イデアはガルバディアガーデンを浮遊させ、機動要塞とする。
生徒や教員の内、従わない者は追い出して、ガルバディア兵を配備。
戦力は積めるだけ積んだ。
バラムガーデンとの戦闘は極力回避する方向で行くとはいえ、不意の遭遇は想定していなければならない。
ただでさえ、予想外な出来事が重なって、計画に不安のある状態で進めざるを得なくなっているのだ。
慎重になってなり過ぎるということはない。
また、この時代にいるはずの魔女アデルの復活についても、考える必要が出てきた。
エルオーネは、バラムガーデンにいるのだ。
イデア1人だけでは戦力的に不安がある。
魔女アデルを蘇らせ、説得し、エスタ軍を掌握して投入することを考えなければならない。
それで、バラムガーデン内に潜伏させているスパイが、エルオーネの誘拐を実行できる隙を作り出す。
そのためには、まずF.H.からエスタへ人員を派遣し、どうにかして宇宙にあるアデルの封印を解く必要があった。
「まずは、F.H.へ向かう。ホライズンブリッジを渡ってエスタへ向かう人員を選定せよ」
イデアは命じた。
数日前のティンバー会議室。
アーヴァインは、カーウェイ大佐から魔女イデアの大まかな予定を聞いて、考える。
「やっぱり、誰かに乗っ取られてるね」
「なぜそう思うのですか?」
「ママ先生なら、バラムガーデンを乗っ取る方が簡単だから。
そうでしょ、シドさん?」
「私がイデアの魅了を受け入れてしまうと?」
「魅了じゃなくて、ある程度だったらママ先生のお願いを聞いてしまうよ。
ボクたちも含めて、今までママ先生のために色々と準備してきたんだから」
「……なるほど、イデアのままお願いされれば、聞いてしまう可能性は否定できませんね。
そしてそれは、ガルバディアを乗っ取るよりも簡単なのかもしれません」
シドは渋い顔ながら頷いた。
「ママ先生がそうしないのには理由があるはずなんだ」
「そして、魅了の魔力の無闇な使用は、隠れ住むためには禁忌と言っていいほどの行いです」
「そうなのかね?」
「私は魔女イデアの騎士であり、夫です。
そんな私が洗脳されていないと、他者に証明することができると思いますか?」
「む……」
問われて、カーウェイは言葉を途切れさせる。
「洗脳というのは、単に人を殺すよりも、より人々に忌み嫌われる行いです。
その人が生きている限り、思いつく限りの冒涜を行わせることができてしまいますから。
しかも、魔女の仕業であると分かりやすく、自分の行動の違和感などから、痕跡も残りやすいのが特徴です。
隠れ住むには、とても都合の悪い力なのです」
「なるほど……」
アーヴァインは、話を進める。
「ママ先生が意識を乗っ取られているとすることで、説明できることが他にも幾つかあるんだ」
「ドールですか」
「ドール?確かにガルバディア軍は手酷い敗北を喫したが」
「まだ調べは付いていないようですね。
あの戦いには、ドール議会の要請でSeedを派遣していました。
おかげで、不自然な『スケルトン』の大量発生について、詳細な報告が上がってきているのです」
「『スケルトン』だと?」
「正確には、『スケルトン』にドール兵の幻を被せて、離間工作を仕掛けてきたんです」
「そういえば、内部から崩すとか言っていたぞ」
デリングがシドの情報を補完する。
「……ちょっと待て」
カーウェイは、口を挟んだ。
「すると何か、そこまで絶望的な状況から、Seed部隊だけで引っ繰り返したと?」
「新技術を導入した候補生を一般任務に投入した、初の実例です。
さすがに保険的な意味で、オーバー気味な数を投入しましたが」
「……なるほど、アレを実現してしまえる戦力があるとするならば、魔女と正面から戦うことになろうとも、問題はなかろうな」
大佐は苦々しく呟く。
ガルバディア軍内から見た視点では、まるで空間ごと抉り取られたかのように、情報も戦力も、一瞬で消えてしまったのだ。
国内に魔女がいたことから、カーウェイは一時、ドールにも魔女が出てきたのかと疑ったほどである。
世間に知られていない魔女がどこにいるのかという正確な情報は、魔女当人達を含めて誰も持っていない。
「まあ、ともかく、シドさんがバラムガーデンにいて、ドール議会がSeedの派遣を要請する可能性がある以上、『スケルトン』の投入はないでしょ?」
「確かにそうですね。事実、私もイデアを知る生徒達も、あの件で魔女の存在を確信し、サイファー君にガルバディアでの情報収集を命じました」
「魔女に詳しい者がいると知っていれば、もっと慎重に立ち回るか。
確かに頷ける」
アーヴァインはさらに続ける。
「次に、明らかに不用意なのが、デリング大統領のティンバー行き。
コレもシドさんが魔女のことを知っていたら、調査に来るのは分かってるんだから、今回みたいな鉢合わせの可能性を上げているだけになる」
「ビンザー、これは君の不用意もあるぞ。
ドール侵攻の失敗の原因を、もっと注意深く調べていれば、こうはならなかったはずだ」
「わかったわかった。反省しているとも」
「11年前もそう言っていたような気がするが……。リ、ノ、ア」
「ひゃいっ」
テーブルの下に隠したノートにBLネタを書いていた愛娘に、カーウェイは注意を飛ばした。
「11年前?確か……」
「当初、ティンバーレジスタンス狩りがあのタイミングで行われる予定はなかった。
ある程度、武装組織を取り込んで、エスタ軍スパイへの備えとする計画もあったのでな。
それが、ビンザーが不用意にティンバー観光などするものだから、レジスタンスを刺激して、襲撃を受けたのだ。
おかげで懐柔し取り込む予定だったレジスタンスは軒並み壊滅だ」
ゾーンの問いに、渋面のカーウェイが語る。
友人といい、妻といい、娘といい、かなりの苦労人のようだ。
「問題は、ママ先生がどうやって乗っ取られているかなんだけど……。
ボクは、お姉ちゃんの力だと思う」
「イデアは確かに、あの子を守るために色々なものを用意していましたね。
思えば、ガーデンのアイデア、魔女への対抗策という目的も、あの子を守るためなのかもしれませんが……。
あの子の力がイデアを乗っ取っている?」
「お姉ちゃんが直接力を使ってるんじゃなくて、ほら、お姉ちゃんって、昔エスタに攫われてたでしょ?」
「ああ、確か、オダイン博士の研究所で、その力を研究されていたと言っていました」
「アーヴァイン、お前、よく覚えてるな」
サイファーが感心する。
「つまり、お姉ちゃんの力が未来で装置として実現されてる可能性がある」
「あの子の力を研究した結果が、GFのジャンクションです。
推測を重ねた話ではありますが、可能性は十分にありますね」
「なるほど、キニアス君が言いたいことが分かってきた」
カーウェイも感心した。
「魔女イデアを乗っ取った者は、何かの目的を持って行動している。
そして、その目的というのは……」
「間違いなく、あの子ですね。
状況証拠となりますが、それしか考えられません」
アーヴァインの推理によって、イデアを操る何者かの目的が、かなり正確に暴かれていた。
「さて、これを踏まえて、作戦があるんだけど……」
エクスデスは、手応えを感じていた。
あちら側の情報は相変わらず入ってこないが、徐々に開く『次元の穴』が大きくなってきているのだ。
エクスデス自身が異世界へ渡り、何が起きているのかをその目で確かめることができるようになるのも、そう遠い話ではない。
「ファファファ」
彼は笑う。
「今まで散々散々散々散々散々、おちょくってくれおって、ヤローオブクラッシャー!」
ちょっとコワれてきていた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
アービンのターンのつもりが、全体的にカーウェイ大佐のターンだった件について。
ここのアービンは、気持ち悪いほど頭がいいです。
その頭脳をフル活用した作戦がどうなるのかは、予定は未定です(爆)
――――設定
シド学園長と魔女イデア:
FF8シナリオにおいて、エルオーネの次に重要な夫婦。
イデアは2度もボスを務め、シドは妻を倒せと命じなければならない人間として、夫婦愛を表現するドラマを作り上げた。
FF8のテーマである『愛』がここでも回収されている。
ただ、子供には難しいかもしれないが。
ゲーム攻略上、シド学園長は結構重要で、『やみのランプ』や『バトル計』を所持しており、さらにレアカードも持っている。
カードバトルではAIが強く、ルールによってはかなり苦労することになる。
ただ、初期はそこまで強いカードを持っていないため、レアカードをもらうなら初任務前がいい。
1つ1つの行動を見ていくと、割ととんでもないことをスコールに押し付けてくれているが、スコールとラグナとの関係を知っていれば理解できなくはない。
(ラグナは超強運な上にカリスマあり。エルオーネから聞いた?)
イデアは1回目の戦いは負けイベントで、戦闘そのものに勝っても、負けたものとして物語が進む。
この小説ではパレードを飛ばしたが、暗殺ミッションでは、どう考えてもパレードカーの裏から狙撃しているのに、前からの狙撃を防いでいるように描写されている。
2回目、戦闘後に命があったのは、おそらくたまたま。
多分、分度器ややたら演出過剰なのは、彼女の精神を支配していた未来の魔女の趣味。
支配から解放されたイデアは、『まま先生』に相応しい、愛情溢れた女性として描写されている。