ヴァイス「皆さん、どうも。白竜のヴァイスです」
政実「という事で、今回はヴァイスのAFTER STORYです」
ヴァイス「そういえば、今回でAFTER STORYも10個目ですね」
政実「そうだね。これからも『絆の書』の仲間達は増えていくから、AFTER STORYもどんどん書いていくよ」
ヴァイス「わかりました。さて、それではそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・ヴァイス「それでは、TENSE AFTER STORYをどうぞ」
穏やかな春のある日の事、私はお世話になっている遠野家のリビングに置かれているソファーの下で『絆の書』の皆さんの内の何人かと一緒に日向ぼっこをしていた。
一緒に日向ぼっこをしていた皆さんは、最初こそのんびりとしながら、色々な話をしていたけれど、その内に一人また一人と寝息を立て始め、最後の鎌鼬の風之真さんがうつらうつらとし始めたのを見て、私はクスリと笑ってから風之真さんに声を掛けた。
「風之真さん、眠っても大丈夫ですよ」
「う……す、すまねぇ……な、ヴァイスのだん、な……」
「いえいえ。それでは、おやすみなさい」
そう言葉を掛けると、風之真さんは目を静かに閉じ、他の皆さんと一緒にすーすーと寝息を立て始めた。そして、そんな平和な光景を見て、私は幸福感を覚えていた。
……ふふ、こんなにも幸せな気持ちになれるとは思ってもいませんでしたね。これは天斗さんに本当に感謝をしないといけませんね。
そんな事を思いながら、私はこの遠野家にお世話になる事になった経緯を想起した。ある日の事、天上で仕事に励んでいた私は突然直属の上司から育ての親である天斗さんのいる部署への転属を命じられ、その翌朝にその部署へと向かった。
そして、天斗さんとの再会を喜んだ後、天斗さんに転属の理由を訊いた。すると、天斗さんは元々私がいた部署の人材不足が解消されたら、私が天斗さんの部署に転属される事になっていた事や魔書『絆の書』の主でありご自身の甥っ子さんでもある柚希さんの事を私に話した。
そして話を聞き終えた後、天斗さんは私に『絆の書』の一員になる事を頼み、私はそれを二つ返事で承諾した。『絆の書』の皆さんとの生活が楽しそうだなと感じたのもあったが、柚希さんが私と同じで両親を亡くしていたと聞いて、柚希さんに親近感を感じた事や種族こそ違えど同じ境遇の柚希さんの事を支えたいと思ったのが何よりの理由だった。
その後、私は天斗さんに連れられて遠野家を訪れ、柚希さんとも出会って昼食を食べながら話をし、正式に『絆の書』の一員となったのだった。
この遠野家にお世話になる事になってから、まだ一週間しか経っていませんが、この選択はやはり間違ってなかったと断言出来ますね。
スヤスヤと眠る風之真さん達を見ながらそんな事を考えていると、「よう、ヴァイス」と声を掛けられ、私がそちらに視線を向けると、そこにはこちらに向かってゆっくりと歩いてくる柚希さんの姿があった。そして、柚希さんは穏やかに眠る風之真さんや黒烏さん達を見ると、優しい笑みを浮かべながらクスリと笑った。
「皆、よく眠ってるな」
「ふふ、はい。最初は私が一人で日向ぼっこをしていたのですが、途中から風之真さんが兎和さんと黒烏さんを連れていらっしゃり、私の尾を枕にしながら色々な事を話しながら同じように日向ぼっこをしていたんです。
その後、アンさんと鈴音さんとオルト君もいらっしゃり、同じように日向ぼっこをしながら風之真さん達とお話をしていたのですが、兎和さんと黒烏さんとオルト君が眠り始めたのがきっかけとなって、アンさんと鈴音さんも次々に眠りだし、先程風之真さんがお昼寝をし始めたところでした」
「そうだったのか。皆の姿を見かけないから、どこに行ったかと思ってたんだ」
「そうだったんですね」
「ああ。それにしても……ヴァイスって年少組からスゴく好かれてるよな」
「ふふ、嬉しい限りです。天斗さんから『絆の書』の皆さんがとても良い方ばかりだというのは伺っていたのですが、私のような新参者が馴染んでいけるのか実は少し心配をしていたのです。ですが……そんな心配はいらなかったようですね」
「ああ。『絆の書』の皆は全員良い奴だからな」
「そうですね。皆さん、とても良い方ばかりなので、私も毎日が楽しいですし、とても幸せです」
「それなら良かったよ」
柚希さんは心から安心したような笑みを浮かべると、そのまま私の隣に静かに座った。
「ところで、ヴァイス。ヴァイスが前にいた部署ってどんなところだったんだ?」
「私が前にいた部署、ですか。そうですね……簡単に言うなら、あらゆる部署間の伝達役といったところでしょうか」
「あらゆる部署間の伝達役……?」
「ええ。例えば、天斗さんが担当してらっしゃる部署は、生物の生き死にに関わるところ部署なのですが、そこで書かれた生まれたばかりの生命についての情報を他の部署へ持っていき、他の部署で書かれた書類をまた他の部署へ持っていく他、部署間の荷物の移動も行うなどその業務は様々です。もっとも、私は天斗さんの担当してらっしゃる部署とは別の部署間の伝達役だったので、あの日まで天斗さんに会う事は一度も無かったですね」
「なるほどな……そういえば、義智が部署が違うなら会う事は殆ど無いって言ってたけど、それってあり得るのか?」
「はい。天上はとても広いですし、何か催し事を行っても天斗さんの担当してらっしゃる部署を始め、いつも忙しくしていらっしゃる部署は多いので欠席率は高いんです。なので、別部署のご友人に数年ぶりに会ったという話も珍しくは無いようです」
私のその返答に柚希さんは「そうなのか……」と言うと、顎に手を当てながら何かを考え始めた。そして、その様子を見ながら、私は柚希さんに声を掛けた。
「柚希さんは天上のお仕事に興味がおありなんですか?」
「え? ああ、うん……俺、いつかは天斗伯父さんの仕事の手伝いをしたいと思ってるんだ。俺の事を引き取ってくれた事はもちろん、ここまで育ててもらった恩返しみたいな物でさ。もちろん、天上での仕事は大変なのはわかってるけどな」
「ふふ、それを聞いたら天斗さんもとても嬉しく思うと思いますが、天斗さん自身は恐らく柚希さんが本当にやりたい事をやって欲しいと思っていると私は思っていますよ?」
「俺が本当にやりたい事……」
「はい。天斗さんのお仕事のお手伝いも柚希さんにとって本当にやりたい事なのだと思いますが、それ以外にもやりたい事を探して欲しいと天斗さんは思っているはずです」
「……そうかもしれない。でも、今のところは特に思いつかないかな」
「そうですか。それでは、それも柚希さんのこれからの目標になるかもしれませんね」
「そうだな。自分のやりたい事を見つけて、それらをこなした上で最終的には天斗伯父さんの天上の仕事を手伝えるまでになる。それが『力』の強化以外に出来た俺の目標だ」
「ふふ、その目標を達成出来るように私も全力でサポートさせて頂きますね」
「ああ、よろしくな、ヴァイス」
「はい」
そして、私と柚希さんが固く握手を交わしていると、「おや……ここにいらしたんですね」という天斗さんの声が聞こえ、私達がリビングの入り口へ視線を向けると、そこにはニコニコと笑う天斗さんの他に白澤の義智さんの姿もあった。
「天斗伯父さん、それに義智も」
「私達に何かご用でしたか?」
「いえ、先程所用で天上に義智さんと一緒に行ってきたのですが、その時に偶然私の部署を訪れていた豊穣を司る神様からたくさんの贈り物を頂きましてね。今からそれを頂こうと思って皆さんを呼びに来たんです」
「そうだったんですね。わかりました」
「それじゃあ早速お手伝いを──」
「いえ、ヴァイスさんはそのままで。風之真さん達が眠ってらっしゃるのを起こすのは可哀想ですので」
「わかりました」
天斗さんの言葉を聞いて私が頷いていると、柚希さんはニコリと笑いながら静かに立ち上がり、そのまま天斗さんへと近付くと、静かに口を開いた。
「それなら、天斗伯父さんも休んでいて下さい。準備は俺や義智達でやりますから。それで良いよな、義智?」
「……ああ。シフル、お前はヴァイスと話をしながらゆっくり待っていろ。久しぶりに会ったのだから、色々話したい事もあるだろう」
「お二人とも……ふふ、わかりました。それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」
「はい。よし……それじゃあこころ達も呼んで早速取り掛かるぞ、義智」
「うむ」
そして、柚希さんと義智さんがリビングを出ていくと、天斗さんは先程の柚希さんと同じように私の隣に静かに座った。
「先程まで柚希君と何を話していたんですか?」
「柚希さんからの天上でのお仕事の事についての質問に答えていました。柚希さん、天上でのお仕事に興味がおありのようで、いつかは天斗さんのお仕事のお手伝いをなさりたいようです」
「そうですか。それはとても嬉しいですが、別のやりたい事も見つけて欲しいと私は思っています」
「ふふ……やはり、そうですよね。天斗さんがそう思っていらっしゃると思って、私がそう言ったところ新しい目標が出来たようですよ?」
「ほう、そうなんですか?」
「はい。ですが……それは柚希さん本人から聞いた方が良いかもしれませんね」
「ふふ、そうですね。それでは、柚希君が話してくれるまでの楽しみにしておきます」
「はい」
天斗さんとの会話を楽しみながら気持ちが穏やかになっていくのを感じていたその時、私の口から不意に欠伸が漏れ、それを見た天斗さんはクスリと笑ってから私の頭に静かに手を置いた。
「ヴァイスさんも少し眠っていて良いですよ。柚希君達が呼びに来たら起こしますから」
「……わかり、ました。それでは、おやすみ……なさい、あま──
「……ふふ。ええ、おやすみなさい」
そして、静かに目を閉じた後、天斗さんが歌う心地良い子守歌の調べに更に気持ちが安らいでいくのを感じながら私は意識がスーッと落ちていくのを感じた。
……ふふ、父さん、母さん。私はこんなにも素晴らしい育ての親と家族に囲まれて生きているので、心配などせずに新たな人生を歩んでいって下さいね。
既に転生を果たしている私の本当の両親に対して心の中でそう声を掛けた後、私は完全に意識を手放し、静かに眠りについた。
政実「TENSE AFTER STORY、いかがでしたでしょうか」
ヴァイス「今回は日常回でしたね」
政実「そうだね。もっとも、次はどうするかは未定だけどね」
ヴァイス「わかりました。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
ヴァイス「はい」
政実・ヴァイス「それでは、また次回」