調整と言っても、やることは単純、基礎的なことだ。
槍や擬似魔法の基礎を確認するだけ。
いわゆる素振りのようなものだ。
「ジョインジョインジョインジャギィデデデデザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニーヒャッハーペシッペシッペシッペシッペシッペシッペシッペシッペシッヒャッハー ヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒ ヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒヒーッヒヒK.O. カテバイイ」
ただし、それを通常の3倍速で行うとこうなる。
「すげえ、あの槍使い、手数が二刀流以上だぞ!」
「なんだあれ、擬似魔法を詠唱しながら型をトレースしやがった!」
「しかもあの型ってクッソ難しいのに、完璧にマスターしてやがるぜ!」
さらに調整は続く。
「バトートゥーデッサイダデステニー ペシッヒャッハーバカメ ペシッホクトセンジュサツコイツハドウダァホクトセンジュサツコノオレノカオヨリミニククヤケタダレロ ヘェッヘヘドウダクヤシイカ ハハハハハ
FATAL K.O. マダマダヒヨッコダァ ウィーンジャギィ (パーフェクト)」
観客もヒートアップしてきた。
「ジャギがぁ、壁際ァ!」
「魔法の数字27ァ!」
「超ガソフィニッシュ!死んだァァァァァッ!!」
少し離れ、冷めた目で見ていたルールーは呟く。
「なんなのこれ?」
根が真面目なために、ノリについていけない天才児だった。
ちなみに、ガソリンは蒔かれてなどいない。
さすがにテレサも疲れたらしく、色々な話は翌日、ということになった。
テレサに与えられた研究室は、バラムガーデン内に幾つかある部屋の1つ。
軍と密接に繋がっているトラビアガーデンと違い、バラムガーデンは近隣の国であるバラムに国防軍が存在しないため、ガーデン外に戦術や兵器の開発機関がなく、独自に大きな開発機関を抱えていた。
『赤魔法』の研究室も当然存在しており、テレサはそこに所属することになる。
「では、あれは『赤魔法』ではない、と?」
『赤魔法』研究室の室長ヤマザキが、テレサの説明に首を傾げる。
「『赤魔法』て、あくまで1つの魔法に1つの詠唱やん?
『状況再現』て、魔力の状況を再現する技術やから、合成とは別やねんよ。
再現に利用する擬似魔法自体は、留めたりせえへんねん」
「では、『ブリザド』の氷を砕いて『魔法剣』を付与していたのは?」
「対集団用の攻撃手段に使える手順のを選んだだけやで」
ヤマザキは頭を抱えた。
彼女は予想とまったく違う理由で、攻撃手段を選択していたのだ。
「しかし、魔力の状況を再現する……?」
「詠唱て、早口すぎたら発動せえへんやろ?」
「詠唱完了と発動準備完了の相関だな。オダイン博士の論文だったはずだが」
「うん」
少女は頷く。
「ほんなら、詠唱完了して発動せえへんかったら、魔力て、どないなる?」
「……確か研究はされていなかったと思うが。まさか、残る?」
「さすがに時間経過で散るんやけど、下級魔法でも30秒は残るんよ」
「それを利用するのか」
「『赤魔法』の合成がソレやねん。
でも、発動した後も10秒は残りよる。
発動した後の魔力は別モンになるんやけど。
ソレを利用するんが『状況再現』や」
「新理論だ。こちらでも検証が必要だな」
「トラビア軍で追従実験やっとるから、そっちも参考にしたってな」
「分かった」
次の話題に移る。
「それで、次は『任意コード』だが……」
「GFのチカラ借りへんかったら、多分ムリやで」
「GF?
特殊なアビリティを利用するということか?」
「GFにお願いすんねん。『脳味噌のリミッター制限して』て」
「脳のリミッター?」
「『火事場の馬鹿力』、脳味噌でやるんよ」
火事場の馬鹿力というのは、肉体が危機を察知した時に発揮される、本来以上の筋力のことである。
戦場で活躍する兵士を養成する研究を行っているガーデンでは、この現象は普通にあるものとして認識されていた。そして、意図的に筋力や運動神経のリミッターを解除する方法も研究され、実用化されている。
しかし、脳機能を制限するという方法でリミッターを解除する方法については、あまり研究されていない。
なぜならば。
「それはやるのはいいが、まともに生活できなくならないか?」
「なるよ。脳味噌の負担きっついもんやから、いっぺん寝込むと起きられへんし、長いこと続けてると判断力メッチャ落ちるで」
「GF利用の代償か……」
バラムガーデンでも、GFの利用については覚悟のある生徒に限定しており、必要ない時は極力外しておくように指導している。
戦闘指導員でもあるヤマザキとしては信じられないことに、テレサという少女は、代償について何のデータもない状態で、さらなる代償を払うところに踏み込んだようだ。
「今すぐは導入できないな……」
彼はまたも頭を抱える羽目になった。
エクスデスは頭を抱える。
どうやら昨日、『ネクロマンサー』を送り込んだ際に、『肝心なところでうっかりする呪い』をもらったらしいのだ。
いつものようにそれを解除しようとしたのだが、肝心なところでうっかりしてしまい、なかなか解除できなかった。
このままでは、異世界へ威力偵察を送り込むのもままならなくなる。
そう難しい術式ではないため、配下の者に解かせるが、なかなか時間がかかりそうだ。
今度の威力偵察の際の儀式は、やや雑になるかもしれない。
それでも、呪いを残したまま儀式を行うよりはマシだったが。
次はどのような反動が来るのか、内心戦々恐々としていた。
「この機に呪い対策を行うのも良いかもしれんな」
元々エクスデスは強い耐性があったため、あまり気にしてこなかったのだが、そろそろそうも言っていられなくなりつつあることを自覚せざるを得なかった。
「あちらの世界にも我に仇なす者がおるか」
異世界の者がエクスデスを知るわけがないのだが。
なぜか彼はそう考えていた。
つい、うっかり。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
現在の鍛錬風景(白目)と、理論面(白目)ですね。
そして解いたつもりで解けてない呪いです。
シムラァ、うしろうしろー!
邪神(邪神)は一体何をしたかったのか。
――――設定
研究室:考察、独自設定
現実の軍隊でも日夜戦術や兵器の開発に勤しむ部署があり、それによって様々な新兵器が開発され、実用化されるのが普通である。
実戦配備に大きく予算を割く必要があり、さらに既存兵器の不具合の解決にも走りまわることになるため、開発だけをやっているわけではなく、開発しているのは攻撃兵器や人殺しのための戦術だけというわけでもない。
トラビアとガルバディアは、ガーデンと軍が密接に繋がっており、軍に研究部があるため、ガーデン内の研究室はバラムガーデンに比べるとかなり小規模となっている。
『アルティマニア』には国から多額の予算の供託を受けているため、設備や兵器の導入に積極的とあるが、おそらくガルバディア軍の特殊兵器を訓練用に買っているものと考えられる。
ガルバディア軍が保有していない兵器の運用について教育、訓練しても訓練する意味がないため。