やることがなくなって、テレサはボーッとしていた。
ガイアが言うには、テレサは『睡眠相』という、特殊な魂であるらしい。
そうでなければ、魂の状態でずっと眠り続けるなどありえないという。
その性質は、何かがあれば文字通り神にも手が届くことをやってのけるが、何もなければずっと眠っているというもの。
前世は何かがあったため、テレサ自身も気がつかなかった。
とにかく眠かったことを覚えている。
家族を食べさせるために、どんな無茶な仕事も上げて見せた。
ブラックな気質を持った上司は、それがどれほどの負担になっているかも考えずに、同じような無茶をたびたび要求。
社員達が休暇を要求すると、次々クビにしていった。
テレサは契約を盾に脅されていたため、どれほど負担を押し付けられても逃げることができず。
結局、仕事中に倒れて、そのまま死亡。
あの後、その会社は仕事の効率が激減し、わずか2ヶ月で20億の借金を背負って倒産。
テレサの家族は辞めていった社員の1人がなんとか救済しようとして、断念。
というのも、テレサの家族というのが、娘が稼いだ莫大なお金をあっという間に使い切ってしまう、どうしようもない放蕩家族だったからである。
結局、莫大な借金を娘に背負わせたその家族は周囲のあらゆる人々から見捨てられて破産し、ホームレスとなって盗みを繰り返し、牢獄と冷たい路上を行き来する惨めな生活を死ぬまで強いられた。
トラビアガーデンのリングの上、空を流れる雲やたまに飛ぶ鳥を眺めながら、ガイアに言われたことを思い出す。
テレサは、神の力に手が届いた。
『神の力っていうのは、世界の記憶を書き換えるってことよ。
他のどんな力をも上書きしてしまえるわ。
不老不死も、無いはずのものを生み出すのも、他人を生き返らせるのも、自由自在。
世界の記憶を書き換えることができるんなら、『物語の外側』で自分を維持できる。
他の世界に行くことだってできる。
未来を変えることも、過去を変えることも、好きにできるの』
やろうと思えば、できる。
『物語の外側』に自力で到達してみて、理解できた。
『その力は、一つの世界に留まり続けるには、大き過ぎる』
その気になって鍛錬を積めば、なんでもできてしまう。
神の所業として思いつくことは、およそすべてやってのけてしまえるのだ。
もちろん、未来を計算し切ることだってできる。
それは、テレサの認識の中の大切な人との会話を、歴史の1ページという記録にしてしまうことでもあった。
だから、ガイアはテレサにこの世界だけなら好きにするようにと言った。
もしも手に負えなくなってしまったら、『リセット』のやり方を教えるから、と。
それはつまり、世界が滅茶苦茶になり、滅ぶようなことになってしまったなら、その時はテレサ自身が手を下せ、ということである。
あるいはもう1つ、何も手を下さずに力をすべて封印し、つまり人間として生涯を終えるか。
だから、とりあえず、テレサは寝ることにした。
ガブリエルがテレサの魂に仕込んだ『パラメータアップ』は、テレサの魂を無理矢理起こしており、おかげでテレサは暇潰しも兼ねて、極限の効率でエクスデスを倒すための準備を行い、それが過ぎて神の力に手を届かせたのである。
つまり、そもそも転生特典は『パラメータアップ』以外は必要なかったのだ。
その影響を脱することに成功した彼女は、前世の分も合わせて、ようやくありつけた睡眠時間を存分に使い、惰眠を貪ることにしたのだ。
どうせこの世界には、少なくとも数百年は文明が滅ぶような大災害はない。
それから4000年。
テレサはふと目覚める。
「ん、ふぁ……」
寝過ぎた気がしないでもない。
親友達の要望で、死者の魂をGFにしたり、魔女の継承を引き受けたり、親友をGFにして取り込んだりしている内に、なんだか死に時を失って4000年もゴロゴロしていたのである。
「アレー?ここセントラやっけー?」
と言うほど、周囲が様変わりしていた。
そもそも、テレサのことが記憶にある人々がいなくなってから、精神世界以外で人と話した記憶がない。
数百体のGFをジャンクションし、すっかり賑やかになった精神世界が楽し過ぎたせいもあるだろう。
軽く世界中を見て回ってみる。
「なんでどこにもニンゲンおれへんねん?」
首を傾げる。
『月の涙』も克服し、全体的に技術が発展し、数千年程度で文明が滅ぶような要素は欠片もなくなったはずなのだが。
テレサが眠っていた元の場所に戻ってみると、なんだか人っぽい魔物っぽい何かが慌てた様子で何やら話し合っていた。
赤い体毛を持っている2足歩行の獣、と言った感じ。
以下、解読文である。
「
「なんてことだ!これでは世界は
「hshsできなくなる!」
「knknできなくなる!」
「この世の終わりだー!」
割と解読ミスしていた気がしなくもないが、どうやら御神体のようなものが消えてしまったので騒いでいるようだ。
どうせやることもなく暇だし、ということで、テレサは声をかけてみることにした。
「やっほ、どないしてん?」
そして、迂闊に声をかけたことを、未来永劫悔やむことになる。
「おお、大いなるハインよ!お目覚めになられたのですね!」
「」
人間の代わりに地上を支配し始めていた種族達に平伏された。
どうやら、御神体というのは、ずっと眠っていたテレサ自身のことだったらしい。
この後、滅茶苦茶崇拝された。
hshsされてknknされた。
prprされそうになって逃げた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
はい、完結です。
割と思い付きでこういうエンディングにしました。
一時は前話で終わらせようと考えていたんですが、それではあんまりに汚いといいますか。
なので、こんな形である程度整えてみました。
これで連載としては終了です。
またエピソードを追加する可能性はありますが、それは気が向いた時に、ということで。
いやー、連載って、大変ですね。
同時に物凄く楽しくもあります。
やっぱり書きながら読者の感想が見えると、モチベーションにグッときます。
それだけに、体調との兼ね合いといいますか、脳味噌の回転の見極めが大変でした。
要するに、モチベーションが上がり過ぎて、止め時を見失うんですよ。
そのせいで翌日に響いて、『今日の内に上げてしまおう』とか考えて、誤投稿をやらかしたんだと思います。
後で見てみると、誤字を含めてミスの箇所が集中してるんですね。
なので、そういうことなんだろうと。
今後、連載する時があれば、またその辺は調整していきたいです。
実はタイトルとかタグとかサブタイトルとか、活動報告の方で募集していたんですが、そちらは8月22日現在、PVが87と悲しいことになっています。
書き込みは堂々のゼロ。
一応、感想の方でタグのご提案がありましたが、それだけでした。
8月28日まで書き込みがなければ、『多分これが一番…(仮題)』のまま、完走ということになります。
その時は(仮題)を外しますかね。
それでは、またいつの日か。
丸2ヶ月、お疲れ様でした。
――――設定
ハイン:アルティマニア情報
FF8創世神話の神のような存在。
ゲーム中では魔女は『大いなるハインの末裔』という尊称で呼ばれる他、バラムの民家でハインに関する伝承を聞くことができる。
アルティマニアの巻末に『ある日のガーデンの授業風景』という小説のようなものがあり、魔女の授業の中にハイン関連の話が出てくる。
主に『偉大なるバスカリューン記』に出てくる記述。
ハインは地形を改造する道具として人間を作り出し、眠っている間に仕事をしていた人間が増えすぎたため、ハインが人間の子供を間引いたことで人間と対立、長い戦いの末に人間達がハインに勝利した。
ハインは魔法の力を手に入れる者を人間同士の争いで決めさせ、その争いの間に『力のハイン』を残して『魔法のハイン』を逃がした。
『魔法のハイン』は今も見つかっていない。
ということが語られている。
ただ、バスカリューンの子孫が書いたとする『偉大なるバスカリューン記』の内容は怪しく、すべて本当だとするとバスカリューンは980年も生きたことになるらしい。
次に500年前の歴史家テムの歴史書がある。
彼は『魔法のハイン』の正体を当時から存在が判明していた、魔法の力を持った女性だと断定し、歴史上初めて『魔女』と名付けた人物として有名。
ただし、テムは伝説や言い伝えと事実をごちゃまぜにして扱っているため、歴史学者というよりも物語作家とされているらしい。
つまり、こちらも根拠が怪しい。