アルティミシアが涙ながらに語った未来の世界は、壮絶なものだった。
「まずこの時代に発生したのは、『月の涙』とアデルの復活だ」
つまり、エスタ軍が海中に投棄した『月の涙』を意図的に発生させる装置、『ルナティックパンドラ』が引き上げられ、エスタの『ティアーズポイント』に到達。
エスタが壊滅し、月から地球へ移動する魔物の群れに『アデルセメタリー』が巻き込まれて、『ルナティックパンドラ』に直撃。
さらに『ルナサイドベース』が巻き込まれて地上へ落下、その破片が魔女封印施設を破壊してしまった。
対抗手段がほぼすべて失われてしまった中、復活した魔女アデルは、今までの憎しみから猛威を振るい始めた。
力を取り戻して『ルナティックパンドラ』を掌握すると、次々と別の大陸に『月の涙』を発生させ、地上を魔物で溢れさせていったのである。
それに対抗したのは、当時3つ健在だったガーデンだった。
それでも多大な犠牲を払い、5年かけてようやく魔女アデルを撃破することに成功したのだが、そこからが本当の地獄となる。
多くの都市が壊滅し、真相を知る英雄達が死んでいったため、『魔女をすべて倒せばこの地獄は終わる』というデマを信じて、執拗に魔女を狩り始めたのだ。
デマを流したのは魔女アデルとの戦いで大きく勢力を減じたシド・クレイマー学園長と対立していた一派だったらしい。
彼らは魔女アデルを倒したガーデンの英雄達、『伝説のSeed』を祀り上げながら、ガーデンの運営からは追放し、自分達に都合のいい偽情報を人々に植え付け、金儲けを企んだ。
世界に満ち溢れた魔物を掃討しつつ、デマを広めていった彼らは、情勢が落ち着いてきた頃に世界中で魔女狩りが始まったところに飛び付いた。
魔女に対抗できるのはSeedだけという情報も流し、魔女とそれを憎む人々を利用して、争いを生み出して金儲けを行う、いわゆる『死の商人』のようなことを始めたのだ。
そうして今から100年以上後、『ガーデン支配期』と呼ばれる時代の、最後に生まれたのがアルティミシアである。
彼女は魔女達から魔女の力を集め、1人で強大な魔力を制御して見せると、ガーデンを倒した。
しかし、その時にはすべてが遅かった。
当初あった金儲けという理念すら消えてなくなったガーデンは、自分達が流した魔女への憎しみに支配された、魔女狩りの装置となり果てていたからである。
ガーデンは倒れても、魔女への憎しみは消えることがなかった。
さらにその時には一般人への被害を顧みない過度な魔女狩りにより、世界の人口は激減していた。
望まずに世界を支配する魔女となったアルティミシアは、次第に人を遠ざけ、GFや魔物を傍に置くようになった。
苦しい思いをして強大な力を得て、世界の歪みの中心であるガーデンとSeedを倒し。
しかし、魔女を巡る環境は何も変わらなかった。
失意に打ちひしがれるアルティミシアは、しばらくして『ジャンクションマシーン・エルオーネ』の完成品と出会う。
「私の目的は、『始まりの魔女』、魔女アデルの存在を歴史から消すことだ」
アルティミシアは告げた。
規模は違えど、方向性はエルオーネのそれと同じ。
『過去を変えること』。
……!――。
テレサの精神世界では、アルティミシアが見せた未来の記憶を見て、テレサがはしゃいでいた。
魔女アデルの魔力によって凶悪に変形した『ルナティックパンドラ』に対抗するべく、3つのガーデンが合体していたからである。
それによって『ルナティックパンドラ』を覆っていたバリアを突破。
大迫力の要塞戦が繰り広げられていた。
浮遊していてもどう考えても合体できなさそうな構造に見えたのだが、そこはセントラの古代技術。
ガルバティアガーデンがダイナミックに展開し、バラムガーデンの鏡餅の下半分を包み込むと、その上から下側が展開したトラビアガーデンが半包囲状に蓋をすることで、まるで『ハマグリ』のような外観となっていた。
最早なんでもアリである。
――私の印象だが、これは魔女が作ったものかもしれん。
……?――。
――元々は魔女の拠点だったのだろう。
――それを決戦の時は合体させて、エネルギー出力を束ねてバリアを強固にする。
――そうでなければ、私の城のバリアが突破された時の出力を説明できん。
皮肉なものである。
邪悪な欲望に支配された魔女に対抗するための理念は魔女イデアのもので、ガーデンの建物、GFの利用法も、元々は魔女のものだったのだ。
――しかし、目的を遂げてみれば、実に情報不足だったのだと痛感するよ。
――私は感情的にガーデンを破壊しようとしたが、ラグナ大統領を生かしておくだけでよかったとはな。
……?――。
――ああ、魔女アデルがこの時点で倒れたのは、嬉しい誤算だった。
――魔女アデルを倒せる戦力を整えてくれたお前には礼を言う。
――これで未来にも少しは救いがあるだろう。
――レイにはマダはやいのである。
――わかっているとも。
――エクスデスとやらを倒せねば、結局のところ未来は消えてなくなる。
――この世界の未来を地獄としたのは、魔女アデルではなくエクスデスやもしれん。
――なれば、手など抜かん。全力でやらせてもらおう。
おそらく前代未聞、アルティミシアの協力が決定した。
そんな決意を見せる未来の魔女に、テレサは言う。
……――。
――なに?私を封じる方法?
……――。
――リノア?あの娘がどうした?
……――。
――!?
……――。
――!!!
なんと言われたのかは、秘密である。
ともかく、これ以降、アルティミシアはこの時代であまり余計なことはしなくなったという。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
この二次小説のアルティミシアは、原作のアルティミシアとは多分別人です。
いや、ね。
イデアのセリフで『邪悪な魔女』ってありますから。
まあ、結局私が整理し切れなかったってだけなんですが。
アルティミシアが倒される間際、色々と意味深なセリフを吐くんです。
そこから、どちらかというと大切な人を交通事故で亡くして、その悲しみと怒りを発散できなくなった結果、狂ってしまったケースなんじゃないかと。
そんな想像をしてみました。
――――設定
『月の涙』:
古来から何十年という周期で発生する、甚大な被害をもたらす現象として知られてきた。
地上と月の重力異常によって、地上に大量の魔物が降り注ぐ現象のこと。
フィールドではトラビアクレーターとセントラクレーターにてその被害の規模が確認できる。
また、月から降り注いだ魔物が地上の動物を狂わせることがある。
トラビアクレーターは地面が抉れて黒くなっている。
それと、ゲーム中にバラムガーデンで乗り越えようとすると、『計器が狂う』というニーダのセリフと共に押し戻される。
徒歩やチョコボでも越えることができない。
ラグナがどうやってトラビア渓谷へ辿り着いたのかは不明。
セントラクレーターは分かりにくいが、ワールドマップでクレーターの大半が海に沈んでいることが確認できる。
大陸の大半が抉れており、セントラ大陸にあった文明がどれほど大きかろうと壊滅したのは仕方がないと思わせる破壊痕となっている。
セントラが滅んだ『月の涙』発生時は、月から『大石柱』という巨大な質量体が降ってきたとされる。
クレーターの巨大さはそれが原因と考えられる。
(元々『月の涙』とは大量の魔物が降ってくるものなので、中枢機能の壊滅と無数の魔物は致命的)
『ルナティックパンドラ』:
エスタ軍が『月の涙』を引き起こす結晶物質である『大石柱』を掘り起こし、浮遊装置を取り付けて移動可能にし要塞化した代物。
大きさはバラムガーデンの10倍近くにもなり、周囲にはバリアが張られている。
17年前に建造され(おそらくアデルの命令)、その後ラグナが中心となって海中に投棄された。
エスタの『月の涙』:ゲーム中
ゲーム中、ガルバディア軍が海中から引っ張り上げた『ルナティックパンドラ』によって発生し、周辺のモンスターの出現率を大きく塗り替える。
トラビアやセントラと違い、クレーターはできていないが、多くの魔物がエスタ市街へ直接降り注いでおり、エスタの中枢機能は停止していないものの、市街は半壊状態となった。
また、電磁波に影響を及ぼすらしく、発生直後はエスタの移動手段であるリフターが暴走して壁などに衝突、停止しており、その後リフターは撤去されている。
ただ、大統領官邸に入るためのリフターだったりオダイン研究所内のリフターは稼働している。(ご都合主義?)