ドール侵攻
1年後。
ガルバディア軍が突如としてドールへ侵攻を開始した。
「ルー、市街地は?」
「なんとか避難は完了したわ。
義勇部隊を編成しようという動きを抑えるのが大変だったくらい」
いくら訓練次第で誰でも擬似魔法を使用できるとはいえ、戦闘訓練を受けているかどうかでかなり変わってくることも違いないのだ。
そういう戦いの素人に戦場をうろつかれることに比べれば、きつく言ってでも抑え込む方がいいという判断である。
「防衛線は?」
「俺が見たとこ、結構厳しい。2時間持てばいい方だべ」
「応援要請はまだなの?」
「連中、なんかいい顔しねえんだわ。なに考えてんだかな」
「本当にね」
一応、各ガーデンに伝令を向かわせてはいるものの、ルールーやワッカがSeedを雇うとしても、数は知れている。
大体にして、ドール軍はルールーやワッカなどのバラムガーデン卒業生への応援要請も行っておらず、それどころか防衛戦への参加希望も渋り、今まさに窮地に立たされていた。
「私は議会に直談判してくる。ワッカは傭兵仲間の編成をお願い」
「おう」
2人は別れ、それぞれ自分のやるべきことを果たすべく、必要な現場へと向かう。
ワッカは道中、ドール兵に囲まれていた。
「どういうことだ?今は防衛戦の真っ最中だ。
傭兵風情に構ってていいのかい?」
「黙れ!内通者が!」
「はぁ?なんだって……!」
一瞬、激高しそうになるが、彼は多くのドール兵が疲労と憎しみと悲しみの目をしていることに気付いた。
嘘は言っていない。
デリカシーがないとよく言われるワッカも、そう思わざるを得ない雰囲気がそこにあった。
「どういう話になってんだ?そういや前線は?」
「さっき破られたんだよ!」
「お前らバラムガーデンが使うGFが後ろから襲いかかってきたせいでな!」
「なんだって?」
それは、この世界における大きな異変だった。
ルールーのような、優秀なバラムガーデン卒業生の存在を脅威に感じたイデアが、その力を封じるために動いていたのである。
「コイツらがガルバディア軍を呼び込んだんだ!」
「ドールはバラムガーデンに裏切られた!」
根拠のない憎悪を叩きつけられ、ワッカは恐怖を感じた。
何者かは知らないが、まともに正面からぶつかる戦い方をしてこない。
そして、ここでこういう状況になっているのなら、議会に直談判に行ったルールーが危ない。
「チィッ!」
ワッカは一瞬腰を沈め、大きく飛び上がった。
さすがにGFを捨てたまま、傭兵稼業を行うようなことはしない。
この世界のGFの代償は、運動神経なのだ。
何度かジャンプを繰り返し、傭兵仲間のいる場所へと向かう。
「マジかよ……」
そこにあったのは、ガルバディア軍の機械兵器とドール軍の板挟みによって次々と倒れていく仲間達。
機械兵器を破壊しようとするのだが、突然ドール兵に背中から撃たれて倒れ、動揺している隙に機械兵器に攻撃され、被害が拡大しつつあるのだ。
その様子が異常であることに、ドール兵も気付いている様子がない。
「ぬああああああああああああああああっ!!」
彼は感情に任せて叫び、蜘蛛のような蟹のような機械兵器に『モーニングスター』を叩き付け、戻ってきた鉄球をさらに蹴って機械兵器の中枢を叩き壊す。
機械兵器が脆かったのではなく、仲間がダメージを蓄積しておいてくれたおかげである。
「散れ!」
生き残った仲間にそうとだけ叫んでから、ワッカはルールーを助けるべく議事堂へ走った。
議事堂では、突然どこからともなく現れたドール兵にルールーは囲まれ、一目でそれらが人間ではない、と彼女は看破していた。
そうして、明らかに『連続魔法』以上の速度で、周囲を取り囲む人形達に擬似魔法を叩き込んでいく。
ルールーの特技『連続魔法』に、テレサの技術が合わさった、『テンプテーション』である。
そうして撃退している内に、ワッカが到着した。
「ルー!どうなってんだこりゃ!?」
「コイツらはドール兵ではないわ!人形か何かよ!」
「なんでわかる?」
「私がドール兵全員の顔と名前を覚えてるから」
「すげえべなオイ!」
よく見ると、ルールーに倒されたドール兵のような何かは、砕けた骨となって地面に転がっている。
戦死体がいきなり骨になるのはさすがにありえない。
「まさか、アンデッドか?」
試しに、ワッカは『ケアル』をドール兵もどきに使った。
すると、彼らは幻で固められた表面を失い、砕けた骨となって転げ落ちる。
「さすがにそこまでは考えなかったわね」
こんな状況で敵に『ケアル』をかけるワッカに呆れつつも、見えた突破口を切り開くべく、回復薬の小瓶の入ったポーチを探った。
イデアはリスクを冒して繰り出した手札が凌がれ、獲物を仕留め損なったことを感じた。
あまり多くの者に手札を晒しておくわけにもいかず、幻術を解除して『スケルトン』の制御を解く。
後はなぜか大量のスケルトンが市街地に出現したという怪奇現象が残るのみとなる。
「しかし、あの布陣で仕留め切れぬとはな」
ガルバディア軍で雇ったバラムガーデン生を基準に考えていたのが、どうやら間違っていたようだ。
想定していたよりも遥かに機転が利く上に、驚くべき切り札も持ち合わせている。
どうやら、ただの人間と侮っていい存在ではなさそうだ。
「まあよい。計画に支障はない。いざとなれば、私が直接出向くだけのこと」
強大な魔力を操る魔女であるという自信が、この後の驚愕へと繋がる。
「取り急ぎ報告いたします!」
魅了で操っている、ガルバディア大統領から提供されたガルバディア兵が、急報を告げた。
「もう落ちたか?」
「いえ、逆であります」
「なに?」
「我が方のドール侵攻部隊が、壊滅したとのことであります!」
「――」
「我が軍は谷にて分断され、市街地に入り込んだ部隊とは連絡が取れず、確保した陣地内の部隊は全滅。
それより2時間経過も状況に変化なく、司令部は4割の兵が失われたと判断し、撤退を開始している模様であります!」
イデアはしばらくフリーズしていた。
魅了の力が及んでいる限り、このガルバディア兵が嘘を言うなどありえないと知っているため、余計に混乱していた。
「私が『目』の映像を切ったのは、今の今だ。
幻術は解除したが、大量のスケルトンを送り込んだのも間違いない。
ならば、なぜ数分も立たぬ内に、このような報告が上がる?」
疑問も尽きなかったが、優先するべきは今後の計画の出鼻をくじかれたことであると切り替え、イデアは立ち上がった。
「官邸へ行く。連絡を」
「はっ」
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
時系列的には原作突入、ドール実地試験の場面です。
真相は次話に持ち越しですが、何が原因でこうなったのかは、勘のいい人は予想がつくと思います。
何度も言っていますが、原作通りにストーリーが進むことはありません。
――――設定
ガルバディア:軍事独裁国家、アルティマニア情報
科学に優れたエスタを支配した魔女が全世界に戦争を仕掛けた魔女戦争を契機に、軍備と領土の拡大を推進。
また、若くして大統領となったビンザー・デリングが十数年をかけて、ガルバディアを西の大国に押し上げた。
現在はいわゆる高度成長期であり、ガルバディア国内はかなり景気がいい。
ガルバディアという国には居住に適した土地が少ない。
中央には巨大な砂漠があり、首都であるデリングシティの近辺には雲が集まりやすく、年に十数日しか晴れ間が見えないなど、極端な気候の過酷な土地でもある。
政府の方針は誰に対しても高圧的で、国内では政治思想の弾圧や政治犯を投獄するための専用の刑務所『
ティンバー占領なども行っており、やっていることは恐怖政治そのもの。
ガルバディア軍は世界最大規模の軍隊で、兵員数もさることながら、無人の巨大機械兵器の威力のために、今やエスタと同等の軍事力を誇る国家となっている。
ただ、ガルバディア一般兵の給料は上司の気分で決まるため、モラルはかなり低下しており、職務の鬱憤を晴らすべく一般市民に暴力う振るう兵士が存在するなど、規律の乱れはかなり深刻。
この二次小説でも大体こんな感じ。
ゲーム中では最後の方まで出てくる雑魚敵製造器。
唯一強いのは『BGH251F2』、通称『アイアンクラッド』くらい。
ただ、やり込む上では『ガルバディア兵』、『エリート兵』のシリーズはカード化できず、経験値を持っているなど、低レベル攻略の大きな障害となる。
ビッグスとウェッジ以外の兵士には大体石化が通じるということを覚えておこう。
(FF8では、ダメージを与えないまま石化で勝利すると経験値が入らない)