疎開防衛のために急遽戻る判断をコーネリアは下した。
急なことだったので、ギルフォードは単機で戻ろうとするコーネリアを引き留めようとするが、コーネリアは引き下がらなかった。
「お待ちください!!コーネリア様!!」
「ついて来れる者だけで良い!」
前線に近いとはいえ、遠めでも司令部からも見える範囲で皇国との戦闘が行われていた。
同時刻 日本皇国 群馬県黒磯 前線司令部
前線司令部では、第二第三師団の師団長である山上奉文中将と坂東源一郎少将が叫んでいた。
「もっと!!もっと前へ!!」
「あと少しだ!!あと少しなんだぞ!!」
二人の顔、いや、司令部の人間たちの顔には憎悪が宿っていた。
「「虐殺皇女ユーフェミアの姉、虐殺皇女の姉の首を取れぇええええええ!!!!」」
同時刻 富士山麓 行政特区日本樹立式典会場付近
「おい!ブリタニア軍が会場の外に出てきたぞ!」
「こうなったら、ユーフェミアを最大限利用するしかない。それがせめてもの…」
ルルーシュはC.C.の言葉には中途半端にしか答えなかった。自分でも覚悟を決めるには少し時間が必要だったのだ。
そして、ブリタニア軍の戦闘ヘリを蹴散らして覚悟を決めたルルーシュは黒の騎士団全軍の回線を開く。
「黒の騎士団全軍に告げる!ユーフェミアは敵となった!!行政特区日本は我々を誘き出す卑劣な罠だったのだ!!自在装甲戦闘機部隊は式典会場に突入せよ!!ブリタニア軍をせん滅し、日本人を救い出すのだ!!いそげ!そして、ユーフェミアを見つけ出して殺せ!!」