3馬鹿娘は雪原を歩く。
今日は士官生や教員達に引率されて、雪原の森まで来ていた。
士官生達にとっては護衛任務の練習であり、テレサ達年少クラスにとっては大抵初めての雪原である。
最初は寒いを通り越して『風が痛い』と言っていた子供達も、感覚がマヒしてきたのか、気にならなくなってきたのか、今ではあまり不満も出ない。
だが、割と元気だった。
「ほい、ほい……」
「よいしょ、よいしょ……」
「どぅえっ、どぅえっ、へぶしっ!」
皆が歩く中、ジャンプしながら移動しようとしたテレサが頻繁にコケる。
足場の悪い深い雪の中、小刻みにジャンプすれば移動しやすいと考えていたようだが現実はそう上手くいかないようだ。
「ほら、あんまりコケんなよ。
雪が深いところでコケたら、たまにそのまんま埋まって見つからへんようになるぞ」
士官生が頭から埋まった少女の足を掴んで引っ張り上げる。
「うー……」
助けられた厚着の少女は唸りながら、大人しく歩いて目的のものを探す。
探しているのは、寒冷地ならではの山の恵み。
「お、あったな。コレが『南極の風』や」
引率の教員、今回は採取の専門家が子供達に、青白い宝石のようなものを拾って見せた。
見た目は内側に青い光を蓄えた宝石。
近付くと、何か強い魔力を感じる。
「『魔石』の一種でな。コレを精製すると冷気属性の擬似魔法が抽出できるんや」
「へー」「へー」「とーりーびーあー」
子供達は士官コースの生徒達が周囲を警戒する中、周辺に落ちている青白い宝石を探し回る。
士官生達は、寒い中でも活発に動き回る子供達について行くだけで大変そうだが、これも訓練であるため、文句を垂れながらも見守っていた。
そんな中、勝手知ったる『庭』と、周囲に積もった雪を掘り起こし、木の根元に生えるキノコを採取する専門家達。
それを観察していたのは、テレサ。
「なに取ってるん?」
「『ユキノコ』っちゅう、高級薬の素材やで。
ちょい扱いが難しいてな。熱で融かすわけにもいかんねん」
「へー」
少女は白いキノコと、それが自生していた場所を観察する。
「なんであるって分かったん?」
「『南極の風』みたいに、冷気を吸収するんやわ。
やから、生えとるとこは雪がちょいへこむねん」
「んー、じゃあ、『魔石』を寒いとこに置いといたら、『南極の風』になったりするん?」
「そないすぐにはならんけど、トラビアやったら半年くらいでなるみたいや」
「へー」
テレサは青白い宝石を探すクラスメイトに目を向け、自分も青白い宝石を探しに向かった。
そうして、幾つかの課題と、収穫を持ち帰る。
「おお、写真撮ってたんか」
「タブレットのデジカメ機能」
「便利やなー」
トラビアガーデンの子供部屋で、情報の整理を行う。
「キレイやなー」
「エエ角度。回りに比べて雪がへこんでんのがようわかる」
「そっちなん?」
テレサにとっては、見た目の美しさよりも資料的な価値だった。
「課題も見えたで」
「課題て?」
「『南極の風』って、硬いんかな?」
「そこまで硬くはないんちゃう?割れたっぽい跡も結構あったし」
「マジレスするかー」
「え、そうなん?」
「あったよ。モンスターの足跡、妙に凍ってたたやろ?」
テレサは画像をスライドさせて、その写真を見せた。
「うわ、ホンマや、凍ってる」
「踏んで割ってたっちゅうこと?」
「うん、多分やけど」
「それで、課題て?」
「雪原とか、足場が悪いと、走りにくい」
「あー」「せやなー」
至極当たり前で、ぐうの音も出ない正論である。
「どないかするん?」
「する」
「どないかする方法あるん?」
「今から考えるー」
テレサは言って、それにクレアがこう返した。
「せんせーに聞いたら?」
「それや」「聞きにいこ」
少女達はあっさり自分で考えることを放棄する。
しかし、この後、教員に聞きに行くと、『かんじき』を渡された。
『コレジャナイ』とテレサがゴネたが現実は厳しく、結局自分で考えることになったという。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
変態的な動きの片鱗が幼少期から見え隠れしています。
夏の蒸し暑いこの時期に雪原行軍を書くとか、まともに描写できてるかどうか不安にもなったりするんですが。
それはさておき。
皆様、6月も終わりですが、6月に乾燥注意報が出ていたのはご存知でしょうか?
まさか梅雨入りした後に乾燥注意報が出るなんて、私も予想だにしていませんでした。
もう半月も前の古い話題ですみません。
――――設定
雪原行軍:野外授業、独自設定
年少クラスを連れて近くの森へ行き、様々な素材の採取と調査を行う。
15歳以上で軍に入隊希望の士官科に入った生徒達が護衛する。
雪原における戦闘訓練、行軍訓練も兼ねており、年少クラスの年代を変えて月に一度行われる。
かんじき:雪上歩行用装備、現実に存在
紐や竹枠を編んで足の接地面積を大きくし、足が柔かい雪に沈み込みにくくする装備。
歩き方にコツが要るが、あるとないとでは歩行速度が段違いになる。
走ることには向いていない。
『ユキノコ』:独自設定
雪の下に生える松茸のような白いキノコ。
高級薬の素材として珍重されている他、珍味としても知られている。
他の属性の擬似魔法に触れると弾けてしまうため、扱いが難しい。
『南極の風』:冷気属性を帯びた魔石、半分独自設定
魔物が内蔵する『魔石』が、自然の冷気を吸収した結果、冷気属性を帯びたもの。
『南極の風』というアイテム自体は原作に存在し、『ブリザラ』を精製できる。
原作ゲーム中において、『カード変化』と『道具精製』を駆使することでディスク1中盤から簡単に『ブリザガ』が手に入る上に、『ブリザラ』は『中クラス魔法精製』によって初任務前から簡単に揃えられるため、『南極の風』に注目が集まることはまずない。
やり込んだプレイヤーにとっては、『サカナのヒレ』同様の換金アイテム。