イデアはパレードの始まりの演説で、デリング大統領の死を告げる。
そして、パレードに熱狂する民衆へ、魅了の魔力を振り撒いた。
たったこれだけで、ガルバディア軍もデリングシティの民衆も、すべて支配下に置いた。
魔女は万能ではない。
世間で噂になっているようなことは半分もできない。
しかし、普通の人間ではそう簡単に倒せないのと、国家一つ分程度ならば簡単に掌握してしまえるのも確かなのだ。
後は、この時代でやるべきこと、彼女の計画をすべて行うだけ。
そのために必要なものがある。
それがガルバディアガーデン。
浮遊移動機能を有した、空飛ぶ巨大要塞。
そして、ミサイル基地への、トラビアガーデンとバラムガーデンへの攻撃命令。
各ガーデンには、ガルバディアガーデンと同じく浮遊移動機能があった。
元々はセントラ時代に作られたシェルターを改造した建物。
それらを今の内に破壊しておく必要があった。
ガルバディアガーデンも最終的には破壊するが、最後でいい。
最優先事項は、エルオーネ誘拐の隙を作ること。
もっと過去へと遡り、ガーデンの種を跡形もなく消し去る。
ガルバディアガーデンへ入ると同時に、突如ティンバーが解放されたという報せが飛び込んできた。
「あの男め、我が身かわいさに国を売ったか」
この時イデアは、デリングからの反撃の狼煙にまだ気付いていなかった。
ミサイル基地から、ミサイルが発射される。
最初の狙いはトラビアガーデン。
バラムガーデンも後で撃つが、それで破壊できるとは思えなかった。
イデア自身が乗り込んでも勝てる気がしない。
そのため、まずは補給を絶ち、干上がらせる作戦で行く。
それに、エルオーネが手中に入りさえすれば、そこでこのゲームは終わる。
ガーデンが創立される前に飛んでしまえば、どんなに強かろうとも何もできない。
バラムガーデンが見える草原。
5日毎の『次元の魔物』戦が行われる。
今回黒い靄から出現したのは、1冊の、一抱えもある仰々しい本。
実に現代のサイズにしてA2という、ポスターくらいにしか使われない、1ページのサイズが大きな、まさしく魔道書というイメージのハードカバー本。
そのタイトルにはこうあった。
『アパンダ』。
本はひとりでに開くと、中から強大な魔力を持った魔物が出現する。
ねじくれた2本の角を持った、2足歩行の牛のような魔物。
「まさか、本当に『カロフィステリ』がやられているとはな」
準備万端に整えていたバラムガーデンの精鋭部隊は、その魔物の眼中にも入っていない。
というのも、前回の青白い美女の時もそうだったのだが、魔力の多寡で相手の強さを測る癖があるようなのだ。
その癖はエクスデスのものなのか、それとも黒い靄の向こう側の常識なのか、それは分からない。
「油断などはせん。これまで数多の魔物を倒し、『カロフィステリ』までもがやられたのだ。
それとも、隠し玉は後ろに控えているのか?」
アパンダは魔力を発して鋭い爪を振るい、広範囲にカマイタチを発生させる。
魔力による後押しがあるとはいえ、現象そのものは物理攻撃だ。
当たれば何の防備もしていない人間など、一瞬で真っ二つである。
当たれば、だが。
「回避!」
キスティスの指示で、7人は全員がその攻撃範囲から逃れた。
変態的な動きで、一瞬で。
「ほう、なるほど、小手調べに足るだけの力はあるか」
アパンダは面白そうに目を細める。
「前衛後衛関係なしかよ。
やられねえ自信はあるが、後衛を守れる自信がねえ。どうする、先生?」
「全員で散開しつつ接近攻撃よ。
ただし、実験と時間稼ぎの意味があるから、回避優先で」
「了解!」「了解」
『次元の魔物』対策班の役割は、テレサの負担を軽減することにある。
テレサの性質は、徹底した情報取得からの、最短の手順による相手の討伐だ。
その情報取得を助けるには、勝てないからと最初から投げているわけにはいかない。
「テレサ、時間を稼ぐから、準備をお願い」
「ういうい」
虎の子に準備するように指示してから、キスティス達は全員でアパンダを抑えにかかる。
「まさか、ワレがむざむざとその作戦に――」
「よっしゃいったれぇぇぇい!!」
「ウォイショーイ!!」
ゼルがデンネンの後押しを受けて突貫するのを、アパンダは素早く迎撃。
しかし、爪から出した糸で瞬間的に展開された網は、ゼルの身体に絡まることなくすり抜け、アパンダは右頬に強烈な打撃を受けた。
「――っ!?」
ほんのわずかにでも触れれば『ストップ』の効果を発揮するアパンダ自慢の糸が、何の効果も発揮しなかったのである。
「あっぶね、んな手を使って来やがんのか!」
ゼルは糸を避け、アパンダの身体を蹴ってすぐに離脱。
爪の反撃も空振りした。
しかし、地面に着地してから力が抜けて、地面に膝を付く。
「なんだ、これ、『ドレイン』か?
直接触ると吸われるぞ!」
受けた攻撃の感触から、ゼルは皆に注意を呼びかける。
「チィ、すり抜けただと、面倒な……」
実は、糸が触れるコースが腕だけだったため、不完全な壁抜けを得意とするゼルはすり抜けることができたのである。
もしも糸が頭や体の中心を通るコースだった場合、捕まっていただろう。
ちなみに、前回の『カロフィステリ』のバリアをすり抜けられなかったのも、それが理由である。
なお、大ダメージを与えるのが目的ではなく、物理攻撃を行うことで『プロテス』やカウンターの有無をチェックしたのである。
「“アツゥイ”『ファイア』」
シュウが近距離から炎の礫を飛ばした。
『リフレク』、『シェル』の確認と、魔法に対するカウンターのチェック。
大してダメージを受けていない様子で、アパンダは周囲にカマイタチを発生させる。
「“3年B組、モルボルせんせーい”『臭い息』」
皆が回避のために離れた隙を狙って、キスティスが神経ガスを撒いた。
アパンダは鬱陶しそうにはしているが、効いている様子はない。
ステータス変化に対する耐性のチェック。
「結局はソイツさえ潰せば、有効な攻め手などあるまい!」
「みんなは撤収!テレサ、ゴー!」
怪物がテレサを攻撃する構えを見せた瞬間に、キスティスは合図を出す。
「“
『ヘイスト』で加速し、瞬間移動をさらに高速化して、アパンダの攻撃であるカマイタチを置き去り、槍攻撃の
一度見たすり抜けを警戒するどころか、攻撃に反応する暇すら、アパンダには与えられない。
「『ヘイスト』が入ると動体視力的にさすがに辛いわね」
「そろそろビデオ撮影も限界じゃねえか?」
「特注品のハイスピードカメラを使っているから、まだなんとかってところ」
「……これが対策班レギュラーの世界か……」
サイファーとスコールが抜けたことで入った、地味な黒髪少年は呟いた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
この辺からイデア視点が多くなってくると思います。
何か事件があれば、それを描写するという感じになるでしょう。
今回は解説が多くなるのでこの辺で。
――――設定
『アパンダ』:FF5
『次元の挟間(図書室)』のボス。
先に進むためのスイッチとなる本を開くと1度だけ出現する。
普通にプレイしていると、ここへ来るまでにそれなりにレベルが上がっている上に、おそらく伝説の武器も揃えていると思われるため、そこまで苦労しない。
火属性に弱く『ファイガ』を連打しているとすぐ倒せる。
『イフリート』を使用すると怖がって『ちりょう』を使い、モードチェンジして後ろを向いて『ちゆ』で自分を回復し続けるというギミックがある。
残念ながら作者ひろっさんはそれを見たことがないため、回復量や前を向く条件を知らない。
『ヘイスト』:擬似魔法
対象1体の時間を加速することで、素早く行動順を回す時空魔法。
FF5でもFF8でも、使用頻度はかなり高い。
特に3Dで表現されるFF8では、攻撃モーションがほんの少し短くなるという隠された効果があり、さらに他の時空魔法には他の時空魔法を上書きする性質があり、『ヘイスト』状態で固定してしまうオートアビリティ『オートヘイスト』は、実質『ストップ』と『スロウ』への完全耐性も兼ねる。
地味に早さJと回避Jの上昇値がそこそこ高く、『トリプル』と『トルネド』が手に入るまではジャンクションでもお世話になる。
(ただし、入手可能になる時期は『トルネド』が一番早い)
ただ、他のタイトルもそうだが、『死の宣告』や『石化中』、『毒』といった時間経過でデメリットが加速する系統の状態異常の効果を高めてしまうことがある。
特にFF8は行動するとその手のデメリットが加速するシステムのため、治療手段の準備を怠ると割とあっさりやられてしまうことも。