目の前で、無数のアンデッドとバラムガーデンの生徒達との死闘が繰り広げられていた。
今回の相手は『ネクロマンサー』。
以前から、何度か見てきた相手だ。
「チンッチンットゥッ」
「ズサーズサーズサーズサーズサー」
「ヘイホー、ヒアウィゴー」
「カサカサカサカサカサ」
ゼル、スコール、デンネン、サイファー、4人の前衛が飛び込んで手当たり次第殴り倒していく。
アンデッドの数は凄まじいが、1体1体はそこまで早くも強くもないため、本体への火力攻撃を担う後衛へ敵の攻撃を届かせないためだけなら、そう難しくもなかった。
「“アアクゥダイカァン、ハンマァナゲェ”『ショコランラ・ペリッチャァァァアア』」
そこに長い黒髪Seedシュウが、本体である老人を巻き込んで、『状況再現』による魔法攻撃を行う。
今回は巨大な氷の塊が高速回転しながら射出されるというもの。
無数のアンデッドを原形を留めないほど挽き潰しつつ、『ネクロマンサー』へ向かっていく。
それは結局群がるアンデッドの数によって逸らされてしまうのだが、『ネクロマンサー』の防壁であるアンデッドの大半を削ることには成功した。
しかし、『ネクロマンサー』は周囲に灰色のガスを発する。
これは気絶するとアンデッドのように操られてしまうガスで、時々これを使用して周囲の魔物を自分の配下に加えるのが、この『ネクロマンサー』の戦い方だった。
灰色のガスの中ではいつどこからアンデッドが襲ってくるか分からず、そのために灰色のガスからは退避するのがセオリーとなりつつある。
「“モルボルのことキスティスって言うのやめろよ”『臭い息』」
そこに、キスティスが灰色のガスの中に、緑と茶色の凄まじい色の毒ガスを混ぜ込んだ。
『状況再現』などではなく、単なる『青魔法』である。
もっとも、これを再現するのに『状況再現』を利用していた。
詠唱のせいか、キスティスは普通に『青魔法』として使えるようになろうと、日夜努力しているのだが、正規の方法でないせいか、なかなか上手くいっていないようだ。
効果は劇的である。
無数のアンデッドの大半が石化したり弱体化し、動きが遅くなったり動きが止まったりしており、さらに目標を見失って共食いを始める者もいた。
「“アアクゥダイカァン、ハンマァナゲェ”『ショコランラ・ペリッチャァァァアア』」
そこにシュウがもう一度高速回転する氷の巨塊を叩き込む。
無数のアンデッドをすり潰すと共にキスティスの毒ガスも吹き散らし、『ネクロマンサー』本体をアンデッドの群れから弾き出した。
「カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ!」
「ズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサー!」
そこへサイファーとスコールが高速移動で追い付き、それぞれ別方向から飛び込む。
『ネクロマンサー』は自前のバリアでそれぞれ防ぐが、ガンブレードという武器の性質を見誤り、バリアを破壊されてしまう。
「よっしゃいけぇぇぇい!」
「うおりゃあああああっ!!」
そこに飛び込んだのがゼル。
デンネンに背中を蹴られ、そのダメージを利用した埋め込み反動、いわゆる『ダメージブースト』で一直線に、『ネクロマンサー』の上半身を砕き散らした。
ゼルはこの『ダメージブースト』が得意で、直線的な移動速度ならテレサを除いてダントツトップを誇っている。
老人の下半身が地面に落ちた。
「『ファイガ』」
「『エアロ』」
サイファーとスコールがすかさず、残った下半身を焼き払い、風で吹き散らす。
それから、まだ動いていたアンデッドを片付け、『ネクロマンサー』が復活してこないことを確認。
そこでやっと、それを見ていたテレサは深々と溜息を吐いた。
「もしかしてと思っていましたが、他人に任せるということに慣れていないようですね?」
「うん」
一緒に見ていたシド学園長に言われて、少女は素直に頷く。
背中には予備の槍があった。
「ヤマザキ先生からも報告を受けていますが、テレサ君の力は魔女を倒しうる可能性が十分にあります。
しかし、君はどうやら、それですら満足していないようですね」
「うん」
「一体、君は何と戦おうというのでしょう?
この世界で魔女以上の力を持った存在というと、『力のハイン』くらいしか思い当たるものがありません。
しかし、『力のハイン』は積極的に人類に害をなす存在ではありません」
「……」
しばし黙っていたが、テレサは観念して口を開く。
「あの『黒い靄』の向こっ
『エクスデス』て言うんやって」
最初はそれに対する備えだった。
しかし、4年前からこうして魔物を送り込んでくるようになり、テレサの中で実在が証明された。
だから、かつて言われたこと、エクスデス本人がこちらの世界に来て、あちらの世界の『無』を呼び込めば、まるで『魔法剣』による別種合成に使用した小石のように、この世界とあちらの世界が破裂してしまうことを、無視できなくなったのだ。
あちらの世界では『暁の四戦士』と『光の四戦士』が手を取り合って戦い、それでも倒せなかった。
こちらの世界では、そんな特別な力が手に入る保証はない。
あるとすれば不思議の力か魔女の力くらいだが、そんなものがそう易々と手に入るとも思えない。
だから、テレサは自分自身で、一から魔女を超える力を身に付けるしかなかったのである。
それを誰に言ったとしても、信じてもらえるとは思えなかったから。
「それでは、テレサ君の様子がおかしかったのは、間に合わないかもしれないと思っていたから、でしょうか?」
「あ、ソレちゃうねん。
寝とる間に立てかけてあった壊れた槍蹴っ飛ばしてたみたいやねん。
それがカード入ったケースに直撃しよって……。
結構レアなカードダメにしてもてたから」
「あぁ……それは辛いですね」
シド学園長は微妙な顔で嘆息した。
カードゲーム『トリプルトライアド』は、世界的に普及しているカードゲームである。
基本的にカードバトルによるトレードによってカードの受け渡しは行われるのだが、ボス級のレア度の高いカードは、かなりの高値で取引されることがあった。
世界に1枚しかないレアカードとなると、1つで3万ギル近くとなることも珍しくない。
自身もカードバトルには力を入れていたシド・クレイマーは、テレサが塞ぎ込んでいた理由を理解しつつも、なんとも言えない微妙な残念さを感じていた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
シリアス!傷は深いぞポックリしろ!
きっかけはともかく、テレサ抜きで『次元の魔物』を倒し切ることに初めて成功しました。
最後のオチでシリアスが息してないんですが。
バトルの描写ってこんなもんでいいですかね?
得意げに書くと割といくらでも書けてしまうので、毎回冗長的にならないようにだけ心がけています。
――――設定
『ファイガ』:擬似魔法
見えにくいが、小さい何かが直撃して爆発を起こす魔法。
FF6とFF8が同じエフェクト。
他のシリーズではガ級ともなるとかなり頼れる威力だが、FF8は擬似魔法の設定的にGFのジャンクションで強化しないと頼りにできない上に、強い擬似魔法ほどジャンクション時の数値上昇が高く、使用し辛いという特徴があり、なかなか使用されない。
序盤は属性によって効いたり半減したりという幅が大きいが、中盤以降はGFや特殊技に頼るため、使用されない。
やり込みプレイヤーはダメージソースとして特殊技や『グラビデ』に頼ることが多く、序盤のHP調整は下級で済ませるため、結局使われない。
炎属性攻撃は属性攻撃Jに『ファイガ』をつければ十分なため、擬似魔法としての使用はまずされない。
『エアロ』:擬似魔法
カマイタチで敵を切り裂く魔法。
FF8以外では基本的に『青魔法』の下級として登場する。
FF8では威力的にも設定的にも中級魔法らしく、『上級魔法精製』で『トルネド』にできる。
はっきり言って実用的にもジャンクション的にも使わない。
特にやり込みプレイヤーがこれを手に入れる頃にはガ級の擬似魔法、あるいは禁断級魔法以下では最高の数字を誇る『トルネド』が手に入っているため、やはり使わない。
カードの値段:独自設定
原作でカードの価格を推測することができるイベントはただ1つ、ゾーンに『となりのカノジョ』を渡した際の報酬であるレアカードと25500ギルという値段。
そこから、この小説では3万近くが珍しくないと設定している。