スコールは、暇な時はいつも訓練施設で1人鍛錬を行っている。
Seed候補生になって、モンスターエリアへ行くことも増えたとはいえ、ガンブレードの素振りを行うなど、やることは多い。
元々バラムガーデンの生徒は戦闘に関心が強く、多く訓練施設を利用するため、なかなか完全に1人だけで鍛錬を行うという時間は少なかったりするのだが。
そして、そんな中でストイックに己を高め続けようとするスコールの姿勢は、地味に注目が集まっていたりする。
最近は、転校生の鍛錬風景を見るという目的のために、訓練施設に人が集まってくることが多くなった。
なんでも、教員達が彼女の技術を研究するために、特別な予算を組んでいるらしい。
とんでもない話だ。
そんな中、奇妙な行動をする女子生徒に遭遇することが多くなった。
自身の武器らしい『ジャベリン』の素振りをしているのだが、信じられないほど下手なのだ。
運動神経を司る部分に居場所を作るため、GFは外すと著しく運動神経を損なうのだが、彼女ほど酷くはならない。
夕食後、人がほとんどいなくなる時間帯、決まって1人で練習している。
まだ見かけて20日も経っていないのだが、素人もいいところだ。
「ひぁっ!?」
自分の足につまずいて、転倒する。
その拍子に、制服のフレアスカートに槍の石突を引っ掛けて中身がモロに見えてしまうが。
気にした様子もなく立ち上がると、もう一度一通りの型を試して、なぜか満足げに頷き、去っていく。
スカートの下は短パンだった。
「(新入生か?)」
ガーデンは入学の年齢制限が5歳から15歳と、比較的緩い。
そのため、Seed候補生に素人同然の生徒が入ってくるということが、少ないながらもあった。
そういう生徒は大抵が苦労する。
Seedが強いのは、才能もさることながら、幼少期から過酷な訓練を受けてきたからなのだ。
13歳から入学して15歳でSeedになったキスティスのような存在は例外として、戦闘訓練の経験の長さは明確に戦闘力、判断力に響いてくる。
どんな事情があるのかはスコールには分からなかったが、彼にできることはあまり多くない。
そして、彼には他者とかかわり合っている時間も余裕もなかった。
強くなるという、ただ一点において、彼は人一倍強い想いがある。
ただ、その小柄な黒髪少女が求める『力』が尋常なものではないこと、思いが至らなかった。
スコールが自分の思い違いを知ったのは、2日後のことである。
いつも何かと突っかかって来るサイファーが、噂の転校生の弟子になったと聞いてから、しばらく後のことだ。
実は昼間にもその様子は何度か見かけていたのだが、興味がなかったため、あまりじっくり見たことはなかった。
その日は、実技の授業で総当たり形式の試合が行われた。
さすがに真剣や実弾は使用せず、擬似魔法も禁止だ。
特に珍しい内容ではない。
例の転校生が来てから、初めて行われたというだけである。
サイファーとは、いつもお互いに真剣勝負に近くなる。
今回は木剣同士だが、勝つか負けるかはその時々。
ただ、サイファーは負けそうになるとルール違反をやったり、絡め手に走ったりもする。
今回は師匠を得たからか、強くなっていた。
細かい身体能力に変化はないが、視野が広くなったというか、余裕を持って動くようになったというか。
おかげで形勢を立て直せず、追い詰められて負けてしまう。
次に驚いたのはゼルだ。
攻撃方法が無手の格闘技なため、武器でもあるグローブの着用を許されていたのだが、こちらも手強くなっていた。
こちらは勝ったが。
そして、最後に転校生の少女。
短い黒髪の、小柄な少女で、私服の長袖シャツに短パン、スパッツにニーソックスという格好。
どこかで見覚えのある訓練用の槍を手に、一切の表情を消してスコールと対峙していた。
強い強いと言われるが、制限された中でどれくらい強いのか、興味がないと言えば嘘になる。
「始め!」
開始の合図と共に、スコールは地面にうつ伏せに倒れ伏していた。
「……?」
素早く立ち上がって木剣を構える。
すると、何かが足元を掬いにくる気配を感じ、とっさに飛び退いた。
「うお、避けた!?」
「マジかよ!?」
「?」
観衆のざわめきに内心首を傾げながら、ステップを踏んで動き回りつつ、少女の姿を視界に収めようと頭を巡らせる。
無意味でも足を止めてはいけない、と勘が囁いていた。
「『お前の飛び方はおかしい』」
彼女の姿は頭上にあった。
なぜか明後日の方向に槍を振りかぶりながら。
それを一瞬、攻撃しようと考えるが、スコールは嫌な予感がして回避に専念。
すると、瞬間移動したように少女の姿が地上に移り、槍で足元を払おうとして空振りする。
さらにスコールがもう一度、今度は地面に仰向けに転がっていたが、慌てずにすぐ復帰、背後からの攻撃を前方に転がることで回避した。
「ホンマ、セルフィやないんやから……」
彼女が攻め切れない現状に苦笑していたと気付いた人間が、どれだけいたか。
「瞬間移動は脅威だが、それだけか?」
「擬似魔法禁止されとらんかったら、まだやりようあんねんけどなぁ」
スコールの挑発には、乗らない。
「ヒラでやるんなんか、久しぶりやでホンマ」
テレサは槍を振り回して、構えを変える。
「!」
その時になって、スコールはようやく気付いた。
その独特の構えが、夜の訓練施設で見かける、ド下手な槍使いの少女のものだということに。
「代償か……」
呟き、構え直す。
この日、バラムガーデンに転校してきて以来、初めてテレサは敗北を喫した。
それは、いつも通り擬似魔法禁止のルールで対人戦を行わせた教員すら予想していなかったことだった。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
主にスコール視点、テレサ、初敗北回でした。
まだ彼女は完全な人外には至っていないので、本物の戦闘の天才が相手で縛りプレイだと負ける可能性が多いにあります。
また、それっぽくは書いてありますが、良いネタがなかったのでオリジナルになってしまっています。
『お前の飛び方はおかしい』が結構曖昧で、瞬間移動攻撃はネタとしてほとんどなかったりします。
――――設定
スコール・レオンハート:独自設定
原作開始時17歳、現段階で15歳。
原作OPムービーでサイファーとやり合った際、サイファーのラフプレイにより敗北を喫したと推測される。
ただ、原作ゲーム中のセリフなどにより、相当に強いことがわかる。
特殊技は『連続剣』で、FF6、FF7から続くパワーインフレに拍車をかけた技となっている。
最低4連撃、運次第で最高20万ダメージを超えるなど、割とお手軽にインフレダメージを叩き出してくれる。
武器のガンブレードはサイファーのものと違ってトリガーのタイミングが分かりやすく、モンスターをカードにする際などのダメージ調整にかなり有用。
当時は20万ダメージが衝撃的だったのか、FF8の二次創作では最強キャラとして君臨することが多い。
今で言うラノベ主人公的な要素も多いが、実は女性陣より萌えシーンが多いツンデレイケメン。
彼のせいで腐った女性もいるのではないかと推測される。
フィニッシュブローが意味不明だったり、801がはかどるシチュが多いなど、二次ネタも豊富。
この小説では戦闘センスが飛び抜けて高いと設定している。
条件次第でテレサに勝てる2人目のキャラでもある。