開花
青い空、広い海。
大地に広がるのは、緑色の草原。
3年後、15歳のテレサは、バラムにやってきていた。
本来、原作が始まる2年前に、彼女はバラムガーデンに転校した。
理由は単純にして切実。
なぜか彼女を狙って、『次元の挟間』の魔物がたびたび送られてくるようになったからである。
最初は『マインドフレイア』から半年後、次に4ヶ月後、さらに3ヶ月後、とどんどん短くなり、ついに5日毎に1体、それだけでトラビアが滅びかねない戦力が送られてくるようになっていた。
始めの方はトラビア軍が常駐して対応していたのだが、どんどん負傷者が増えていき、最後にはバラムガーデンの傭兵『Seed』を雇い、それでも厳しくなると、完全にテレサ頼みとするしかなくなってしまっていた。
彼女も新たに得たGFの力を戦術に組み込み、一気に戦闘力を伸ばしており、魔女並みの力を持つ兵士として、ある意味重宝されるようになる。
しかし、それもいずれ限界が来る。
だからこそ、トラビアガーデンの学園長とマスター兼トラビア大統領は、決断せざるを得なかった。
敵が狙ってくるテレサを独り、世界最強の戦力の揃ったバラムガーデンに転校させることを。
「ドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエ……」
黒髪少女は小刻みにジャンプを繰り返しながら、草原を駆け抜ける。
彼女にとっては草原も、その間を走るアスファルトの道路も、遠くから見える深緑の森も、新鮮なものばかりだった。
小刻みにジャンプを繰り返すのは、トラビア大陸の雪原と土の地面と氷の地面を区別なく素早く移動するために編み出した移動方法だ。
そこまで移動に難のないバラム島でこの移動法を使用する意味はなかったのだが、これはテレサの癖のようなものだった。
途中に魔物が出たが、彼女は足を止めることすらなく、槍の一撃と蹴りで仕留めて先を急ぐ。
バラムガーデン正門では、知り合いの正Seedが彼女を待っていた。
「よう、待ってたべ」
特有の訛り言葉で声をかけるのは、筋肉質の赤毛男ワッカ・ビレッジ。
トラビアガーデンが以前雇ったSeedの1人だ。
「うい」
テレサも停止して対応する。
ルールとして、ムービー中に変態移動は行わない。
「彼女がそうなの?」
もう1人、長い黒髪の美女がいた。
長身の大人びた美貌の持ち主で、泣きボクロがあって胸が大きい。
身長もあまり伸びておらず、女性としても育っていないテレサとは大違いだ。
「ああ、テレサ・ドゥだ」
「あなた、その名前で通してきたの?
ルールー・ビサイドよ」
「ヨロシク」
お互い握手する。
正Seedが2人も案内役を買って出たのには理由がある。
テレサの使う技術が、バラムガーデンで研究されているそれよりも高いレベルにあると認定されたからだ。
つまり、彼女は生徒であると同時に、専用の研究室を持った研究者としても、バラムガーデンに転校することとなったのである。
「……その技術の提供と引き換えに、我々は5日毎の魔物の来襲に対する戦闘を、全力でサポートします。よろしいですね?」
「おk」
学園長室にて、契約書にサインが入れられ、正式に契約が結ばれる。
1体で国を1つ滅ぼすような魔物を、5日毎に相手することになるのだ。
引き換えになるのは、魔女にも匹敵すると言われる戦闘技術の提供と研究。
バラムガーデン学園長シド・クレイマーの目的として必要なことで、さらに戦力を増強したいマスター・ノーグの思惑にも合致したために、今回の契約となった。
「次の5日目、あした。見にくる?」
「おや、そうですか。それでは今から希望者を募りましょう。
場所は、最初ですから外でお願いできますか?」
「りょーかい」
テレサは右手を挙げて敬礼し、準備のために去っていく。
翌日。
数人の教員や生徒達が遠巻きに見守る中、バラムガーデンの見える草原にて少女は次元の魔物を待った。
黒く、巨大な靄――次元の穴が空中に出現し、そこからボロボロのローブを身にまとった痩せた老人が姿を現した。
ほとんど大軍団だった。
1人の少女を相手にぶつける戦力ではない。
たった1体で国を滅ぼせるというのも、決して誇張ではないと思わせるほどの圧力。
「『ゾンビ、いなかった』」
――はずが、出現と同時に正確に頭を撃ち抜かれ、アンデッド化した魔物はバタバタと倒れていく。
やっていることは単純で、『ブリザド』によって氷塊を生み出し、それを砕いて槍で弾いたり、足で蹴飛ばしたりしているだけだ。
しかし、時折爆発が発生しており、生み出された氷塊に『魔法剣』による魔法合成を行っていることが分かる。
「『魔球スローカーブ』」
1つ1つはそれほど難しくない技なのだが、それを同時にマシンガンのように、しかも一発一発十分な威力を計算して正確に急所に当てるというのは、人間業ではなかった。
しかも、テレサは同時に本体である老人へも攻撃を行っており、老人は後手後手に回らざるを得なくなってしまっている。
「『撃つと死体が降ってくるゲーム』」
しばらくすると、老人が盾にしていた魔物の死体も撃ち抜かれ、老人に氷の礫が直撃し始める。
いや、それどころではなかった。
老人が徐々に石化し始め、石化解除の暇も与えなかったために、完全に石となってしまい、最後に同じく石化した魔物のアンデッドが投げ込まれ、もろとも砕け散った。
「『多分、これが一番早いと思います』」
言って、テレサはパタリと倒れ伏す。
さすがに、これだけの戦闘に体力が追い付かなかったのだ。
「衛生班!彼女を保健室へ!」
見物客の1人だった教員が、万が一のために待機していたサポートチームに指示を飛ばす。
「やれやれ、予想以上でしたねえ」
同じく見物していたシド学園長が、今の戦闘で読み取ることができた様々なことに思いを馳せ、今後の方針について会議を開く旨を近くの制服教員に伝えた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
これがテレサの完成形です(白目)。
まだ肉体への負荷が大きく、1戦ごとに気絶してしまうという欠点があるんですが。
『ゾンビ、いなかった』は『THE・ゾンビガンシューティング』のTASネタです。
『魔球スローカーブ』は『パワプロ』(ナンバリング忘れた)のTAS動画ネタです。
『撃つと死体が降ってくるゲーム』は『メタルスラッグ』のTAS動画ネタです。
――――設定
トラビアガーデン学園長、マスター:考察、独自設定
トラビアは人口が少なく鉱物資源の売買以外に目立った産業がない。
その鉱物資源の売買も、交通の便が非常に悪いため、それほど発達していないと考えられる。
このことから、際立ったお金持ちというのがトラビアにはいないのではないかと考えた。
そのため、この小説ではトラビア大統領=トラビアガーデンのマスター、つまり出資者としている。
トラビア共和国は徴兵制(民兵制)の国であるため、国策としてトラビアガーデンを設立し、国家予算で維持していると考えれば、国民の大半がトラビアガーデンの関係者であるという、『アルティマニア』の説明についても辻褄が合う。
バラムガーデン:アルティマニア設定
世界に3つあるガーデンの中心的存在。
自由で開放的な雰囲気があり、校内での服装や行動は生徒達の自主性に任されている。
GFのジャンクションを利用した戦術や、校内に魔物を放った訓練施設などがあり、生徒の戦闘訓練への関心が高い。
希望する生徒は試験を経てSeedに認定され、世界中に派遣して任務に従事し、実戦を経験させるという制度が存在する。
GFのジャンクションを取り入れていることもあり、世界最強の傭兵部隊として知られている。
(他にまともな傭兵部隊についての設定が存在しない)