データをより効率よく集めるため、3馬鹿娘は実験の模様をビデオカメラに撮影するようになる。
転生特典の『タブレット』を使えば、簡単にそれは叶った。
さらなる効率化を求め、木の板を盾に、その両側から手袋に包まれた手を伸ばして実験を行うようになる。
破裂までのタイミングが予想より早まったとしても、最低限の防護はできるように、という配慮だ。
結果の確認は、離れた場所から『タブレット』で動画撮影すればいい。
「『レビテト』て、もしかして中級魔法なんかな?
それはそれでエエデータになるんやけど」
「一応、下級に分類されてるで。ただまあ、そんな何回も使う擬似魔法やないし、オダイン博士の実験しかデータがないんも事実や」
付き添いの教員が教えてくれる。
最近は、積極的に実験に必要な情報を教えてくれるようになっていた。
というのも、テレサが考えた新型の『赤魔法』が実戦でそれなりに有用なことが、つい先日証明されたからである。
彼女はあくまで実験のために考えた方法だったのだが、それを実戦に利用しようという動きが、トラビアガーデンでは出てきているらしい。
ただ、幾つか問題も発見されており、まだ軍の研究施設で実験が行われている最中である。
だから、また何か有用な発見があるのではないかと、興味津々なのだ。
「研究施設の方で中級魔法の新型合成の実験データあるはずやから、もらって来よか?」
「うーん、どないしよ?」
「もらった方がエエんちゃう?」
「じゃあ、それで」
「エラい軽いなぁ。まあ了解や」
テレサの目的はあくまで強化エクスデスを倒すことであって、この世界の歴史に名を残すことではない。
その点、彼女は自分の手元に派生研究の手柄が残らなくても構わない、と割り切っていた。
数日後、データが届くと、どうやら『レビテト』が実は中級魔法に分類されるらしいことが判明した。
物体を一定時間浮遊させるために使用されるエネルギーが、下級魔法では賄えないレベルに達していたのである。
つまり、破裂までの時間が予想外に早まったのは、元々下級魔法として計算していた魔力量の数値が、実際はそれより数倍は大きい中級魔法だったからなのだ。
逆に言えば、破裂までの時間は組み合わせる擬似魔法の魔力量によって決定するという仮説が浮き上がってくる。
「ちょいメンドい条件やけど、判明してよかったわ」
「中級同士をそのまんまでやってたら、もっと怪我してたかもしれへんなぁ」
「『魔石』に『魔法剣』とかやったら、どんな威力になるんやろな」
「盾使うても、手ぇとか吹っ飛ぶんちゃう?」
「あ、そっか、じゃあアカンな」
過激なことを言っていても、親友が怪我をするかもしれないとなると、素直に言葉を引っ込めるセルフィ。
「じゃあ、『レビテト』は後回しにする?」
「セヤナー。中級魔法用の調整もせないかんし」
「擬似魔法の改造なんか、士官コースに教える内容やで?」
「教えてぇな、せんせー」
「しゃあないなぁ」
この男性教員(34)がロリコンなのではなく、生徒の自主性と自立性を重んじるトラビアガーデン特有の文化に従ったまでである。
決して彼がロリコンなわけではない。
とはいえ、威力を向上させるならばともかく、わざと威力を落とす改造というのは、教員も慣れてはいなかった。
特に中級魔法を下級と同等に落とすとなると、発動するかしないかギリギリのところにまで迫る必要があるのだ。
その辺の技術は、さすがに今の彼にはなかった。
ゆえに、トラビア軍の研究施設に教えてもらうことになる。
大人である彼に、そこについての躊躇いはなかった。
子供の育成が第一であり、いいところを見せたいという自分のエゴを満たすのは二の次だと決めていたからだ。
数日後、割と簡単にデータが届いた。
「おー、さすが軍の研究施設やな」
「データめっちゃ細かいやん。魔力の強弱まで書いてあるで」
「うれしい誤算やね。でも、こーゆーのって機密とかいうのとちゃうのん?」
「トラビア軍の機密は隠れ家の座標だけや。他は隠さなあかんこともないねん」
いつもの教員はそんなことを話す。
「トラビア軍の侵攻力は」
「世界一ィィィィィッ!!」
「ただし強いとは言っていない」
「やがますっ」
そんなバカなやり取りの後、データの精査を始めた。
「フツー、こーゆーのって、センセの方である程度まとめてるんちゃうのん?」
「あっちもデータ収集中のを無理言ってもらってきてん。
それに、お前らにデータのまとめ方とか教えるエエ機会やしな」
「センセやねんなー」
「センセしとるなー」
「ぷぷ」
「なんで笑うねん!普通にエエ話やったやろ!」
オチを付けるのもトラビア特有の文化である。
精査した結果、研究施設では実験されていない組み合わせがあった。
「中級同士の全開以上はまだなんやね」
「そら、中級と下級でこないだのアレやってんし」
「まあ、これからデータも揃ってくるんちゃう?」
「……『レビテト』と、『デスペル』と、『ライブラ』……」
テレサはデータリストに名前のない擬似魔法を挙げていく。
「どれも組み合わせても意味ない種類の擬似魔法やな」
「なして?」
「浮かせたいんやったらそのまんま『レビテト』使えばエエねん。
『デスペル』は魔法を打ち消すさかい、逆に威力が減る。
『ライブラ』も情報欲しいんやったら組み合わせんとそのまま使えばエエしな」
「コレ、やってみよか」
「え、使えるようにならんと思うで?」
「エエねん。ウチらの目的は使える『赤魔法』の合成やないから」
まだ、教員は彼女らがやろうとしていることを理解していなかった。
また、彼女らも今説明して理解してもらえるとは考えておらず、説明していなかった。
「でも、今までの分類が信用できへんっちゅうことは、この中に上級魔法が混じっとるかも分からへんっちゅうことなんかな?」
「そらヤバいな」
「やったら、『ケアル』と組にするんはどない?」
「エエな、ソレでいこ」
どのような組み合わせでどのような結果になるのか、というデータが、彼女らの手によって蓄積されていく。
この実験は中級魔法までを総当たり完了するまで、約1年続いた。
――――あとがき
こんばんは、毎度お馴染みのひろっさんです。
ここから1年ほど時間が飛びます。
新型の『赤魔法』もそれなりに役に立ちますが、連続で別々の魔法を使っているのと大して変わりません。
そして、まだFF8の目玉であるGFジャンクションは影も出てきていません。
この間テレビで見たんですが、エアコンのフィルターは定期的に掃除しないと、カビが生えて部屋中にカビを撒き散らすようになるとかなんとか。
というわけで今日、7月2日、エアコンのフィルターを掃除しようと思います。
もっと早くに知りたかった……。
――――設定
『レビテト』:擬似魔法、分類不明
反重力を発生させて、物体を浮遊させる擬似魔法。
浮遊させると言っても地面に接触しないようにするだけで、一定時間経つと解ける。
ある理由から中級魔法に設定。
浮遊した物体は引っかかりがないと移動できなくなるというわけではなく、バルーンハウスを移動するような感じになる。
ゲーム中では、『マイティガード』のオマケか、『ブラザーズ』と戦う際のギミックとして活用される。
はっきり言ってそれ以外に出番がない。
『ケルベロス』との戦闘時、『クェイク』連打に対して効果があるため、覚えておくといいという程度か。
それも属性防御ジャンクションで無効化してしまえば済む話。
また、ゲーム中では攻撃の際は普通に地面に接地して移動し、しかし『ブラザーズ』のように地面からのエネルギーの吸収を阻害することが可能。
その辻褄を合せようとした結果、バルーンハウスのくだりとなった。
トラビア軍の実力:考察、独自設定
原作のトラビア軍がどれくらい強いのかは、トラビアガーデンの存在と雪国であること人口から推定するしかなく、実際にどのくらいなのかという原作設定はない。
大抵、軍事力というのは脅威度が最大の関心事であり、他国にとっての脅威度で判定される。
過酷な地域にあるトラビア共和国は他国に攻め込むだけの余力がなく、トラビア軍がどれだけの防衛能力を保有していようと、脅威度は限りなくゼロに等しい。
そのため、それなりに国力が高いバラムやドールの方が、脅威度が高いと判定されることが多い。
また、トラビア軍は、常備軍の数が他国に比べて圧倒的に少なく、そもそもの人口が2万人程度しかいないため、総合力ではやはり弱いと考えられる。
ただ、トラビア大陸という魔物が跋扈する雪国という特殊な地域、局地戦に特化した戦術が練り上げられてきていると考えられ、普通に攻め込んだ場合、雪国を想定していない軍隊では非常に大きな痛手を被ると思われる。