テレサ抜きでもかなり戦えるまで戦力強化に成功したことが判明したため、本格的にテレサの症状改善を図ることになった。
今まで5日置きに脳に大きな負担をかけ続けてきた彼女は、Seed試験を受けさせるには致命的なレベルの、判断力低下の症状を発症していたのだ。
「スヤァ」
「だからって、授業をBGMに寝るこたぁねえんじゃねえか?」
「よく言うわね、遅刻サボり居眠りの常習犯」
「いや、どうせ起きてる時間が不安定なんだから、眠いんだったら部屋で寝ればいいだろ?」
サイファーに俵持ちされながら、学生寮に運ばれるテレサ。
それを後ろから茶化すのは、正Seedになったばかりのシュウ。
ルールーが卒業した後、『次元の魔物』対応チームが組まれた。
ヤマザキを顧問に、キスティスがリーダー、サイファー、スコール、ゼル、そしてシュウ、デンネンという顔ぶれだ。
テレサを含めてもたった8人なのは、あまり多くの正Seedを加入させると、バラムガーデンの傭兵派遣業に支障が出るというのと、逆にこのチームのメンバーが単純な戦闘力では正Seedより遥かに強いという理由からである。
この辺の事情には、マスター派の思惑もあった。
つまり、戦力増強はいいが、傭兵業による金儲けが上手くいかなくなるのは本末転倒だということだ。
傭兵稼業を続けつつの戦力強化というところに落ち着いたのは、学園長がマスター派と折衝した結果でもある。
ともかく、サポート体制が整ったテレサがあまり気を張らなくなった結果、テレサ生来のねぼすけな性質が顔をのぞかせ始めていた。
いや、正確には本人がそう思っているだけで、前世は特にブラックな職場で疲労が大変なことになっていたために、常時睡眠不足になっていたというだけなのだが。
「自分に魔法を撃って回復した!?」
次の『ゴーキマイラ』に、チームは苦戦を強いられる。
この世界にも同種の魔物は存在するのだが、行動パターンが桁違いに厄介だった。
単純にステータスが高いのはもちろんだが、炎、冷気、雷、水の4つの属性を吸収する上に、ダメージが蓄積する前に自分自身に各属性の魔法を使用し、体力回復を図るのである。
以前はテレサが一瞬で倒していたために観測できなかった厄介さが、チームメンバーを苦しめる。
「火力が足りない……!」
チームリーダーのキスティスは歯噛みする。
前回、一度だけ、たまたま相性のいい相手を倒せたが、だからそのまますべて、とはいかなかったらしい。
「耐性、4つまでやったら無条件にぶっ飛ばせんねん」
そんな時、キスティスの後ろにいた黒髪少女が声をかけてきた。
「テレサ?」
「2人がかりやったら、『魔法剣』3つ重ねくらいやったらいけるんちゃう?」
それは助言だった。
『状況再現』とは、魔力の状態を再現することで、本来は特殊なアイテムなどがなければ再現できないはずの魔物の技などを再現する技術である。
だが、テレサが研究していたのは、そのさらに向こう側。
ありえないはずの効果を発現させ、敵の動きを操ったり、耐性を無視して即死させる技術。
そこに一歩踏み込んだものを再現するだけならば、詠唱を再現するだけでできてしまうくらい、彼女は研究を重ねてきた。
だからこその助言だ。
テレサが単に才能でそれを実現させていたならば、出来なかったはずの助言である。
「シュウ、『原子分解』。私が合わせる」
「了解」
必死に足止めする前衛達のためにも、出来ることはすべてやっておかなければならなかった、というのもある。
その前に、これはシド学園長からテレサへの指示でもあった。
すなわち、口は出しても、要請があるまでは手を出すな、という指示。
少女はそれに従う。
自分自身の判断では、また何かやらかしてしまうかもしれないと知っているから、他人に判断を委ねる。
理由を問わず、ただ目標を達成する。
その在り方は、戦士や兵士というよりも、兵器のそれに近い印象をキスティスに与えた。
「“リヴァイヴァスライバベル水撃スープジャイアンロコ金剛カイザーブラスター陽子ロケット鬼バルカン破壊鉄下駄電束火炎プラズマ跳弾神速熱線放射ソニックディフレクト電撃濁流清流アル三スカイ燕曲射短勁フラッシュライジングロザリオアル・十字塔無月真アル・羅刹掌”『すなわち剣、相手は死ぬ』」
「“リヴァイヴァスライバベル水撃スープジャイアンロコ金剛カイザーブラスター陽子ロケット鬼バルカン破壊鉄下駄電束火炎プラズマ跳弾神速熱線放射ソニックディフレクト電撃濁流清流アル三スカイ燕曲射短勁フラッシュライジングロザリオアル・十字塔無月真アル・羅刹掌”『すなわち剣、相手は死ぬ』」
キスティスは親友のシュウの詠唱に合わせ、魔力の状態を調整することで『状況再現』を確かなものとする。
これは魔力感知を鍛えている『青魔法』の使い手、キスティスだからこそできることだ。
たまたまかわざとか、妙な詠唱をさせられている分、早く自力で『状況再現』を組み上げることができるように、努力している成果でもある。
『ゴーキマイラ』は突然自分のものではない魔力の浸透を感じてそれを放出しようとするが、少し遅かった。
右前脚が弾け飛び、動きが一気に鈍くなる。
「いける!」
「もう1回!」
消耗は決して無視できるものではなかったものの、前衛への負担が減ったことで余裕ができ、数回の使用では数時間の気絶で済むことを知っていたため、2人は躊躇いなく再度の使用を行った。
今度は『ゴーキマイラ』の頭の1つが弾け飛び、目に見えて動きが鈍くなったため、後は前衛が傷口を抉って切り刻んで終わる。
引き換えにキスティスもシュウも気絶したが、今度も『次元の魔物』を倒すことに成功はしたわけだ。
エクスデスは様々な手立てを講じても成果が上がらないことに、そこまで強く苛立ちを募らせることをしなくなった。
それよりももっと、彼を苛立たせることが頻発していたからである。
『卵にかけた醤油がソースに変わる呪い』。
「……」
エクスデスは静かに五穀米の入った茶碗を握り潰した。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
テレサ抜きの『次元の魔物』戦もう1回でした。
一応、FF5の『クリスタル』の力がそれだけ大きいものだったということを伝える目的で、今度は苦戦させてみました。
テレサはバックアップについています。
――――設定
『ゴーキマイラ』:
FF5、『次元の挟間(ラストフロア)』に出現する魔物。
ヤギ、ライオン、鳥、龍の4つの頭を持った合成獣。
FF8に出る『キマイラブレイン』と似た姿をしているのは、両者の世界の繋がりを意識しているからだろうか?
4属性を吸収し、4つの属性の攻撃を行う。
さらに属性魔法を自分に使用して回復まで行う。
使用する属性魔法がラ級止まりのため回復量がそこまでではないが、コイツを倒せないようならラストフロアで稼ぎを行わない方がいい。
地味に『リフレク』で反射できない魔法属性攻撃をしてくるが、ダメージもラ級止まりのため、これまでのボスを正面突破してきたパーティなら、そこまで極端に苦戦はしないはず。