4回目の『次元の魔物』は、5メートル級のやや小振りなドラゴンだった。
翼の大きな、翼竜というカテゴリだ。
常に空中に浮遊し、積極的に攻撃してこようとはしない。
「“特に貴重でもないオオコウモリが”『降りてくるのが悪い』」
自分から仕掛けて来なくとも、テレサは容赦しなかった。
放っておけばロクでもないことになるのは目に見えていたからだ。
上空のドラゴンが自分でも分からない理由で地面に吸い寄せられ、激しく抵抗するもテレサの槍による攻撃が命中し、翼や首をバラバラにされて絶命する。
そしてテレサ自身も、脳のリミッター解除状態での戦闘による負荷で倒れ伏した。
バラムガーデンでは、スコールの話で持ちきりだった。
直弟子のサイファーでさえ一撃も入れることができなかったのに、意味不明な動きの大半を禁止された状態だったとはいえ、テレサに勝利してのけたのである。
ちなみに、その時の試合の戦績は、スコールが唯一のテレサに対する勝者だった。
おかげで、しばらくスコールへの挑戦者が絶えなかった。
そして、スコールはそのすべてを断らずに受け、疲れ果てていた。
「(サイファーのやつ、1日に5回も……)」
結局、大先輩のワッカがやってきて最終的にサイファーを引き摺って行くことで、騒ぎは一応の終息を見ることになる。
ヤマザキ先生から、どうやってテレサに勝ったのか事情を聞かれたり、ほんの2日ほどで本当に色々とあった。
ちなみに、スコールはテレサとの対戦中に発生した不可思議な現象について、『そういうもの』と割り切って動いていた。
理由を深く考えずに、発生した現象に対処するためだけに頭を使っていたのだ。
なぜなら、ゼルやサイファーがテレサに負けた理由が、不可思議な現象を体験して足を止めてしまったからだと考えたからである。
『その辺がまだ人外に踏み込んでへんとこやね』
とテレサ自身、擬似魔法を封じられると何もできないと自分で認めていた。
もっとも、テレサがどうやってスコールを強制的に動かしていたのかは、結局理解できなかった。
彼女は『壁抜けさして反発で体勢変えさした』という、意味不明な事を言っていたが。
弟子のサイファーも研究しているルールーもキスティスも、『赤魔法』の実用研究第一人者であるヤマザキ先生さえも理解できないところらしい。
「(そういえば、サイファーはノルマがどうこう言っていたな)」
スコールはいつも通り鍛錬を行いながら、考える。
ガンブレードという特殊な武器を使いこなすには、とにかく回数を重ねてトリガーを引くタイミングを体に覚えさせることが大切だ。
「スコールと他の生徒の違うところって、目先の格好良さを求めないところよね」
1つ年上の金髪美少女がやってきて言った。
「……(また何か聞きに来たのか?)」
スコールが素振りの手を止めて怪訝な顔を向けると、キスティスは心得たように話す。
「例の模擬戦とは別の話よ」
彼女が言うには、スコールもサイファーと一緒にテレサの教えを受けないか、という話が上がっているらしい。
もちろん、『赤魔法』の研究室での話だ。
ただ、志願したサイファーで安全確認している最中だが、GFの利用についてさらなる代償を払う必要も出てくるという。
「(予想はしていたが、あの動きの違いはやっぱりか)」
テレサがなぜいつも制服で、しかも人気の少ない夜に代償の確認をしているのかは分からなかったが、GFを外した際の運動神経の低下が一段と酷くなるのは間違いないようだ。
「そこに関してスコールの返答は後でいいわ。
それより、GFの利用まではいかなくとも、テレサがサイファーに出した課題くらいは伝えておこうということになってね」
「(課題?)」
「バラムの森で魔物5体狩ってくるのに、30分以内という時間制限を付けたの」
「……(とんでもない課題だな)」
スコールは少し考えて、質問する。
「いつまでにという期限は設定していないのか?」
「してないわ。サイファーなら、設定しなくても本気でやるだろうけど」
「(ああ、確かに……)」
「ちなみに、テレサ自身がやってみた記録は4分33秒よ」
「(擬似魔法の有無でそこまで違うのか……)」
「スコールは5体で30分、可能だと思う?」
「模擬戦の時の高速移動を習得してれば可能なんじゃないか?」
「なるほど……確かに、大半は探す時間ね」
キスティスは腕を組んで顎に手を当て、頷いた。
擬似魔法を禁止されたテレサが模擬戦の際に使用した不可思議な技術は、相手の体勢を無理矢理崩す技術と、瞬間移動だ。
その内、瞬間移動さえ習得できたなら、森の中で魔物を探す時間は大幅に短縮できる。
後は遭遇した魔物を、短時間に狩れるかどうかだ。
1発勝負というわけでもなし、そこは何度も試しながらノウハウを蓄積していくのがセオリーとなるだろう。
「(ポイントは、『アルケオダイノス』を狩るかどうかを見極めること。
彼女なら、足を止めることすらしないだろうな。
あれに5分、3分以上時間をかけるようなら、次からは避けた方がいい)」
スコールは知らなかった。
その、合理に割り切った思考こそを、テレサがこの課題で最も重要視していたことを。
そしてキスティスは知らなかった。
スコールがテレサの瞬間移動を研究し、戦闘に取り入れようとしていたことを。
彼がドゥエるようになる日も、そう遠くないかもしれない。
「トラビア軍から例のデータが届いた。
どうも軍全体で大々的に研究を行っていて、取りまとめに時間がかかっていたらしい」
「あちらではどれくらい研究が進んでいるのでしょうね?」
黒髪美女は溜息を吐く。
「トラビアガーデンに、『状況再現』の使い手が3人いる。
1人は教員で、残る2人は生徒だ。
3人とも、『次元の魔物』との戦いで大怪我をして、現在療養中だそうだ」
「……それは、どういうことですか?」
「彼女は自分で言っていた。GFの新しい利用法は、長く続けると判断力が低下すると。
つまり、『次元の魔物』を倒すことに特化し過ぎてしまったんじゃないか?」
「……」
思い出されるのは、バラムガーデンに来てからテレサが倒した『次元の魔物』の2体目と3体目。
2体目は無数の隕石を降り注がせ、死者負傷者こそ出なかったものの、大混乱に陥った。
それを反省してか、3体目にはおそらく『メテオ』を撃たせなかったのではないか。
そんな推測も挙がっていたことがある。
「もしかすると、我々にはタイムリミットがあるのかもしれないな。
彼女の判断力の低下が深まり、また2体目のようなことが、それも死者が出るようなことが発生する可能性は十分に考えられる」
ルールーは、あの小柄である種呑気な少女が抱える事情を、甘く見ていたのかもしれないと自省した。
それはヤマザキも同じだったが。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
スコールメインで、最後だけ第三者視点です。
そろそろ時間を飛ばそうかなとか考えています。
このままだと完結までネタが持たなくなってきそうですし。
そうそう、原作ストーリーについて、かなり、大幅に変更する予定です。
FF8二次創作は今まで、かなりの数が作られてきました。
中には原作ストーリーガン無視というのも少なくありません。
この小説もそうなる予定です。
――――設定
『メテオ』:擬似魔法
様々なシリーズで使用されてきた強力な全体攻撃魔法。
FF4ではイベント魔法の一種で、強力な代わりに特にラスボス戦では大きなデメリットがあるという、ギミックが仕込まれていた。
FF5では入手が特殊だが強力な複数回攻撃となり、世界が『次元の挟間』を通じて繋がっている描写のあるFF8では、それを反映してか複数回攻撃となっている。
FF7では『メテオ』は巨大隕石を召喚するイベント魔法であり、プレイヤーが使用する魔法には複数回攻撃の『コメテオ』が用意されている。
そしてFF7と繋がっているFF10には『メテオ』がないが、FF10-2にはある。
他のシリーズでは多くて4回攻撃だったのが、FF8とFF10-2では10回攻撃となっている。
FF10-2では待機時間の関係から、それほど使えるものではないが、FF8では擬似魔法で合計ダメージ9999を突破可能な、強力な魔法として注目され、『ヴァリーメテオ』という第二の上限である6万に匹敵する大ダメージを毎ターン叩き出す強力な戦術を生み出した。
シリーズによっては『アルテマ』より強い事があると覚えておくといい。