8/20 まさかのミス発見。慈愛じゃなくていたわりだった。ネタ修正へ。
大作戦始動!
エクスデスは焦っていた。
まさか、下手をすると彼自身よりも強い『オメガ』が、一瞬で消されてしまうとは思いもしなかったのである。
そして、直後に視線を向けてきた貧相な体躯の黒髪少女に、悪寒が走った。
声は聞こえなかったが、その口は確かに言葉を発していた。
それを認識した瞬間、エクスデスは彼女を明確に、倒さなければならない敵と確信する。
「奴は、私を倒すために何者かが送り込んだ刺客なのだ。
おそらくは、奴を送り込んだ何者かこそが、この呪いの主……!」
以前までは小娘と侮っていた相手。
以前との違いは、多少魔力が増えて、奇妙な青い服を身に着けるようになっただけ。
魔力は素のエクスデスにも及ばず、青い服による筋力の増強も、クリスタルの戦士達に比べると大したことがない。
そこに『オメガ』を倒した、何者かに与えられた借り物の力を加えても、大した脅威にはならない。
精々が、『次元の挟間』の雑魚では厳しそうだという、その程度。
しかし、エクスデスが感じたのは、自身と同等かそれ以上の脅威だった。
「このまま、あの世界に攻め込むのは危険すぎる。
今まで、何度も繋げて緩んだ世界線を封印せねば……」
そう考えた時には、もう遅かった。
少女は確かにこう呟いていたのだ。
『『無』を取得』
と。
一方、テレサの精神世界にて、テレサの指導に従い、アルティミシアは『時間圧縮』の術式に手を加えていた。
いや、手を加えていた、というのは正しくない。
――あちらの世界の性質に合わせて、新しい術式を組み直すことになるとは。
これは、ラグナがFF5側の世界を救いたいと提案し、オダイン博士とクレアが研究の末に考案した方法である。
魔女アルティミシアの『時間圧縮』の術式を、あちらの世界で使用できるように組み直し、あちらの世界で敗北した『光の四戦士』を、彼らが敗北した時点まで遡って『時間圧縮』を行うことで、復活させようということだ。
――元々、エルオーネの接続だけで過去の改変を行うことは不可能。
当初、セルフィとクレアは、魔女アルティミシアの力を借りて、『次元の挟間』に近い空間に向かうことで、こちらからエクスデスのところに乗り込む予定だった。
しかし、ラグナがあちらの世界を救いたがったため、この作戦が立案されている。
――この世界で私は色々と行ったが、土台にはガルバディアの暴走がある。
――デリングが行うはずだった大虐殺を、私が頭と目的を挿げ替えた。
――『ルナティックパンドラ』の発見と引き上げ、『月の涙』の発生とラグナ大統領の死、魔女アデルの復活も、元はと言えばデリングが行うはずだった。
――それを代わりに行うという形でならば、過去の改変は可能だということだ。
アルティミシアは語る。
――しかし、死人を蘇らせることはできない。
――それが可能なのは『時間圧縮』のみ。
――でも、『時間圧縮』もそう都合よくはない。
――死者の全体数は変えられない。
――変えようとすると、大きな揺り戻しが発生する。
どうやら、彼女は彼女で、何度も試してきたらしい。
もっと未来の段階で『時間圧縮』を行っていたのだ。
――でも、逆に言えば、『未来』なら変えることができる。
――例えば、そのままでは滅亡してしまう、絶望しかない未来。
――例え一時期、人口が激減するとしても、人類同士に助け合う絆があれば、希望は生まれる。
――将来を考えて暮らすことができる。
魔女アルティミシアも、必死だったのである。
ただ遠い過去で暴れていたわけではない。
そこには確かに目的があったのだ。
……――。
――そうだな。今回は、神が手を加えた。
――それはつまり、今回に限っては、揺り戻しは起きないということなのだろう。
この世界にて、アルティミシアは過去の改変という思いを遂げた。
――おそらくあちらの世界でも、過去の改変には同様の揺り戻しに気をつけねばならん。
――エクスデスに勝てる自信があるとしても、必ずしもリスクなくことが運ぶわけではない。
……――。
――無用の心配だったか。
間もなく、準備は完了する。
「愛と希望と勇気と好奇心の大作戦、説明するぜ!」
ラグナ大統領が参加メンバーに告げる。
「まず、エルオーネがテレサちゃんとアルティミシアを5年以上前の過去に飛ばす。
テレサちゃんは辛いと思うけど、我慢してくれな」
「ういうい」
「ありがとう!
次にアルティミシアは飛ばされた過去で『時間圧縮』する。
最初はこの世界用だ。頼むぜ!」
「了解した」
テレサと主導権を入れ替えて、アルティミシアが頷いた。器用なものだ。
「よっし!
次に『時間圧縮』空間で合流。
これはみんなで同じ場所、同じメンバーを心の中で強く思い描けばいい。
相手を強く意識すれば、相手も意識してくれることで、『時間圧縮』の中でも存在できるぞ!
みんなの絆が試される!」
「私が慣れているから、もし危なければ拾おう」
アルティミシアの宣言にラグナは満足そうに頷く。
「次にテレサちゃんが、あっちの世界の『次元の挟間』に向けて穴を開ける。
これも頼むな」
「ういうい」
「さっすが!
あとは、あっちに乗り込んでエビゾリックスを倒す!」
「エクスデスだ、ラグナ君。
いい加減、エとスしか合っていない間違いを止めないか、というウォードの視線を感じないか」
キロスに指摘されて、ラグナはばつが悪そうに後ろ頭を掻く。
「そのエクスデスを倒してからが本番だ!
協力してくれそうな人を見つけて、エルオーネがアルティミシアを過去に飛ばす。
その先、あっちの世界の『光の四戦士』が生きてる時代を含めて、また『時間圧縮』。
今度はあっちの世界用だ。頼むぜ、アルティミシア!」
「了解した」
「よーし。
後は『光の四戦士』が生きた状態で、過去のエクスデスをもっかい倒すだけ!
ちっと複雑になっちまったかな」
「大丈夫、私が覚えています」
「さっすが優等生!」
手を挙げたキスティスを、親指を立てて褒めるラグナ。
今回、作戦に参加するのは、テレサ=アルティミシアを筆頭に、セルフィ、クレア、キスティス、エルオーネ、スコール、それにサイファーとイデアである。
イデアが入っているのは、もしも『光の四戦士』に心の力が足りなかった場合、役割を代替しなければならないからだ。
スコールはエルオーネの、サイファーはイデアの護衛である。
『光の四戦士』を代替する際の分担は、サイファーが探究、イデアが慈愛、スコールが勇気、エルオーネが希望となる。
主人公まさかのハブられだが、もっと重要な役割を持っているため、負担が大きくなり過ぎないように、この役割からはあえて外されていた。
テレサ以外に、世界を渡る術式を扱える者がいないのである。
こうして、いよいよ最後の戦い、エクスデスとの決戦が始まる。
ちなみに、慈愛ではなく『いたわり』なのだが、ラグナが間違えたのではなく、テレサがタブレットに書き込む際に間違えている。
FF5の細かい話をすべて覚えているわけではないということだ。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
物語もいよいよクライマックスとなってまいりました。
エクスデスは一体どうやってテレサを相手に戦うのか。
次回、『エクスデス散る!』デュエルスタンバイ!
――――設定
ラグナ・レウァール:アルティマニア情報
元ガルバディア兵で、FF8の物語の最重要人物。
相当なうっかり者で、作戦行動中もしょっちゅう道に迷ったり、地図を間違えたりする。(間違えた地図で正解の場所に辿り着く、奇跡の方向音痴)
お世辞にも軍人向けの人間ではなく、本人もジャーナリストを志望している。
お気楽でお調子者で、諦めるということを知らない、ポジティブな性格。
絶望の中にあっても、相手が強大な存在でも、ラグナだけは自分を曲げないという安心感があり、どんな状況でもラグナの手にかかればドタバタの喜劇になる。
その行動力、独特な思考回路から、数々の奇跡を引き起こしてきた。
ただし、割とヘタレ。
面倒見がよく、子供時代のエルオーネにとても懐かれていたようで、エルオーネには大人になってからも『大好きなラグナおじさん』と呼んでいる。
また、シュミ族の村では獣同然なムンバに言葉を教えようとするなど、その思考回路は独特。その行動は結果的に息子の助けとなった。
エルオーネが連れ去られた時は、本当に世界中を旅して回っていたようで、その時の模様が雑誌『ティンバーマニアックス』に投稿されており、失敗談も数々掲載されている。
最終的にアデルの封印作戦にて、最も危険な役回りをこなし、成功させるなどの功績により、エスタ大統領に祀り上げられ、レインを迎えに行くことができなくなってしまったという悲劇もある。
しかし、意外にも大統領としては上手くやっている模様。
FF8二次創作では、よく『おとなのみりき』がネタにされており、モンスターとも仲良くなってしまうなど、拡大解釈もされている。
他にネタとして有名なのは特殊技リミットの『デスペラード』。
引っかけたりするもののない草原でも、ワイヤーでぶら下がりながら射撃する。
小ネタとして、世界各地で女性関係にだらしなく、リノアも実はラグナの子供かもしれないなどという説を採用したギャグ短編もあった。
この小説では、『おとなのみりき』を少し拡大し、アルティミシアを味方に引き込んでいる。