スコールは夢を見る。
……これは――。
森の中を走る、ガルバディア一般兵の青い服を着た3人の男達。
「ラグナ君、俺らは屈強なティンバー兵を相手にしに来たんだよな?」
「それが、なんで魔物相手にチマチマやってんだ?」
背後の2人から、文句を言われる。
「そりゃ、あの……な?」
「また道間違えた」
部下らしき2人から白い目で見られ、言い訳しようとするが、かぶせるように図星を突かれ、逃げ出す。
……久しぶりに普通に走っている気がする――。
スコールにとっては、案外新鮮だった。
そもそも、この現象を、彼は知っていた。
他者の精神を過去の人間にジャンクションさせる不思議な能力。
GFのジャンクションにまつわる技術も、彼女の能力を研究した末に確立されたと言われている。
……エルオーネ、そうか、バラムガーデンに来ていたっけ――。
大人しそうな見た目で、その実かなりヤンチャな性格の、従姉。
厄介な人間であると同時に、スコールに温かみをくれる、ほぼ唯一の人間。
――釘を刺されてしまったわ。
……誰に――?
――テレサちゃん。
……安全を確認したのか――。
――寝顔かわいい、だって。
……――。
どうやら、アジトの客室まで来て確認したらしい。
本当の意味で神出鬼没。
スコール達も、まだあの黒髪少女ほど瞬間移動を使いこなすことはできない。
正確には高速移動と壁抜けの合わせ技で、擬似魔法によって補助することで、他の大陸まで、ものの数分で移動可能というとんでもないものだった。
昨日の朝、リノアが乗った朝一番の列車より早くティンバーに到着したのも、テレサの力だ。
最近、判断力低下の症状が改善するにつれ、一息で移動可能な距離が一気に伸びたと言っていた。
場面は移り変わり、どこかの大都市へ。
とはいえ、スコールの記憶の中にない大都市は数少ない。
ドールは一昨日に見たし、バラムはよく見ている、トラビアにはほかの地域にあるような大きな都市はなく、ティンバーは今いる場所だ。
ということは、科学技術がもっとも発達しているエスタか、もしくはガルバディア、デリングシティということになる。
ラグナ、キロス、ウォードというガルバディア兵3人が帰還していることからも、デリングシティで間違いないだろう。
……そういえば、エルオーネの能力は、一度会ったことがある人間にしか使えなかったよな――。
――そうね、これはまだ出会ってない時期みたいだけど。
……誰だ――?
――ふふ、秘密。
大きなホテルの地下にあるバーで、ジュリアという美人ピアニストが奏でる音色に聞き惚れ、機会があれば毎度通っているというラグナ。
告白しようとしたラグナは、しかし緊張で足が攣ってしまい、情けない姿を見せただけに終わる。
しかし、ピアノの演奏を終えたジュリアの方からラグナの方にやってきた。
そしてこう言った。
「3人はどういう集まりなの?」
スコールは、嫌な予感がした。
というのも、デリングシティ出身というリノアが、昼に同じことを聞いてきて、対応に苦慮していたからだ。
……エルオーネ――。
――なあに?
……接続を切ってくれ、ここから先は聞かない方がいい――。
――え、ええ?
エルオーネが戸惑っている内に、ジュリアが自分の部屋にラグナを招き、しつこく3人の関係を聞き出そうと迫る。
同じバーにいた他のガルバディア兵達は、ジュリアのお誘いを受けたラグナに羨望の眼差しを向けていたが。
「ああ、歌詞が湧いてくるわ。もっと、もっと私を腐らせて……!」
「こんなジュリア見たくなかったぜ……!」
「そういえば不思議なんだけど、私と本気で付き合おうって言う人、意外と少ないの」
「そりゃそうだぜ!」
皆の憧れ、後の世に大ヒット作を生み出した歌手、その真の姿がコレだった。
――ゴメン、私も眠っているから、接続が切れないんだわ。
……いや、いいよ、もう――。
色々な意味で疲れたスコールだった。
バラムガーデンが見える平原。
何度目かの『次元の魔物』戦が行われた。
今回の相手は、巨大な宝玉を抱えた、青白い肌の美女。
今までの相手とはケタ違いの魔力を持ち、『状況再現』でも大したダメージを与えることができなかった。
しかも、強力なバリアを展開しており、ゼルの高速突撃からの物理攻撃もなかなかダメージが通らない。
そんな高い防御力から、強力な魔法を連打してくる、魔女のような戦い方をする相手だ。
「霊体による力の底上げと、それ専用の練られた戦術……」
青白い女性は呟く。
「確かに、今までの雑魚を倒すだけのものは揃っているようね。
しかし、懸念されたほどのものではない。
『クリスタル』の力を継いでいるわけでも、特別な魔力を持つわけでもない」
それは、こちらを小馬鹿にしたような音を含んでいた。
「テレサ、お願い!」
「うい」
これは勝てないと感じたキスティスは、他の仲間を退避させてからテレサにバトンタッチする。
「囮としても、その程度の力では、私は止まらな――」
魔力を感知して敵の強さを図っていた青白い女性は、度肝を抜かれることになる。
「“この辺から槍でボス部屋にワープし、画面外から長く硬く逞しい骨を投げつけた結果”『ワシが育った』」
「人の話を最後まで――ヴォアアッ!?」
投げつけられた氷でできた骨を腕で打ち払おうとすると、それは何の抵抗もなく青白い女性の右肩から先を抉り取った。
「な、なんですって……!?」
さらなる氷の骨の投擲に危機を感じ、避けようとするも、なぜか背後の、バリアの内側にあった氷でできた数本の槍が彼女の動きを邪魔する。
下がることも、前に出ることも、飛び上がることも、地面に伏せることも、彼女には許されなかった。
「なんてこと、ただの氷ではない……!」
そして次々に、魔力ではない不可思議な現象によって生み出される氷の骨が青白い肌の女性を削り取り、最後にトドメを刺す。
「イガァァァァァッ!!」
断末魔と共に、五体をバラバラにされた女性は何もできないまま、地面に倒れ伏した。
それを『目』を通して見ていたイデアは、戦慄する。
「魔女をして倒せぬ、だと……?」
あの青白い肌の美女は、熟練した魔女と同等かそれ以上の力を有していた。
それを、バラムガーデンの生徒の1人は苦もなく倒してのけたのだ。
しかも、特別な力を持っているようには見えず、魔力もさほどではないように見える。
青白い美女が油断したのも、理解できないではない。
それ以前に戦っていたバラムガーデンの生徒達も、ただGFの力で身体能力を強化しているだけでは説明のできない超高速移動法を使用していた。
だから、あれほどの魔力を持った相手にも、損害ゼロで戦うことができていたのである。
むしろそんな超高速で移動する生徒達を相手に、普通に魔法を当てていた青白い美女の鍛錬を褒めるべきだろう。
ドールの時のガルバディア軍壊滅も、こんな生徒達が数人派遣されたとすれば説明がつく。
やはり、計画を止めて慎重に調査しようとしたのは間違いではなかったらしい。
しかし、最後に出てきた黒髪の貧相な少女がすべてを持って行った。
「バリアを、すり抜けた……?」
ただの氷ではない、と青白い美女は呟いていたが、イデアの見立てではそうではなく、何かの技術によって氷の槍や骨に擬似魔法による『魔法剣』を付与し、青白い美女の動きを巧妙に封じていたのだ。
しかも、バリアをすり抜けたのは、氷の骨や氷の槍とは直接は関係のない、何か別の技術のように思えた。
いずれにせよ、イデアがこれから行うことに対する、大きな脅威であることに違いはない。
特にあの、テレサという黒髪少女の存在は、到底見過ごせるものではなかった。
普通の方法では対策できないが、何か対策しなければならない。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
最近出番が少なかった最強系主人公の面目躍如です。
ついでに、何気にエクスデスの実験が新しい段階に入りました。
ボス級の『次元の魔物』が投入されています。
リノアとジュリアは改変しています。
原作設定だとか、そんなことは決してありません。
それだけは真実を伝えたかった……。
――――設定
『カロフィステリ』:FF5
『次元の挟間(森)』に出るボス。エロ担当。
『次元の挟間』に入って、砂漠、遺跡、森と長く歩いてから出てくる。
珍しく直前にセーブポイントがないが、大して強くもない。
自分に『リフレク』を使用し、それに魔法を反射して攻撃してくる頭のいいボス。
さらにプレイヤー側に『リフレク』をかけたキャラがいる場合、回復魔法や補助魔法を反射して自分に掛けようとする。
物理攻撃に対してはカウンターで『ドレイン』を使ってくる。
逆に言えばそれだけ。
『魔法剣サイレス』で完封できてしまう、悲しきボスの1人。
が、別に『魔法剣サイレス』を使わずに物理でゴリ押ししても普通に勝てる。
この小説では、独自に強力なバリアを設定している。
でないと確実に『水晶龍』より弱いため。
ジュリア・ハーティリー:重要人物
FF8の主題歌とも言える『Eyes On Me』を作中で作詞作曲し、歌った人物。
リノアの実の母親で、ラグナと恋仲になりかけていた。
要所要所にアレンジメロディが出てくるなど、FF8のテーマである恋愛を語る上でかなり重要な人物。
原作開始時点では、大ヒット作品を世に出した夭折の歌姫として有名。
当然、この二次小説のように腐女子だったりはしない。
リノアも原作では腐ってはいない。
この二次小説はあくまでフィクションであり、原作の人物設定とは何の関係もありません。
ちなみに、『Eyes On Me』の現実におけるボーカルはフェイ・ウォン(王菲)という香港出身の女性歌手。