雷牙「どうも、雷獣の雷牙だ」
政実「という事で、今回は雷牙のAFTER STORYです」
雷牙「サブタイトルと私の登場回の最後の文を見る限り、今回の話は私の中に生まれた力に関する事のようだな」
政実「まあ、そういう事になるけど、どんな話になったのかは読んでもらってからのお楽しみという事で」
雷牙「わかった。では、そろそろ始めていくとしよう」
政実「うん」
政実・雷牙「それでは、SIXTH AFTER STORYをどうぞ」
突然だが、私にはある悩みがある。これは私にとってはかなり重要な悩みであり、解決できるなら早々に解決したい悩みだと言える。だというのに、中々解決できなく、私は日々頭を悩ませる事になっている。そして、その悩みというのが──。
「……こころ、アン、今私の中の雷の力を使うつもりは無い。よって、用心する必要は無いぞ?」
「え、あ……はい……」
「それは……わかっているんですけど……」
「……やはり、まだ無理か?」
「「はい……」」
「……そうか」
ソファーの上に座っている私を少し怯えた表情を浮かべながらリビングの入り口から見ている
そう、私の悩みというのは、この二人が私の中に生まれた『力』を恐れて、他の皆のように気軽に近づいてくれないという事だ。もちろん、雷が苦手だという二人に無理強いをするつもりは無い。しかし、共に暮らす仲間として、やはり気軽に話が出来たり、様々な物を分かち合えたりする方が生活をしていて楽しいのは間違いないだろう。だが現在、この問題をすぐに解決できる方法は無い。
となれば、やはり修行によって力を制御するしか無い。そうすれば、こころとアンも安心して私に近付けるようになるからな。
「……よし、ならば行くとするか」
そう独り言ち、私はソファーから降りた後、ゆっくりとリビングを出ていった。その際、こころとアンからは申し訳なさそうな様子で避けられたが、それは仕方ないと考え、私はあるモノの元へと向かいながら、ここに来る事になった理由を想起した。
私は元々、同じ雷獣達が住む里で一族の皆と共に仲良く過ごしていた。しかしある日の事、私は里の外には何があるのだろうと思い、里の皆に別れを告げて各地を巡る旅を始めた。
そして、旅を続ける中で妖気と様々な力が入り混じった『力』の気配を感じ、私はそれに興味を持ってこの町を訪れ、『力』の主を探した。そうして探す事数時間、ようやく巡り合えたのが『絆の書』の主であり神の甥でもある転生者、
そして、柚希達と話をし、人間と人ならざるモノ達が仲良く暮らす柚希たちの姿を見て、そんな柚希たちの事をもう少し踏み込んで見てみたいと感じ、私は『絆の書』の仲間になる事を志願し、柚希が私を仲間だと認めてくれた事で、私は柚希達の仲間入りを果たし、こうして今は遠野家に世話になっているのだった。
……遠野家に世話になり始めてから今日でおよそ2週間が経つが、柚希と天斗殿、そして『絆の書』の面々の絆には驚かされ、気付かされる事が多い。やはりここに世話になる事に決めて本当に良かった。だが、だからこそこの雷の『力』によって、こころとアンが私に近付く事を恐れているというこの状況は早急にどうにかせねばならないな。
そう思いながら目的地である和室に着いた後、和室の襖をスーッと開けると、予想していた通り、そこには白澤の義智が一人で瞑想に
「義智、瞑想中申し訳ないが、少し良いか?」
「……む、雷牙か。何だ?」
「私の『力』をどうにかするため、今から修行に付き合ってほしい。良いか?」
「……構わん」
「感謝する」
義智に礼を言った後、私は隅にある座布団の内の一枚を抜き出し、それを義智の向かい側に置いて、その上に静かに座った。その後、義智が渡してくれた経文を開き、「行くぞ」という義智の声に頷いてから共に経文を読み始めた。
「そこまでだ」
読み始めてからどれくらいか経った頃、義智のその声が耳に届いた瞬間、まるで身体中に重りをつけられたかのように身体が重くなり、私は息を荒くしながらその場に静かに倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……やはり、まだまだ修行が足りないという事か……」
「……それもあるが、今のお前からはかつての雪花と同じような焦りを感じる。雷牙、お前はこころとアンが早く自分に安心して近付けるようにしたいと考えているな?」
「はぁ……当然、だろう……? 私が早くこの『力』を制御できれば、こころとアンが私を見てもビクつく事は無くなる。彼女らを怯えさせるのは、私とて本意ではないのだからな」
「そうだろうな。だが……急いでも『力』の制御という目標を達成する事は出来ない。急いては事をし損じる。お前も聞いた事があるのでは無いか?」
「……ある。だが……!」
その時、「しっつれいしまーす!」という明るい声と同時に和室の襖が開けられると、そこには雪女の雪花とオルトロスのオルトの二人が笑みを浮かべながら立っていた。
「雪花、それにオルトか。我らに何か用か?」
「私は義智さんに雪女の『力』について少し相談に乗ってもらいたくて、オルトは風之真が言うには雷牙さんと一緒にお昼寝がしたいんだそうです」
「なるほどな……ならば、ここで好きなだけ寝ていけ。ちょうど雷牙も修行終わりで疲れているからな」
「義智……」
「まあ、寝るかは別として、少し休んでおけ。そうでなければ、体が持たんからな」
「……わかった」
たしかに義智の言う通りだ。ここは少し休むとしよう。
そう考えた後、私が座布団の上で身体を丸めると、オルトは嬉しそうに私の傍へと駆け寄り、二つの頭を擦りつけながら話し掛けてきた。
『えへへ……雷牙さん、修行はどうでしたか?』
「……そうだな。まだまだ修行不足であった事、自分自身の心の未熟さを思い知らされたと言ったところか」
『そうなんですね……でも、雷牙さんならきっと『力』を制御出来るようになります! 僕はそう信じてますから!』
「オルト……感謝する」
『えへへ……どういたしまして。それじゃあ……おやすみなさい』
「……ああ、おやすみ」
オルトが身体を私に預けながら目を閉じ、静かに寝息を立て始めると、雪花は羨ましそうな目で私を見始めた。
「雷牙さんも風之真も良いなぁ……私もオルトとちゃんと話をしたいなぁ……」
「オルトも成長すればいつかは人語を話すようになる。それまで待つ事だな」
「はーい……それで、義智さん。『力』の事なんですけど……」
「ああ、そうだったな。何だ?」
「最近、どうにか『力』を使って周囲に冷気の障壁を作る事までは出来るようになりましたよね? けど、私としてはもう少し色々出来るようになりたいんです」
「色々……例えば、何だ?」
「そうですね……例えば……あっ、空気中の水分を凍らせて、それを相手に発射するとか! ほら、義智さんもいつも言ってるように、必ずしも柚希に友好的なモノ達だけが近づいてくるわけじゃないですから、この前柚希から貸してもらったバトル物のお話みたいに何か攻撃する方法とか防御技みたいなのが欲しいんです! でも、どうやってそれを作り出したら良いかちょっと分からなくて……」
「なるほどな……だが、それは我よりも柚希の方が適任では無いか? 前に柚希がお前と『同調』をした際、同じような事をやっていたのだからな。それか、同じように『力』について悩みを抱える雷牙に相談をしてみる……とかな」
「なっ!?」
義智の言葉に私が驚いていると、雪花は私の顔をジッと見つめ始めた。
「雷牙さんか……うん、たしかに雷牙さんも物知りだし良いかも。という事で、雷牙さん。何か良い方法は無いですか?」
「う、そうだな……『力』の制御が
空気中の水分を凍らせて、それを弾丸のようにして放つならば、まずは『力』の放出によって水分が凍り付くイメージを頭に浮かべ、それを妖気で空中に固定した後、それを相手に向けて飛ばすといったようにすれば私は良いと思うが……」
「ふむふむ、なるほど……助かりました、雷牙さん。とりあえず、それでやってみます!」
「あ、ああ……助けになったようで良かったぞ」
「ふふ、はい! あ、そうだ……雷牙さん、何か『力』の事で悩みがあるんですよね? お礼……と言える程では無いかもしれませんけど、私で良ければ話を聞きますよ!」
「む、そうか……それなら、雪花。一つ質問があるのだが……お前はどうやって自分自身の『力』をそこまで制御したのだ?」
「『力』の制御の仕方、ですか……。そうですね……正直、自分のペースでやっていたらある日突然出来るようになったっていうのが、正しいかもしれません」
「自分の……ペース……」
「はい。私も前は雪女の『力』を中々制御できなくて、風之真やアン達にスゴく寒い思いをさせていたんです。だから、早く『力』を制御しなきゃって思って、制御のための近道なんかを義智さんに訊いちゃう程だったんですが、そんな時に柚希から自分のペースで『力』の制御をしていくのが、一番私らしいやり方だって言われたんです。
それで、その後に自分のペースって何だろうって悩んでいたら、今度は風之真から自分のペースなんていうのは、やっていく内に掴んでいく物で、ひたすら試行錯誤して行くしかないんだって言われたんです」
「試行錯誤しながら自分のペースを掴んでいく、か……」
「はい。だから、雷牙さんも色々試行錯誤しながらやってみて良いと思います。たしかに、こころとアンが怖がるのを見るのは辛いと思いますけど、制御できた後はこころ達とも仲良く話せると思えば、毎回の修行だっていつもよりやる気が出るはずですしね」
「なるほどな……うむ、たしかにそうかもしれん。雪花、感謝するぞ」
「どういたしまして。ところで……義智さん、義智さんの見立てでは、雷牙さんはいつ頃『力』の制御が出来ると思いますか?」
すると、義智の口から驚くべき言葉が飛び出してきた。
「そうだな……雷牙自身が上手くやれば、すぐにでも制御は出来るかもしれんな」
「わぁ……スゴいですね! すぐにでも制御出来るかも……って、えっ!?」
「……義智、それは真か?」
「ああ。先程、雷牙自身が手掛かりになる事を言っていたからな」
「手掛かり……あっ、もしかして『力』のイメージの事ですか?」
「そうだ。雪花とは違い、雷牙は元々妖力は高かった。それなのに、『力』を中々制御出来なかったのは、その『力』が妖力とは性質が違う故、雷牙の中にまだしっかりと馴染んでいないからだ」
「性質が違う……そういえば、柚希達は雷牙さんの『力』を妖力というよりは、魔力寄りの物だって言ってましたね」
「そういう事だ。よって、雷牙自身がその『力』を体に馴染ませてしまえば良い」
「なるほどな……」
「因みに、私が訊こうとした近道ってそれだったりしますか?」
「いや、それはまた別の方法だ。念の為に聞いておくか?」
「あ、いえ……大丈夫です……」
「私も大丈夫だ。しかし、性質の違う『力』を身体に馴染ませるとあれば、それ相応の代償が必要なのでは無いか?」
「あ、たしかに……私が近道の方法について訊いた時、それは精神的にも肉体的にも強い痛みを伴うって言ってましたし、やっぱりそういうのも何かしらの痛みを感じる物なんじゃ……」
「いや、それは元々その中に無かった物を何らかの力を以て取り入れようとした場合だ。よって、今回の件には当てはまらない」
「あ、そうなんですね……」
「まあ、今から雷牙にやらせようとしている事は、それなりの精神力を要する物だが……雷牙、お前はどうしたい?」
義智からのその問い掛けに私はフッと笑ってから答えた。
「そんな事決まっているだろう? せっかく『力』を制御できるかもしれない機会を得たんだ。それを逃すわけは無い」
「……わかった。では、始めるとしよう。まず、お前の中の『力』がどのような物か頭の中で明確な形として思い浮かべろ」
「……ああ」
「次だ。その『力』が光となり、自分と一体化していく様子を思い浮かべるんだ」
「…………」
義智の言う通り、私の中の雷の『力』が黄色の光となり、それが私と一体となっていく様子を思い浮かべた瞬間、先程の修行終わりの時よりも強い疲れが私を襲った。
くっ……なるほど、精神力を要すると言ったのはこういう事か。だが、この程度……どうという事は無い……!
「ぐっ……うぐぐ……!」
「最後だ。一体となった『力』を使いこなす自身の姿を思い浮かべ、今この場で軽くその『力』を使ってみろ」
「……良い、のか?」
「ああ。ここまで何も問題なく出来たのなら、『力』の制御は出来ているはず。今のお前なら、思ったように『力』を使えるだろう」
「……わかった」
義智の言葉に頷きながら答えた後、私は『力』を使いこなしている自分の姿を想像し、続けて身体から微量な電気を放つ自分の姿を思い浮かべた。すると、私の目の前でバチリという音を立てながら小さな放電が起き、それを見た雪花は嬉しそうな笑みを浮かべながら私に話し掛けてきた。
「雷牙さん……今のってもしかして……!」
「……ああ、どうやら本当に制御が出来るようになったみたいだ」
「やっぱり……! 良かったですね、雷牙さん! これで、こころとアンから怖がられずにすみますよ!」
「……ああ、そうだな」
そうだ……これで、こころとアンが私に近付く事を恐れたりする事は無くなった。ようやく、彼女らを怖がらせずにすむんだ……。
そう思った瞬間、緊張の糸が切れ、徐々に眠気が襲い始めた。
「う……流石に眠く、なってきた……か」
「ふふっ、それなら眠った方が良いですよ。ねっ、義智さん」
「そうだな。雷牙、よく頑張った」
「あ、ああ……ありが、とう……」
義智に礼を言った後、私は静かに目を閉じ、そのまま静かに眠りについた。
「……ん……」
「こころ……それに、アンまで……」
「……あっ、おはようございます、雷牙さん」
「あ、ああ……私は一体どれくらい眠っていたんだ?」
「雷牙さんが眠り始めたのが午後3時頃、今は午後5時頃だから……2時間くらいですね」
「2時間……修行と『力』の制御でだいぶ疲れたと思ったが、そのくらいの睡眠で済んだのか」
「……いや、本来ならばそれ以上の睡眠を要する。だが、お前が眠っている時、柚希がお前の弱った波動を感じ取って、こころ達と共に和室を訪ね、『ヒーリング・クリスタル』を用いてお前の疲れを取っていったのだ」
「なるほど……それなら、後で礼を言わないとだな」
「ああ、そうしておけ。それと……こころとアンが何か言いたい事があるそうだ」
その言葉と同時にこころとアンは私の目の前に立つと、同時に頭を下げた。
「雷牙さん……さっきは怖がってしまいすみませんでした」
「本当にすみませんでした……」
「……なんだ、そんな事か。別に謝る事では無い。誰しも苦手な物はあるのだからな」
「雷牙さん……」
「それに、今では無事に『力』も制御出来、これでお前達が私に近付く事を恐れたりする必要は無くなったわけだ。それで良いという事にしよう」
「……わかりました。あの……雷牙さん」
「む、何だ?」
「私達と握手……しませんか?」
「握手……か。ああ、良いだろう。私もお前達に『力』の制御が出来たという事をしっかりと証明したいからな」
そう言った後、私が両前足を出すと、こころとアンは恐る恐るといった様子でそれを掴み、何も起きない事を確認すると、満面の笑みを浮かべた。
「アンさん……! 私達、雷牙さんと握手出来てますよ……!」
「はい……! 私、スゴく嬉しいです……!」
「ふふ……私もです……!」
こころとアンは未だ眠り続けるオルトを起こさないように声を潜めながらとても嬉しそうに話をし、その姿に私は心からの喜びを感じた。
うむ……やはり、皆が笑っている方が良い。まだまだ私には修行が必要だが、これでとりあえず一安心といったところだな。
こころ達の嬉しそうな顔を見ながらそんな事を考えていた時、私の口から小さな欠伸が漏れた。
「ふあ……せっかくだ。夕飯の時間までもう少し眠らせてもらうとしよう」
「ああ、そうしておけ」
「夕飯の時間になったら、しっかり起こすので、ゆっくり眠ってくださいね、雷牙さん」
「ああ……頼んだ、ぞ……」
眠気で意識が遠退いていき、視界がぼんやりとしていく中、私は先程のこころとアンの笑みを想起した。
私の『力』で皆の事を笑顔にするため、これからも義智や雪花との修行に精を出し、『力』の強化を努めていくとしよう。それが、今の私の目標と言えるからな。
そう考えた後、私はスーッと意識が遠退いていくのに気持ち良さを感じながら、静かに眠りについた。
政実「SIXTH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
雷牙「今回もこれからの目標などについて触れた回だったな」
政実「そうだね。そろそろ日常回も書く予定だけど、誰のAFTER STORYでになるかは未定かな」
雷牙「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
雷牙「ああ」
政実・雷牙「それでは、また次回」