多分これが一番…   作:ひろっさん

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7/15 なんか、イマイチ調子がパッとしない。こういう時は大体塩分不足か水分不足と相場が決まっている。


失言

……――。

 

無数のモニタの前で、少女は今までの記憶を見返す。

視点は少女のものだ。

 

そして、視線は黒い靄に固定されていた。

『次元の穴』にまつわる現象を解析しているのだ。

 

今までの情報から、この穴はこちらからの物理現象、『魔法剣』を付与された物質、擬似魔法を含む、こちらの世界の法則による現象を通さないものであることが判明していた。

 

どうやら、今のままではあちらの、FF5の世界にこちらから乗り込む、ということはできないらしい。

エクスデスが直接こちらの世界に乗り込んで来るまで、待つ必要がある。

 

……――。

 

――ブッシツ、ホウソク、おかしなハナシではある。

 

『マインドフレイア』は呟いた。

 

――元々カナタとコナタは、『次元の挟間』を通じて繋がっておるはず。

――だからこそ、エクスデスはワガハイのような『次元の魔物』を送り込むことができておるのだ。

――『無』といえど、『次元の穴』を開き、その上でコナタよりの逆流を防ぐなどという真似が、そうカンタンにできるとも思えぬ。

 

おかしいというのはそこだった。

 

『次元の穴』の逆流を行うには、特別な術式を組まなければならないというのが『マインドフレイア』の見解で、おそらく正しい。

しかし、自身の力に絶対の自信を持つエクスデスが、そのようなことを行うだろうか?

逆流によってFF8側の魔物や戦士がFF5側に送り込まれたとして、最悪でも『無』に呑み込んでしまえばいいと考えるのではないだろうか。

実際、今のエクスデスはそうやってFF5側の主人公達、『光の四戦士』を倒してきたのである。

 

まだ何か、見落としがある。

解明されていない法則がある。

 

テレサはなかなか、その先が見えないでいた。

ともかく、ありとあらゆることを、試してみるしかない。

 

 

 

テレサが目覚めると、サイファーに色々と教える。

どんな思惑からであろうと、テレサの技術を受け取るために、代償を払うことを了承したことに違いはないのだ。

 

テレサ自身、よくある修行漫画のように、弟子の性根を問うような真似をするつもりというのはない。

大体、今の彼女にはそれができない理由があった。

この世界が平行世界であり、サイファーが原作と違って憧れの魔女よりも仲間を優先してくれることを祈るのみ。

 

「やってて疑問に思ってたんだが、なんで前衛の俺が『プログラミング』なんだ?」

「『詠唱組み換え』までは自力でできるようになってもらうからやで」

「『詠唱組み換え』って、例の意味があるようなないようなやつか?」

 

通常、擬似魔法の詠唱は魔女の魔法の詠唱と共通しており、ある程度は意味が通るようにできていた。

しかし、テレサが使う詠唱短縮や『状況再現』では、単語の羅列や切り取りがあり、意味が通っても滅茶苦茶な内容のことも少なくない。

 

「せやで。あたしで詠唱組むんやったら、GFにお願いして脳味噌のリミッター解除してもらう必要もないねん」

「それでアンタの動きに追い付けるか?」

「ムリやね」

 

テレサは断言する。

 

「アレ、自分の動きに合わせて『詠唱組み換え』しよるんよ。

型つくったらできへんこともないんやけど、そらただの初見殺しやし。

『アタリハンテイ力学』もソレの応用やから」

「……道のりの遠さに眩暈がしそうだぜ……」

「一歩ずつ歩きよったら、いずれは着くんよ」

「そりゃ、天才様とは違うのさ」

「……!」

 

少女は、胸を締め付けられるような感じがした。

 

「?」

 

そして、彼女はなぜそうなったのか、自分で分からなかった。

 

「どうした?」

「わからへん」

 

自分の失言に気付かなかったサイファーも、ただ首を傾げるばかり。

 

 

 

「彼女の戦闘に関する才能が、下の方?」

「あくまで『かもしれない』という程度の推測です」

 

シド学園長は、意味不明な現象をたびたび発生させる転校生について、自分の見解を述べた。

聞いていたのは、サポートのためについていた制服教員。

細かい部分で対立することがあるとはいえ、バラムガーデンを運営するのに互いの力を合わせなければならないと考えているのは同じなのだ。

両者の亀裂は、まだ決定的にはなっていない。

 

「彼女の戦闘を見ていると、戦闘センスを要する部分がほとんどないように思えるのです」

「しかし、それであれほどの動きが?」

「思考能力のリミッターを意図的に解除しているなら、感覚的に時間がゆっくり流れているのかもしれません。

攻撃を避けるというよりも、障害物を避けるという感覚なのでしょう。

様々な現象を観測し、本人は未来予知に踏み込んでいるといいますし、逆に言えば瞬間的な判断力は少しも要していない、ということなのではないでしょうか」

「未来予知に匹敵する先読み能力は、戦闘センスによるものなのでは?」

「そこは分かりません。

ただ、これはトラビアガーデンからの報告書にあったのですが。

テレサ君は、一度として鍛錬などは行わず、代わりに不可思議な現象について徹底的に研究を行っていたのだとか。

そのデータはトラビア正規軍において参考にされるほどの量で、『状況再現』に関しましては、共同開発という形になっていたのだと聞いています」

技術者(・・・)だったということですか」

「あくまで推測です。今のところ、それを否定する情報がないというだけで、事実は異なるのかもしれません」

 

自分で曖昧なことを言うものの、シド学園長はその可能性は決して低くないと考えていた。

 

もしもテレサの戦闘センスが高かったならば、わざわざ既存の利用法にはない代償を払ってまで、戦闘力を高めようとはしなかったはずだとも考えていたからだ。

 

「いずれにせよ、彼女の言動には、今後も注視していく必要があります。

トラビアガーデンとの契約もありますし、バラムガーデンの戦力増強にもなります。

そういう意味で、私はノーグ派にも期待しているのですよ。

『次元の魔物』の解析について、今後もよろしくお願いします」

 

バラムガーデンが得るものは、決してテレサの技術だけではない。




――――あとがき

こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
インターミッションって感じですね。

テレサは天才には違いありませんが、あくまでプログラマーであって、戦闘の天才ではない、ということです。
つまり、神様(邪神)の要求は、彼女にとってはとんでもない無茶振りだったんですよ。

今回、解説することがあんまりないので、シド学園長のことについて解説しようと思います。



――――設定

シド・クレイマー:アルティマニア情報、独自設定
バラムガーデンの学園長。
Seedの理念を提唱した人物であり、有力な出資者を得て原作開始から12年前、この小説の現時点から10年前にバラムガーデンを創立する。
魔女とも因縁浅からぬ関係にあり、生徒達へ愛情を傾けつつ、その裏では計り知れない苦悩を抱えている。
色々な意味で当事者であり脇役であるという、複雑な立ち位置。
割とタヌキオヤジ。

ゲーム中では攻略上重要なキーパーソン。
『エンカウントなし』という超重要なアビリティを入手するために、初任務を受けた後、ティンバー行きの列車に搭乗する前に話しかけ、あるアイテムを入手する必要がある。
カードをコンプリートしようとする時、F.H.までにサイファーのカードをもらうことを忘れると、死ぬほど後悔することになる。

この二次小説では、ノーグ派と学園長派の対立が原作以上に鮮明になっている。
数の上ではノーグ派が勝っているが、個々の実力や影響力の高さで学園長派が上であり、両者の勢力は拮抗している。
学園長はノーグがなかなか表に出てこないのをいいことに、言葉巧みにノーグ派を誘導しており、原作よりも大分強かに設定している。
将来に魔女との対決があることを見越し生徒達に力を与えることを急いでおり、テレサの技術を得るのに大きな代償を必要とすることを知りながら、リスキーな契約を断行してSeedの強化を推し進める。
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