多分これが一番…   作:ひろっさん

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8/8 テレサが珍しくピンチになります。


砂漠の決戦

決戦の場は、D地区収容所。

 

ティンバーを手放した関係で、巨大施設を維持できなくなるため、最後に戦時拠点として最大限活用しようという魂胆である。

移動要塞であるガルバディアガーデンに対抗可能な要塞として改造可能なのも、ポイントが高かった。

潜行浮上機能を有するため、直線的な攻撃を回避する可能性があるのだ。

 

「なるほど、カーウェイ大佐の仕込みか」

 

イデアを乗っ取っているアルティミシアは、その布陣を見て呟く。

 

アデルが調子を取り戻すまで少々時間はかかったが、準備に時間がかかったのはカーウェイ軍も同じであるらしい。

 

いずれにせよ(エニウェイ)、ミーの存在は計算に入っておるまい」

「(そろそろツッコミを入れた方がいいのか?

いや、成功にしろ失敗にしろ、短い付き合いとなるのは違いない。

放っておこう)」

 

どうでもいい決断が行われた後、決戦が始まる。

 

後世、『ディンゴー砂漠大戦』と称されることになるこの戦いは、幾つかの理由で浮遊要塞を持つ魔女側が圧倒的有利であるとされていた。

 

カーウェイ大佐は稀代の戦略家で、拠点を中心とした隙のない堅実な布陣を敷き、大量の無人機械兵器を投入。

元々無人機械兵器は魅了の力を持つ対魔女用に考案されたもので、ティンバーという豊富な資源地帯を手に入れたガルバディア軍の快進撃の原動力でもあった。

 

しかし、それも魔女を正面から叩き潰すとなると力不足であり、数を並べて疲労を強いるという消極的な戦術のために、数が用意されたに過ぎなかったのである。

そして、肝心の数でさえ、ガルバディア主力部隊を擁する魔女の側に分があった。

 

何をどうしても、カーウェイ軍には勝ち目がなかったのである。

D地区収容所という堅固な拠点を構えたことで、短期間での敗北がなくなったに過ぎない。

 

問題は、魔女の側がアデルという隠し玉を得ていたことと、カーウェイ軍側がSeedという隠し玉を得ていたことにある。

 

後世でも、戦闘に熟練した魔女とSeedでは、6対1で交換可能と言われていた。

さらにアルティミシアが控えているとなると、カーウェイ軍の敗色は濃厚だった。

 

ただ、だからこそ、カーウェイ軍を勝利に導いた存在が際立った。

 

 

 

アルティミシアとアデルが戦線に投入した、無数の魔物達、GFが、一斉にある1方向を向いた。

 

「なんだと……!なぜここにアレが出る!?」

 

そこにあったのは、黒い靄。

『次元の魔物』が出現する前兆である。

 

このタイミングを選択したのは、アデルである。

テレサが戦闘に参加できないタイミングでなければ、そもそも決戦に挑むことすら危険と彼女は判断していた。

 

アデル自身、過去に似たような誘いに乗ってエルオーネに近付き、油断から封印される羽目になったことがあるのだ。

慎重になるのは当然だった。

 

うろたえるな(ドントウォーリー)。ウィーが予想を外しただけのこと」

 

それでもアデルは落ち着いている。

 

「結局、テレサとやらがアレを倒さねばならんことに違いはない。

アレが我々を選択的に攻撃することはなかろう」

 

それでも、その見積もりは甘かったと言わざるを得ない。

 

この作戦を考えたアーヴァインは、エルオーネの接続能力によって、テレサが何をどの程度できるのかを、知っていたのだ。

つまり、この場で『次元の魔物』の出現を待たせたのは、テレサの力を利用するためである。

 

魔女はバラムガーデンについて調べている。

ならば、バラム平原で派手に戦っているテレサと『次元の魔物』の出現周期について調べていないわけがなく、テレサと直接対決せずに済むタイミングで仕掛けてくるのは、簡単に予想できた。

 

バラムガーデンを最大の脅威とした場合、テレサとバラムガーデンの最大部隊であるSeedを各個撃破することは、魔女にとって勝利へ向けた必須条件だからである。

要するに、アデルが共にあろうといなかろうと、魔女はこのタイミングで仕掛けざるを得ず、『次元の魔物』の出現条件を知らなかった魔女では、本当にまずいタイミングを選ぶことができなかったのだ。

 

そのため、うろたえようと落ち着いていようと、最早すべてが遅かった。

 

「“不明なユニットが接続されました。システムに深刻な障害が発生しています”『直ちに使用を中止してください』

“ペポゥ、チンッチンットゥッ、選手入村、レベラッ、プリッ、レベラッ、チンッチンットゥッ、ショーターイ”『悪魔城外ドラキュラ(ながくくるしいたたかいだった)』」

「IGAAAAA!!」

 

黒い靄から出現した『ハリカルナッソス』は、何もさせてもらえずに氷の斧と槍で刻まれ、そのついでにガルバディアガーデンが崩れ始める。

 

この瞬間、拠点を失った魔女側は、拠点が健在なカーウェイ軍に対し、戦術上の勝ち目を失った。

 

「イッツクレイジー」

「馬鹿な、あれだけの相手を討伐するついでに、ガーデンを落としたというのか……!」

 

魔女2名とも、起きた現象に頬を引き攣らせる。

 

 

 

地上に引きずり降ろされた魔女2人の前に、8人のSeed達が立ち塞がる。

カーウェイ軍に紛れ込んでいたのだ。

依頼者であるデリングも了承済みで、ガルバディア兵の服が貸し出されており、こうして相対するまではSeedが紛れ込んでいるとは、魔女側も知らなかった。

もっとも、それは戦うのが魔女1人の予定だった8人の側も同じだったが。

 

「なんで魔女が2人いるんだ!?」

「知らないわよ!」

「でも、結局は倒してしまわないと、この戦争は終わらないわ」

「……(コイツまさか、魔女アデル、なのか?)」

 

Seed側に利点があるとすれば、この8人が基本的に地力で自分より強い敵を相手にし続けてきた、『次元の魔物』対策班ということである。

そのため、お互いの連携は完璧に近かった。

 

物理法則の限界を超えた速度で動き回るSeed達を、アデルもアルティミシアも、なかなか捉えることができなかった。

 

「小癪な……!『メイルシュトローム』」

 

広範囲を巻き込む攻撃魔法を使用しても、一瞬で効果範囲の外まで逃げられてしまう。

バリアで攻撃を弾くことはできるが、無限に続けていることはできない。

 

「“――”『クェイク』」

 

それでも、消耗を度外視して攻撃を続けるしかなかった。

新技術を知ってから戦闘に入るまで、準備時間があまりにも少なかったからである。

しかも、想定していたのはテレサだけで、『次元の魔物』を1年も相手し続けてきた対策班については、眼中になかった。

 

つまり、致命的に読みを外してしまったのだ。

 

「(魔女アデルよ、頼みがある)」

「(ファッツ?)」

「(テレサにイデア(このおんな)の魔女を継がせたい)」

「(……乗っ取るのか)」

 

魔女2人も、ただでは倒れなかった。

 

護衛と共に退避しつつある、この世界で最強の少女を乗っ取るために行動を始めたのである。

アデルも、このままでは2人とも倒れることは避けられないと気付いていた。

だから、その作戦に乗った。

 

「“――”『アルテマ』」

 

アデルは自分を巻き込んで、核爆発を発生させる。

しかし、敵はすぐに効果範囲の外に逃れていた。

 

究極の名を冠するこの魔法が、こうも力不足に悩まされることになろうとは、彼女自身予想だにしていなかった。

ここで逃れて、エスタを手中に収めて反抗しようとも、結局はバラムガーデンのSeedの存在が、世界の支配に対するネックとなってしまう。

 

だから、最強の存在であるテレサの乗っ取りを、成功させる必要があった。

アルティミシアが語った魔女の未来は、アデルにはどうでもよかったが、この上は一矢報いなければ気が済まない。

 

「ゴー!『メテオ』」

 

隕石を、アルティミシアを守るように降り注がせながら、アデルは叫ぶ。

 

「逃げた!?」「……(エルオーネの方向、ではない?)」

「スコール!ゼル!ニーダ!足止めだ!」

 

サイファーが気を散らしかけた他のメンバーに指示を出すことで、迷いを消す。

 

「『トルネド』」

「“あんなものを浮かべて喜ぶか、変態どもめ”『コジマは、まずい』」

 

魔女達にもう1つ誤算があるとすれば、バラムガーデン随一の天才児キスティスがテレサの領域に足を踏み入れていたことだろう。

もっとも、相性のせいか、条件があったが。

 

「“ヒトギライノ カクノ ポーション”『北斗残悔拳(ほくとざんかいけん)』」

 

アデルに投げつけられたのは、なぜか『ポーション』だった。

痛みや疲労を軽減する薬であり、全世界中で重宝されているもの。

それがバリアをすり抜けて、アデルの赤毛を濡らした。

 

「ホワイ、なんのつもりだ……?」

 

投げつけたキスティスは、地面に倒れ伏している。

 

アデルは、自分がなぜか戦場から離れていくのに気がつかなかった。

同時に、なぜか魔力が限界を超えて高まり続けていることにも。

 

「シュウ、キスティスを頼む」

「ええ、了解」

 

サイファーは気付いていた。

アデルはもう『終わった』ということに。

 

「残りはまま先生の方だ。行くぞ!」

「了解」「了解だもんよ!」

 

しかし、3人が追い付いた頃には、もうイデアの方も終わっていた。

色々な意味で、すべてが。

 

カーウェイ軍と魔女軍、魔女が呼び出した魔物が戦う砂漠から離れた場所で、核爆発のキノコ雲が噴き上がる。




――――あとがき

こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
今回は決戦回でした。

色々と含みを残していますのが、その辺の説明はまた次で。



――――設定

『ハルカリナッソス』:FF5
『次元城』の玉座で戦う必須ボス。
キスで相手を操る(テレキネシス的な)能力があるらしく、そのために倒さなければ先へ進めない。
行動はたった3種類。
こちら全体をカエルにしてくる『クルルルル』と『ヘイスト』、それにHPが減ると使用してくる『ホーリー』。
HPは3万を超えており、対策を立てないと倒すのがかなり面倒。
開幕で『カーバンクル』の使用に成功すると、勝ちが確定する悲しきボスでもある。
FF5のボスはこんなんばっかか。

『メイルシュトローム』:
元々はノルウェー近辺の海で発生する大渦潮のこと。
そのためか、海や水に関連してこの名前が使われることが多い。

FF8ではなぜか重力を発生させる、魔女専用の魔法。
効果は、全体に現在HPの3/4の割合ダメージと、『カース』のステータス異常(いわゆるデバフ)。
『カース』は特殊技が使えなくなる異常で、それまで特殊技にばかり頼っていると辛い思いをすることになる。

イデア2回目とアルティミシアが使ってくるが、アデルや魔女連戦では使ってこないため、アルティミシアかイデアの魔女を継承した者専用と考えられる。

少々面倒だが、『カース』にST防御で耐性を付けてしまえば、特殊技の条件を満たしてくれるお助け魔法になり下がる。
ダメージは大きいが、割合ダメージである以上それだけで死ぬことはなく、性質を知っていれば特に恐くもなんともない。
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