キスティスがリノアと共にシド学園長を説得したところ、あっさりと許可が出た。
「この1年の君達の努力の成果としまして、テレサ君の調子が上がってきていましてね。
それで、全員とはいきませんが、対策班のメンバーを入れ替えることを考えていたのです」
サイファー達は、この1年で『次元の魔物』への対応と、新技術の研究と鍛錬法の開発を行っていた。
結果、才能の偏りによる得手不得手を解消することはできなかったものの、Seedや候補生を中心に新技術を使用して戦闘力を著しく向上させることができた生徒達がかなり増えていたのだ。
裏にはリスクを承知で導入を急いだシド学園長の支援もある。
彼はいつ始まるか予想のつかない中で、魔女との戦いに備えてきたのだ。
そんな彼が、魔女の調査に力を入れないわけがなかった。
打ち合わせは深夜に及んだ。
結果として、契約も計画も、しっかりしたものとなる。
「しっかりしたもの……?」
朝一番でティンバーへ帰る列車の中、契約書を読み返してみて、リノアは首を傾げた。
「依頼相手への戦力貸与、期間はティンバー解放まで。
シドさんの話だと、魔女がガルバディアに味方していたら、魔女を対処するだけでティンバーが解放されるって言ってたケド……」
次の項目に目を移す。
「優先順位、依頼者の命令が第一。
次に情勢関係の情報、および魔女に関する情報のバラムガーデンへの逐一報告。
コレを呑んだから、依頼料を半額にしてくれたのよね」
うんうん、と頷きつつ、次の項目に目を移す。
「バラムガーデンへの連絡は、定時にティンバー駅前にて行う。
まだ納得できる」
次の項目、を探し、どこにもないことに愕然とする。
「派遣したSeedって、どうやって確認すればいいのか決めるの忘れた……!」
列車の中で、何度もバッグを引っ繰り返して、焦る。
とりあえず、お金はかかるがもう一度バラムガーデンへ戻って、再度打ち合わせを行うしかない。
オンラインの電話でこんな打ち合わせをするのは自殺行為だ。
通話記録は、すべてガルバディア軍に握られている。
そんな焦燥感と共にティンバーのバラム行きの駅に到着し、列車を降りたリノアの前に現れたのは、焦げ茶色の髪をした黒ずくめのイケメン、スコール。
黒を基調としたSeedの制服と雰囲気がほとんど同じだったため、一目で本人だと分かった。
「……」「……」
スコールは無口で、リノアは絶句していた。
「もしかして、スコールが?」
「ああ」
「え、でも、どうやって?今の列車に乗ってたの?」
「別の移動手段で来た」
「列車よりも早く?」
「ああ」
色々な意味で予想外だった。
つまり、シド学園長は朝一番でリノアがティンバー行きの列車に乗るという情報だけ知っていたために、どうやって見分けるのか、という部分をわざと省略したのである。
遠くまで一瞬で行き来出来るテレサがいれば、こうしてバラム行きの駅前でSeedの側が待っていればいい。
もしもガルバディア軍がマークしていたとしても、時間的に明らかにおかしなことが発生すれば、混乱もするだろう。
そういう反応を狙ってのことでもあった。
2人は『森のフクロウ』がアジトとしている列車に乗る。
「俺がバラムガーデンから派遣されてきたSeed、スコールだ」
「『森のフクロウ』のリーダー、ゾーンだ。これからヨロシク頼むぜ」
ゾーンは握手のために手を差し伸べるが、スコールは応じない。
「ところで、1人なのか?」
「そうだ」
「戦闘とかを主に頼みたいんだが、大丈夫か?」
「別に。問題無い」
「……」
スコールはあまり主張する方ではないため、どの程度ならいけるのか、まったく判断がつかなかった。
「これは別に疑っているわけじゃないんだが、どの程度までの敵だったら、正面からやり合って勝てる自信があるんだ?」
ゾーンは質問を変える。
「実績があるのは、ガルバディア一般兵451名、エリート兵62名、『X-ATM092』1機、それに『スケルトン』393体だ。
昨日のガルバディア軍のドール侵攻で倒してきた」
気負いもなく、自惚れもなく。
ただ淡々とスコールは事実を告げる。
「昨日!?」
リノアが驚きの声を挙げた。
まさか、そんな死闘の直後だとは考えていなかったのである。
「昨日って、ワッツ、知ってるか?」
「ドールの方で何かあったってチラッと聞いたッス。詳細はまだッス」
「ねえ、スコール」
リーダーと情報収集役に任せていても埒が明かないと思ったのか、リノアが声をかけた。
「サイファーがやってた、あの変態移動はできる?」
「クセが違うが、速度は同じくらいだ」
「嘘じゃないっていうのはよく分かったわ」
「サイファーって、アレか、1年前にティンバーを案内しようとしたら、危険な場所をガン無視して突撃かましたっていう……」
「そのサイファーよ」
「……(何やってんだよ、アイツ……)」
スコールは思わず頭を抱える。
バラムガーデンでは確かに問題児だったのだが、最近は大人になってきていたと思っていたのだが。
もっとも、リノアも頭を抱えたいのは同じだった。
まさか、単騎でティンバーを解放できるかもしれない戦力をよこすとは、思ってもみなかったのである。
1年前は突然のことで、任務でもなかったために有効活用できなかったが、今回はそうではない。
魔女など関係なく、上手くすればティンバーを解放することができるだろう。
サイファーは盛大にクシャミしていた。
場所はガルバディアガーデン。
「ちくしょうめ、誰かが噂してやがる」
彼の任務はガルバディアに雇われたバラムガーデンの生徒との接触と、魔女に関する情報収集である。
そのために、まずはガルバディアガーデンのマスター兼学園長と接触し、ガルバディアの事情にある程度詳しい生徒を借りることにしていた。
というのは口実で、同じく関係者である、かつての幼馴染を巻き込むつもりでいたのだ。
「どうせ、魔女って聞いちまったら、いても立ってもいられなくなるだろうしな」
もちろん、送迎はテレサである。
イデアはバラムガーデンへ『目』を入れる。
正確には『目』を持たせた人間を潜入させていた。
リスクは大きかったが、最悪でも瞬間移動で『目』だけ呼び戻せばいい。
そして目撃した。
「ややややややややっふー!」
「ドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエ」
「カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ」
「ズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサー」
そっと物陰に隠れ、意味もなく深呼吸して、もう一度見る。
「チンッ!チンッ!トゥッ!」
「ムッ!ムッ!ホァイ!」
「ペポゥ」
「ショーターイ!」
そうして愕然とした。
「(想定していた訓練風景と違う!)」
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
魔女イデア、『目』を通しての安定の二度見。
SAN値が削られます。
さて、ここからどうしましょう、マジで。
初任務にスコールとサイファーを出したはいいんですが、実は十分なお金を払っての依頼があれば、ガルバディア軍を直接制圧しても良かったりします。
ちなみに、『目』は独自設定です。
原作にありそうなんですが、描写とかはないんですよね。
――――設定
『森のフクロウ』:ティンバーレジスタンスの1つ
ゾーンがリーダー、メンバーはワッツ、リノア、他数名。(確認できただけで3名)
ティンバーレジスタンスの大半はガルバディア軍によるレジスタンス狩りや経済的な理由で休止状態にある中、ほとんど唯一活動しているのが『森のフクロウ』。
ティンバーレジスタンスは、ティンバーの名に誇りを持っており、名前に『森の~』とつけることが多いらしい。
他に名前だけなら『森のキツネ』と『森のカモ』が確認されている。