多分これが一番…   作:ひろっさん

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6/29 ちゃんと続くかどうか不安。


実験開始

「ゾーン突入!」

「甘い!」

「――と見せかけてパス!」

「ひでぶっ!?」

 

テレサはセルフィから顔面パスを食らってひっくり返った。

 

身体を鍛えるのに、最初は走り込みをしていたのだが、校庭にバスケットボールが転がっていたため、ついでに近くのコートでバスケで遊んでいる子供達がいたため、それに混ざることになったのである。

 

もっとも、セルフィが無差別に顔面パスを連発するおかげで、ほどなく追い出されてしまうのだが。

 

「もっと鼻血ブシャーって出るかなって思ってたんやけど」

「意外な危険人物がここにおったわ」

 

とりあえず追い出されたので、また走り込みに移行する。

 

「その辺にロケットランチャーでも転がってへんかなぁ」

 

セルフィが性懲りもなくそんな物騒なことを言い始めた。

7歳児は大体にしてこんなものだ。のど元過ぎれば熱さを忘れる。

 

「ロケランはアレやけど、この後はけっこー派手にやる予定やで」

「え、テレサまで?」

 

言いながら、面白そうなクレア。

 

「うん、最初はどないしても失敗すると思うし、擬似魔法の練習場借りてるんよ」

「ああ、昨日言ってたアレやるん?」

「そゆことやね」

 

ちなみに、小学生な3人は、授業が朝方だけで、午後からは放課後である。

 

 

 

「今日のおやつはー!」

「ずんだもちぃ!」

 

説明しよう!

ずんだもちとは、すりつぶした大豆を餡にした餅のことである。

日本において南東北、宮城を中心とした地域に伝わる郷土菓子なのだ。

 

雪国トラビアでは、糖分を摂取する貴重な食品でもあるため、特に子供達に大人気だった。

その威力は、泣いている子供に与えると泣き止み、ヤンチャな子供がこれを取り上げると脅されると涙目で大人しく従うと言われるほど。

子供達にとっては戦場におけるカレー粉と等価であると言えばその価値が分かるだろうか。

 

「はぐはぐ」「うまうま」「むぐむぐ」

 

もちろん、この貴重な甘味を逃すなど、この3人にはありえず。

 

 

 

おやつの後、甘味にだらけていたお子様2人を引っ張って、セルフィは擬似魔法の練習場に向かう。

練習場と言っても、その辺の石を持ってきて的にするというもので、大きな音が外に漏れないように防音壁で囲われているくらいだ。

 

「派手にやるって楽しみやな~」

「あんまり壊したらあかんぞ」

「ういうい」

 

付き添いの教員にテレサは適当に答えて、準備を始める。

 

さすがに7歳児だけで危険を伴う擬似魔法の練習をさせられず、教員が付き添っているのだ。

テレサが何かやらかすと言っていたのもあるし、セルフィの言動が危なっかし

 

いというのもある。

 

「結局、何をやるんや?」

「こないだ図書室で、『赤魔法』って調べてたんやけど」

「『赤魔法』て、また古いモン引っ張ってきてんな」

「センセー知ってるん?」

「『赤魔法』言うたら、魔法の合成を目指した技法や。

理屈上は威力だけやったら『魔女の魔法』に匹敵するって言われとるんやけど、結局準備に手間がかかりすぎるわ技術的に難しいわで敬遠されてんねん。

最終的にそれを何とかしようとした結果としての高速詠唱って技術が『赤魔法』っちゅうことになっとるみたいやな」

「へー」「ものしりー」

「ワイは先生やがな」

 

言っている間に、テレサは準備を進める。

とはいえ、拳大の石を数個、魔力を込めながら並べていくだけである。

 

「失敗の理由は知ってる?」

「そらぁ、『魔女の魔法』を目指したからや。

擬似魔法自体、まだそんな歴史のある技術やないんよ。

そんなん合成して『魔女の魔法』目指すて、そない上手いことはいかんっちゅうわけやな。

『赤魔法』は、まだまだ開発が始まったばっかりや。

ちょっとひねっただけで、なんぼでも新しい技法になる分野でもある」

「そんなんやったら、なんでみんな挑戦せえへんの?」

 

クレアが尋ねる。

 

「ぶっちゃけ、普通に武器で殴った方が早いからや」

「ぶっちゃけた」「ミもフタもないなー」

「あんまりお勧めはせぇへんよ」

「あんなこと言うてるけど、テレサ、ホンマに『赤魔法』やるん?」

「ひねったらええやん。合成も高速詠唱も『赤魔法』やねんで」

 

黒髪少女は答えた。

 

浅く魔力の籠った10個ほどの小石の1つに手をかざし、詠唱を始める。

 

「“――”『ブリザド』」

 

ほどなく詠唱が完了すると、白い冷気が小石に定着。

さらに詠唱を重ねる。

詠唱時間はそれほど速くない。まだ擬似魔法自体に慣れていないのだ。

 

「“――”『サンダー』」

 

もう1つの擬似魔法は、青白い花火を散らしていた。

そして、蹴っ飛ばす。

 

「あっ!」

 

勢いよく飛んで行った先で白い花火が散り、破裂音と共に小規模な爆発を起こす。

小石は弾け飛び、冷気と電撃を纏った破片が飛び散った。

 

「別の種類の擬似魔法やったらなんか起こると思ってたけど、習って4日目でこれやったら案外エエ威力やな」

 

テレサは呟く。




――――あとがき

こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
今回はバスケとずんだと赤魔法でしたね。
バスケは原作設定で、ずんだと赤魔法は捏造設定です。

テレサは頭がいいの方向性が普通と違う、政治が苦手なタイプとしています。
クレアはまだ常識人で、セルフィはいい意味でネジの飛んだタイプとしています。



――――設定

トラビア:雪国、共和国
アルティマニア情報では、居住に適した土地が少なく、人口の大半がトラビアガーデンの関係者とされている。
トラビアガーデンは世界に3つあるガーデンの内、最も小さいガーデンとされているので、ガーデン自体の収容人数は300人以下、周辺に居住区域を設けていたとしても、1万人には達しないと考えられる。
そのため、トラビア全体の人口も、多くて2万人程度と推測できる。
領土はトラビア大陸の東のトラビアクレーター付近がエスタとの国境で、西はシュミ族の島まで含まれるような書き方をされている。
現実で言えば、ロシアくらいの国土に2万人の人口の国となる。
一応、良質な鉱物資源の採れる鉱山が幾つかあり、エスタとの国境付近にあるトラビア渓谷にある鉱山は世界最大とされる。

大豆:救済食物
幾つか種類があるが、痩せ地でも栽培可能な種が多く、寒冷地、乾燥地でよく栽培される。

この平行世界のトラビアでは他にも同じく寒さや乾燥に強い麦が栽培されており、さらなる農作強化、品種改良などの研究が進んでいる。
この平行世界のトラビアにおける『ずんだ餅』は、実は饅頭の餡を大豆粉で練って作ったもので、厳密には『ずんだ饅頭』と呼ぶべきものである。
ちなみに、甘味成分はリンゴ由来の果糖。
リンゴはバラムから持ち込まれて山脈の麓の斜面で実験栽培されており、トラビアガーデンにも届けられる。

赤魔法:捏造設定
1種類の擬似魔法を複数合成することでランクアップさせる技法。
時間をかければ魔女の魔法に匹敵する威力を発揮させることが可能となるが、逆に言えば準備に時間がかかり過ぎるという欠点を抱えている。

テレサが行ったのは、別種の擬似魔法の合成。
しかも、武器に魔力を込めて擬似魔法を一定時間維持する『魔法剣』の技法も使用した。
別種の擬似魔法の合成に小石が耐えられずに破裂するが、詠唱直後に遠くに蹴り飛ばすことで破裂に巻き込まれるのを回避している。
ただし、実戦で上手く行くかどうかは未知数。

バスケットボール:日本で言う野球
トラビアガーデンで生徒達が熱中するスポーツ。
原作設定で、ゲーム中にもトラビアガーデンにはバスケットボールやバスケットコート、ゴールなどが出てくる。
ちなみに、冒頭のアレは子供が必殺技風に叫んでいるだけ。
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