「まさか、バラムガーデンがガルバディアという国家に対して敵対を企んでいたとはな」
「それは誤解です。
バラムガーデンは『森のフクロウ』に対して戦力を提供したのであって、行動の主体はあくまで『森のフクロウ』です。
バラムガーデンが完全に独自に動いていたのは魔女に対する調査までであり、ガルバディアという特定の国家や組織との敵対を企図してのことではありません」
ティンバーの大議事堂にて、会談が行われた。
提案したのはアーヴァイン。セッティングしたのはカーウェイ大佐。
決まってから20分ほどで、要人すべてをティンバーに送り届けたのは、テレサ。
会談の出席者は、カーウェイ大佐、ビンザー・デリング大統領、シド学園長、『森のフクロウ』の代表者リノア、それにスコール。
アーヴァインとサイファー、それにテレサは壁際で会談の模様を見守っていた。
「それを証明する証拠は?」
「そうですね。テレサ君。ミサイル基地はわかりますね?」
「うい」
「そこの責任者を連れてきてください。
見分けがつかなければ、司令室にいる赤い軍服の兵士で結構です」
「ういうい」
シド学園長の命令に従い、テレサは一瞬で地面に沈み込んでいった。
「彼女は何だというのだ?」
「とある技術を開発した、天才児ですよ。
その技術に最も熟練しており、我々バラムガーデンへ、その技術の恩恵を与えてくれる、重要な生徒です。
我々バラムガーデンは、彼女を単独で魔女を討伐可能な個人と評価しております」
話している内に、テレサは天井から戻ってきた。
「なっ、ここはどこだ!まやかしか!?」
「驚くのは分かるが、一度深呼吸して落ち着きたまえ」
「カーウェイ大佐?……こ、これは大統領閣下!?」
「たぶん、これが一番早いと思います」
デリングはミサイル基地の指揮官が慌てているのを見て、苦々しい顔をする。
それはミサイル基地の責任者ではないのだが、司令室に常駐している副官の1人だった。
ミサイル基地の先任官であり、他に2人いる副官と合わせて、ミサイル基地の実権を握っていると言っても過言ではない軍人である。
デリング自身もミサイル基地には何度か視察に行ったことがあり、その時に顔を合わせていた。
「つまり、暗殺も誘拐もやりたい放題というわけか」
「しかも、対象が星の裏側にいようとも、命令から数分後には完遂します。
それは今御覧になった通りです」
「……」
要するに、本当にシド学園長がガルバディアを潰そうと考えていたならば、デリング大統領の命はとっくに消えてなくなっていたということだ。
「サラッとスゴいことやったけど、アレ、何者?」
「さあな。俺にもよく分からん」
サイファーは改めて問われると、首を傾げざるを得なかった。
悪人でないことだけは確かなのだが、それ以外の部分をどう評価すればいいのか、よく分からないのだ。
「1つだけ確かなのは、学園長の話が、話の方が半分だってことだ」
「え」
「さっき、バラムの森で魔物5匹狩る試験の話しただろ?」
「あ、うん。20分切りって、砂漠でも頭のおかしい数字だけど」
「アイツは、2年前の時点で4分半を叩き出しやがった。しかも初見でだ」
アーヴァインは返す言葉が何も浮かばなかった。
「それ本当?」
「……本当だと思わせるだけの実力は見てきた。嫌というほど」
逆隣のスコールが頷く。
以前から、そして今でも真面目な彼は、必要もないのに嘘を吐くような人間ではない。
「ちなみにスコールは25分25秒だ」
「半年前からやってないだけだ」
「そんなんだから6:4で俺が勝つんだろ」
「サイファーには関係ないだろ」
「お前がエルオーネを守るんだろ。なら先輩の言うことも聞いとけ」
「……」
スコールは黙る。
それを見ていたアーヴァインは驚いた。
「(あのサイファーがちゃんと兄貴分やってる……!)」
会談は進む。
リノアは予想外の父親の登場に動揺しまくっていた。
そのせいで、アガリ症のゾーンの代理という役目を、なかなか果たせずにいる。
「(やっば。お父さんと大統領を題材にしたBL本、全部処分したつもりだったのに、まだ残ってたのかな?)」
原作に比べてカーウェイ大佐が妙に老け込んでいるのは、間違いなくこの母娘のせいだろう。
顔は母親譲りの美人で、性格も悪いことはないのだが、趣味がすべてを引っ繰り返してしまっていた。
「そもそもフューリィ、君は一体、どういうつもりでこの会談をセッティングしたのだね?」
「幾つか、聞いてほしいことがある。
そしてそれを君と、彼らで話し合わなければならないと考えたからだ」
幸いにして、話は父親の方から振られる。
「ビンザー、君が捕まっていると聞いた時、私はすぐに親衛隊に問い合わせた。
真偽の確認を行うには親衛隊が手っ取り早いし、もしかすると警備に手違いがあったのではないかと考えてね。
すると、なんという返事が来たと思う?
『魔女様の許可のない者には伝えることができない』だ」
「なんだと?聞き間違いではないのかね?」
「官邸への直通のホットラインに、私を知らない者が出るわけがないだろう。
だから、サイファー君達を伴って官邸へ直接乗り込んだのだ。
すると、奇妙なことが分かった」
「奇妙なこと?」
「君を盲信する者ほど、『魔女様』と言うのだ。
何人かの古参兵は私に気付き、真偽の確認に応じてくれたよ」
「一体、どういうことだ?」
デリング大統領は首を傾げた。
「魔女の魅了ですね」
そこにシド学園長が口を挟む。
「魔女の魅了は、抵抗できた人間とできなかった人間の違いが、はっきりと表れます。
特に魔女の側から指示がなければ、様付けで呼ぶのも特徴です」
「なるほど、確かにその特徴に合致するな……」
「つまり、今のデリングシティは、魔女の支配下にあるということか?」
「私を捕えようとはしなかったところを見るに、まだ本腰を入れているわけではないようだが、時間の問題であることも違いはないだろう」
「……魔女を過小評価したか」
デリングは頭を抱えた。
「元々は、エスタの軍事力とエスタを支配する魔女アデルに対抗するためだった。
再度のエスタの侵攻が始まれば、被害は今までの比ではない。
そのためのティンバー侵攻だったが、結局はガルバディア大陸を平定しようとも、エスタの軍事力と、魔女アデルに同時に対抗することができないと判明したのみに終わった。
だからこその、魔女だったのだ。
魔女に関しては、本当に、慎重に接触し、恐ろしい魔女ではないと、何度も確認したよ。
結果がこれだ。
私は世界を破滅に追いやるだけの力を、恐ろしい魔女に献上する道化に過ぎなかったのだ」
20年に渡り栄華を極めた男は打ちひしがれる。
「まだ諦めるのは早いぞ、ビンザー。
わずかな希望がここにある。
だからこそ、私は君を怒らせることを覚悟で、この会談をセッティングした」
「相手はガルバディア軍と魔女だぞ。どちらか片方ならばともかく」
「私は、アーヴァイン・キニアス君から、ガルバディアの魔女について調べていると聞いた。
魔女が自分の夫に重傷を負わせて姿を消したとも。
おかしいと思わないか?
なぜバラムガーデンが、独自に魔女について調べるのだ?
シド学園長。あなたはもしや……」
「はい、私がその、魔女イデアの騎士にして、夫です」
シドはやや照れくさそうに頷いた。
「何を書いてんだ?」
急展開する流れについて行けずに、別のことを始めたリノアの横から、ゾーンが彼女のノートを覗き込む。
「うん、年齢も結構合ってるから、お父さんと大統領とシドさんの3Pもいいかなって……」
「リノア……」「……(ティンバー代表なんだぞ、もうちょっと自覚持てよ)」
その時、テレサがリノアのノートを覗き込んで言った。
「こういうの、もっとトンガらなアカンで」
「えっ?」
「まだ恥じらいあるんちゃう?」
「う、うん。どうすればいいのかな?」
「せやな、たとえば、ここのシチュをもっと派手に過激に……」
「……」
「きゃん!?」「ふぎゃ!?」
2人の娘にカーウェイ大佐の、親父のゲンコツが落ちた。
「(俺が反応できなかった、だと……!)」
カーウェイ大佐の割と普通の動きに、スコール1人が戦慄していたという。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
ありとあらゆる意味でのまさかの展開でした。
ムービー中は今の彼らでは動けません。
――――設定
ミサイル基地:
ガルバディア軍が保有する大陸間弾道ミサイルの発射基地。
燃料注入とかいう単語が出てくることから、液体燃料方式と考えられる。
ちなみに、現在の現実世界の主流は固体燃料。
セキュリティ管理がかなり杜撰で、ミサイル発射のための補助電源も申し訳程度のものしかない。
税金を湯水のごとく使ってD地区収容所のような無駄に複雑なものを作るより、こちらにお金を回せよと思わなくもない。
ゲーム中では発射阻止のために潜入することになる。
内部の進め方によって、Seedとしての評価に大きく係わってくる。
着弾誤差修正の際、コンソールを弄るのだが、装備情報チェックの画面で特殊なことをすると、ガルバディア兵の踊る姿を見ることができる。
一体何を考えてこんなものを作ったのか。
……と、誰かが呟いたような記憶がある。
何気にセルフィ主人公で進むため、彼女の素の言葉遣いがもろに出てくる。
フィールド上でセルフィの姿で歩き回ることができるのは、ミサイル基地襲撃直前のみ。