テレサが受ける授業というものに、基本的に戦闘面のものはない。
その戦闘スタイルがあまりにも意味不明なために、誰も口を出すことができないからだ。
下手に口を出して、その圧倒的な戦闘力が損なわれてしまっては元も子もないというのもある。
では、何の授業を受けるのかというと、歴史や地理、そしてこの平行世界のテレサの知識にはない常識の話である。
例えば、GFの利用に関しても、彼女の利用法はかなりオリジナルが入っているが、バラムガーデンで行っている利用法を詳しく知っているというわけではないのだ。
そもそも、原作世界とこの平行世界とでは、代償が異なるという改変ポイントがあった。
そのため、GFが原作のままの性質を持った存在であるという保証がない。
さらに言えば、FF8のゲームが得意で、攻略本の情報があるからと言って、現地人がどのような形でGFのコマンドアビリティをセットしているのか、活用しているのかといった、どうしても分からないことがあるのは当たり前なのだ。
それに、長年GFを利用してきたバラムガーデンで研究されてきた工夫については、テレサにとって重大な情報だった。
下手をすると、ここからさらにもう一歩踏み込み、さらに大きな代償を支払う必要があるからだ。
ただその後、何かの間違いでGFを外した時に、そのまま自分で復帰できずに死亡するなどという事態は、さすがに避けたい。
だからこそ、彼女はバラムガーデンのGF実用研究に注目していた。
どこまでが命に係わるボーダーラインで、どこまで安全なのか、少人数で研究を重ねるわけにはいかなかったのである。
親友達を巻き込みたくなかった、というのもある。
それを聞いたヤマザキは、まずは魔物による動物実験を行うことにした。
ターゲットとなるのは『バイトバグ』。
世界中、どこの大陸にも生息する、巨大な顎を持った蜂のような羽虫だ。
訓練施設に特別な部屋を作り、そこで飼育することになる。
そうして、生体に致命的なGFの作用や、新たな利用法を編み出そうというのがこの研究の趣旨だ。
それとは別に、テレサと同じ方法による戦闘力の向上についても、研究が行われることになった。
こちらは人体実験となる。
というのも、生徒の1人が人体実験となることを承知で名乗りを挙げたのだ。
サイファー・アルマシーだった。
様々な意味での問題児だったが、制服教員達は問題児1人の犠牲で研究が進むならと承諾。
学園長派も、サイファーならば放っておいても同じことをするだろうという結論になり、それならば自分達で管理するべきということになって承諾された。
「グッ、頭が……!」
「ほいそこまでや」
最初に行ったのは、医療機器に囲まれた状態で、さらにテレサが監修する中での、思考能力の拡張。
「俺はまだいける……!」
「無理して脳味噌イカれたら元も子もあらへんて。
それにや、ちゃんと知識も詰めこまなアカンし、現象の解析も覚えなアカンねん。
必要ない時にイチイチ気絶しとったら、効率悪いんよ」
「……チッ」
舌打ちしながら、サイファーは脳のリミッターを入れるようにGFに命令する。
すると、地獄のような頭痛は消えていったが、知恵熱で頭がぼんやりしていた。
「コレ自体で死ぬことはないんやけどね。死ぬ前に気絶するし」
「実体験か?」
「うん。防衛本能サマサマやで」
テレサ自身、決して特別な才能があったわけではない。
血の滲むような努力の末に、今のこの戦闘力を手に入れていたのだ。
次は少し休憩して、簡単な『状況再現』の手順をトレースしていく。
「“リヴァイヴァスライバベル水撃スープジャイアンロコ金剛カイザーブラスター陽子ロケット鬼バルカン破壊鉄下駄電束火炎プラズマ跳弾神速熱線放射ソニックディフレクト電撃濁流清流アル三スカイ燕曲射短勁フラッシュライジングロザリオアル・十字塔無月真アル・羅刹掌”『略して剣、相手は死ぬ』」
テレサが先に見本を見せる。
「“リヴァイヴァスライバベル水撃スープジャイアンロコ金剛カイザーブラスター陽子ロケット鬼バルカン破壊鉄下駄電束火炎プラズマ跳弾神速熱線放射ソニックディフレクト電撃濁流清流アル三スカイ燕曲射短勁フラッシュライジングロザリオアル・十字塔無月真アル・羅刹掌”『略して剣、相手は死ぬ』」
隣でサイファーが真似をする。
木製の的がポンと乾いた音を立て、灰を散らした。
「ぐっ……!」
急激な脱力感に呻く。
「今の、どないなったか分かった?」
「一瞬で灰になったな。超高温で焼いたって風でもなかったが」
あらかじめ、起きる現象を覚えて解析するように言われていたため、サイファーは分からないなりに推理してみる。
擬似魔法までならわかるのだが、物理攻撃担当の彼は『赤魔法』や『青魔法』といった、理論面が重視されるものは苦手なのだ。
「温度上がってたんは、副次効果やね」
年下の少女は説明する。
「『
『
「……」
「『
『
『
まだまだ続く。
「『
『
『
『
最後に『
そして最後にこう言った。
「な?カンタンやろ?」
「ただ説明を聞いてても何一つ理解できねえってことだけは理解できたぜ」
「解せぬ」
幼児体型の黒髪少女は不満げに頬を膨らませる。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
まだ実験の段階ですが、テレサの技術の伝達が始まります。
サイファーがどこまで行けるのかは今後のお楽しみということで。
少し前まで塩分の過剰摂取を目の敵にしていたんですが、塩分不足って割と簡単に死ぬそうですね。
結局、塩が人間にとって必須栄養素であることに違いはない、ということです。
それを言うなら水だって飲み過ぎると死ぬそうですし。
世の中、何事もほどほどがいい、ということなんでしょうか。
――――設定
『バイトバグ』:FF8、雑魚モンスター
ゲーム中でも世界中に生息する、FF8を代表する雑魚敵。ぶんぶん。
空を飛んで世界中に生息域を拡大したのだろうか。
バラム、トラビア、ガルバディアはおろか、セントラやエスタにも出現する。
HPがそれなりに高く、カードにする際のHP調整がそこそこ容易。
しかし、レベルが上がると『おなら』でこちらをバーサク状態にしてくるのは少々面倒。
『ニードル(毒付与)』?知らない子ですね。
カードのレア判定で『エルヴィオレ』を入手可能なため、序盤のカードゲームに負けたくなければ乱獲するのもアリ。
『エルヴィオレ』はバラムで入手可能なノンレアカードの内では最強と言える数字の並びを持っている。『カード変化』で『デスストーン』になるが、特に縛りプレイなどでもなければ覚えておく必要はない。