「ヘイホー!」「ヘイホー!」「ヘイホー!」
エスタ軍特殊技術実験部隊、通称『ヘイホー隊』の訓練風景を見て、アルティミシアは頭を抱えたくなった。
「そういえば、協力するということはこういうことだったな……」
「バラムガーデンで研究しているのとは少し違うのね……カサカサカサカサカサ」
「そら、GF前提なんと強化服前提なんはちゃうて。ユクゾッユクゾッユクゾッ」
いつもの鍛錬を、世間話を交えつつ行う変態達は、一体どこへ向かっているのだろうか。
「そーいや、キスティてどの辺までいけるん?」
「移動は苦手なんだけど、改造『バーサク』込みでなら『任意コード』ができるようになってるわ。アデルもそれで倒したのよ」
「おー、やるやん」
「ちなみに、直線の速度だけならゼルがトップ。
移動距離と回避能力ならサイファー、スコールは擬似魔法禁止のテレサに勝ったっていう実績があるわ」
「お、おぅ……」
「アーヴァインだけはガルバディアガーデンだったから、こっちの練習はしてなかったんだけど……」
「例のアレやな。ガルバディアガーデンの進路誘導した作戦」
「ええ、アレは私も驚いたわ」
「結局、この技術て、相手の位置分からへんかったら、どないしようもないんよな」
相手の居場所が分からなければ、どんな敵も倒せない。
当たり前のことだが、それはこの技術の大きな欠点となっていた。
アーヴァインは誘導作戦を立てることで、それを補ったのだ。
「今回のMVPはアービンやね」
「それがねえ。ちょっと作戦がうまくハマり過ぎたせいで、別方向の意味で私達と同類に見られるようになったのがショックだったみたい」
「そらまた、難儀やな」
「そういえば、テレサは最初の頃、ドゥエってたけど、アレって実はあんまり効率がいい移動方法じゃなかったんでしょ?」
「あー、多分クセやったんちゃうかな。
トラビアて雪とか岩場とか多いから、小刻みにジャンプした方が有利やねん」
「ああ、それで……」
普通の世間話だが、キスティスとセルフィの2人は超高速で移動しながらである。
今はセルフィがキスティスの移動速度に合わせているのだが。
「ついて行くのがやっととは……」
同じく練習していたアルティミシアは、呻いた。
「ホッホー!」「ヒアウィ!」「ヘイホー!」
ヘイホー隊の掛け声が訓練場に響く。
……?――。
テレサの精神世界でも、アルティミシアと打ち合わせが行われていた。
とはいえ、やることは限られているため、今はテレサがアルティミシアの記憶を確認している。
――アデルか。あの口調に関しては私も分からん。
――拗ねられても面倒だから、指摘はしなかったが。
……――。
――ああ、苦労していたとも。
――敵は絶望的なほど強そうだし、なのにデリングは突っ走るし。
――おかげで動かざるを得なくなり、アーヴァインとかいう小僧の作戦に引っ掛かってあのザマだ。
――アデルと共闘が成立しなければ、私は逃げ回りながら戦うつもりだった。
……――。
――そうだろう。
――まあ、結果論ではあるんだが。
アルティミシアは盛大に愚痴っていた。
「はーい、オッケーやでー。ちょい休憩しよかー」
オダイン研究所では、スコールとシュウがGF前提の新技術について、エスタの最新設備で検査していた。
「さすがテレサやなー。エスタの設備なしでここまで合わせれるんやから」
「テレサって、どういう子だったの?」
「努力が明後日の方向に飛んで行って、なんでか成功する子やったでー」
「……(わかる)」
スコールとシュウの印象では、このクレアという少女は、物腰柔らかで落ち着いた雰囲気があった。
セルフィやテレサの親友とは思えない、地味で縁の下の力持ちタイプ。
「スコール君、セルフィがおっぱいガン見しとった言うてたけど、バラムガーデンて、そない禁欲的なん?」
「スコール……その話詳しく」
「……(なんてこった……)」
油断していたスコールは頭を抱える羽目になる。
そしてその後、依頼者のリノアに(『趣味』の話で)迫られたり、ポケットにリノアが趣味で描いた絵(18禁)が忍び込まされていたりといった事件について聞き出され、めでたく『むっつりスケベ』の称号を与えられることになった。
「……濡れ衣だ……!」
とスコールが言ったかどうかは、なぜか誰も気にしなかったという。
数日後。
エスタ大陸の荒野、5日毎の『次元の魔物』戦である。
今回、黒い靄、『次元の穴』から出現したのは、美しい女性だった。
しかも、全裸に触手を巻き付けて大事なところを隠しているという、刺激的な恰好。
しかし、その魔力は以前の『カロフィステリ』と同等かそれ以上だった。
「はよ倒さんと、スコールの視線が釘付けやな」
「……(勘弁してくれ)」
「ほう、倒せるつもりでいるのか?」
触手美女は、魔力の波動を揺らめかせ、バリアを形成する。
「今までの者は、魔力ばかり高いだけで、『魔力を操る』ということに無関心だった。
その真髄を見せてあげましょう」
「魔女……!」
テレサ=アルティミシアは鋭く叫ぶ。
正確には違うのかもしれないが、強大な魔力を持ち、その扱いに熟練しているのならば、大して違いはない。
しかも、アルティミシアの印象では、アデルよりも遥かに強かった。
だが、マスクを着用しつつ対峙するセルフィに悲壮感は欠片もない。
なぜならば、セルフィは正しく、テレサよりも強かったからだ。
1つはセルフィとクレアが2年がかりで調整してきた、身体能力を強化するスーツ。
これは本来、筋力を補助するためのものだったのだが、オダイン研究所へ2人が持ち込んだ新技術を研究し、それ専用に再開発した結果、50倍以上の値段の高級品となっている。
デザインも、より肉体にフィットするような形となり、セルフィのボディラインを際立たせていた。
スコールはそのエスタ一般兵のスーツとのデザインの違いを気にしていたのであって、決してセルフィの若干控え目なボディにハァハァしていたわけではない。
その重要なポイントは、視界に映し出される魔力の分布と、特定の擬似魔法を使用することによる変化の予測、つまりセンサー系と演算性能の強化だ。
これによって、適性のあったエスタ兵が、セルフィやクレアを真似て新技術を習得しやすくなった。そうやって特殊な技術を身に着けたのが、エスタ軍特殊技術実験部隊、通称『ヘイホー隊』だった。
そしてもう1つは、テレサが最後まで解明できなかった、セルフィの意味不明な勘の良さである。
これによって、セルフィはテレサと同等かそれ以上まで、力を発揮できるようになっていた。
「“スカートに顔を突っ込んで尻を出す変態”『咲夜A砲』」
複数の擬似魔法が込められた無数のナイフが触手美女に突き刺さり、『赤魔法』の別種合成の法則に従い破裂していく。
それは当然のようにバリアをすり抜け、至近距離まで接近したセルフィから放たれ、何十という数に達しながらも、一向に尽きる気配がない。
「なかなかの密度だけれど……迂闊に近付き過ぎよ!」
触手美女は距離を取るのではなく、逆にセルフィを抱きしめた。
そしてセルフィに吸い込まれるように消えていく。
『そちらにも乗っ取る力を持つ者がいるのに、迂闊ではなくて?』
「ほんの一瞬でよかってんよ。あんたが勝ちを確信して気が緩む一瞬」
『――!?』
セルフィを乗っ取ったと思い込んでいた、触手美女が動揺する。
「なっ、あれは……!」
「ほんの一瞬、こないだ釣って冷凍保存しとった300kg級の『バッダムフィッシュ』を、冷凍庫から持ってくるだけの一瞬がな!」
「一……瞬……?」
アルティミシアが首を傾げた。
触手美女が乗り移っていたのは、冷凍マグロ……ではなく、冷凍巨大魚だったのである。
『ちっ……!』
「遅いで。仕掛けはもう済んどる」
『う、ヴぉぁぁぁっ!?』
冷凍バッダムフィッシュには、しっかり別種合成が行われていた。
しかも、『ペイン』と『サンダガ』と『トルネド』。
3種とも上級魔法である。
『魔法剣』の重ねがけに耐えられる物質は存在せず、瞬間的に破裂するのみ。
こうして、触手美女は実体化した瞬間に間近で発生した大爆発に巻き込まれて、即死した。
「テレサより強いというのは半信半疑だったけど、確かにそう名乗っていいだけの実力はあるわね……」
「そうだったのかもしれんが、なにかこう、コレジャナイ……」
ただし、バッダムフィッシュは加熱すると独特の強烈な悪臭を発する魚として有名である。
破片と共に周辺にその臭いが飛び散り、後で『ヘイホー隊』が焼却し、風で流すという、後始末をする羽目になった。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
今回はギャグパートです。
そしてこの世界では最強のセルフィの実力が披露されました。
――――設定
バラムフィッシュ:アルティマニア情報、類似種、考察
バラム近海で採れる、ターコイズ色の鱗を持った巨大魚。
世界三大珍味として知られる。
ただし、素人では見分けのつかない類似種『バッダムフィッシュ』がおり、そちらは加熱すると強烈な悪臭を放ち、しかも食べると中毒症状を引き起こす。
おそらく、バッダムフィッシュが毒を持った魚として先にあり、バラムフィッシュが毒を持った魚に似せて進化したと考えられる。
ゲーム中では、バラム解放イベント中、雷神が釣って調理し、食べる。
時間切れ(エリアの切り替え回数による)がある、脱出ゲームめいた推理イベントであり、SeedLvを下げたくないなら、ネットなどでクリアの手順をチェックするといい。
(SeedLvを上げたいだけなら、強いモンスターを倒し続けていれば、その内上がるため、そこまで気にすることもない)
ちなみに、雷神は食べてもなぜか中毒にならなかった。