食事後。
「ここの食堂、ボリューム結構ある方なのに、3人前は食べたんじゃない?」
「人外に片足突っ込んでると、燃費悪いんよ」
ちなみに、ガーデンというのは兵士養成学校である。
特に実技の訓練は食べなければ持たないことも多く、さらに割と命懸けであるため、女子生徒達もダイエットなど気にせずに遠慮なく食べる傾向があった。
そんなガーデン生の目から見ても、テレサは食事量が多い方である。
もっとも、彼女は使う技からしてかなり特殊なケースなのだが。
「今日はこれからどうする?」
「解析と調整」
「大丈夫なの?」
「カラダはヘイキやで」
「そう、なら、ヤマザキ先生に映像を借りてきましょうか」
「いらへん」
「解析でしょう?」
「肝心なもん映らへんやん」
「肝心なもの?」
ルールーは少し考え込む。
もしかすると、一般的な意味での解析ではないのかもしれない。
なにしろ、バラムガーデンで天才児と言われたルールーでさえ、この少女が使う技術については分からないことの方が多いのだ。
「黒い靄。アレ、カメラに映らへんねん」
テレサは一貫して、同じ目的のために行動していた。
当然、倒すべき相手の情報を取得することも含む。
『次元の魔物』を自慢げに倒して終わりなどということはしない。
タブレットで何度も撮影して、なぜ映らないのかも含め、解析を進めてきていた。
転生特典なら、映るようにしてくれてもいいと何度も思ったものだが。
「私も見たのは見たけれど、アレの正体が分かるの?」
「なんかの魔法で、異世界と繋いでるっちゅうことくらいやね。
『次元の穴』てあたしは呼んでるで」
ルールーにとって、色々な意味で予想外の答えだった。
この少女と自分達とでは、目指しているものや見えているものがまるで違う。
「肉眼で見て、わかるものなの?」
「めっちゃノイズ入ってるから、解析せんとゼンゼンわからへんよ。
やから、今回は『状況再現』で済ましてんよ。
『任意コード』までやってたら、見てる余裕もあらへんし」
「その、『状況再現』とか、『任意コード』ってなんなの?
あなたが使っていたのって、『魔法剣』を併用した『赤魔法』の別種合成よね?
別種合成で『ブレイク』を発動させたのでしょう?」
黒髪美女は尋ねる。
テレサが使う技術を盗めという指示を受けている以上、そこは確認しておかなければならない話だった。
もっとも、それを指示した制服教員達も、新型の『赤魔法』、世界初となる別種合成について意識していたようなのだが。
「『赤魔法』て、擬似魔法だけで合成する技術やん。
『状況再現』て、周りの魔力の状況を操作して合成する技術やから、別モンやで?」
「え」
「それに、アタシが合成したんは『ノーザンクロス』やん。
石化があんなぐらいで割れへんて」
「え」
「『任意コード』て、周りの魔力の探知と操作突き詰めて、未来予知と事象改変まで踏み込んでるから、さすがのあたしも他に余計なことやってる余裕ないんよ」
「……」
ルールーはワッカの報告書を思い出す。
『彼女自身が世界のルールだと言わんばかりの暴れっぷり』
まさしく、『任意コード』の説明そのものだった。
「解析は分かったけど、調整は?」
「見た方が早いで」
「それじゃあ、どこがいいかしら?訓練施設?」
「ほんならそれで」
少女は言うと、立ち上がったルールーの手を握る。
「ホァイ」
ほんの数秒、目まぐるしく変わる景色が落ち着くと、そこはバラムガーデン内に作られた、魔物が放し飼いにされたエリアの手前、ルールーがよく知る訓練施設だった。
「え……?」
自分の身に何が起きたか分からず、黒髪美女は頭が真っ白になって立ち尽くす。
エクスデスは、『次元の挟間』から異世界へ魔物を送り込む際の反動に悩まされていた。
なぜか、妙に『無』の力が乱れるのだ。
そのせいか、タンスの角に小指をぶつけたり、クシャミが出そうで出ない状態が3日も続いたり、『次元の挟間』なのにタライが降ってきたり、酒瓶が降ってきたり。
何度そういった呪いのようなものを払っても、異世界へ魔物を送り込むたびに妙なことが発生する。
おかげで自分自身が異世界へ渡ることができるほどの、大きな穴を開ける実験の回数が、最近は5日に1度から手順を短縮できなくなっていた。
しかも、最初に送り込んだ『マインドフレイア』の反応を目印に、何度も世界を滅ぼせるほどの戦力を送り込んでいるのに、なんの反応も返ってこない。
エヌオーに相談しても、古い文献を読み漁っても、いずれの理由も分からない。
「このまま、不安要素を抱えたまま、異世界へ飛ぶべきかどうか……」
エクスデスは、原因不明の反動のようなものに、頭を抱えていた。
原因が、平行世界を管理する神が送り込んだ転生者が持つ転生特典にあるとは、さすがに考えが及ばない。
話もできなかった魂に、神も期待をかけたりはしなかったのだ。
転生特典とは教えずに、ただ生きているだけでエクスデスの妨害となるような、そういう呪いを持たせていたのである。
そうとは知らないエクスデスは呪いに悩まされ続け、テレサも妙に不安定な自身の周囲の魔力に悩まされ続けていた。
それを見てほくそ笑むのは、神のみ。
テレサや転生を知る親友達などは邪神の類と考えていたが、あながち間違いではないかもしれない。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
ようやくテレサが本領発揮して、ギャグっぽくなってきました。
ただ、やっぱり理詰めにしがちな私にはギャグは向かないのかな、と思ったりはします。
感想を書いてくれる読者の優しさに涙しながら、まあ書きますが。
私自身の練習でもあるので。
――――設定
食事量:考察、独自設定
バラムやガルバディアでは、食事量の多さはそこまで問題にはならない。
しかし、食糧事情が厳しいトラビアで多く食べるのは少々問題がある。
もっとも、それは一般家庭単位での話である。
トラビア共和国は農業改革や品種改良など、食糧増産に力を入れており、その食糧を一括管理し、貧富の差による食糧難の緩和に役立つことから、徴兵制の制定やトラビアガーデンへの入学義務に対する反対意見が出なかったのではないかと考えられる。
これは現実においての発展途上国の学校教育、給食支援活動などを参考に考察した。
『ブレイク』:擬似魔法、ST変化魔法
FFシリーズの石化魔法。
ナンバリングタイトルの多くで即死と同様の扱いを受ける強力な魔法。
本小説における設定では、全身を硬化させ、動けなくする魔法としている。
そのため、生半可な攻撃では破壊できない。
ゲームで6万以上の防御無視ダメージを叩き込んでも、欠片も壊れないことからこういう設定にした。
FF8のゲーム中では、石化させるとそれまでに与えたダメージ分しか経験値がもらえないという仕様がある。
それを利用し、よく低レベル進行に活用されるが、普通のモンスターはカードにしてしまえるため、肝心な時に石化を忘れて経験値を吸収させてしまうことがあったりもする。
『ターミネーター』を石化させる際、命中率は1%となっているが、ST攻撃にセットして殴るより『ブレイク』として使用した方が多少効きやすいように感じる。(要検証。一度効いたことがあるが、二度とやりたくない)
『ノーザンクロス』:捏造設定
元ネタはFF6の敵が使ってくる凍結魔法。
凍結した状態は行動不能で、炎魔法を受けると解除されるが、その状態で物理攻撃を受けると即死する。
確か防具での防御は不能で、『ジハード』+『フレイムシールド』の戦法が有効と考えられる。
時間経過でも解除されるが、ぶっちゃけ使われる前に敵を殴り倒す方が早い。
『ネクロマンサー』の耐性を考えた結果、凍結からの破壊で倒すのがいいと判断し、今回登場させた。
元々全体攻撃で、今回もアンデッド複数体を一網打尽にしている。