黒烏「どうも、八咫烏の黒烏です」
政実「という事で、今回は黒烏のAFTER STORYです」
黒烏「サブタイトルを見る限り、今回は風之真お兄さん達と同じような感じの話になりそうですね」
政実「さて、どうなるかな。それは読んでからのお楽しみという事で」
黒烏「わかりました。さて、それではそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・黒烏「それでは、NINTH AFTER STORYをどうぞ」
「ふう……」
冬の寒さが更に厳しさを増し始めたある日の夜、暖房でポカポカとする室内から雪がちらちらと降るのを見ながら僕は小さく息をついた。
この遠野家にお世話になる事になってから数週間、これまで色々な事をお手伝いしたり、話を聞いたりしてみたけど、まだそれらを糧に出来てるとは言えない。立派な
「……本当にどうしたら良いかな……」
小さく溜息をつきながら独り言ちた後、僕はこの遠野家にお世話になる事になった経緯を想起した。去年の師走頃、父さんが末子である僕を連れて
そして、久しぶりに因幡の白兎の
そして、神様達の新年会が行われる元旦の日、兎和ちゃんの様子も見に行く事にしていた兎和ちゃんのひいひいおばあさんを連れて遠野家を訪れると、父さんは僕を一日預かってくれるよう柚希さん達に頼んだ。その理由は、僕がここで皆さんと一緒に暮らす事で僕が何か──やりたい事を見つけられるかもしれないと思ったからだった。
そして、僕を預かる事を承諾した柚希さん達と一緒に新年会に行く父さん達を見送った後、僕は遠野家で色々な体験をし、色々な話を聞いた。その中で一番印象に残り、元気づけられたのは、やっぱり風之真お兄さんの言葉だった。その言葉があったからこそ僕は父さんに自分の気持ちを伝えられたと言えるし、今こうして皆さんの輪の中に入っていけたと言えるからだ。そして、父さんが僕の気持ちを聞き、僕のやりたい事を認めてくれた事で、僕は正式に『絆の書』の一員となったのだった。
でも……僕はまだ立派な八咫烏への道の第一歩すら踏み出せずにいる。はあ……どうしたら良いのかな……?
また小さく溜息をついていたその時、「くーろう♪」と後ろから声を掛けられ、僕はゆっくりと後ろを振り返った。すると、そこにはニコニコと笑いながら僕を見る雪女の雪花さんの姿があった。
「雪花さん……僕に何かご用でしたか?」
「ううん、黒烏が外を見ながら何かを考えてる様子だったから、何を考えてるのか気になってね」
「そうでしたか……」
「それで、何を考えてたの? せっかくだから、この雪花さんにドーンと話してみなさい!」
「……実は──」
僕は考えていた事を雪花さんに話した。話している間、雪花さんは時折相槌を打ちながら僕の話を真剣に聞いてくれた。そして、話を終えると、「なるほどね……」と言い、ニコリと笑うと、僕の頭を優しく撫で始めた。
「せ、雪花さん……?」
「黒烏、成長なんてのはねすぐに出来る物じゃないよ。色々な事を試して、色々な事を悩んで、色々な事を相談してようやく出来る事だからね」
「雪花さん……」
「実際、私だって雪女としての『力』をここまで制御するには結構苦労したよ。ね、風之真?」
雪花さんがソファーの上でのんびりとしていた風之真お兄さんに声を掛けると、風之真お兄さんはゆっくりとこちらに視線を向けながら小さく頷いた。
「そうだなぁ。毎日義智の旦那との修行に励んではスゴくくたびれたり、考えた事を色々試してみたりしてこれまで色々頑張った結果、氷の武具を作れるようになったり、自分から出る冷気を抑えられるようになったわけだからな。正直、ここまで頑張った雪花の事は何だかんだで尊敬してるぜ?」
「ふふ、ありがとう。まあ、そんなわけで私も色々頑張った結果、ここまで成長出来たんだ。だから、黒烏もあまり焦らない方が良いよ。私には私のペースがあって、黒烏には黒烏のペースがあるんだからね」
「僕には僕のペースが……」
「……なーんて、これは私が早く自分の『力』を制御したいって焦っていた時に柚希が言ってくれた事なんだけどね」
「柚希さんが……」
「うん。その後、風之真からも自分のペースの掴み方について教えてもらったよ」
「へへ、そうだったな。まあ、そん時のくり返しになっちまうが、自分のペースなんて物は、やっていく内に掴みゃあ良いんだ。のっけからこうすれば良いなんてのはだれにもわかりゃあしねぇ。だから、ひたすら試行錯誤してみろ。
これだと思う物を試して、失敗して、そこから学んで行きゃあ良いんだ。ガキである今の内は、失敗して学ぶのにちょうど良い機会なんだからな」
「風之真お兄さん……」
「お前さん的にはどう見えてるかは知らねぇが、こう見えて俺だって今も失敗続きなんだぜ? けど、そこから色々な事を学んではそれを自分の糧にしてる。いつか本当の兄貴や妹と再会出来た時に恥ずかしくねぇようになるためにもな」
風之真お兄さんが少し寂しそうな目をしながら言った時、僕はある事を思い出した。
「……そういえば、風之真お兄さんと雪花さんはこことは違う世界のご出身なんでしたね」
「うん、まあね。それで、私達の話を総合する限り、私達はどうやら同じ世界の出身みたいなんだよね」
「ああ。人間は一人もいなくて、色々なところに色々な妖が住んでいるんだ」
「そうそう。ただ……前に聞いた事があるんだけど、私達の世界は前に人間達の世界にいた妖が作った物で、人間の世界と繋がる扉みたいなのがあるみたいだよ」
「人間の世界と繋がる扉……」
「ああ、それなら俺も聞いた事があるな。んで、人間の世界から流れてきた文化も中にはあるんだったよな」
「そうみたいだね。因みに、私達の世界の文化は、柚希に言わせれば人間達の世界で言うところの江戸時代っていう時代に今の文化を合わせた物らしいよ」
「そうなんですね……」
風之真お兄さん達が住んでいた世界、か……話を聞く限りだとスゴく楽しそうだし、行けるなら一度は行ってみたいなぁ。
そんな事を思いながら風之真お兄さん達が住んでいた世界の光景を想像していると、風之真お兄さんはソファーから飛び立ち、僕の頭に静かに着地すると、ニッと笑いながら話し掛けてきた。
「まあ、少し話が脱線しちまったが、俺達が言いてぇのはもう少し肩の力を抜いてゆっくりとやってみろって事だ。自分で色々な事を試したり、柚希の旦那との同調能力の研究をしてみたりな」
「そうそう。例えば……義智さんに修行をつけてもらうとか柚希や天斗さんから『力』の使い方について話を聞いてみるとかね」
「なるほど……」
「まあ、例を挙げていきゃあもっと出せるが、大体はそんなとこだな」
「だね。そして、後は黒烏のやる気次第かな」
「僕のやる気次第……そうですね、僕、色々試してみます。そして、立派な八咫烏になってみせます!」
「おう、頑張れ!」
「応援してるよ、黒烏」
「はい、ありがとうございます!」
風之真お兄さん達の言葉に笑みを浮かべながら答えていると、「何やら楽しそうだな」と言う声が聞こえ、そちらに視線を向けると、そこには気持ち良さそうに目を細める兎和ちゃんを撫でている柚希さんの姿があった。
「おう、柚希の旦那。旦那達も話に混ざるかぃ?」
「ああ、混ざる混ざる。それで、何の話をしてたんだ?」
「黒烏の話だ。黒烏が前の雪花みてぇに少し焦りを感じてるようだったから、二人で焦る必要はねぇって言ってたんだ」
「なるほど。まあでも、たしかに二人の言う通りではあるよな。焦って何かをやろうとしたって、それはあまり身につかないし、想像しているよりも大きな失敗を生む事もある。だから、時間をかけられるならゆっくりと腰を据えてやった方が結果として良いんだ」
「それじゃあ、早く結果を出したい時は?」
「早く結果を出したいなら、それ相応の努力が必要だな。まあ、余程の事が無い限りは、時間はあるわけだし、自分の体調なんかと相談しながらゆっくりとやった方が良い。そうじゃないと、いざという時に力を発揮出来なかったり、体調を崩して倒れたりする事もあるからな」
「そう、ですよね……」
「ああ。だから、お前はお前のペースでやってみろよ。そうすれば、きっと結果はついてくるからさ」
「ふふ……柚希、それはさっき私も言ったよ?」
「おっと、そうだったか。まあでも、俺はそうするのが良いと思うよ」
「……わかりました。僕、自分のペースを掴んで精いっぱい努力してみます」
「ああ、その意気だ」
「頑張ってね、黒烏君」
「うん」
柚希さんと兎和ちゃんの言葉に頷きながら答えた後、僕は再び外へと視線を向けた。外では未だに綺麗な夜空から雪がちらちらと降っていて、その光景は見ていてとても心が落ち着く物だった。
今の僕はちっぽけでまだなんでもない存在かもしれない。でも、柚希さん達と一緒なら僕は父さん達に誇れる立派な八咫烏になれる。そんな予感がする。いや──。
「……絶対になってみせる」
雪を見ながら小さな声で呟いた後、僕はその姿を想像しながら自分の中のやる気を高めていった。
政実「NINTH AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
黒烏「今回はちょっと短めでしたけど、次回はどうするんですか?」
政実「その辺はまだ未定かな」
黒烏「わかりました。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろしていこうか」
黒烏「はい!」
政実・黒烏「それでは、また次回」