多分これが一番…   作:ひろっさん

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7/4 「トラビア」と打つと「虎ビア」に変換された。虎ビールってどこかの商品にありそう。


到達点

擬似魔法の実技授業も12歳から始まる。

今までのような止まった石を狙うのではなく、いわゆるクレー射撃だ。

 

「“――”『ファイア』」

 

3馬鹿娘達は、あっさり命中率9割以上を叩き出す。

 

「まあ、毎日妨害アリの練習してたらこうもなるわな」

 

教員が呆れ気味に溜息を吐く。

 

「アレてそんなムズいことやったん?」

「来年教える戦闘詠唱の授業でやるやつや」

「他の子ぉはともかく、セルフィが妨害側やったからなぁ……」

「分身魔球は反則やって」

 

セルフィの進化に必死に追いつこうとした結果が、テレサとクレアの異常とも言えるレベルアップだった。

ただし、それでもセルフィの妨害を回避できるようになったとは言っていない。

 

そこにクラスの男子生徒が声をかけてきた。

 

「ちょいオマエら、詠唱メッチャ早うないか?」

 

彼の言う通り、3馬鹿娘達は詠唱速度が本気の教員と変わらないくらいになっていた。

 

「セルフィの妨害の回数を減らそと思うて、できることやってきた結果や」

「おかげであたし、7回しか投げれへんねんで」

「ちゃうて、2秒くらいで7回投げてくるセルフィがおかしいんやって」

「解せぬ」

 

切磋琢磨()の結晶がそこにあった。

 

 

 

午後にも授業が入るようになり、放課後の鍛錬の時間は減ったが、鍛錬の内容はどんどん濃密に、実戦を想定したものとなっていた。

 

けたたましい打ち合いの音が響く。

擬似魔法の小規模な破裂音も。

それは最早、訓練などではなく戦闘だった。

 

ただ、さすがに武器は訓練用に殺傷力を削ったもので、擬似魔法も威力を落としており、お互いに怪我の危険を減らしていたが。

 

「ソイヤッ、ソイヤッ、ソイヤッ、ソイヤッ、ソイヤッ……!」

 

手数を重視するテレサは、先に保護用のゴムが付いた槍を振るい、連続攻撃を繰り出す。

相手となっているセルフィも、ヌンチャクの柄を二刀流のように扱いながら、防ぎながら鎖を絡めようとするため、なかなか侮れない。

 

「“――”『サンダー』」「“――”『ファイア』」

 

青白い雷と赤い炎の礫が、同時にお互いに命中し、距離を取る。

 

「そこまで、タイムアップ」

 

クレアが、折り良く時間を告げた。

 

「最後、ホンマにアカンか思うたわ」

「でも、押し切れへんかった。目指せマシンガン」

「一体何と戦うつもりやねん」

「エクスデス」

「せやったな」

 

実験と鍛錬を繰り返しているのは、エクスデスに備えるためなのだが。

セルフィやクレアは、まだテレサと遊んでいることの延長、という感覚が抜けていなかった。

 

 

 

そして、テレサが重ねてきた努力は、ある実を結んでいた。

 

「目標設定:対象物の破壊。『プログラム』開始」

 

少女は呟く。

破壊目標は擬似魔法の的となっている、一抱えほどの石。

場所は屋外、時間は夜の帳が下りた頃。

 

「“ ミリオンスライスープロケット逆風の熱線放射電束ミサイルプラズマ幻魔雑霊爆砕金剛跳弾神速ダーク電磁放射電撃曲射陽子ロケット落雷ジャイアントロコ集中稲妻グリフィスローリン三濁流清流タイガー短勁スカイライジングロザリオ塔三龍羅刹十字散水”『略して剣』」

 

それは破壊、というよりも、消滅だった。

 

合計、40もの擬似魔法を組み合わせた結果、対象の石に無理矢理『魔法剣』を付与、4つの異なる擬似魔法を同時に追加し、原子レベルで分解したのである。

破壊力などという生易しいものではなく、発動したが最後の究極の殺傷魔法だった。

 

合計5年の研鑚の結果、ついにある種、『魔女の魔法』に匹敵するレベルに達していたのだ。

 

同時に、テレサは地面に膝を付いた。

 

「ケホッ、ケホッ……!」

「大丈夫か?」

「アカン、キツい……」

 

教員は『ケアル』を使用し、少女の苦痛を軽減する。

 

さすがに人の身で世界中で恐れられる『魔女の魔法』に踏み込んでおいて、代償も何もないほど甘い世界ではなかった。

 

テレサは地面の上に大の字になる。

大抵、使用すると数時間は動けなくなってしまうのだ。

 

ただし、それでも最終目標であるエクスデスに通じるかどうかは分からない。

ぶっつけ本番で試すしかないのが現状だった。

 

「まさか、ホンマにこんなもん作ってまうなんてなぁ……」

「相手が防御積んでないし、詠唱も長いし、疲労もキッツいし、まだまだやで」

「魔女以上に強い相手なんか、ホンマにおるんか?」

「わからへんから備えるんよ」

 

テレサは、決して遊びの延長で鍛錬を行っていたわけではない。

 

彼女には夢があった。

皆で平和に暮らすという、ささやかでちっぽけな夢が。

 

たったそれだけのために、彼女は努力を惜しまない。

 

「もっともっとデータ集めるんや。まだヒドい言うほどやない」

 

目標に到達するまで、彼女は止まらない。

 

その在り方は、兵士というよりも、兵器のそれに近い。

一瞬、そう考えた男性教員は、己を罵った。

努力を続ける教え子に対して、抱いていい感想ではない、と。




――――あとがき

こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
これで大体紹介は終わりです。

今までのはヒドいことになるまでの過程で、まだ基礎の基礎という段階です。
例えるなら、RTAのための通しプレイですかね。
次はテレサやクレア、セルフィにとって大きな転換点になるイベントです。



――――設定

クレー射撃:独自設定、考察
擬似魔法の訓練。
相手を補足しながら詠唱して当てる訓練ができる。
ただ、擬似魔法の戦闘使用としては基礎段階に当たる。

ゲーム中では、命中率が設定されている擬似魔法以外はすべて必中。
なぜ命中するのか、なぜ命中しない擬似魔法があるのか等、説明されていない部分も多い。
そのため、こうして訓練しているという設定を取り入れた。
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