あの出来事から5年の月日は経ち、俺は大学を卒業して実家『ヘアサロン石田』を手伝って仕事をしていた。
昼になるくらいの時間にお客様…いや違う、結弦がやってきた
「よう石田、遊びにきたぜ」
「遊びに来るなら帰れよ、仕事中だ」
相変わらず結弦は生意気な言葉遣いをするがこれでも大学2年生の所謂JDってやつだ。
「つれないこと言うなよ〜。そうだ!俺の髪を切ってくれ!」
「よっぽど暇なんだな、友達いないのかよ」
「石田が友達だぜ☆」
「へいへい。そりゃどーも」
他愛もない会話をしている最中に誰かのお腹が鳴った。
「えへへへ。お腹なっちった」
「あら結弦くん来てたの〜?ちょうどご飯にしようとしてたから一緒食べる?」
「マジすか!?いっただっきまーす!」
「じゃあはりきっちゃうぞ〜。ちょっと待っててね〜」
「はーーい」
お袋が奥から顔を覗かせて結弦を歓迎した。お袋は結弦のことを家族同然として扱っていて、八重子さんとはしょっちゅう呑みに出掛けている。
八重子さんもすっかり石田家と打ち解けていた。昔はかなり怖くて会ったらビンタされるとか思ってたっけか…今はめちゃくちゃ優しい美人なお母さんって感じだけど。
そういえばいつぐらいから優しくしてくれるようになっただろうか…西宮がマンションから飛び降りた位の時期からかな。今も西宮は入院していてまだ目を覚まさない。
そんなことを考えてると横から結弦が顔を出してきた。
「まーた姉ちゃんのこと考えてるだろ、あれは石田のせいじゃないからそんなに気負うなよ。どっちかってと俺らのせいだ」
結弦はそう言ってはくれるがやはり、止められなかったのが俺の心を縛り付けている。
「石田、お昼食べたら姉ちゃんの顔でも見に行くか?ここで働いてから見に来たことなかっただろ?」
「どうだろ、お袋に聞いてみないと。勝手に抜ける訳にもいかねぇし…」
「ご飯できたわよ〜ってあれ?なにそんな暗い顔してるの?」
ちょうど昼飯を作ってきてくれたお袋が顔を覗かせた
「お母さん、ご飯食べたら石田連れてってもいいですか?姉ちゃんに久しぶりに会わせたいんです」
「ん〜まあいいわよ。すこしは仕事のことも忘れて可愛い彼女のところに行きなさい」
少し考えてお袋は快諾してくれた。ってか彼女じゃねぇけどな?…いや…でも…彼女になって欲しいってのはあるけど…って何考えてるんだ俺。
「ありがとう」
「どういたしまして。てかご飯冷めちゃうでしょ〜はやくいらっしゃい」
「すぐ行きます〜」
そう言って結弦とお袋はリビングに消えていった。さて、俺も飯にするか。
リビングに行くとオムライスが並んでいた。ははっ。結弦なんてすぐに食べたそうな顔してる。
お袋がはやくはやくっと手招きして急かしてくる。俺は結弦の横の椅子に座り、手を合わせて
「「「いただきまーす」」」
と3人の声が同調した。
さて、さっさと食べてしまって、西宮に会いに行こう。