コードギアス 皇国の再興   作:俺だよ俺

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第46話 民主主義の守護者

皇歴2017年10月初頭 ナチス第三帝国 ベルリン 総統官邸

 

「欧州は我が第三帝国が頂いてよいのだな?キングスレイ卿。」

「構いません。皇帝陛下からはユーロブリタニア、懸案にあたらずと言われております。ユーロ・ブリタニア領は第三帝国が統治すればよいとの仰せでした。」

 

ブリタニア本国から派遣された軍師キングスレイ卿より、EU殲滅のプランが提示されヒトラー、ムッソリーニ、スランコらEUと接する枢軸国国家元首らはキングスレイ卿とユーロ・ブリタニアに作戦の決行許可した。

付け加えておくが、ブリタニア本国のユーロブリタニアの扱いに関する申し送りはナチス第三帝国にのみ伝えられている。

通常は許可ではなく通知なのだが、ブリタニアとナチスの密約の一つで欧州の刈り取りは第三帝国を軸とする取り決めがあり、それに則った形であった。

 

 

 

 

皇歴2017年11月

 

EUに止めを刺すが如き一撃が放たれる。

 

「ユーロピア市民に告げる。我らは世界解放戦線、方舟の船団だ。我々は北海洋上発電所を爆破した。愚かしき文明に浸り、堕落と言う平穏に暮らす者たちに神々の審判が下される。もうすぐ、滅びの星がパリを襲う。悔い改めよ!それが君たちが生き延びるための、ただ一つの手段だ。」

 

方舟の船団を名乗るテロリストが洋上発電所を破壊し各地で騒乱を起こしていると言う情報がEU中で広がったのであった。

 

 

 

同時期 スコットランド共和国ロンドン首相官邸

 

「困ったことになりましたな閣下・・・。」

スコットランド首相キィーストン・チャーチルは正面に座るグリーン・ワイアット海軍長官を前に渋面を隠せずにいた。

 

「いずれフランスは倒れると予想してはいたが、想定よりも早すぎる。」

 

大高に並ぶ切れ者であったチャーチルは、フランスで起きている騒乱の背後にブリタニア本国もしくはユーロ・ブリタニアがいることに気が付いていた。

 

「フランスが倒れればEUの崩壊につながりますな。いっその事、閣下がEUを掌握してはいかがです?フランスにEUをまとめ上げる逸材はいないでしょう。無論他の加盟国にも・・・。」

 

落ち着いた様子でダージリンを口に含むワイアット長官とは対照的にチャーチルはさらに複雑そうな思いを抱き溜息をついた。

 

「事はそう簡単ではない。フランスの国家元首レイノー首相はアフリカへの脱出に動いている、アフリカEU軍のド・ゴール将軍は独自の動きを見せている。フランス国内でも不穏な動きがある。我が国が主導権を握ると言うのは策の一つであることは認めるが、EUの外様である我が国がそれをやるのはリスクが大きい、政治は複雑なのだ。」

 

苦虫をかみつぶした表情をしているチャーチルに、ワイアットは軽く肩を叩いて立ち上がり首相執務室の扉に手を掛ける。

 

「政治は貴公にお任せしよう。海軍はドーバー海峡に防衛線を展開しよう。空軍もバックアップについてくれるそうだ。陸軍にも閣下から沿岸防衛の強化を指示してもらえますかな?」

 

「ああ、解っている。次の戦場は我が国だな。欧州のフランス・ベルギー軍の受け入れを始める。」

 

 

 

 

数日後  フランス領赤道アフリカ中部コンゴ入植地 ブラザヴィル司令部

 

「首相!!あんたは、本国で国民を鼓舞し続けるべきだった!!そうすれば、本国はあと1年は持ったはずだ!!」

 

ブラザヴィル司令部ではレイノー首相からの電話にド・ゴール将軍は侮蔑の混じった怒声が響き渡っていた。

 

「あんたが本国で睨みを利かせなかったから、本国でスマイラスの馬鹿が引っ掻き回しているぞ!!私は警告したぞ!!国民を見捨てて逃げた上に、ブライスガウの娘すら奴の手元に残してきおって!!首相なんてやめちまえ!!」

 

ド・ゴールは勢いよく受話器を叩きつけた。

スマイラスにそれと懇意にしていた高官たちと全く連絡が取れないド・ゴールの機嫌は悪くなる一方であった。

そんな彼に副官は恐る恐る尋ねる。

 

「こちらにいらしたレイノー首相はどちらにご案内しますか?」

「適当なホテルにでも突っ込んでおけ!!」

 

「は、はいぃ!」

 

 

 

 

同時期 ナチス第三帝国 ベルリン 総統官邸

 

ブリタニアの同盟国である第三帝国はEUで現在起きている。騒乱についてEU以上に把握し理解していた。

ただ、ブリタニア本国とユーロ・ブリタニアの間で起きている一連の出来事はヒトラーからしてみれば滑稽の一言であった。ジュリアス・キングスレイを名乗る皇帝全権がユーロ・ブリタニアのヴェランス大公から権限を奪ったかと思えば、シン・ヒュウガ・シャイングなる騎士団長代行が謀反を起こし、さらにユーロ・ブリタニアの全権を掌握。

端から見れば見事なEU攻略の作戦だが、内情を知る者からすれば醜い内輪もめの副産物であった。

 

「国際常識の凡例から考えますならば。同盟国が二つに割れた場合、中立の立場を取るのが通例です。我が総統。」

 

「常識で考えればだな。ボルマン君、私の同盟者はブリタニア皇帝だ。となれば・・・。」

 

ヒトラーの問いかけに官房長官のマルティス・ボルマンは思考を巡らせ応える。

 

「ユーロ・ブリタニアは賊ですか。」

「その通りだ、ボルマン。軍に最高のタイミングで欧州を掻っ攫ってしまうよう伝えたまえ。」

 

「ハイルッ!ヒトラー!」

 

 

 

同時期 フランス

 

『ユーロピアの市民の皆さんにお伝えしたい事があります。枢軸の情報操作に乗って、騒乱を行う事の愚かしさに気づいてください。』

 

画面に映し出された金髪の乙女。レイラ・マルカルには不思議と、人々の心に滑り込んでくる暖かさと高貴さを持っていた。

 

スマイラスの意図に気が付いた今でも、レイラは語らねばならないと理解していた。

 

『私たちは秘密裏にユーロ・ブリタニアと戦っている部隊です。』

 

流れる映像には方舟の上で戦うアキト達ワイヴァン隊の姿があった。

 

 

この映像はフランス市民はもちろんスコットランドやそれ以外のEU亡命諸国の市民達や国家元首たちも目にしていた。

スコットランド首相キィーストン・チャーチルは海軍長官グリーン・ワイアットに海軍をドーバー海峡に急遽展開させた。

日本の大高首相の意を酌んだオランダ女王ウィルヘルミナはヘンドリック・ヘイワード大佐率いるの亡命政権陸軍の部隊をブライスガウ城救援へ向かわせようと動いた。

チェコスロヴァキア亡命政府のエドヴァルド・ベルシュ大統領他と言った亡命政府首班たちもレイラの演説支持を表明し、ユーロピア市民へ自制を呼びかけた。

ポーランド社会主義共和国を中心としたワルシャワ条約機構も支援の動きを見せていた。

 

 


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