「雪原の戦い方、知りたいねん」
テレサは士官コースの中年女性教員に尋ねる。
「そうやね。トラビアやと、割と足を止めて撃つか殴るってことが多いな。
やから、擬似魔法を連射するか、もしくはリーチの長い武器で殴るのが得意なんが多いんよ」
「雪に足取られるから?」
「そういうことやね。武器の中でも、長柄ものとか、鎖ものとか、飛び道具とか、色々あるから、自分の好きなもんから使っていくとええよ」
「雪の上を素早く動くて、できへんのん?」
「スキーとかスノボとかやったらあるけど」
「うー……」
少女は唸った。
どうも上手くいかない。
「自分で開発するしかないんかなー」
「雪だけやないからな。雪に特化したら、今度は氷の上で動かれへんねんよ」
「あー、そゆことかー」
つまり、場所によって条件がコロコロ変わるのだ。
土の上、雪の上、氷の上、3つの地形に対応できなければ、トラビアの大地ではまともに活動できないのである。
「歩き方1つでどないかはできへんゆうことやね」
「まあ、トラビアはなぁ」
テレサは大人しく引き下がった。
結局、自力で移動法を開発するしかない、ということだ。
テレサが肉体鍛錬のために始めたのは、バスケだった。
走ることと、手を動かすこと、周囲を見回すことを同時に行う必要のある球技は、彼女の目的とも合致していたのだ。
「手塚ゾーン!」
「ただしボールは顔面に吸い寄せられるパス!」
「あべしっ!?」
まあ、大体セルフィの顔面パスの前に沈むのだが。
「なんでやー。避けたはずやのにー……」
「しっかりしいテレサ!」
「傷は深いでポックリしい!」
「もうゴールしてがくぅ」
「テレサぁぁぁぁっ!?」
色々混ざりすぎて意味が分からなくなった茶番を繰り広げつつ、なんだかんだで鍛錬は続く。
さらに1ヶ月後。擬似魔法練習場。
「ひぁっ」
テレサは思わず声を挙げた。
小石が破裂するタイミングが予想より早く、蹴った直後に破裂したのだ。
「テレサ!?」
「大丈夫!?」
ルームメイト2人が駆け寄ってくる。
小石の破片は、華奢な黒髪少女の肌に無数の傷を付けていた。
確認すると、元々の擬似魔法が不完全で威力が低かったためか、着ていた半袖シャツ短パンは破れておらず、剥き出しの足と顔を庇った腕に細かい傷がついている程度。
「たぶん、大丈夫。ヤバいのはないんちゃうかな」
「それでもとりあえず保健室や。傷が残ったらアカン」
付き添いの教員が擬似魔法で回復しつつ声をかけ、テレサは友人と共に保健室に向かう。
「こんな小さい子に、一体何やらせとったん?」
手早く治療(BAN装甲)した保険医の老女が、付き添いの教員に尋ねる。
「小石に『赤魔法』使うて破裂させよったんや」
「『赤魔法』?違う種類の擬似魔法の合成やったら、こんなもんで済まへんやろ?」
「教員会議で報告した、『魔法剣』の合わせ技やで。
擬似魔法も下級で不完全やったし、そのおかげでホンマの『赤魔法』の失敗より軽かったんやろな」
「『シェル』使うたらんかったんか?」
「破裂するんは小石やから、『プロテス』使うとったんや」
「読み違うたんか」
「せや。また済まんことしてもうたなぁ」
教員は絆創膏だらけのテレサの頭を撫でる。
「とりあえず服の上からは傷入ってへんみたいやから、今度から肌隠してやりや」
「うい」
意外に温かい声に、今度からは気をつけよう、と誓ったとか誓わなかったとか。
「なんでいつもと違うタイミングで破裂してんやろ?」
部屋に戻ってから、テレサは疑問を口にする。
「どんな組み合わせやったん?」
「『レビテト』と『ファイア』」
「なんでやろ。魔力多い組み合わせやないんよね?」
「それは気ぃ付けてた。わざと詠唱変更して、威力調整してたし」
それはテレサにも分からなかった。
そもそも、そういった当初の想定に用いた理論と違うことが発生する可能性を潰すために、実験を行っていたのである。
想定外が発生したならば、原因を徹底的に追及し、理論を修正する必要があった。
「『ファイア』のグループで今までヘンなことなかったんよなぁ?」
「『レビテト』て、確かこないだ新しく教わったやつやろ?」
「うん、まだちょっとしか継続せえへんけど」
「威力あるやつやないて思うてたけど、もしかしたらなんかあるんかな?」
「また実験してみよか」
「今度は厚着でな」
「うーい」
こうして、3馬鹿娘は研究を進めていく。
テレサにとって幸いだったのが、ルームメイト2人が転生者である彼女の思考に、7歳でついてくることができるという点だった。
セルフィは突飛な発想力を持ち前の行動力で実現してしまう、感覚型の天才児。
クレアは堅実な発想でセルフィのブレーキとなりつつ、必要なところでは背中を押す、縁の下の力持ち。
テレサはその間を埋める、研究者肌の無理難題の提供者。
2人にとってテレサは退屈凌ぎの遊び相手だったが、無理なくついてきて、アイデア等の支援をくれる2人に、テレサは心底感謝していた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
しばらく変態の片鱗を見せるだけのゆっくり進行でしたが、そろそろ時間を飛ばしてもいいかもしれません。
ついに7月に入りました。
蒸し暑い日々が続きますね。
あまり冷たい水をガブ飲みしていると、夏バテで後で大変なことになると聞きます。
そこそこ常温で、適度に塩分やレモン果汁の入った水がいいそうで、熱中症にも気を付けていきたいところです。
読者の皆様もどうかお体に気を付けて、日本の夏に立ち向かってください。
――――設定
『プロテス』『シェル』:擬似魔法、防御魔法、軽減魔法?
この平行世界においては、衝撃分散系のバリアとして使用される。
例えば拳銃弾の場合は拳で殴る程度の衝撃として一定範囲に分散する。
ダメージが軽減される他、衝撃で姿勢が崩れにくくなるなどの利点があるが、引き換えにバリアの光で位置がバレバレになるなどのデメリットもあり、使用するかしないかはケースバイケースで判断される。
擬似魔法としては中級に分類され、一般の軍隊でこれが使える兵士は少ない。
トラビアでは戦闘となると足を止めるため、生徒全員が『プロテス』と『シェル』を教えられ、これらのバリアを中心としリーチを生かした戦術を叩き込まれる。
ゲームでは『プロテス』が物理半減、『シェル』が魔法半減。
どちらもFF8では割合ダメージ、防御無視にも反応する。
ただし、固定ダメージには反応しない。
ストーリー上では、Seed実地試験の夜に発生するボス戦で初めて『プロテス』を入手することになる。
『プロテスストーン』という形でならば、実地試験後、バラムガーデンへ帰還する前の段階で入手可能。
ただ、そこまでして欲しいものではない。
ディスク1の間なら、ジャンクション用擬似魔法としてそれなりに有用なため、合計300ほどドローして揃えるのはアリ。
『マイティガード』や『ウォール』で代用可能なこともあり、敵からの『ドロー、つかう』以外で戦闘中使用することは滅多にない。
しかし、『オートプロテス』は最終アビリティの候補に挙がるほど重要。
『オートシェル』は回復魔法を半減してしまうため、敬遠されやすい。